CT Colonography 実践ガイドブック
ビギナーからエキスパートまで! これ1冊でCTCができる、やれる
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新しい大腸検査法として注目されるCT colonography(CTC)。通常内視鏡検査と異なり、内腔から管腔外へ、盲腸から肛門へと自由自在なその観察は大腸癌診療の新たな切り札としても大きく期待されている。「導入の敷居が高い」「実際の効果が判然としない」などの悩みをもつあなたのための、国内有数の症例数と経験をもつスタッフたちによる入門書の決定版。これ1冊でCTCができる、やれる。症例集付き。
編集 | 野崎 良一 |
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発行 | 2015年04月判型:AB変頁:240 |
ISBN | 978-4-260-02151-7 |
定価 | 4,620円 (本体4,200円+税) |
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推薦の序(山下康行/山田一隆)/序(野崎良一)
推薦の序
このたび,社会医療法人社団高野会 高野病院 副院長の野崎良一博士の編集でCT colonography(CTC)の著書が刊行されることになった.高野病院における非常に多くのCTCの経験からこのような本がまとまったことは誠に喜ばしい.高野病院が大腸疾患診療のトップの医療機関として多くの業績を挙げておられるのは全国的にも有名であるが,大腸がん検診にも積極的に取り組んでこられた.そして早くより野崎博士が中心となり積極的にCTCを取り入れられ,現在までに2,600例もの経験があるという.
欧米ではCTCを大腸癌のスクリーニングに用いようと20世紀末より盛んに研究が行われ,エビデンスも積み重ねられてきた.一方,わが国においては内視鏡の技術が高いこともあり,当初導入にはやや消極的で,最初に国立がん研究センターにCTCが導入されたのは2001年頃であった.当初は4列のマルチスライスCTが使われていたが,画質も十分とはいえず,処理速度が遅く,読影にも時間を要していた.そのため,患者さんには楽かもしれないが,医師にとっての負担(読影)はむしろ大腸ファイバーより大きく,かつ粘膜の微細病変は苦手ということもあり,正直言ってわが国でCTCが市民権を得るかどうか,私自身内心懐疑的であった.しかし,そのような困難な状況のなか,高野病院では地道に症例を積み重ね,技術を磨かれていかれた.その後,マルチスライスCTの多列化,低被曝化,ワークステーションの改良なども進み,2012年には診療報酬の収載もされ,いよいよわが国でも臨床や検診の第一線に踊り出さんとしている.
しかし,現在においてもCTCを施行するにあたっては多くの壁を感じている施設が少なくないと聞く.それはCTCが通常のCTと異なり,技術集約的な検査法であることによる.大半は診療放射線技師の仕事であるが,複雑なプロセスゆえ,一般の技師には敷居が高いのもやむを得まい.本書はこれからCTCを導入しようという施設にはうってつけのガイドブックとなり得よう.CTCの一般的知識のみならず,細かなノウハウが満載されている.これまで,このように現場の感覚でCTCについて詳述している本はない.私自身,本書の完成度の高さに驚いた.これも高野病院スタッフのCTCを広めて,大腸疾患を根絶しようという情熱の結実であろう.
本書はこの10余年間,CTCを用いてよりレベルの高い大腸疾患の診療に取り組んでこられた野崎博士をはじめとする高野病院のCTCのスタッフの会心の一冊である.ぜひ,丹念に読破して,日常診療に活かしてほしい.本書がわが国のCTC普及の礎になることを願ってやまない.
近年,わが国における大腸癌の罹患率と死亡率は増加しており,がん検診による予防とともに,低侵襲で適切な診断方法の向上が必要となっています.さらに,わが国において著明な増加がみられる炎症性腸疾患は,若年発症に対する早期診断の必要性とともに,治療方法の多様化に伴う高度な画像診断の重要性が高まっています.すなわち,下部消化管疾患に対する検査法として,低侵襲・被曝低減化された高度な画像診断技術が求められているのが現状です.そのような背景において,multidetector-row CTを用いた大腸の三次元的診断法であるCT colonography(CTC)が国際的に浸透しつつあり,三次元画像としての仮想内視鏡像・仮想注腸像・腸管展開像が基本となり,血管画像などを含めた画期的な多断面再構成像がその特徴とされています.CTCの有用性に関する報告の一例として,CTCによる大腸腫瘍の精査における大腸内視鏡検査との大規模非劣性試験が欧米諸国とわが国において行われ,その非劣性が証明されています.今後,各種の腸疾患における高度な画像診断技術としてCTCの重要性が期待されています.
