今日の精神疾患治療指針 第2版
精神科臨床の定評書、待望の改訂第2版! DSM-5に準拠!
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今日の治療指針の精神科版、待望の改訂第2版。「臨床で遭遇しうる精神疾患および諸問題を網羅的に解説し、最新かつ実践的な臨床情報を提供する」という初版の方針を踏襲しつつ、DSM-5に準拠した内容にリニューアル。もちろん新薬や適応拡大など治療の最新情報も盛り込んでおり、「精神科診療の今」が詰まった1冊となっている。
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- 目次
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序文
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第2版 序
近年は精神科領域にも専門医制度が導入されるなど,精神科医は技能を高めることはもちろん,標準的な治療法に対する知識・情報が今まで以上に求められる時代となった.そうした状況の中,2012年2月,『今日の治療指針』シリーズの一冊として『今日の精神疾患治療指針』を出版した.臨床医が日常で遭遇しうる精神疾患とそれに関わる諸問題を網羅し,最新かつ実践的な臨床情報をまとめた内容は,多くの読者諸氏から好評いただき,編集者一同非常に喜ばしく思っている.
初版の発行から4年あまりが経過し,その間DSM-5の登場や薬剤の適応拡大など,精神医学の分野においてさまざまな変化が生じていることを踏まえ,ここに第2版を上梓する運びとなった.
第2版の編集方針は初版に準拠しているが,章立てはDSM-5での変更点などをもとに若干の変更を加えている.具体的には初版の第3章「気分障害」を「双極性障害および抑うつ障害とその関連障害群」とし,第4章「神経症性障害(身体表現性障害も含む)」は「不安症・強迫症とその関連障害群」「解離症・身体症状症とその関連障害群」の2つの章に分けた.また初版第6章「行動異常」は項目の内容に応じて「秩序破壊的・衝動制御・素行症群」と「性嗜好障害・性機能不全・性別違和」に分類し,第15章「物質使用障害」は「物質関連障害および嗜癖性障害群」と名称を変更したうえでギャンブル障害などの新たな疾患概念についても取り上げている.その結果,項目立ては初版の全23章・341項目と比べ,第2版は全25章・345項目と若干増加することとなった.
各項目については,初版同様,詳細な処方例をはじめ,検査や鑑別診断,心理・社会的療法,リハビリテーション,患者・家族説明のポイントなどについてより具体的に解説をしている.第2版も「これ1冊あれば必ず何らかの有益な情報が得られる」と読者諸氏に感じていただける内容になったのではないかと自負している.
最後になるが,お忙しい中,ご執筆をお引き受けいただいたご執筆者各位にこの場を借りて御礼を申し上げるとともに,本書が読者諸氏の日常診療の一助となることを切に願っている.
2016年9月
編者一同
近年は精神科領域にも専門医制度が導入されるなど,精神科医は技能を高めることはもちろん,標準的な治療法に対する知識・情報が今まで以上に求められる時代となった.そうした状況の中,2012年2月,『今日の治療指針』シリーズの一冊として『今日の精神疾患治療指針』を出版した.臨床医が日常で遭遇しうる精神疾患とそれに関わる諸問題を網羅し,最新かつ実践的な臨床情報をまとめた内容は,多くの読者諸氏から好評いただき,編集者一同非常に喜ばしく思っている.
初版の発行から4年あまりが経過し,その間DSM-5の登場や薬剤の適応拡大など,精神医学の分野においてさまざまな変化が生じていることを踏まえ,ここに第2版を上梓する運びとなった.
