統計学 第7版
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- 身近なデータや医療にも関係するデータを例に用いながら、データ収集から検定までを一通り行えるようにしています。
- 確率や確率分布など、初学者が苦手意識を持ちやすい部分については、オールカラーのイラストや例を用いて、基本的な考え方がわかりやすくなるようにしました。
- 数式の記述を最低限に抑え、考え方の理解を重視しています。
- 本文の記述のほかに、マイクロソフト社のExcelで関連する操作の解説を盛り込み、実際に統計処理をすることで理解が深まるようにしています。
- 保健統計のうち基本的なものについて、公表されている統計データの探し方、考え方について解説し、医療に関係する統計データを読み取る力がつくようにしました。
- 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ | 系統看護学講座-基礎分野 |
---|---|
著 | 高木 晴良 |
発行 | 2016年03月判型:B5頁:220 |
ISBN | 978-4-260-02189-0 |
定価 | 2,420円 (本体2,200円+税) |
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更新情報
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正誤表を掲載しました。
2023.02.16
- 序文
- 目次
- 正誤表
序文
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はしがき
長年教壇に立っているが,残念ながら統計学は学生が嫌いな教科の代表といえる。学生に聞いてみると,「計算がたくさんあってむずかしい」「検定方法がいろいろあって,どれを使えばよいかわからない」などの意見がつぎつぎと出てくる。しかし,授業が進み,試験直前になると,「わかるとけっこうおもしろい」という意見にかわる学生が増えてくる。人間は不思議なもので,最初に「むずかしい」「嫌いだ」と思うと理解しようとする思考回路が停止してしまうが,なにかのきっかけで好きになれば,どんどん覚えられるようになる。嫌いだった日本史が,好きな俳優が出ているドラマをきっかけに好きになるようなものである。統計学もきっかけがあれば簡単で楽しいものだとわかるはずである。そこで私が最初の講義で目標にするのは,まず統計学に対する先入観をなくすことである。
「日常的に存在する疑問を解決する手段,物事を判断する手段として,統計解析の考え方は必須であり,実は誰でも知らず知らずのうちに利用しているものである。たとえば,『日本ではラーメンとカレーのどちらに人気がありますか』と誰かに問われたとき,その質問に答えようとして頭の中をよぎる考え,実はそれが統計解析の考え方の基本である」
これは,私がいろいろな学校で行っている統計学に関する講義のシラバスでよく用いるフレーズであるが,本書の関連する章とともにもう少し詳しくみてみよう。
まず,質問中の「人気」について考えると,その定義はあいまいで「店舗数」「テレビの特番の数」「1か月に食べる回数」などいろいろな内容が考えられる。第2章では,このような統計データの種類・性質について述べた。
次に,「人気」を「好きと答える人の割合」と定義したとしても,すべての日本人(母集団)を調査することはできないので,適切に調査する対象(標本)を抽出する必要がある。しかし,テレビなどでは,あまり正確とはいえない方法で,学生アルバイトを集めて聞いたり,電話や街頭でアンケートを行うことも多い。第4章の前半では,これらの母集団や標本抽出法について述べた。
アンケートをしたあと,結果について,とくにワイドショーなどでは「100人中60人が『ラーメンよりカレーが好き』と答えました」と円グラフなどで示し,「日本人はカレーのほうが好きでした」と簡単に結論づけてしまうこともある。第4章の後半では「推定」について述べ,結果が本当に信用できるかどうかということについて説明した。ちなみに,「性別でカレー好きの割合に差があるか」などの話になれば,第5章で述べた「各種検定」の出番である。
