手の先天異常
発生機序から臨床像,治療まで
手の先天異常の治療に情熱を注ぎこんだ著者渾身の遺作
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序文
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本書を監修して
本書の著者,故荻野利彦先生は1946年,静岡県でお生まれになり,1971年に北海道大学を卒業され,石井清一先生のもとで手外科の研修を始められた.手の先天異常には当初から関心をもたれており,ハンブルグのBuck-Gramcko氏のもとで手の先天異常の臨床,とりわけ診断と治療に関して学ばれた(1981~82年).以来,北海道大学,札幌医科大学,山形大学で手の先天異常の発生機序から臨床像を検討され,治療法の開発に力を入れてこられた.山形大学退任後も,札幌と山形で手の先天異常患者の診療を続けられ,手の先天異常は荻野先生のライフワークであった.
私が荻野先生と親しくお付き合いするようになったきっかけは,第1回国際手外科学会(1980年)がオランダのロッテルダムで開催されたときではなかったかと思う.当時,日本で手の先天異常に力を入れておられたのは,田島達也,児島忠雄,三浦隆行,江川常一,津下健哉の各先生方であった.大阪大学の江川常一先生は手の先天異常の諸問題を検討する目的で手の先天奇形研究会(1975年)を立ち上げられ,先天異常に関心のある先生方に案内を出して,春と秋に開催される中部日本整形外科災害外科学会の開催前日に手の先天異常に関する講演と症例検討を行う会が始まった.当初の参加者は20人前後で,中部日本整形外科災害外科学会の圏内の先生方がほとんどであったが,圏外の北海道から荻野先生が参加されるようになり,臨床例だけでなく,先天異常発生の実験結果を教えてもらい,会が充実していったのを記憶している.この手の先天奇形研究会は20年近く続いたが,1995年に発展的に解消して,日本手外科学会(以下,日手会)先天異常委員会主催の「先天異常懇話会」として,日手会学術集会時に開催されるようになり今日まで続いている.
日手会の先天異常委員会は1993年に常設委員会となったが,1994年から荻野先生が委員長を担当され,委員長退任後も担当理事,顧問,アドバイザーを務め,委員会をリードしてこられた.従来,手の先天異常は外見上の形態によって診断・分類されていたが,類似した変形でも発生機序が異なることが明らかになり分類法の再考が必要になってきた.米国手外科学会と国際手外科学会連合の先天異常委員会が検討を重ね,先天異常の発生機序を考慮に入れた新しい分類法をSwanson氏が報告した(1976年).この分類法の基本は,異常が胎生期の肢芽のどの部位に生じたかによって7つのカテゴリーに分けている点にある.一方,荻野先生のグループは,このSwanson分類で別々のカテゴリーに分類されていた中央列多指症,合指症,裂手症は指列誘導異常によって生じることを,多くの臨床例の分析とラットによる実験的研究から明らかにされ,Swanson分類を改良して日手会の新しい分類法としてまとめられた(1986および1996年).その後もこの分類法は改良が加えられ,日手会「手の先天異常分類マニュアル改訂版」(2012年)として日手会ホームページからもダウンロードができるようになっているが,本書ではこれにさらなる改良が加えられている.荻野先生は国際手の先天異常学会(International Symposium of Congenital Differences of the Upper Limbs)の主たるメンバーであり,2000年,京都でこの国際学会を主催された.荻野先生の分類法の理念は次第に国際的に理解され,認知されてきている.
本書はこの分類法に則って臨床例が分類され,膨大な数の先天異常の肉眼所見とX線所見が示されているので,読者が初めて経験する症例であっても病態を理解するうえで参考になるであろう.治療法も多方面の文献からの考察と荻野先生自身が40数年間に経験したことを踏まえ,模式図や術中写真でわかりやすく説明されており,患児にとって機能的,整容的に最も望ましい治療法を読者が選択できるようになっている.読者にとって初めての症例であっても,本書を読めば適切に対応できると考える.