第2版の編集方針は初版に準拠しているが,章立てはDSM-5での変更点などをもとに若干の変更を加えている.具体的には初版の第3章「気分障害」を「双極性障害および抑うつ障害とその関連障害群」とし,第4章「神経症性障害(身体表現性障害も含む)」は「不安症・強迫症とその関連障害群」「解離症・身体症状症とその関連障害群」の2つの章に分けた.また初版第6章「行動異常」は項目の内容に応じて「秩序破壊的・衝動制御・素行症群」と「性嗜好障害・性機能不全・性別違和」に分類し,第15章「物質使用障害」は「物質関連障害および嗜癖性障害群」と名称を変更したうえでギャンブル障害などの新たな疾患概念についても取り上げている.その結果,項目立ては初版の全23章・341項目と比べ,第2版は全25章・345項目と若干増加することとなった.
各項目については,初版同様,詳細な処方例をはじめ,検査や鑑別診断,心理・社会的療法,リハビリテーション,患者・家族説明のポイントなどについてより具体的に解説をしている.第2版も「これ1冊あれば必ず何らかの有益な情報が得られる」と読者諸氏に感じていただける内容になったのではないかと自負している.
最後になるが,お忙しい中,ご執筆をお引き受けいただいたご執筆者各位にこの場を借りて御礼を申し上げるとともに,本書が読者諸氏の日常診療の一助となることを切に願っている.
2016年9月
編者一同
目次
開く
1 症候,主訴からのアプローチ
2 統合失調症とその他の精神病性障害
3 双極性障害および抑うつ障害とその関連障害群
4 不安症・強迫症とその関連障害群
5 解離症・身体症状症とその関連障害群
6 パーソナリティ障害
7 秩序破壊的・衝動制御・素行症群
8 性嗜好障害・性機能不全・性別違和
9 ストレス反応と適応障害,反応性精神病
10 食行動障害および摂食障害群
11 児童・青年期の精神疾患と精神医学的諸問題
12 認知症と高齢期の精神疾患
13 器質性精神障害
14 薬剤性精神障害と他の症状性精神障害
15 睡眠覚醒障害
16 てんかん
17 物質関連障害および嗜癖性障害群
18 心身症
19 精神科面接,診断と各種検査
20 薬物療法総論
21 精神療法とその他の治療法
22 精神科救急
23 精神科リハビリテーション
24 身体合併症の治療とケア
25 その他の臨床的諸問題
和文索引
欧文索引
意識障害/幻覚/記憶障害(健忘)/睡眠の異常/失認,失行,失語/思路障害/妄想/強迫/不安(解離,離人症)/恐怖/パニック発作/抑うつ気分/多幸/感情鈍麻/意欲低下(制止)/食欲減退・亢進/自傷,自殺/身体症状/性行動の異常/衝動行為
2 統合失調症とその他の精神病性障害
統合失調症の疾患概念/統合失調症の治療予測因子/統合失調症の急性期/統合失調症の回復・安定期/統合失調感情障害/妄想性障害/減弱精神病症候群/非定型精神病/遅発性統合失調症/緊張病(カタトニア)/治療抵抗性統合失調症/抗精神病薬の減量・スイッチングの方法/統合失調症における物質・アルコール使用障害/統合失調症と自閉スペクトラム症/遅発性ジスキネジアへの対応/水中毒への対応
3 双極性障害および抑うつ障害とその関連障害群
双極性障害および抑うつ障害の疾患概念/うつ病(DSM-5)/大うつ病/うつ病・大うつ病性障害(幻覚妄想を伴う)/難治性うつ病/双極性障害,抑うつエピソード/双極性障害,躁病エピソード/双極性障害の維持療法/抗うつ薬と躁転/混合性病相/季節性感情障害/ラピッドサイクラー/気分変調症/軽症うつ病あるいはメランコリー親和型うつ病/非定型うつ病/血管性うつ病/月経前不快気分障害/気分障害の併存疾患(物質,不安障害,パーソナリティ障害など)/双極スペクトラム
4 不安症・強迫症とその関連障害群