前述の例について,「テレビのワイドショーの結果など,はじめから信用しない」という人もいるが,新聞や週刊誌などでもけっこういいかげんな結論が取り上げられていることがある。そのような間違った情報や数字にだまされないためにも,最低限の統計学の知識は誰でも覚えておく必要がある。
ましてや看護の世界では,根拠に基づく看護evidence-based nursing(EBN)が重要になっている。その根拠を導き出す手法が統計なので,間違った情報に基づいてケアをしないように基礎的知識として統計学を身につけてほしい。もちろん,統計学を勉強するといっても皆が専門家になるわけではないので,詳しい理論や公式を覚えることよりも,実際に検定や推定を行った結果に対して,正しいデータの解釈ができることに重きをおけばよい。
統計学というとむずかしい計算が必須と思われがちであるが,さまざまな統計解析ソフトが流通している現在では,多くの場合,自分で細かな計算を行う必要はなく,「どのように必要とされる誤差の少ないデータを収集し,どのように集計し,どのように誤用を避けて分析するのか」という基本的な考え方の流れを習得することが重要になる。
本書は,演習のマニュアルというよりも,統計ソフトの操作と統計学の専門書の橋渡しをすることを目ざして作成した。演習の前後に本書を読むと,統計ソフトの使い分け方法がよりわかりやすく頭に入るはずである。ソフトとしてはExcelの操作を取り上げたが,紙幅の関係上ごく簡単な説明になってしまったため,時間をかけて手を動かしながら理解してほしい。
また,保健統計の基礎を第6章として説明したことも本書の特徴であり,看護師国家試験などでよく取り上げられる指標について,国家試験で問われやすいポイントを押さえるように心がけた。このあたりは,ふだんから看護学生に公衆衛生学を教えたり,保健師国家試験の対策講義などを行ったりしているノウハウを盛り込んだつもりである。
なお,第3章では,前半は中学・高校のおさらいとして確率などの基礎について説明し,後半は統計学で出てくる各種の確率分布について簡単に説明した。この部分は必須ではないが,時間に余裕があるときに読んでみてほしい。
今回の全面的な改訂では時間と紙幅の限度もあり,SPSSなどの統計ソフトや疫学の基礎などの発展的な内容を盛り込めなかったことが少し残念であった。また「データ」「データ数」「95%信頼区間」などの用語について,学生のイメージしやすい表現と理論的に正しい表現を使い分けることなども改善の余地がある。ゼミナールの内容も含めて,次に改訂する機会があれば,よりよいものにしていきたいと思っている。
2016年2月
著者
長年教壇に立っているが,残念ながら統計学は学生が嫌いな教科の代表といえる。学生に聞いてみると,「計算がたくさんあってむずかしい」「検定方法がいろいろあって,どれを使えばよいかわからない」などの意見がつぎつぎと出てくる。しかし,授業が進み,試験直前になると,「わかるとけっこうおもしろい」という意見にかわる学生が増えてくる。人間は不思議なもので,最初に「むずかしい」「嫌いだ」と思うと理解しようとする思考回路が停止してしまうが,なにかのきっかけで好きになれば,どんどん覚えられるようになる。嫌いだった日本史が,好きな俳優が出ているドラマをきっかけに好きになるようなものである。統計学もきっかけがあれば簡単で楽しいものだとわかるはずである。そこで私が最初の講義で目標にするのは,まず統計学に対する先入観をなくすことである。
「日常的に存在する疑問を解決する手段,物事を判断する手段として,統計解析の考え方は必須であり,実は誰でも知らず知らずのうちに利用しているものである。たとえば,『日本ではラーメンとカレーのどちらに人気がありますか』と誰かに問われたとき,その質問に答えようとして頭の中をよぎる考え,実はそれが統計解析の考え方の基本である」
これは,私がいろいろな学校で行っている統計学に関する講義のシラバスでよく用いるフレーズであるが,本書の関連する章とともにもう少し詳しくみてみよう。
まず,質問中の「人気」について考えると,その定義はあいまいで「店舗数」「テレビの特番の数」「1か月に食べる回数」などいろいろな内容が考えられる。第2章では,このような統計データの種類・性質について述べた。