荻野先生は相当前から手の先天異常の著書を出したいと思っておられたようであるが,実際に出版に向けて資料を整理され始めたのは15年ほど前からであり,本書の原稿の執筆は5,6年くらい前から始めたと伺っている.2015年春にはようやく原稿が揃い,東京での第58回日手会学術集会のあとに医学書院に原稿と付図を提出された.荻野先生は同年3月末から4月初めにかけてマウイ島カアナパリで開催された第6回日米手外科合同会議に参加されており,会場の近くのコンドミニアムにこもって最後の仕上げをしておられた姿が印象的であった.この会議には私も参加していたので,会期中の夕方,コンドミニアムに招いていただき,荻野先生の夫人の手料理をあてにワイングラスを傾けながら歓談することができた.荻野先生が本書の原稿がほぼできあがったと嬉しそうに話されていたのが思い出される.心臓疾患のため,ある時期からお酒はあまり飲まなくなっていたが,このときはワインを楽しまれていたので,体調がよくないようにはまったく思えなかった.しかし,残念なことに同年4月末に診療から帰られたあと倒れられ,意識が戻らぬままに5月22日,享年68歳で帰らぬ人になってしまわれた.その数か月後,夫人からの依頼があり,私が本書の校正をすることになった.校正には7か月あまりを要したが,膨大な症例写真とX線を整理分類されていたこと,臨床から基礎まで数多くの文献を集められ,またそのすべてに目を通されていたことは驚きであった.所々,荻野先生に直接聞いて確かめたい箇所もあったが叶うはずもなく,私の判断で修正した箇所もある点についてはご容赦願いたい.荻野先生は本書の序文も書いておられ,あとは校正だけであったのに,先生自身が本書を手にすることができなかったことは誠に残念でならない.
本書が多くの読者の心をとらえ,手の先天異常の臨床と研究の発展につながるとともに,手の先天異常患者の治療結果が向上することを願い,荻野利彦先生のご冥福を祈りたい.
2016年9月
阿部宗昭
序
手の先天異常(先天性疾患)は手の奇形と呼ばれていた.しかし,奇形という用語は「普通と異なった珍しい姿・形」という意味を持ち,当事者が使ってほしくない用語であるため,次第に使われなくなっている.米国でも手の先天異常の呼び方はcongenital hand anomaliesからcongenital hand deformitiesに変わり,最近ではcongenital hand differencesという用語が使用されている.人にはそれぞれ背の高さや顔の形など生まれつきの個人差(特徴)がある.先天異常を意味する用語の表現が変化した根底には,手の先天異常を体の個人差としてとらえようとする考え方がある.医学的観点からは「背の高低の個人差」と「治療を必要とする生まれつきの疾患」を同一に論じることには無理があるとも考えられる.しかし,このような考え方への理解が浸透することにより,患者あるいは家族の精神的負担が軽減する可能性がある.
手の先天異常の症状,病態や重症度は多様である.したがって治療は個々の患者により異なる.変形が手の機能の面からはほとんど障害とならないものから,手の機能をすべて失うものまである.治療計画を立てる際には,合併症による全身的な機能障害の有無や,両上肢の障害であるのか,片側肢のみの問題であるのかなどを考慮する必要がある.一方,このような機能的な問題のみならず,整容的な改善も治療の重要な目的の一つである.治療法の選択に際しては,手の機能改善の可能性を考えるのと同時に整容的な面からよりよい治療を考えることも忘れてはならない.実際の治療にあたっては,皮膚の処置,皮膚移植(植皮),骨切りや骨接合,靱帯再建,筋腱の再建などの手外科の基本的な手技が要求される.さらに,指延長術や指移植術などの応用的な技術を含む幅広い手術手技も必要になる.手の先天異常は頻度の高い疾患ではないが,一定の比率で発生するため,整形外科医,形成外科医,手外科医にとっては避けて通ることのできない疾患の一つである.