不安症・強迫症の疾患概念/パニック症(広場恐怖症)/特定の恐怖症(限局性恐怖症)/社交不安症/全般不安症/混合性不安抑うつ障害/強迫症/醜形恐怖症/抜毛症/分離不安症/分離不安障害/選択性緘黙
5 解離症・身体症状症とその関連障害群
身体化障害(身体症状症)/変換症/転換性障害/心気症(病気不安症)/身体症状症(疼痛が主症状のもの)/慢性疲労症候群/作為症/虚偽性障害/ポリサージェリー/解離性健忘/解離性同一症/離人症性障害
6 パーソナリティ障害
パーソナリティ障害の概念/パーソナリティ障害の評価スケール/境界性パーソナリティ障害/自己愛性パーソナリティ障害/パーソナリティ障害と気分障害/パーソナリティ障害と広汎性発達障害/パーソナリティ障害と摂食障害/パーソナリティ障害の精神療法/パーソナリティ障害の薬物療法/パーソナリティ障害の入院治療
7 秩序破壊的・衝動制御・素行症群
病的放火/病的窃盗/素行障害(素行症)/反抗挑発症
8 性嗜好障害・性機能不全・性別違和
性嗜好障害/性機能不全群/性別違和
9 ストレス反応と適応障害,反応性精神病
反応性アタッチメント障害/心的外傷後ストレス障害/急性ストレス障害/適応障害/感応性妄想性障害/急性一過性精神病性障害/拘禁反応/祈祷性精神病
10 食行動障害および摂食障害群
神経性やせ症/神経性過食症/摂食障害の関連症状(自傷,過量服薬)/摂食障害における認知行動療法/摂食障害におけるその他の精神療法/重症摂食障害患者の身体管理・入院治療/異食症
11 児童・青年期の精神疾患と精神医学的諸問題
児童・青年期にみられる精神疾患の概説/知的能力障害(知的発達症)/自閉スペクトラム症/限局性学習症/コミュニケーション症/注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害/運動症群/運動障害群/虐待/からかい,いじめ/不登校,ひきこもり/児童・青年期の統合失調症/児童・思春期の気分障害/児童・青年期の不安症・強迫症・心的外傷後ストレス障害/児童・青年期の嗜癖性障害
12 認知症と高齢期の精神疾患
認知症/軽度認知障害/アルツハイマー病/血管性認知症/レビー小体型認知症/前頭側頭型認知症/正常圧水頭症/神経原線維変化型老年期認知症(tangle only dementia)/ビンスワンガー病/クロイツフェルト-ヤコブ病/アルコール性認知症/BPSDと漢方/認知症の家族ケア/認知症の非薬物療法/高齢期の気分障害/高齢期の身体表現性障害/高齢期の不安症/不安障害/高齢期の睡眠障害/高齢者のパーソナリティ障害/高齢期の統合失調症
13 器質性精神障害
パーキンソン病/ハンチントン病/進行性核上性麻痺/大脳皮質基底核変性症/多系統萎縮症/進行性皮質下膠症/脳卒中後のアパシー/三山病/HIV感染症/細菌性・真菌性感染症/神経梅毒/橋本脳症/傍腫瘍性・自己免疫性辺縁系脳炎/自己抗体介在性急性可逆性辺縁系脳炎/単純ヘルペス脳炎/硬膜下血腫/外傷性脳損傷/脳腫瘍術後/多発性硬化症/求心路遮断性疼痛
14 薬剤性精神障害と他の症状性精神障害
抗精神病薬による精神症状/抗うつ薬による精神症状/抗てんかん薬による精神症状/抗不安・睡眠薬による精神症状/抗認知症薬による精神症状/抗パーキンソン病薬による精神症状/抗酒薬(ジスルフィラム)による精神症状/インターフェロンによる精神症状/ホルモン剤による精神症状/抗がん剤による精神症状/鎮痛薬による精神症状/循環器用薬による精神症状/抗潰瘍薬による精神症状/抗結核薬による精神症状/内分泌疾患に伴う精神症状/腎不全・人工透析に伴う精神症状/性周期に伴う精神症状/代謝障害(糖尿病)に伴う精神症状/全身感染症に伴う精神症状/全身性エリテマトーデスに伴う精神症状/インスリノーマに伴う精神症状/神経ベーチェット病/ビタミン欠乏症に伴う精神症状/低酸素脳症/肝性脳症/尿毒症性脳症/悪性腫瘍に伴う精神症状/抗NMDA受容体脳炎