高野病院では2002年よりCTCを導入させていただきましたが,それは野崎良一先生をはじめとする消化器内科と診療放射線技師(有馬浩美・伊牟田秀隆・前﨑孝之・松本徹也・太田絢子)の先生方による発案から始まりました.さらに,熊本大学大学院生命科学研究部放射線診断学分野教授の山下康行先生による体系的御指導とともに,同分野助教の伊牟田真功先生による技術的指導と読影・診断によって発展し,CTCにおける指導的施設としての立場を確立することができました.皆様に対して,深く感謝申し上げます.
その後,2012年にCTCに対する保険適用が認められ,現在では多くの施設でCTCが導入されつつあります.しかし,CTC検査における前処置法,撮影法ならびに画像処理・読影法に関して,国際的に標準化されたガイドラインは不明瞭であるのが現状です.そのような中で,今回の『CT Colonography実践ガイドブック』の出版は,大腸癌をはじめとする下部消化管疾患の診断・治療に大きく貢献することと思います.そして,本書の意図が他の領域疾患の診断にも活用され,さらに飛躍した三次元画像診断の発展が望まれます.
近年,マルチスライスCTによる消化管3D-CT検査,とりわけ大腸のCT colonography(CTC)が新しい大腸検査法として注目されている.
十数年前に,CTにより再構成されたfly through法(virtual endoscopy;VE)の動画を最初にみたときの衝撃は今でも鮮明に覚えている.4列のCTによるVEであったが,実際の大腸内視鏡と同じように,あるいはそれ以上に,大腸の内腔をいとも簡単に空を飛ぶかのように進んでいった.大腸内視鏡のような熟達した技を全く必要としない.しかも,肛門から盲腸へ,盲腸から肛門へ,大腸の内腔から管腔外へと自由自在である.通常の内視鏡は,肛門から盲腸以外の観察は,直腸,上行結腸など反転観察を除き絶対にできない観察である.あれ以来,CTCに魅了され続けている.
高野病院は国立がん研究センターに遅れることわずか1年後の2002年,わが国のCTC黎明期というべき時期から4列のマルチスライスCTを導入し,CTCを大腸癌診療に臨床応用してきた(図).医師(消化器内視鏡医,放射線科医)と診療放射線技師が一緒になって,どこに出しても恥ずかしくないCTCの画像診断レベルまで一から地道な研鑽を積み上げてきた.本ガイドブックは,その成果に基づいた医師と診療放射線技師のコラボレーションによるCTCの本格的な実践書である.
図 高野病院のCT colonography の経緯 2012年に大腸CT撮影加算が診療報酬に承認され,CTCを大腸癌診療へ導入する施設が増えている.一部の病院,検診機関では大腸がん検診として実施されるようになってきた.一方,「CTCを導入したいがどうしたらよいかわからない」,「前処置をどうしたらよいか?」,「64列のCT装置も用いてCTCを行っているが,診断に耐えうる画像が構築できない」,「大腸癌術前検査としてCTCによる術前シミュレーションを行いたいが,撮影手順,画像作成の仕方がよくわからない」などの声をよく耳にする.CTCはまだまだ一部専門機関で行われている敷居の高い検査というのが世間の一般的評価といえそうである.
本ガイドブックではCTCの敷居を低くし,腹部CT検査ができる施設であればどこでも,CTCの経験がなくても高野病院と同レベルの質の高いCTCが実施できるようになることを目的としている.われわれがこれまで培ってきたCTCのノウハウ,コツを余すところなく公開した.本ガイドブックの手順通りに前処置から画像作成まで行っていただければ,今日から,診断に十分耐えうる質の高いCTC画像が得られ,CTCの素晴らしさが実感できるものと確信している.
本ガイドブックの核心というべき第2章「スクリーニングのCT colonography」と第3章「大腸癌術前症例のCT colonography」の多くは診療放射線技師の手によるものである.現場でCTCの最前線に立って,一番汗をかいているのが技師諸君である.技師ならではのきめ細かい技術的なコツと工夫が余すところなく述べられている.CTの業務に直接タッチしている放射線技師,医師の方々にとって必読の項目である.目からうろこが落ちる内容がちりばめられており,ビギナーからエキスパートまで役立つ内容であること間違いなしと自負している.
第1章「CT colonographyの概説」は熊本大学大学院生命科学研究部放射線診断学分野助教 伊牟田真功先生に担当していただいた.伊牟田先生はCTCのスペシャリストで,CTC導入当初から技術的指導,読影をお願いしている.理論的裏付け,検査法としての診断精度の評価なくしてCTCを推進していくことはできない.学問的な根拠があってはじめて臨床,検診いずれに対しても有用な検査法として確固たるものとなる.「CTCが適応できる範囲は?」,「本当に優れた大腸検査法なのか?」といった読者の質問・疑問に十分応えられる内容となっている.ぜひ,一読していただきたい.
