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スポーツ外傷・障害ハンドブック
発生要因と予防戦略

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本書は、スポーツ外傷・障害が起こりやすい部位ごとに構成され、その部位の解剖学的構造と運動学的メカニズムについて丁寧に解説。その上でスポーツ外傷・障害の予防に必要な運動療法やその他の予防策を詳述。スポーツ外傷・障害の治療・予防に携わるすべての方にお薦めする、マニュアルを超えた格好の入門書。
原書編集 Roald Bahr / Lars Engebretsen
監訳 陶山 哲夫 / 赤坂 清和
発行 2015年10月判型:B5頁:240
ISBN 978-4-260-02416-7
定価 6,380円 (本体5,800円+税)

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監訳者のことば(赤坂 清和)/(Jacques Rogge)/はじめに(Roald Bahr & Lars Engebretsen)

監訳者のことば
 スポーツ外傷・障害に関連して,アスリート個人やスポーツ競技にたずさわる医師および理学療法士,トレーナーの注目は,それぞれの専門職としての治療や競技への復帰に加えて,どれだけスポーツ外傷予防を達成できるかという観点において,急速に広がってきている.私個人として,数年来,この分野の専門家として貢献できることは何だろうかと自問してきた.確かに,競技前後のストレッチ運動や検診を行うことにより,多くのスポーツ外傷・障害を防ぐことができたことは,大変有意義なことであると感じてきた.しかし,私達ができることはそれだけかと問われると,それだけでは十分ではない,他にもっとできることがあるはずだと以前から感じていたが,それが何であるか,どのようなことであるか,わからないまま数年が経過していた.
 そのような折,2020年東京オリンピック・パラリンピック大会の開催が決定され,日本のスポーツにおける新たな1ページが開かれることが決まった.それと同時期に本書に出会い,スポーツ外傷・障害に対して包括的に取り組む現状を把握するとともに,この分野にたずさわる全ての方に理解していただきたいと強く考えた.
 国際オリンピック委員会はこれまで多くの競技団体,学術団体,そして国や地域と連携をとり,この分野における取り組みを集約し,さらに支援してきた.本書を読むことにより,スポーツ外傷・障害に対して,私達ができることは何であるのかを考えるに当たり,これまでの取り組みとその過程で明らかになったこと,そして期待される効果などについて,学ぶことができると考えている.
 本書の翻訳は,スポーツ外傷・障害にこれまでたずさわってきた専門家である医師および理学療法士にお願いした.担当された先生方は,日常の臨床や教育などの業務に加え,スポーツ現場での取り組みを続けられている多忙な生活の中,本書の翻訳を引き受けてくださり,素晴らしい内容に仕上げていただいた.あらためて,ここに感謝申し上げる.また,できあがった原稿については,医学書院医学書籍編集部で内容を確認していただき,監訳をご担当いただいた陶山哲夫先生と小生により本書全体の表現を統一した.本書を完成するにあたり,医学書院のご理解とご協力,そしてご担当頂いた本田崇氏の献身的で計画的な編集管理に感謝申し上げ,監訳者のことばとさせていただく.

 2015年8月5日
 埼玉医科大学大学院理学療法学
 赤坂 清和



 1991年,国際オリンピック委員会医事委員会は,ハンドブックシリーズの目的について,オリンピック夏季および冬季大会のスポーツに関する基盤となる臨床と科学に関する情報を網羅した内容について,統一されたスタイルとフォーマットで出版することを決定した.スポーツ医学とスポーツ科学の領域で国際的に尊敬を集め認識されている編集者による専門家チームにより,それぞれのハンドブックは数年間をかけて作成された.
 ハンドブックとして最初にシリーズとして発刊された書籍には,オリンピック競技である10種目とともに,アスリートのための筋力強化と栄養学に関するトピックスが含まれた.そして,多くのハンドブックシリーズの書籍にはスポーツ外傷が含まれた.さらに,他の国際オリンピック委員会医事委員会の書籍として,スポーツ医学百科事典が加えられ,スポーツ外傷を完全に網羅した.
 アスリートの健康を守ることが国際オリンピック委員会の優先事項として捉えられ,外傷の理解と予防が,国際オリンピック委員会の医事委員会と医科学部における主要テーマとなった.
 スポーツ外傷予防に関するこのハンドブックの主要な目的は,それぞれのスポーツ競技に関する特異的な損傷に対するリスクファクターを同定すること,受傷機転の理解,アスリートに対する適切なコンディショニング,それぞれの活動に対する適切なリスク管理に関する現在利用可能な情報を包括的にレビューすることである.
 スポーツ外傷予防のハンドブックは,現在利用可能な外傷発生を予防する最も包括的なレビューにより構成され,それぞれの章では出版されたエビデンスに基づく高度の実践的情報が含まれている.私達はRoald Bahr, MD, PhD,Lars Engebretsen, MD, PhD,そして36名の共著者によるスポーツ医学とスポーツ科学における素晴らしい貢献に対して敬意を表する.