15 睡眠覚醒障害
睡眠覚醒障害の基本的な治療姿勢/不眠障害/内科疾患による不眠/神経疾患による睡眠障害/精神疾患に伴う不眠/ナルコレプシー/睡眠時無呼吸症候群/時差症候群や交代勤務による概日リズム睡眠障害/睡眠覚醒相後退障害/睡眠相前進症候群(概日リズム睡眠-覚醒障害群・睡眠相前進型)/非24時間睡眠覚醒症候群/睡眠時随伴症/レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)/周期性四肢運動障害
16 てんかん
てんかんの基本的な治療姿勢/強直間代発作/欠神発作/ミオクロニー発作/単純部分発作/複雑部分発作/ウェスト症候群/レンノックス-ガストー症候群/状況関連性発作/発作に直接関連した精神症状/発作間欠期精神症状/心因性非てんかん性発作/てんかんの外科的治療/てんかんの心理・社会的治療
17 物質関連障害および嗜癖性障害群
アルコール使用障害/アルコール離脱/アルコール幻覚症/ウェルニッケ-コルサコフ症候群/鎮痛薬,鎮咳薬依存/抗不安薬・睡眠薬依存/覚醒剤依存,メチルフェニデート(リタリン)依存症/有機溶剤依存症/ヘロイン依存/大麻依存/ニコチン依存/ギャンブル障害/インターネット使用障害
18 心身症
心身症総論/消化器系の心身症/心血管系の心身症/呼吸器系の心身症/内分泌系の心身症/皮膚の心身症/神経・筋肉系の心身症/リウマチ性疾患(関節リウマチ・線維筋痛症)/頭痛
19 精神科面接,診断と各種検査
面接への導入(予診)/面接の方法/特別な配慮が必要な患者との接し方/疾患診断/精神症状評価尺度/QOL診断/ヘルピングスキルズでベストな結果を導く「SDM診療手順」/脳波検査,脳磁図/脳画像検査/神経心理学検査/心理検査/睡眠ポリグラフィ
20 薬物療法総論
薬物療法の基本/抗精神病薬/抗うつ薬/気分安定薬/抗不安薬/睡眠薬/抗パーキンソン病薬/抗てんかん薬/抗酒薬/ADHD治療薬/抗認知症薬/今後期待される抗精神病薬/薬物血中濃度/小児の薬物療法
21 精神療法とその他の治療法
認知行動療法/対人関係療法/社会生活技能訓練/力動的・分析的精神療法/集団精神療法/家族療法/森田療法/マインドフルネス/内観療法/描画療法/音楽療法/箱庭療法/心理劇/TEACCH/自律訓練法/感覚統合療法/EMDR/持続エクスポージャー療法/電気けいれん療法/経頭蓋磁気刺激/断眠療法/高照度光療法
22 精神科救急
精神科救急の診療/統合失調症/双極性障害および抑うつ障害/せん妄/物質離脱/認知症/パーソナリティ障害に対する精神科救急医療の実践/症状精神疾患の見方/精神科領域の急性薬物中毒/胸・腹部症状を伴う精神症状/神経症状を伴う精神症状/ジストニア(薬剤性)/アカシジア(薬剤性)/身体系薬剤による精神症状/自殺のポストベンション/自殺企図への精神科的対応
23 精神科リハビリテーション
精神科デイケア/作業所/障害者就業・生活支援センター/包括型地域生活支援/ケースマネジメント/退院促進・地域移行支援/幻覚・妄想症状に対する認知行動療法/日常生活の改善を目指した認知行動療法/認知リハビリテーション/うつ病の復職支援プログラム/精神科リハビリテーションの展望
24 身体合併症の治療とケア
精神科における身体合併症の問題点/精神科で注意すべき身体所見/合併症での身体管理の注意点/消化器疾患合併症/呼吸器疾患合併症/循環器疾患合併症/代謝疾患合併症/腎・泌尿器疾患合併症/外傷性疾患合併症
25 その他の臨床的諸問題