第4章の「大腸内視鏡挿入困難例に対するCT colonography」は,大腸癌術前検査に次いで臨床応用されている内視鏡挿入困難例を取り上げた.自験例を提示しながらわかりやすく解説した.
第5章「炎症性腸疾患に対するCT colonography」では,わが国で毎年患者数が増加している炎症性腸疾患(IBD)のうち潰瘍性大腸炎,クローン病に焦点をあててCTCの有用性を述べた.わが国では炎症性腸疾患へのCTCによるアプローチは一部の専門機関で行われているにすぎない.しかし,診断,治療評価の有力な手段として,この分野におけるCTCの役割は今後必ずや増してくると思われるため,1つの章として紙面を割いて解説した.
第6章「大腸がん検診に対するCT colonography」では,CTCの検診としての意義,導入にあたっての課題などを踏み込んで解説した.わが国では,とりわけがん検診の領域で,臨床と検診が混同されて一緒くたに論じられる傾向があることは否めない.CTCでもしかりである.一読いただければ「がん検診の目的とは?」,「どう使い分けるか?」といった疑問に対する答えが得られよう.
まだまだ書き足りない部分や不備があることは重々承知している.読者の忌憚のない意見をお聞かせ願えれば幸甚である.
最後に,終始厳しい中にも温かくご指導いただいた,CT研究の世界的な第一人者である熊本大学大学院生命科学研究部放射線診断学分野教授 山下康行先生,わが国を代表する大腸外科医である大腸肛門病センター高野病院院長 山田一隆先生に深甚なる御礼を申し上げる.本ガイドブックの執筆に際し,快くご協力いただいたCTC関連の各社に感謝を申し上げる.企画の段階から発刊まで叱咤激励と的確なアドバイスをいただいた医学書院 三橋輝氏,能藤久臣氏に敬意を表する.彼らの尽力なくして本書は誕生しなかったといっても過言ではない.
それではバーチャルのCTCの世界へ出発しよう.
2015年3月
推薦の序
このたび,社会医療法人社団高野会 高野病院 副院長の野崎良一博士の編集でCT colonography(CTC)の著書が刊行されることになった.高野病院における非常に多くのCTCの経験からこのような本がまとまったことは誠に喜ばしい.高野病院が大腸疾患診療のトップの医療機関として多くの業績を挙げておられるのは全国的にも有名であるが,大腸がん検診にも積極的に取り組んでこられた.そして早くより野崎博士が中心となり積極的にCTCを取り入れられ,現在までに2,600例もの経験があるという.
欧米ではCTCを大腸癌のスクリーニングに用いようと20世紀末より盛んに研究が行われ,エビデンスも積み重ねられてきた.一方,わが国においては内視鏡の技術が高いこともあり,当初導入にはやや消極的で,最初に国立がん研究センターにCTCが導入されたのは2001年頃であった.当初は4列のマルチスライスCTが使われていたが,画質も十分とはいえず,処理速度が遅く,読影にも時間を要していた.そのため,患者さんには楽かもしれないが,医師にとっての負担(読影)はむしろ大腸ファイバーより大きく,かつ粘膜の微細病変は苦手ということもあり,正直言ってわが国でCTCが市民権を得るかどうか,私自身内心懐疑的であった.しかし,そのような困難な状況のなか,高野病院では地道に症例を積み重ね,技術を磨かれていかれた.その後,マルチスライスCTの多列化,低被曝化,ワークステーションの改良なども進み,2012年には診療報酬の収載もされ,いよいよわが国でも臨床や検診の第一線に踊り出さんとしている.
しかし,現在においてもCTCを施行するにあたっては多くの壁を感じている施設が少なくないと聞く.それはCTCが通常のCTと異なり,技術集約的な検査法であることによる.大半は診療放射線技師の仕事であるが,複雑なプロセスゆえ,一般の技師には敷居が高いのもやむを得まい.本書はこれからCTCを導入しようという施設にはうってつけのガイドブックとなり得よう.CTCの一般的知識のみならず,細かなノウハウが満載されている.これまで,このように現場の感覚でCTCについて詳述している本はない.私自身,本書の完成度の高さに驚いた.これも高野病院スタッフのCTCを広めて,大腸疾患を根絶しようという情熱の結実であろう.
本書はこの10余年間,CTCを用いてよりレベルの高い大腸疾患の診療に取り組んでこられた野崎博士をはじめとする高野病院のCTCのスタッフの会心の一冊である.ぜひ,丹念に読破して,日常診療に活かしてほしい.本書がわが国のCTC普及の礎になることを願ってやまない.