 Jacques Rogge


はじめに
 スポーツに外傷は付きものである.外傷は,時に偶然,時に故意に生じる.外傷の発生について説明することは,時折とても困難で,不可能とさえ考えられることがある.しかしながら,外傷発生にはしばしばパターンが発見されることがあり,そのことは同時に,外傷リスクを少なくできる可能性があることを示している.
 本書の目的はそれらの可能性を論じることであり,スポーツに関連する全員の利益になる.このスポーツ外傷の改善に関連する対象として,チームドクター,トレーナー,理学療法士が挙げられ,さらにコーチングスタッフはさらに重要な対象と考えられている.そして本書の読者は,解剖学や生理学の基本的知識があることを予測しているが,本書の究極的な読者はアスリート自身であると考えている.これらの目的と対象を意識して,私達は外傷予防に関する包括的なアプローチ,実践的な内容,短時間で入手可能であることすべてを満足させる作品に仕上げようと試みた.
 私達の意図は,スポーツ外傷予防に対する実践的なアプローチを説明し,理解されることである.最初の3章では,外傷予防の一般的原則を説明した.第1章では,短期および長期にわたる健康とパフォーマンスの予測を含めて,スポーツ外傷予防の重要性を明らかにした.そして第2章では,介入の基礎として,リスクファクターと外傷メカニズムに関する情報がどのようにパターン同定に活用されるかについて説明した.そのようなパターンは,外傷リスクが高い場合や外傷を惹起される状況にあるアスリートを同定し,それらの情報は,予防プログラムの有効性を高め,発達させる.第3章は,チームに対して外傷予防プログラムをどのように発展させ実行させることができるかについて説明した.本書では,チームというのは,一般的なスポーツチームに加えて,アルペンスキーヤーのチームのように,個人スポーツで競技するアスリートのチームを含んでいる.
 本書を企画するに当たり,私達が直面した問題は,本書の構成をスポーツ競技あるいは身体部位や傷害タイプにより分類するかであった.スポーツ競技に分けて章を構成することのメリットとして,スポーツ特有の問題に対して詳細に論述することが可能であり,例えばスキーのビンディングのように用具に関連する調査結果を包含することができるということであった.しかしながら,これらに関する部分的な情報はすでに周知(スポーツ医学シリーズの百科辞典第5巻やPAFH Renstromによるスポーツ外傷予防とケアの臨床的実践)であったが,身体部位に対して特異的なアプローチがより適切ではないかと考えた.このような考えにより,第4章から第11章については,スポーツ外傷の最も一般的なタイプ,すなわち,足関節,膝,ハムストリング,鼠径部,腰背部,肩,肘,頭部と頸椎という身体部位に対する外傷をどのように予防することができるかを示すことにした.そして,続く2章では,多くのスポーツ競技および広い身体部位で生じる腱のオーバーユース損傷をどのように予防できるのか(第12章),そしてどのように大規模外傷予防プログラムが実施できるか(第13章)について示すことにした.
 身体部位に特異的な章の部分では,イントロダクションとしてそれぞれの身体部位に関連する外傷タイプが主要なオリンピック競技種目と関連するかどうかを示す内容を含めた.これまでのスポーツ外傷の疫学における研究とは対照的に,私達はこの章を手短くまとめ,次に挙げる主要な質問に答えるようにした.それらの質問とは,次の通りである.対象となる外傷はどれほど一般的なのか? 私が好きなスポーツ競技では何がリスクなのか? そしてその次の章では,外傷に対する主要なリスクファクターは何か? リスクがあるアスリートはどのように同定することができるか? この過程において,外傷に関連する様々な内的および外的リスクファクターの中で修正可能であるリスクファクターを強調し,どのようにコーチやメディカルスタッフが外傷のリスクがある選手を同定できるかを示した.そして,チームに対して実施すべき簡単な検査やスクリーニングの方法を呈示した.これらの章では,典型的な外傷メカニズムの説明として,単に外傷の生体力学的分析だけではなく,選手や対戦相手の行動,対戦状況,その他の関連要素を含んだ内容とした.私達はまたすべての共著者に担当する章において,トレーニングや試合におけるリスクを明確にすること,それらのリスクを抱えてトレーニングや試合に対峙する場合に最も高いリスクとそのシーズンに起こりうることについて明らかにするよう依頼した.いくつかの外傷のタイプでは,この分析が外傷予防を計画する重要な基盤となり,特にシーズンの変わり目におけるオーバーユース外傷を避ける目的として有効であった.最も重要な各章の最終節では,予防方法を配置した.多くのスポーツ競技で共通である外傷の予防を取り扱い,外傷予防が有効であったスポーツ競技からの成功例を含めた.そして,すべての章においてできる限り実践的な内容とし,覚えておいてほしい,すぐに使用できるプログラムを運動のイラストとともに掲載するようにした.
 本書はこの種類の本として初めての挑戦をいくつか行った.異なるスポーツ競技に共通で有効であり,外傷予防に役に立つ内容の書籍はこれまでなかった.このような外傷予防の内容を含める書籍を仕上げるガイドがなかったため,これらを達成することは,私達にとって大きな挑戦となった.私達は,住んでいる地域や専門とする外傷に関連する外傷予防に関する新しいことを単に提供するだけではなく,多くの章を通して一貫した内容とフォーマットのもとで,執筆していただいた多くの共著者に感謝申し上げる.もし本書が成功したのであれば,その栄誉は直向に取り組んでくれた彼らのおかげである.もし成功しないのであれば,その責任は私達にある.