次に,「人気」を「好きと答える人の割合」と定義したとしても,すべての日本人(母集団)を調査することはできないので,適切に調査する対象(標本)を抽出する必要がある。しかし,テレビなどでは,あまり正確とはいえない方法で,学生アルバイトを集めて聞いたり,電話や街頭でアンケートを行うことも多い。第4章の前半では,これらの母集団や標本抽出法について述べた。
アンケートをしたあと,結果について,とくにワイドショーなどでは「100人中60人が『ラーメンよりカレーが好き』と答えました」と円グラフなどで示し,「日本人はカレーのほうが好きでした」と簡単に結論づけてしまうこともある。第4章の後半では「推定」について述べ,結果が本当に信用できるかどうかということについて説明した。ちなみに,「性別でカレー好きの割合に差があるか」などの話になれば,第5章で述べた「各種検定」の出番である。
前述の例について,「テレビのワイドショーの結果など,はじめから信用しない」という人もいるが,新聞や週刊誌などでもけっこういいかげんな結論が取り上げられていることがある。そのような間違った情報や数字にだまされないためにも,最低限の統計学の知識は誰でも覚えておく必要がある。
ましてや看護の世界では,根拠に基づく看護evidence-based nursing(EBN)が重要になっている。その根拠を導き出す手法が統計なので,間違った情報に基づいてケアをしないように基礎的知識として統計学を身につけてほしい。もちろん,統計学を勉強するといっても皆が専門家になるわけではないので,詳しい理論や公式を覚えることよりも,実際に検定や推定を行った結果に対して,正しいデータの解釈ができることに重きをおけばよい。
統計学というとむずかしい計算が必須と思われがちであるが,さまざまな統計解析ソフトが流通している現在では,多くの場合,自分で細かな計算を行う必要はなく,「どのように必要とされる誤差の少ないデータを収集し,どのように集計し,どのように誤用を避けて分析するのか」という基本的な考え方の流れを習得することが重要になる。
本書は,演習のマニュアルというよりも,統計ソフトの操作と統計学の専門書の橋渡しをすることを目ざして作成した。演習の前後に本書を読むと,統計ソフトの使い分け方法がよりわかりやすく頭に入るはずである。ソフトとしてはExcelの操作を取り上げたが,紙幅の関係上ごく簡単な説明になってしまったため,時間をかけて手を動かしながら理解してほしい。
また,保健統計の基礎を第6章として説明したことも本書の特徴であり,看護師国家試験などでよく取り上げられる指標について,国家試験で問われやすいポイントを押さえるように心がけた。このあたりは,ふだんから看護学生に公衆衛生学を教えたり,保健師国家試験の対策講義などを行ったりしているノウハウを盛り込んだつもりである。
なお,第3章では,前半は中学・高校のおさらいとして確率などの基礎について説明し,後半は統計学で出てくる各種の確率分布について簡単に説明した。この部分は必須ではないが,時間に余裕があるときに読んでみてほしい。
今回の全面的な改訂では時間と紙幅の限度もあり,SPSSなどの統計ソフトや疫学の基礎などの発展的な内容を盛り込めなかったことが少し残念であった。また「データ」「データ数」「95%信頼区間」などの用語について,学生のイメージしやすい表現と理論的に正しい表現を使い分けることなども改善の余地がある。ゼミナールの内容も含めて,次に改訂する機会があれば,よりよいものにしていきたいと思っている。
2016年2月
著者
目次
開く
第1章 統計学入門
A 統計学とは
1 統計学をはじめよう
2 統計学と医療・看護のかかわり
B 記述統計と推測統計
1 記述統計
2 推測統計
C 調査・研究と統計学
1 問題の設定
2 情報収集
3 調査・実験
第2章 統計データの種類とまとめ方
A 統計データの種類
1 質的データ
2 量的データ
B 統計データのまとめ方
1 質的データのまとめ方
2 量的データのまとめ方
C 統計データのグラフ表示
1 グラフの利点と作成
2 各種グラフの特徴
第3章 確率と分布
A 確率
1 単一事象の確率
2 複合事象の確率
B 順列・組み合わせ
1 順列
2 組み合わせ