熊本大学大学院生命科学研究部 放射線診断学分野 教授 山下康行
推薦の序近年,わが国における大腸癌の罹患率と死亡率は増加しており,がん検診による予防とともに,低侵襲で適切な診断方法の向上が必要となっています.さらに,わが国において著明な増加がみられる炎症性腸疾患は,若年発症に対する早期診断の必要性とともに,治療方法の多様化に伴う高度な画像診断の重要性が高まっています.すなわち,下部消化管疾患に対する検査法として,低侵襲・被曝低減化された高度な画像診断技術が求められているのが現状です.そのような背景において,multidetector-row CTを用いた大腸の三次元的診断法であるCT colonography(CTC)が国際的に浸透しつつあり,三次元画像としての仮想内視鏡像・仮想注腸像・腸管展開像が基本となり,血管画像などを含めた画期的な多断面再構成像がその特徴とされています.CTCの有用性に関する報告の一例として,CTCによる大腸腫瘍の精査における大腸内視鏡検査との大規模非劣性試験が欧米諸国とわが国において行われ,その非劣性が証明されています.今後,各種の腸疾患における高度な画像診断技術としてCTCの重要性が期待されています.
高野病院では2002年よりCTCを導入させていただきましたが,それは野崎良一先生をはじめとする消化器内科と診療放射線技師(有馬浩美・伊牟田秀隆・前﨑孝之・松本徹也・太田絢子)の先生方による発案から始まりました.さらに,熊本大学大学院生命科学研究部放射線診断学分野教授の山下康行先生による体系的御指導とともに,同分野助教の伊牟田真功先生による技術的指導と読影・診断によって発展し,CTCにおける指導的施設としての立場を確立することができました.皆様に対して,深く感謝申し上げます.
その後,2012年にCTCに対する保険適用が認められ,現在では多くの施設でCTCが導入されつつあります.しかし,CTC検査における前処置法,撮影法ならびに画像処理・読影法に関して,国際的に標準化されたガイドラインは不明瞭であるのが現状です.そのような中で,今回の『CT Colonography実践ガイドブック』の出版は,大腸癌をはじめとする下部消化管疾患の診断・治療に大きく貢献することと思います.そして,本書の意図が他の領域疾患の診断にも活用され,さらに飛躍した三次元画像診断の発展が望まれます.
社会医療法人社団高野会 理事長/大腸肛門病センター高野病院 院長 山田一隆
序近年,マルチスライスCTによる消化管3D-CT検査,とりわけ大腸のCT colonography(CTC)が新しい大腸検査法として注目されている.
十数年前に,CTにより再構成されたfly through法(virtual endoscopy;VE)の動画を最初にみたときの衝撃は今でも鮮明に覚えている.4列のCTによるVEであったが,実際の大腸内視鏡と同じように,あるいはそれ以上に,大腸の内腔をいとも簡単に空を飛ぶかのように進んでいった.大腸内視鏡のような熟達した技を全く必要としない.しかも,肛門から盲腸へ,盲腸から肛門へ,大腸の内腔から管腔外へと自由自在である.通常の内視鏡は,肛門から盲腸以外の観察は,直腸,上行結腸など反転観察を除き絶対にできない観察である.あれ以来,CTCに魅了され続けている.
高野病院は国立がん研究センターに遅れることわずか1年後の2002年,わが国のCTC黎明期というべき時期から4列のマルチスライスCTを導入し,CTCを大腸癌診療に臨床応用してきた(図).医師(消化器内視鏡医,放射線科医)と診療放射線技師が一緒になって,どこに出しても恥ずかしくないCTCの画像診断レベルまで一から地道な研鑽を積み上げてきた.本ガイドブックは,その成果に基づいた医師と診療放射線技師のコラボレーションによるCTCの本格的な実践書である.
2012年 | 10月 | 高野病院 東芝Aquilion CXL(64列)導入 |
2012年 | 4月 | CTC保険収載(大腸CT撮影加算) |
2011年 | 5月 | 術前シミュレーション画像開始 |
2006年 | 10月 | コンピュータ支援検出(CAD)の臨床評価 |
2004年 | 4月 | 動物モデルによる低線量撮影実験 |
2003年 | 1月 | 低用量前処置開始 |
2002年 | 10月 | 高野病院 4列MDCT導入 → CTC臨床応用開始 |
2001年 | 国立がん研究センター 4列MDCT導入 | |
1999年 | マルチスライスCT(MDCT)登場 | |
1994年 | ViningによるヘリカルCTを用いた三次元表示の報告 |
図 高野病院のCT colonography の経緯
本ガイドブックではCTCの敷居を低くし,腹部CT検査ができる施設であればどこでも,CTCの経験がなくても高野病院と同レベルの質の高いCTCが実施できるようになることを目的としている.われわれがこれまで培ってきたCTCのノウハウ,コツを余すところなく公開した.本ガイドブックの手順通りに前処置から画像作成まで行っていただければ,今日から,診断に十分耐えうる質の高いCTC画像が得られ,CTCの素晴らしさが実感できるものと確信している.