成人の自閉スペクトラム症/成人の注意欠如・多動症/自殺予防/職場のメンタルへルス/家庭と学校のメンタルヘルス/サイコオンコロジー/コンサルテーション・リエゾン/予防・早期介入/地域精神科医療・地域精神保健/アンチスティグマ/精神科関連用語をめぐる最近の動向/医療観察法と精神鑑定/精神保健福祉法と入院形態/向精神薬の臨床試験/災害に伴う精神医学的問題/医療関係者の精神保健/レジリアンスの概念/日本に住む外国人のメンタルヘルス/精神保健における暴力のリスク・アセスメント/向精神薬と運転/病名告知/強制治療
和文索引
欧文索引
書評
開く
わが国の実態に即した章立てと記述で非常に役立つ
書評者: 武田 雅俊 (藍野大学長)
本書の前身となる『今日の精神疾患治療指針』の初版は2012年に刊行され,精神科臨床の場で広く利用されてきたが,今回その待望の改訂第2版が刊行された。この間,2013年5月には米国精神医学会によるDSM-5が公表され,2014年6月にはその日本語版が発表された。本書もDSM-5に準拠した項目立てとなり,精神科臨床に役立つ項目を加えた充実した内容となり,エキスパート341人の執筆による実用書となっている。
本書の特徴の一つは,実際の臨床の場で役立つように工夫されている点である。全体が25章からなるが,最初に「1.症候,主訴からのアプローチ」として,意識障害,幻覚,記憶障害などの日常臨床で遭遇する主訴に対する対応法が概説されている。診断名に至る前の段階で主訴を手掛かりにしての治療指針・対処法が説明されているのは,役に立つ場面も多いだろう。
続いて基本的にはDSM-5に沿って疾患ごとに,疾患概念,診断のポイント,治療方針が述べられている。精神療法・心理社会的療法については何を目標にして,どのような方法で介入を行うかについての具体的な指針が書かれており,薬物療法については具体的な処方例が示されている。
ご承知のように,DSM-5は操作的な診断体系であり,精神病理学的な考慮は意識的に排除されている。DSM-5では,機能的精神障害と器質的精神障害の区分も廃止されたのであるが,本書では「13.器質性精神障害」「16.てんかん」「18.心身症」などの章立てが加えられている。「13.器質性精神障害」の章では,パーキンソン病,ハンチントン病,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症,多系統萎縮症,進行性皮質下膠症,卒中後のアパシーなどの日常臨床で遭遇する機会のある疾患が並んでいる。また,「16.てんかん」の章も充実しており,精神科医が診るてんかん患者の診療に必要な知識がまとめられている。これらの章は神経内科医との連携が必要な場合にも役立つ内容となっている。「18.心身症」の章も実用的である。心身症とは,身体疾患の中でその発症や経過に心理・社会的因子が密接に関与し,器質的ないし機能的障害が認められる病態のことを言うが,それぞれの病態において心理社会的要因の関与は様々であり,心身症の範囲も厳密には規定しにくい。このような病態について臓器別にまとめられている。
本書の最大の特徴は,このような章立ての妙にあり,わが国における精神科臨床の実態に即した章立てと記述が工夫されている点である。そのために非常に役立つ内容となっていると言えよう。
疾患単位の章に続いて,「19.精神科面接,診断と各種検査」「20.薬物療法総論」「21.精神療法とその他の治療法」「22.精神科救急」「23.精神科リハビリテーション」「24.身体合併症の治療とケア」「25.その他の臨床的諸問題」についての章立てがなされており,精神科臨床に必要な事項が説明されているのも良い。中でも秀逸なのは,「20.薬物療法総論」と「21.精神療法とその他の治療法」の部分であろう。精神科臨床一般の中で,自分が診ている患者さんに対する特定の薬物療法や精神療法が,全体の中でどのように位置づけられているのかを知っておくことは,どのような患者さんをお世話する場合にも必要なことであり,最適の治療指針を確認するためにも重要なことであろう。そのような治療の全体像を理解するためにも,この二つの章を一読しておくことを薦めたい。