手の先天異常の患者が外来を訪れたとき,まず必要なのは的確な診断である.的確な診断によって,疾患の原因,病態,遺伝性の有無,放置した場合の機能的および整容的予後や保存療法の可能性が予測できる.同時に,手術をする場合の時期,手術法,それに術後合併症などの予防を含めて的確な治療計画を立てることができる.著者が手外科を始めた当時は,手の先天異常の術後変形や医原性の変形がしばしばみられた.手外科の普及や手術手技の進歩とともに合併症は減少しているが,手外科の術後結果のすべてが満足できるわけではなく,不満足な結果に終わることもある.手の先天異常の治療結果も同様である.われわれはどのような合併症が起こりうるかを知る必要があり,同時に術後瘢痕,移植皮膚の色素沈着,指自体の低形成など外科的には解決できない問題があることも知る必要がある.このような知識をもつことにより,患者あるいはその家族への適切な説明が可能になる.手術による改善が期待できない場合にも,障害をもった患児が成長過程で遭遇する諸問題を,患児と家族がうまく解決するためには,十分な知識をもった医師による定期的な経過観察が重要な役割をもつ.同時に,患者の支援団体としての先天性四肢障害児父母の会などの情報を患者の家族に知らせることが必要なこともある.手の先天異常の治療にあたって何にも増して大切なのは,疾患と治療内容に対する家族の理解である.時にはそれによって治療の内容が大きく変わることもあるし,計画された治療が円滑に行われるか否かを左右することもある.
本書では,手の先天異常の分類・診断をよりよく理解するために欠指症の病態と発現機序を概説し,現在用いられている『手の先天異常分類マニュアル(日本手外科学会先天異常委員会 改訂版2012年)』を著者が改変した改良版(総論,D 手の先天異常の分類法⇒14頁参照)に沿って,手の先天異常の各疾患の病態と治療法を概説し,主に著者自身が行っている治療法を詳述する.原因遺伝子とその詳細については,日々新しい知見が加わり更新されている点と,PubMedやOMIMなどを利用することで最新の知見が容易に検索できる点から,本書では多くを取り上げなかった.
本書が手の先天異常を扱う読者諸氏の参考となり,患児の手の機能と整容がさらに向上すれば,手の先天異常をライフワークにしてきた著者にとってこのうえない喜びである.
最後に,本書の企画に賛同していただき,出版にあたって,編集から校正まで多大なご支援をいただいた医学書院医学書籍編集部の北條立人氏をはじめ,関係者の皆様に深謝する.また本書に付図として掲載した膨大な数の肉眼写真とX線写真は,妻とも子の協力なくしてはありえなかったことも附記しておきたい.
2015年4月
荻野利彦
目次
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総論
A 手の先天異常を理解するための基礎的知識
1 正常手の発生
2 手の先天異常-先天性指欠損の病態と発現機序
B 遺伝相談
C 手の先天異常の頻度と疫学
D 手の先天異常の分類法
E 手の先天異常の治療の原則
第1章 形成障害(発育停止)
A 横軸(横断性)形成障害(いわゆる合短指症)
B 縦軸形成障害(長軸形成障害)
1 あざらし肢症
2 橈側列形成障害
3 尺側列形成障害
C 筋腱形成障害(先天性筋欠損)
1 短母指伸筋欠損,長母指伸筋欠損
2 総指伸筋欠損
3 長母指屈筋欠損
4 深指屈筋欠損
5 長掌筋欠損
6 上腕二頭筋欠損
D 爪形成障害(先天性爪甲欠損症)
1 爪無形成・爪低形成:先天性爪欠損
2 末節骨短縮を伴う爪欠損
第2章 分化障害
A 先天性骨癒合症
1 上腕尺骨癒合
2 上腕橈骨癒合
3 上腕骨と橈骨および尺骨の癒合
4 橈尺骨癒合
5 手根骨癒合
6 中手骨癒合(第4-5中手骨癒合)
B 先天性橈骨頭脱臼
C 指関節強直
D 拘縮・変形(軟部組織の拘縮と骨変形に起因する異常)
i 軟部組織に起因する異常
1 先天性多発性関節拘縮症