本ガイドブックの核心というべき第2章「スクリーニングのCT colonography」と第3章「大腸癌術前症例のCT colonography」の多くは診療放射線技師の手によるものである.現場でCTCの最前線に立って,一番汗をかいているのが技師諸君である.技師ならではのきめ細かい技術的なコツと工夫が余すところなく述べられている.CTの業務に直接タッチしている放射線技師,医師の方々にとって必読の項目である.目からうろこが落ちる内容がちりばめられており,ビギナーからエキスパートまで役立つ内容であること間違いなしと自負している.
第1章「CT colonographyの概説」は熊本大学大学院生命科学研究部放射線診断学分野助教 伊牟田真功先生に担当していただいた.伊牟田先生はCTCのスペシャリストで,CTC導入当初から技術的指導,読影をお願いしている.理論的裏付け,検査法としての診断精度の評価なくしてCTCを推進していくことはできない.学問的な根拠があってはじめて臨床,検診いずれに対しても有用な検査法として確固たるものとなる.「CTCが適応できる範囲は?」,「本当に優れた大腸検査法なのか?」といった読者の質問・疑問に十分応えられる内容となっている.ぜひ,一読していただきたい.
第4章の「大腸内視鏡挿入困難例に対するCT colonography」は,大腸癌術前検査に次いで臨床応用されている内視鏡挿入困難例を取り上げた.自験例を提示しながらわかりやすく解説した.
第5章「炎症性腸疾患に対するCT colonography」では,わが国で毎年患者数が増加している炎症性腸疾患(IBD)のうち潰瘍性大腸炎,クローン病に焦点をあててCTCの有用性を述べた.わが国では炎症性腸疾患へのCTCによるアプローチは一部の専門機関で行われているにすぎない.しかし,診断,治療評価の有力な手段として,この分野におけるCTCの役割は今後必ずや増してくると思われるため,1つの章として紙面を割いて解説した.
第6章「大腸がん検診に対するCT colonography」では,CTCの検診としての意義,導入にあたっての課題などを踏み込んで解説した.わが国では,とりわけがん検診の領域で,臨床と検診が混同されて一緒くたに論じられる傾向があることは否めない.CTCでもしかりである.一読いただければ「がん検診の目的とは?」,「どう使い分けるか?」といった疑問に対する答えが得られよう.
まだまだ書き足りない部分や不備があることは重々承知している.読者の忌憚のない意見をお聞かせ願えれば幸甚である.
最後に,終始厳しい中にも温かくご指導いただいた,CT研究の世界的な第一人者である熊本大学大学院生命科学研究部放射線診断学分野教授 山下康行先生,わが国を代表する大腸外科医である大腸肛門病センター高野病院院長 山田一隆先生に深甚なる御礼を申し上げる.本ガイドブックの執筆に際し,快くご協力いただいたCTC関連の各社に感謝を申し上げる.企画の段階から発刊まで叱咤激励と的確なアドバイスをいただいた医学書院 三橋輝氏,能藤久臣氏に敬意を表する.彼らの尽力なくして本書は誕生しなかったといっても過言ではない.
それではバーチャルのCTCの世界へ出発しよう.
2015年3月
野崎良一
目次
開く
推薦の序(山下康行)
推薦の序(山田一隆)
序
第1章 CT colonographyの概説
CT colonographyの始まりと原理
Ⅰ.CTCの原理,概要
Ⅱ.CTCの歴史-欧米と日本の差
CT colonographyの診断精度
Ⅰ.診断精度の検証-海外
Ⅱ.診断精度の検証-日本
Ⅲ.表面型病変に対する診断能
Ⅳ.コンピュータ支援検出(CAD)
第2章 スクリーニングのCT colonography
大腸の基礎知識
Ⅰ.大腸癌の発癌経路
Ⅱ.大腸ポリープの担癌率
Ⅲ.大腸ポリープ摘除後のサーベイランス
Ⅳ.大腸ポリープの形態
Ⅴ.大腸の解剖とCTCでの見方
スクリーニングでの前処置
Ⅰ.大腸スクリーニング検査の前処置
Ⅱ.CT colonographyの前処置
1 低用量腸管前処置法(前日前処置)
2 低用量腸管前処置法(当日前処置)
fecal taggingを用いた低用量腸管前処置法に対するQ&A
被曝低減技術を用いた低線量化
Ⅰ.被曝低減技術