C 確率分布
1 確率を関数とする考え方
2 離散型データの確率分布(離散分布)
3 連続型データの確率分布(連続分布)
4 標本分布
第4章 母集団・標本と推定
A 母集団と標本
1 母集団
2 標本
3 偶然誤差と系統誤差(バイアス)
4 中心極限定理と大数の法則
5 標本の大きさの検討
B 推定
1 点推定
2 区間推定
3 推定のための標本の大きさの検討
第5章 各種検定
A 検定の基礎知識
1 検定とは
2 検定の手順
B 1群の標本の検定
1 区間推定による平均の検定
2 母平均の検定
3 母比率の検定
C 2群の標本の検定
1 2群の平均の差の検定(t検定)
2 2群の分散の比の検定(F検定)
3 2群の順位和の差の検定
4 中央値検定
D 3群以上の標本の検定
1 3群以上の平均の差の検定(一元配置分散分析)
2 3群以上の順位和の差の検定(クラスカル・ワリス検定)
3 二元配置分散分析
4 3群以上の等分散性の検定
E 比率(割合)の検定
1 2群の母比率の検定
2 カイ二乗検定
F 相関係数の検定
1 相関分析
2 回帰分析
3 相関係数・回帰直線の検定
4 重回帰分析
5 ロジスティック回帰分析
第6章 保健統計の基礎
A おもな統計資料
1 国の統計
2 地方自治体の統計
3 世界的な統計
B 人口静態統計
1 人口に関する指標
2 労働に関する指標
3 世帯に関する統計
C 人口動態統計
1 出生に関するおもな指標
2 死亡に関するおもな指標
3 婚姻・離婚に関するおもな指標
D その他のおもな調査
1 国民生活基礎調査
2 患者調査
3 国民健康・栄養調査
4 食中毒統計・感染症発生動向調査
E 生命表
付表 本書で用いる分布表・数表
索引
A 統計学とは
1 統計学をはじめよう
2 統計学と医療・看護のかかわり
B 記述統計と推測統計
1 記述統計
2 推測統計
C 調査・研究と統計学
1 問題の設定
2 情報収集
3 調査・実験
第2章 統計データの種類とまとめ方
A 統計データの種類
1 質的データ
2 量的データ
B 統計データのまとめ方
1 質的データのまとめ方
2 量的データのまとめ方
C 統計データのグラフ表示
1 グラフの利点と作成
2 各種グラフの特徴
第3章 確率と分布
A 確率
1 単一事象の確率
2 複合事象の確率
B 順列・組み合わせ
1 順列
2 組み合わせ
C 確率分布
1 確率を関数とする考え方
2 離散型データの確率分布(離散分布)
3 連続型データの確率分布(連続分布)
4 標本分布
第4章 母集団・標本と推定
A 母集団と標本
1 母集団
2 標本
3 偶然誤差と系統誤差(バイアス)
4 中心極限定理と大数の法則
5 標本の大きさの検討
B 推定
1 点推定
2 区間推定
3 推定のための標本の大きさの検討
第5章 各種検定
A 検定の基礎知識
1 検定とは
2 検定の手順
B 1群の標本の検定
1 区間推定による平均の検定
2 母平均の検定
3 母比率の検定
C 2群の標本の検定
1 2群の平均の差の検定(t検定)
2 2群の分散の比の検定(F検定)
3 2群の順位和の差の検定
4 中央値検定
D 3群以上の標本の検定
1 3群以上の平均の差の検定(一元配置分散分析)
2 3群以上の順位和の差の検定(クラスカル・ワリス検定)
3 二元配置分散分析
4 3群以上の等分散性の検定
E 比率(割合)の検定
1 2群の母比率の検定
2 カイ二乗検定
F 相関係数の検定
1 相関分析
2 回帰分析
3 相関係数・回帰直線の検定
4 重回帰分析
5 ロジスティック回帰分析
第6章 保健統計の基礎
A おもな統計資料
1 国の統計
2 地方自治体の統計
3 世界的な統計
B 人口静態統計
1 人口に関する指標
2 労働に関する指標
3 世帯に関する統計
C 人口動態統計
1 出生に関するおもな指標
2 死亡に関するおもな指標
3 婚姻・離婚に関するおもな指標
D その他のおもな調査
1 国民生活基礎調査
2 患者調査
3 国民健康・栄養調査
4 食中毒統計・感染症発生動向調査
E 生命表
付表 本書で用いる分布表・数表
索引
正誤表
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。