書評者: 武田 雅俊 (藍野大学長)
本書の前身となる『今日の精神疾患治療指針』の初版は2012年に刊行され,精神科臨床の場で広く利用されてきたが,今回その待望の改訂第2版が刊行された。この間,2013年5月には米国精神医学会によるDSM-5が公表され,2014年6月にはその日本語版が発表された。本書もDSM-5に準拠した項目立てとなり,精神科臨床に役立つ項目を加えた充実した内容となり,エキスパート341人の執筆による実用書となっている。
本書の特徴の一つは,実際の臨床の場で役立つように工夫されている点である。全体が25章からなるが,最初に「1.症候,主訴からのアプローチ」として,意識障害,幻覚,記憶障害などの日常臨床で遭遇する主訴に対する対応法が概説されている。診断名に至る前の段階で主訴を手掛かりにしての治療指針・対処法が説明されているのは,役に立つ場面も多いだろう。
続いて基本的にはDSM-5に沿って疾患ごとに,疾患概念,診断のポイント,治療方針が述べられている。精神療法・心理社会的療法については何を目標にして,どのような方法で介入を行うかについての具体的な指針が書かれており,薬物療法については具体的な処方例が示されている。
ご承知のように,DSM-5は操作的な診断体系であり,精神病理学的な考慮は意識的に排除されている。DSM-5では,機能的精神障害と器質的精神障害の区分も廃止されたのであるが,本書では「13.器質性精神障害」「16.てんかん」「18.心身症」などの章立てが加えられている。「13.器質性精神障害」の章では,パーキンソン病,ハンチントン病,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症,多系統萎縮症,進行性皮質下膠症,卒中後のアパシーなどの日常臨床で遭遇する機会のある疾患が並んでいる。また,「16.てんかん」の章も充実しており,精神科医が診るてんかん患者の診療に必要な知識がまとめられている。これらの章は神経内科医との連携が必要な場合にも役立つ内容となっている。「18.心身症」の章も実用的である。心身症とは,身体疾患の中でその発症や経過に心理・社会的因子が密接に関与し,器質的ないし機能的障害が認められる病態のことを言うが,それぞれの病態において心理社会的要因の関与は様々であり,心身症の範囲も厳密には規定しにくい。このような病態について臓器別にまとめられている。
本書の最大の特徴は,このような章立ての妙にあり,わが国における精神科臨床の実態に即した章立てと記述が工夫されている点である。そのために非常に役立つ内容となっていると言えよう。
疾患単位の章に続いて,「19.精神科面接,診断と各種検査」「20.薬物療法総論」「21.精神療法とその他の治療法」「22.精神科救急」「23.精神科リハビリテーション」「24.身体合併症の治療とケア」「25.その他の臨床的諸問題」についての章立てがなされており,精神科臨床に必要な事項が説明されているのも良い。中でも秀逸なのは,「20.薬物療法総論」と「21.精神療法とその他の治療法」の部分であろう。精神科臨床一般の中で,自分が診ている患者さんに対する特定の薬物療法や精神療法が,全体の中でどのように位置づけられているのかを知っておくことは,どのような患者さんをお世話する場合にも必要なことであり,最適の治療指針を確認するためにも重要なことであろう。そのような治療の全体像を理解するためにも,この二つの章を一読しておくことを薦めたい。
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