1 自動X線曝射制御機構(AEC)
2 逐次近似画像再構成法(IR)
Ⅱ.スクリーニングにおける被曝低減
Ⅲ.炎症性腸疾患における被曝低減
スクリーニング撮影プロトコル
Ⅰ.CTCに使用するCT装置
Ⅱ.撮影の低線量化への取り組み
Ⅲ.低線量での病変描出能とその実例
1 実際のポリープ検出能
2 被曝線量と体格の相関
3 自動露出機構による調節
Ⅳ.撮影条件
腸管拡張法
Ⅰ.CT colonographyにおける腸管拡張
Ⅱ.自動炭酸ガス送気装置を用いた当院のCTCの検査方法
前処置/挿入/送気・仰臥位撮影/腹臥位撮影/腸管拡張の評価
Ⅲ.各社の自動炭酸ガス送気装置による腸管拡張
1 プロトCO2L®(エーディア)
2 エニマCO2®(堀井薬品工業)
3 KSC-130®(杏林システマック)
画像処理方法および読影法
Ⅰ.画像処理
1 画像処理によって作成されるCTC画像
2 CTCの読影
3 エレクトロニッククレンジング(EC)
4 大腸コンピュータ支援検出(CAD)
5 画像の保存と一次読影レポート
Ⅱ.ziostation2(ziosoft,AMIN)の一次読影法
1 一次読影で用いる画像
2 air imageによる大腸全体の読影
3 2体位同時表示の画面構成と画面設定
4 VGPによる病変の拾い上げ
5 VEとVE+MPRによる病変の拾い上げ
6 EC機能オフによるVE+MPRによる観察
7 画像の保存と一次読影レポート
Ⅲ.Advantage Workstation VolumeShare 5(GEヘルスケアジャパン)の一次読影法
1 一次読影で用いる画像
2 CTC再構成の手順
air imageを自動抽出する/2体位同時表示の画面構成と画面設定/
Colon VCARで病変を拾い上げる/Colon VCARによる病変検出能
3 腫瘍性病変の確認
VEによる病変のチェック/2D画像で観察する
4 画像の保存と一次読影レポート
Ⅳ.SYNAPSE VINCENT Ver 4.1(富士フイルムメディカル)の一次読影法
1 一次読影で用いる画像
2 大腸抽出と操作の流れ
3 3D表示
4 展開ビューを活用した観察方法
5 2体位比較表示による観察
6 内視鏡ビュー,キューブビューによる観察
7 画像の保存と一次読影レポート
付図:さまざまな病変のColon VCAR画像
腸管外病変
Ⅰ.CT colonographyの利点
Ⅱ.腸管外病変の取り扱い
Ⅲ.スクリーニングのCTCにおける腸管外病変の検出
Ⅳ.自験例における腸管外病変
Ⅴ.今後の課題
第3章 大腸癌術前症例のCT colonography
大腸癌術前での前処置
Ⅰ.術前CTC検査を単独で実施する場合
Ⅱ.TCSと同日に術前CTC検査を実施する場合
大腸癌術前撮影プロトコル
Ⅰ.高野病院のプロトコル
Ⅱ.カテーテル留置~仰臥位撮影
Ⅲ.腹臥位撮影
大腸癌術前シミュレーション画像作成
Ⅰ.腸管画像処理方法
1 直腸癌(肛門癌も含む)
2 S状結腸~下行結腸~左側横行結腸の癌
3 右側横行結腸~上行結腸~盲腸の癌
Ⅱ.大腸癌の血管画像処理方法
1 直腸(肛門も含む)~S状結腸の癌
2 下行結腸~左側横行結腸の癌
3 右側横行結腸~上行結腸~盲腸の癌
Ⅲ.画像の合成と保存画像
大腸癌術前(深達度)診断
Ⅰ.2D画像(axial image,MPR)
Ⅱ.仮想内視鏡
Ⅲ.仮想注腸造影
第4章 大腸内視鏡挿入困難例に対するCT colonography
大腸内視鏡挿入困難例に対するCT colonography
Ⅰ.TCS不成功例の現状
Ⅱ.TCS不成功例に対するCTCの検査手順
Ⅲ.腸管狭窄以外に起因するTCS不成功例に対するCTCの診断精度
1 挿入困難の理由および内視鏡到達部位
2 TCS不成功例に対するCTCの画像の評価
3 病変単位の診断精度
4 患者単位の診断精度
Ⅳ.大腸癌狭窄によるTCS不成功例
1 病変単位の診断精度
2 患者単位の診断精度
3 TCS不成功例に対するCTCの課題
Ⅴ.TCS不成功例に対してCTCが有用であった興味ある症例
第5章 炎症性腸疾患に対するCT colonography
潰瘍性大腸炎とクローン病
Ⅰ.IBDにおけるCTCの実際
前処置/手順/CTECの場合/撮影/読影
