放射線治療技術標準テキスト

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放射線治療専門放射線技師の認定試験に対応した公式テキスト。機器の進歩に伴う最新知識を網羅し、認定講習会のみならず、取得後の知識の再確認のためにも最適。
監修 日本放射線治療専門放射線技師認定機構
編集 奥村 雅彦 / 小口 宏 / 保科 正夫
発行 2019年01月判型:B5頁:472
ISBN 978-4-260-03605-4
定価 7,700円 (本体7,000円+税)

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推薦のことば(渡邊良晴)/序 監修を代表して(奥村雅彦)/序 編集を代表して(保科正夫)

推薦のことば

 高齢化の進んでいるわが国では,がん罹患者数が急速に増加している.このため,がん対策は急務とされ,がん対策基本法のもと,その予防と治療に多くの労力が注がれている.がん治療の一翼を担っている放射線治療も例外ではなく,近年の治療技術の進歩には目を見張るものがある.現在,国内には約900の治療施設があり,その臨床現場で治療に携わっている診療放射線技師も2,500人以上になると思われる.
 臨床現場で患者さんに放射線を照射する業務は,線量測定や治療装置のQA/QC,MUの計算,照射対象疾患に対する知識,関連機器の取り扱いから患者さんへの対応など幅の広い知識と技術が求められる.これは別な言い方をすると,上記のような放射線治療に関する知識や技術をもたない人が,治療を担当するとリスクを伴うということである.臨床現場において,患者さんを治療装置にセットアップし,照射位置を確認し照射ボタンを押して照射しているのは,治療担当の診療放射線技師である.
 日本放射線治療専門放射線技師認定機構は,全国のどの治療施設で治療を受けても,放射線技師による均質な精度管理が保証できるような仕組みが必要との考えのもと,放射線治療技術の均てん化を目的に,講習会やセミナーを実施し,統一的な基準の下で専門技師の認定を行ってきた.既に約1,900人の認定者を輩出している.
 しかしながら,放射線治療を取り巻く状況は,定位照射,IMRT,IGRTなどの高精度放射線治療の増加,粒子線治療施設の増加など大きく変化しており,治療を担当する診療放射線技師に求められるスキルも大きくなっている.
 『放射線治療技術標準テキスト』は,保科正夫先生が中心になって編纂し,治療に関係する基本的な内容を網羅したものとなっている.臨床において使用する知識や技術は,個々に単独ではなく相互に関連しており相互の関係も含めて学ぶ必要がある.本書は,専門技師認定に向けてのテキストとして,また,放射線治療の現場で手元に置いて使用していただくことを念頭に構成されている.
 放射線治療にかかわる施設で,本書が広く活用されるよう推薦する次第です.

 日本放射線治療専門放射線技師認定機構
 監事 渡邊良晴


序 監修を代表して

 日本放射線治療専門放射線技師認定機構が2005年に設立され,第1回認定試験での95名の認定から本年の第14回認定試験の114名の認定により,13年間で1,888名の放射線治療専門放射線技師を輩出してまいりました.日本放射線治療専門放射線技師認定機構の専門技師教育事業では,専門教育セミナーおよびリニアック,治療計画装置の実機講習会などの事業を行ってきました.各地区においても,これから認定試験を目指す技師ならびに放射線治療技術のスキルアップを目的とした技師を対象に機構統一講習会を毎年実施しています.2007年に発刊された『放射線治療技術の標準』は,放射線治療専門技師教育のバイブルとして活用されてきましたが,それから早11年が経過し,放射線治療を取り巻く技術革新に対応した新たな教本が望まれていました.
 発刊の企画にあたり,4年前から保科正夫監事(当時,理事)が中心となって新しい教本の計画が立てられ執筆が開始されました.編集段階に入った頃は,組織体制の組み替えや認定機構の教育シラバス作成の検討に入った時期と重なり,発刊が大幅に遅れたことに関しては,関係者として皆様にはこの紙面をお借りし深謝いたします.今回新しく発刊された教本は,第1章から16章から成り,放射線治療概要,放射線生物学から放射線治療技術,放射線看護,放射線安全管理までを網羅した放射線治療専門技師には必須の一冊となっています.本書においては,診療放射線技師のみならず放射線治療に興味を持つ医療関係者,学生にもぜひお読みいただき,ご意見などをいただきたいと思います.
 本書が今後の統一講習会や認定講習会,認定試験などに広く用いられ,専門技師教育の発展に貢献できればこの上ない喜びであります.今回の発刊においてご尽力いただきました執筆者,編集者,ならびに監修にご協力いただきました皆様に深く感謝申し上げます.