 2008年9月オスロにて
 Roald Bahr & Lars Engebretsen

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第1章 スポーツ外傷の予防はなぜ重要なのか?
第2章 スポーツ外傷予防に対する体系的アプローチ
第3章 チーム内での外傷予防計画の開発と管理
第4章 足関節損傷の予防
第5章 膝外傷の予防
第6章 ハムストリング損傷の予防
第7章 鼠径部痛症候群の予防
第8章 腰痛の予防
第9章 肩関節外傷の予防
第10章 肘外傷の予防
第11章 頭頸部外傷の予防
第12章 オーバーユースによる腱損傷の予防
第13章 大規模外傷予防プログラムの実施
第14章 メジャーイベントの企画

索引

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スポーツ外傷・障害の予防戦略にまたとないテキスト
書評者: 奥脇 透 (国立スポーツ科学センター・メディカルセンター主任研究員)
 近年,スポーツ外傷・障害に対する予防の取り組みは,国内外で盛んに行われてきている。それを牽引してきたのがIOC Medical CommissionのメンバーでもあるDr. Roald BahrとDr. Lars Engebretsenである。この2人の編集による本書は,なぜスポーツ外傷・障害の予防が重要なのかを,これまで集積してきた,オリンピックをはじめとしたさまざまな競技大会の膨大なデータを基に,わかりやすくまとめたものである。予防の重要性から始まり,体系的に取り組むことの大切さを強調し,具体的に代表的なスポーツ外傷・障害を挙げて説明し,最後には競技団体による予防プログラムや大会時の医務体制についてまで言及している。

 整形外科医の一人として最も注目しているのは,スポーツ外傷・障害の各論部分である。ポピュラーなスポーツ外傷である足関節捻挫,やっかいな膝の外傷である前十字靱帯損傷,その他,ハムストリング損傷,鼠径部痛症候群,腰痛,肩関節外傷,肘外傷,頭頸部外傷,それにオーバーユースによる腱損傷を取り上げて,外傷予防の実践モデルとして展開している。基本的な4つの段階である,現状把握(疫学),原因究明,予防策,そしてその検証を,サーベイランス(監視)システムとして進めていくことの重要性を強調している。特に成長期から青年期における女子のスポーツ選手にとって,もはや選手生命を脅かす存在となっている膝前十字靱帯損傷については,その予防に向けたこれまでの取り組みを詳細に紹介しているので,整形外科のドクターはもちろん,トレーナーや指導者,それに実際に活動しているアスリートにも読んでいただきたい。前十字靱帯損傷の外傷調査から始まり,その内的および外的要因を挙げ,さらに受傷場面の解析から受傷機転を追求し,それに対する予防プログラムを作成して実行し,その介入結果を検証しているプロセスは,他のスポーツ外傷・障害についても応用できるものである。

 この書評を書いている今,ちょうどインフルエンザが流行し始めた。その予防にはワクチン接種が当たり前になってきているように,スポーツ外傷・障害に対するワクチンとも言える予防プログラムができ,実際に発生を減らすことができる日が来ることを切望している。また,そのプログラムを実行することで,スポーツのパフォーマンスも向上できるものと信じている。スポーツ医学にかかわる,コーチングスタッフやアスリートを含む,全ての方々に本書を熱く,強く推薦したい。

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