Ⅱ.潰瘍性大腸炎に対するCTCの意義
Ⅲ.クローン病に対するCTCおよびCTECの意義
1 CTCおよびCTECの特徴
2 クローン病に対するCTECの病変描出能
3 CTECの症例提示
Ⅳ.CT enterography
Ⅴ.CDにおけるcurved MPRの有効性
1 curved MPRとは
2 当院でのcurved MPRの臨床成績
3 curved MPRの画像作成の手順
撮影条件/腸管の表示/予想される小腸病変と手術標本との対比
Ⅵ.IBDにおける今後の課題
第6章 大腸がん検診に対するCT colonography
大腸がん検診に対するCT colonography
Ⅰ.大腸がん検診の現状
Ⅱ.CTCの大腸がん検診としての有効性
1 大腸内視鏡との比較
2 注腸X線との比較
3 大腸がん検診の精密検査法としての評価
Ⅲ.CTCの処理能力
Ⅳ.CTCの偶発症
Ⅴ.腸管外病変の取り扱い
Ⅵ.大腸がん検診へのCTC導入に向けての提言
Ⅶ.CTCへの期待
第7章 症例集
あとがき
索引
推薦の序(山田一隆)
序
第1章 CT colonographyの概説
CT colonographyの始まりと原理
Ⅰ.CTCの原理,概要
Ⅱ.CTCの歴史-欧米と日本の差
CT colonographyの診断精度
Ⅰ.診断精度の検証-海外
Ⅱ.診断精度の検証-日本
Ⅲ.表面型病変に対する診断能
Ⅳ.コンピュータ支援検出(CAD)
第2章 スクリーニングのCT colonography
大腸の基礎知識
Ⅰ.大腸癌の発癌経路
Ⅱ.大腸ポリープの担癌率
Ⅲ.大腸ポリープ摘除後のサーベイランス
Ⅳ.大腸ポリープの形態
Ⅴ.大腸の解剖とCTCでの見方
スクリーニングでの前処置
Ⅰ.大腸スクリーニング検査の前処置
Ⅱ.CT colonographyの前処置
1 低用量腸管前処置法(前日前処置)
2 低用量腸管前処置法(当日前処置)
fecal taggingを用いた低用量腸管前処置法に対するQ&A
被曝低減技術を用いた低線量化
Ⅰ.被曝低減技術
1 自動X線曝射制御機構(AEC)
2 逐次近似画像再構成法(IR)
Ⅱ.スクリーニングにおける被曝低減
Ⅲ.炎症性腸疾患における被曝低減
スクリーニング撮影プロトコル
Ⅰ.CTCに使用するCT装置
Ⅱ.撮影の低線量化への取り組み
Ⅲ.低線量での病変描出能とその実例
1 実際のポリープ検出能
2 被曝線量と体格の相関
3 自動露出機構による調節
Ⅳ.撮影条件
腸管拡張法
Ⅰ.CT colonographyにおける腸管拡張
Ⅱ.自動炭酸ガス送気装置を用いた当院のCTCの検査方法
前処置/挿入/送気・仰臥位撮影/腹臥位撮影/腸管拡張の評価
Ⅲ.各社の自動炭酸ガス送気装置による腸管拡張
1 プロトCO2L®(エーディア)
2 エニマCO2®(堀井薬品工業)
3 KSC-130®(杏林システマック)
画像処理方法および読影法
Ⅰ.画像処理
1 画像処理によって作成されるCTC画像
2 CTCの読影
3 エレクトロニッククレンジング(EC)
4 大腸コンピュータ支援検出(CAD)
5 画像の保存と一次読影レポート
Ⅱ.ziostation2(ziosoft,AMIN)の一次読影法
1 一次読影で用いる画像
2 air imageによる大腸全体の読影
3 2体位同時表示の画面構成と画面設定
4 VGPによる病変の拾い上げ
5 VEとVE+MPRによる病変の拾い上げ
6 EC機能オフによるVE+MPRによる観察
7 画像の保存と一次読影レポート
Ⅲ.Advantage Workstation VolumeShare 5(GEヘルスケアジャパン)の一次読影法
1 一次読影で用いる画像
2 CTC再構成の手順
air imageを自動抽出する/2体位同時表示の画面構成と画面設定/
Colon VCARで病変を拾い上げる/Colon VCARによる病変検出能
3 腫瘍性病変の確認
VEによる病変のチェック/2D画像で観察する
4 画像の保存と一次読影レポート
Ⅳ.SYNAPSE VINCENT Ver 4.1(富士フイルムメディカル)の一次読影法
1 一次読影で用いる画像
2 大腸抽出と操作の流れ
3 3D表示
4 展開ビューを活用した観察方法
5 2体位比較表示による観察