2 翼状肘
3 握り母指症
4 風車翼手と多発性屈指症
5 屈指症
6 迷入筋症候群
7 爪変形
8 先天性筋短縮症
ii 骨変形に起因する異常
1 Kirner変形
2 三角状骨,三角指節骨
3 Madelung変形
第3章 重複(多指症)
A 母指多指症
B 中央列多指症
C 小指多指症
D 対立可能な三指節母指
E 過剰指節症
F 鏡手
G 上肢の重複
H 掌側の重複,背側の重複
1 掌側の重複,背側の重複の概念
2 著者の提案する掌背側重複異常の分類
第4章 指列誘導異常
A 合指症(皮膚性,骨性)
B 深い指間陥凹(指欠損を伴わない裂手症)
C 中央列多指症
D 裂手症
E 尺側裂手症(第4指間の深い指間陥凹)
F 手の低形成を伴う指列誘導異常(裂手症を含む)
第5章 過成長
A 巨指症
第6章 低成長
A 矮手症
B 短指症
C 斜指症(斜走指)
第7章 先天性絞扼輪症候群
第8章 骨系統疾患および症候群の部分症
第9章 その他(分類不能例を含む)
第10章 手の先天異常治療での合併症
1 母指多指症
2 他の型の多指症
3 合指症
4 対立運動が可能な三指節母指
5 三角状骨(三角指節骨を含む)による斜指
6 屈指症
7 風車翼手
8 短指症と横軸欠損
9 橈側列欠損
10 先天性橈尺骨癒合症
付録
A 先天異常の用語
B 先天異常における用語の使用上の留意点
書評
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書評者: 石井 清一 (札幌医科大名誉教授)
平成27年の日本整形外科学会総会から帰宅したのは5月25日であった。そのとき,心臓疾患で療養中の荻野利彦先生の急逝の知らせを受けた驚きと寂しさを昨日のことのように思い出す。
荻野先生が北海道大学に入学し,郷里の静岡から札幌に出てこられたのは昭和40年のことであった。下宿が私の家のすぐ近くにあったこともあり,付き合いは学生時代からとなる。先生は医学部を卒業されると整形外科に入局したが,やがて手の外科を専門分野に選び,その中でも上肢の先天異常の研究に情熱を傾けるようになった。その節目,節目に私が関与したことがいま走馬灯のように頭の中を駆け巡っている。
荻野先生が北大,札幌医大,山形大を通じてライフワークとしてきた集大成となる本書が出版されたのは平成28年10月である。先生がそれまで経験してきた症例についての膨大な資料を著書としてまとめる仕事に着手したのは,山形大学を退職した平成23年のことである。出版を待つばかりの時点で帰らぬ人になってしまったことが悔やまれるが,御親戚にあたる阿部宗昭先生(阪医大名誉教授)が監修を引き受けて刊行に漕ぎ着けた。
手の先天異常は,ヒトの発生の途上において遺伝子の障害,あるいは外因による胚の外傷が原因となり発生する。発現する形態の異常は多岐にわたっている。臨床医にとって大切なことは,正しい診断の基に治療を開始することである。そのためには,あらゆる手の先天異常に対応できる分類法を確立する必要がある。
Swansonが手の形態異常に発生学の知識を取り入れた分類法を提唱したのは昭和51年のことである。その後,三浦隆行先生をはじめ荻野先生ら日本の手外科医たちがSwanson分類の問題点に改良を加えることで,理想とする分類法の完成に向け努力し続け,現在に至っている。
三浦先生は指の数が不足して発生する裂手症の中に,X線像を見る限りでは指列の数が正常より多い症例があることを指摘した。荻野先生はこの疑問を解くために「裂手症の形成過程」を想定して仮説を作り上げた。この仮説を実証できる形態異常の存在の有無について,臨床例と動物実験による形態異常指の中から検証した。そのようにして一連の基礎的,臨床的研究で確立された「指列誘導異常」の概念をSwanson分類に取り入れたのが,日本手外科学会改良分類法である。荻野先生によると,Swanson分類にはまだ改良を要する点が残されているとのことであった。上肢の掌背方向の重複異常の分類をどのように整理していくかが今後の課題といえよう。