 日本放射線治療専門放射線技師認定機構
 理事長 奥村雅彦


序 編集を代表して

 旧版の『放射線治療技術の標準』を世に送ってから久しく時間が過ぎてしまいました.旧版が絶版となり,皆様にはご迷惑をおかけすることとなりました.まずは,深くお詫び申し上げます.
 新たな執筆陣も加わり,新版の『放射線治療技術標準テキスト』の発刊に至りました.旧版からの時間の経過とともに技術革新の進んだ分野もあれば,不動の分野もあります.この新版では放射線治療専門放射線技師として身につけておくべき知識,技術が網羅的に含まれております.基礎を固め,背景を理解することで,さらなる展開もかなうものと考えます.
 思い起こせば,2000年前後に放射線治療分野において,いくつかのアクシデントの発生をみました.旧版の『放射線治療技術の標準』の発刊は,そのような時代を背景にして,放射線治療分野の技術者として学ぶべきことを明らかにし,技術の均てん化を図っていこうという強い思いからなされたものでした.
 『放射線治療技術の標準』があたかも一つのトリガーとなったかのように,この分野において,いくつかの書物がその後発刊されました.分野の発展は,関連書籍の数からも推しはかることができます.その意味で,関連書籍が増えることは技術の充実が進んできていることが期待されるところです.特に,これからを担う新たな技術者が学ぼうとするときに,関連する書籍とともに本書も,みなさんの手の届く範囲にあることが大事なのでしょう.
 知識の学びと技術の習得により技術者の成熟を図ることが,安全の要です.放射線治療の臨床現場の技術者としては,バランスのとれた知識と技術が要求されます.是非とも,多くのスタッフから信頼される技術者に育って欲しいと考えております.
 専門性を高めるためには,さらに内容の充実を図らなければならない部分も多々あります.皆さんが放射線治療を専門とする技師としての技{ぎ}倆{りょう}を磨いていくうえで,本書が役立ちますことを祈念しております.
 本書の発刊にあたっては,日本放射線治療専門放射線技師認定機構の役員の皆さんに多大な援助をいただきました.深く感謝するものです.
 本書が皆さんの今後の発展的な展開の礎となれば幸いです.

 これから社会へ巣立つ若人とともにあるキャンパスにて
 駒澤大学医療健康科学研究科
 保科正夫

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第1章 放射線治療概要と放射線生物学
 [1-1]がん統計
 [1-2]線量分割照射法
 [1-3]放射線生物学
 [1-4]治療の容積の定義
 [1-5]標的吸収線量の明記
 [1-6]照射方法

第2章 放射線治療の物理
 [2-1]放射線治療に用いる放射線
 [2-2]放射線場および相互作用にかかわる量の定義
 [2-3]放射線と物質との相互作用
 [2-4]吸収線量
 [2-5]阻止能
 [2-6]空洞理論

第3章 放射線治療におけるデータ解析
 [3-1]基本的統計量
 [3-2]標準偏差と正規分布
 [3-3]不確かさ
 [3-4]不確かさの伝播
 [3-5]有効数字の表記と計算
 [3-6]有意差検定

第4章 高エネルギー光子線の相対線量評価
 [4-1]はじめに
 [4-2]深部線量関数
 [4-3]出力係数OPF
 [4-4]空中軸外線量比OAR0, OAR in air
 [4-5]くさび係数
 [4-6]種々の深部線量関数の関係式
 [4-7]線量モニタ単位DMU
 [4-8]平坦度と対称性