6 内視鏡ビュー,キューブビューによる観察
7 画像の保存と一次読影レポート
付図:さまざまな病変のColon VCAR画像
腸管外病変
Ⅰ.CT colonographyの利点
Ⅱ.腸管外病変の取り扱い
Ⅲ.スクリーニングのCTCにおける腸管外病変の検出
Ⅳ.自験例における腸管外病変
Ⅴ.今後の課題
第3章 大腸癌術前症例のCT colonography
大腸癌術前での前処置
Ⅰ.術前CTC検査を単独で実施する場合
Ⅱ.TCSと同日に術前CTC検査を実施する場合
大腸癌術前撮影プロトコル
Ⅰ.高野病院のプロトコル
Ⅱ.カテーテル留置~仰臥位撮影
Ⅲ.腹臥位撮影
大腸癌術前シミュレーション画像作成
Ⅰ.腸管画像処理方法
1 直腸癌(肛門癌も含む)
2 S状結腸~下行結腸~左側横行結腸の癌
3 右側横行結腸~上行結腸~盲腸の癌
Ⅱ.大腸癌の血管画像処理方法
1 直腸(肛門も含む)~S状結腸の癌
2 下行結腸~左側横行結腸の癌
3 右側横行結腸~上行結腸~盲腸の癌
Ⅲ.画像の合成と保存画像
大腸癌術前(深達度)診断
Ⅰ.2D画像(axial image,MPR)
Ⅱ.仮想内視鏡
Ⅲ.仮想注腸造影
第4章 大腸内視鏡挿入困難例に対するCT colonography
大腸内視鏡挿入困難例に対するCT colonography
Ⅰ.TCS不成功例の現状
Ⅱ.TCS不成功例に対するCTCの検査手順
Ⅲ.腸管狭窄以外に起因するTCS不成功例に対するCTCの診断精度
1 挿入困難の理由および内視鏡到達部位
2 TCS不成功例に対するCTCの画像の評価
3 病変単位の診断精度
4 患者単位の診断精度
Ⅳ.大腸癌狭窄によるTCS不成功例
1 病変単位の診断精度
2 患者単位の診断精度
3 TCS不成功例に対するCTCの課題
Ⅴ.TCS不成功例に対してCTCが有用であった興味ある症例
第5章 炎症性腸疾患に対するCT colonography
潰瘍性大腸炎とクローン病
Ⅰ.IBDにおけるCTCの実際
前処置/手順/CTECの場合/撮影/読影
Ⅱ.潰瘍性大腸炎に対するCTCの意義
Ⅲ.クローン病に対するCTCおよびCTECの意義
1 CTCおよびCTECの特徴
2 クローン病に対するCTECの病変描出能
3 CTECの症例提示
Ⅳ.CT enterography
Ⅴ.CDにおけるcurved MPRの有効性
1 curved MPRとは
2 当院でのcurved MPRの臨床成績
3 curved MPRの画像作成の手順
撮影条件/腸管の表示/予想される小腸病変と手術標本との対比
Ⅵ.IBDにおける今後の課題
第6章 大腸がん検診に対するCT colonography
大腸がん検診に対するCT colonography
Ⅰ.大腸がん検診の現状
Ⅱ.CTCの大腸がん検診としての有効性
1 大腸内視鏡との比較
2 注腸X線との比較
3 大腸がん検診の精密検査法としての評価
Ⅲ.CTCの処理能力
Ⅳ.CTCの偶発症
Ⅴ.腸管外病変の取り扱い
Ⅵ.大腸がん検診へのCTC導入に向けての提言
Ⅶ.CTCへの期待
第7章 症例集
Ⅰp型ポリープ | Ⅰp型ポリープ | Ⅰsp型ポリープ |
Ⅰs型ポリープ | Ⅰs型ポリープ | Ⅱa型ポリープ |
Ⅱa+Ⅱc型早期癌 | Ⅱa+Ⅱc型早期癌 | Ⅱa+Ⅱc型早期癌 |
LST-G | LST-G | LST-G |
LST-G | LST-NG | Ⅱa型早期癌(LST-NG) |
絨毛腫瘍 | 家族性大腸腺腫症 | 1型進行癌 |
1型進行癌 | 2型進行癌 | 2型進行癌 |
2型(全周性)進行癌 | 3型進行癌 | 3型進行癌 |
3型進行癌 | 4型進行癌 | 直腸カルチノイド |
脂肪腫 | 悪性リンパ腫 | 悪性黒色腫 |
膵癌の大腸浸潤 | 盲腸癌による腸重積 | Cronkhite-Canada症候群 |
直腸粘膜脱症候群 | 大腸憩室症 | 腸管嚢胞状気腫症 |
腸管嚢胞状気腫症 | 横隔膜ヘルニア | 左鼠径ヘルニア |
消化管間質腫瘍(GIST) | 虚血性腸炎 | 左鼠径ヘルニア部のS状結腸癌 |
腸結核 |
あとがき
索引
更新情報
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