本書には荻野先生が実際に経験した症例が,日本手外科学会改良分類法に沿ってまとめられている。A4判で392ページに及ぶ単独の著者による大作である。障害児に対する温かい思いやりが随所にあふれ出ている。手の先天異常に興味を持つ臨床医や研究者にとっての格好の専門書として,いつまでも読み継がれるであろう荻野先生の渾身の名著である。
実際の治療が容易にイメージできる先天異常の教科書
書評者: 堀井 恵美子 (名古屋第一赤十字病院手外科部長)
本書はその帯にも記されているように,著者である故・荻野利彦先生が“上肢の先天異常”に対して生涯にわたっていかに向き合ってきたかがわかる渾身の書である。そして,読者である手外科医および小児整形外科医にとっては,長年待ち望んでいた臨床家の手による先天異常の教科書といえよう。
本書はまず,正常手の発生と,先天異常の発生機序がコンパクトにまとめられており,その上で,日本手外科学会(日手会)の先天異常分類(日手会分類)に準じて,手の先天異常について網羅されている。日手会分類は,著者が中心となって日手会が作成した分類方法であるが,著者自身が既にその分類法の不備を見出し,改良に向けて準備をしていた様子が本書からうかがわれ,その結果を見ることなく,急逝されたことが悔やまれる。
本書の総論では,先天異常の発生機序に関する難しい内容を,臨床家にとってわかりやすいよう,端的にそのエッセンスがまとめられている。著者自らが長年基礎研究を行って得た知識が骨子となり,そこに症例を観察して得た臨床家としての経験が結び付いた結果,読者に理解しやすい内容となったものと思われる。また,著者らが中心となって確立した「指列形成障害」という概念について歴史的な背景を踏まえて説明されており,長年にわたる論争の模様がよくわかり興味深い。大事なのは「E.手の先天異常の治療の原則」の項目(p.15)で,治療に携わる者がどのように患者を診て治療方針を考えるべきかという,手外科領域の中でも特異的な先天異常手の診療に当たっての心構えが述べられている。わずか1ページの内容ではあるが,著者の患者に対する愛情が感じられる内容で,これから診療に当たる後輩への熱いメッセージと受け止めた。
実際の症例に関しては,日手会分類に準じて,疾患ごとに疫学から診断,治療,その長期予後までよくまとまっている。症例写真,X線像,さらにはイラストも豊富で,かつ明快である。著者自身が行ってきた治療方法が中心であるが,決してそればかりでなく,国内外の論文で報告された治療方法に関しても幅広く取り上げられている。手術のコツもよくわかり,経験の乏しい読者にとって非常に参考になる。また,長期成績が写真とともに示されているので,各疾患の予後もわかる。疾患によっては,「放置しても成長すれば日常生活動作のほとんどで困らない」と記載されており,外傷による障害と,先天性障害の根本的な違いが述べられている。本書を読めば,多くの手外科専門医が治療にあたる際に,患者家族にその予後も含めて説明できることだろう。
それから,なんといっても素晴らしいのは,数多くの引用文献の提示である。著者が勤勉で,英語論文のみでなく,日本語論文に対してもあまねく目を通しておられたのがよくわかる。この文献の一覧を見れば,各疾患の治療の変遷も把握できるだろう。
あまりに明快な書であるが故に,これを読むだけで手外科専門医であれば誰しもが先天異常の治療ができるような錯覚にすら陥ってしまうのではないだろうか。手外科医のみでなく,一般整形・形成外科医,小児科および産科の先生方にも,ぜひ一読していただき,手の障害を持った子どもに対する知識を深めていただければ幸いである。
最後に,この素晴らしい書を脱稿された後,できあがりを見ることなく急逝された荻野先生のご冥福を心よりお祈りする。
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