第5章 ビームデータの取得
 [5-1]ビームデータの測定の意義
 [5-2]ビームデータの種類
 [5-3]検出器の選択と配置
 [5-4]3次元水ファントムの取り扱い
 [5-5]スキャン方式と測定パラメータ
 [5-6]PDDおよびTMRTPR)の測定
 [5-7]線量プロファイル
 [5-8]大照射野の線量プロファイル
 [5-9]非スキャニングデータの測定
 [5-10]小照射野の測定

第6章 高エネルギー光子線の吸収線量評価
 [6-1]吸収線量の決定の基礎
 [6-2]水吸収線量の一次標準(国家標準)
 [6-3]実用電離箱による水吸収線量の決定
 [6-4]標準計測法12に準拠した高エネルギー光子線の吸収線量評価
 [6-5]高エネルギー光子線の水吸収線量計測の具体例:加速器の出力校正

第7章 高エネルギー電子線の吸収線量評価
 [7-1]吸収線量評価
 [7-2]深部電離量百分率曲線と深部(線)量百分率曲線
 [7-3]深部量百分率(percentage depth dose:PDD
 [7-4]電子線の吸収線量評価の具体例
 [7-5]電子線の出力校正の具体例
 [7-6]電子線における平行平板形電離箱の相互校正
 [7-7]プラスチックファントムを用いた電子線計測法
 [7-8]深部量百分率における照射野サイズの影響
 [7-9]深部吸収線量百分率測定に関する補足
 [7-10]媒質中での電子線エネルギーの変化

第8章 スプレッドシートを使用したモニタ単位数(MU値)計算の実際
 [8-1]スプレッドシートを使用したモニタ単位数(MU値)計算手法の概要
 [8-2]入れ子形式の多項式回帰法によるTMR回帰式の骨格
 [8-3]TMR回帰式作成手順
 [8-4]出力係数の回帰式作成
 [8-5]MU値計算シートの作成
 [8-6]MU値独立検証用ソフトウェアの一例

第9章 高精度放射線治療の導入と運用
 [9-1]強度変調放射線治療IMRT
 [9-2]VMAT
 [9-3]四次元放射線治療
 [9-4]画像誘導放射線治療

第10章 粒子線治療
 [10-1]粒子線治療の概要
 [10-2]陽子線治療
 [10-3]重粒子(炭素イオン)線治療
 [10-4]粒子線治療の治療計画
 [10-5]粒子線治療のQA

第11章 密封小線源治療
 [11-1]密封小線源治療の技術的総論
 [11-2]子宮頸がん
 [11-3]前立腺がん組織内照射
 [11-4]小線源治療の線量計算アルゴリズム
 [11-5]小線源治療の品質保証と品質管理

第12章 治療計画システム
 [12-1]放射線治療計画システムの歴史
 [12-2]治療計画装置の基本機能
 [12-3]品質保証,品質管理

第13章 放射線治療の品質保証と品質管理
 [13-1]放射線治療に求められる品質保証と品質管理
 [13-2]放射線治療の種々の過程における技術的品質管理項目
 [13-3]外部放射線治療の外部線量監査

第14章 放射線治療部門のネットワーク
 [14-1]情報ネットワークの基礎
 [14-2]ネットワークの接続における問題点
 [14-3]治療部門に関連する標準

第15章 放射線治療看護
 [15-1]はじめに
 [15-2]患者ケア
 [15-3]処置が施されている患者への対応
 [15-4]放射線治療部門で遭遇する患者容態変化
 [15-5]放射線治療に伴う症状の理解
 [15-6]感染の防止
 [15-7]コミュニケーションスキル
 [15-8]がん患者が抱える不安・つらさ

第16章 放射線安全管理
 [16-1]放射線管理の基本
 [16-2]放射線治療施設の設計
 [16-3]外部放射線治療
 [16-4]密封線源治療
 [16-5]記帳・記録
 [16-6]漏洩線量管理
 [16-7]線源管理
 [16-8]管理区域
 [16-9]教育訓練
 [16-10]遵法を損なわないために

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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