人体の構造と機能[3]
栄養学 第12版
本書の特長
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●食事の援助は、看護師が自身の専門性に基づいて行う基本的技能の1つです。患者の食欲がわく環境を整えたり、食事の様子から栄養状態をみたり、食生活に関する相談・指導を行ったりするためには、栄養学の知識を欠かすことはできません。
●本書は、解剖学・生理学・生化学などの知識をもとに、栄養と健康、栄養と疾病・障害の関係を学び、さらに人間の栄養状態の適正化を目ざす「人間栄養学」を教育目標としています。人体や食物についての学習にとどまらず、栄養によって健康を維持・向上させる方法を総合的に習得することに主眼をおいています。
●第1章では、栄養の意義と栄養学の歴史、そして保健指導や栄養療法などの場面における看護師の役割について述べています。
●第2章から第5章では、生命科学に基づいた栄養に関する基礎知識を学びます。
●第6章以降では、栄養状態のアセスメントとその適正化の方法を学び、さらにライフステージ別に健全な成長や疾病の予防、疾病の治療に関する知識を身につけます。
●第9章では、新たに「がんの食事療法」の項目を設け、がんで食欲のない患者、健康食品を多用する患者への対応など、臨床で活用できる内容を充実させました。
●巻末には、2014年に公表された「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の抄録を掲載しています。
*「系統看護学講座」は2018年版より新デザインとなりました。
*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ | 系統看護学講座 |
---|---|
著 | 小野 章史 / 杉山 みち子 / 鈴木 志保子 / 外山 健二 / 中村 丁次 |
発行 | 2015年01月判型:B5頁:292 |
ISBN | 978-4-260-01993-4 |
定価 | 2,090円 (本体1,900円+税) |
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- 序文
- 目次
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序文
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はしがき
栄養の意味
「この食べ物はからだによい」とか,あるいは「からだにわるい」とか,人間は古くから食べ物が身体にどうであるかという問題に大きな関心を持ってきた。どのような時代にも,不老長寿の食べ物を熱望してさがし求める人々が存在し,経験をもととした知恵を集積させ,多くの議論を繰り返してきた。
この議論の行き着くところは,「私たちは,なにを食べればよいのか」ということであり,人間にとってきわめて大きなテーマである。このテーマに科学的に取り組み始めたのは18世紀になってからであり,それを今日まで「栄養学」として発展させてきた。
生体が発育・成長して生命を維持し,健全な生命活動を営むために,体外から取り入れるべき必須物質が栄養素nutrientsである。これらが不足すると種々の欠乏症が出現し,さらに進展すれば死にいたる。栄養学は,エネルギーとさまざまな栄養素のはたらきを解明する学問分野である。
たとえば,タンパク質はからだづくりに利用され,脂質はエネルギー源になると同時に,脂溶性ビタミンの吸収をよくし,必須脂肪酸を供給する。糖質は,脳・神経系,各種細胞のエネルギー源となり,食物繊維は便通をよくすると同時に,低エネルギー源物質として,脂肪や糖質の吸収遅延をおこして肥満や糖尿病の予防に役だつ。各種のビタミン・ミネラルも,微量ながら体内においてさまざまなはたらきを有している。栄養学は,これらのことを明らかにしてきたのである。
栄養学の新たな課題
ところで,日本人の栄養状態に関しては,かつての食料不足による単純な欠乏症にかわって,生活環境やライフスタイルの変遷に伴う新たな問題が生じている。
交通手段の発達や労働形態の変化などによって,エネルギー消費量が減少した一方,豊富な食品,高エネルギー食品の普及,食生活の簡便化などによって過食(エネルギー摂取過剰)状態が引きおこされ,このような食習慣が肥満・糖尿病・高血圧症・脂質異常症・動脈硬化・脂肪肝など,いわゆる生活習慣病の一大誘因になってきている。
他方,若年女性・傷病者・高齢者には,食料不足ではない新たな要因による低栄養状態が出現してきている。低栄養によって体力や免疫能の低下,薬効の低下,病気からの回復の遅延,さらに生活の質(QOL)の低下や入院日数の増加,医療費の増大などの問題を生じている。
これらの多様な問題を解決するには,「人間」を対象とした新たな栄養学としての取り組みが必要とされる。
改訂の趣旨
本書は1968年に,看護師を志す者が栄養学を系統的に学ぶためのテキストとして刊行され,その後,数度の改訂を重ねて内容を刷新してきた。
今回の改訂(第12版)では,まず,前版から一部目次構成を変更した。第11版の第2章では,「栄養状態の評価・判定」として,看護師が担う栄養アセスメントの内容と重要性を述べていたが,これを第12版では,学生の学習進度などに鑑み,第6章の「栄養ケア・マネジメント」に続けて学べるよう,第7章に置いた。第3章では,解剖生理学・生化学ともかかわりの深い「食物の消化と栄養素の吸収・代謝」について解説した。第5章では,それまでに学んだエネルギー・栄養素に関する栄養学の基礎的な知識と,第6章以降の応用・臨床的な栄養学をつなぐものとして,「食事と食品」について解説した。ここでは,食品やその調理に関する知識に加え,「日本人の食事摂取基準(2015年版)」についての基本的な説明と,新たに加えられた考え方や従来からの変更点を述べている。第9章では,臨床の状況と2013年に発表された看護師国家試験の出題基準を考慮し,「咀嚼・嚥下障害患者の食事療法」や「がんの食事療法」の追加などの変更を行った。なお,本書の内容よりもさらに具体的な栄養療法・食事療法について学習する場合は,系統看護学講座の別巻『栄養食事療法』を参照されたい。
また,第12版では全章を通じて,学習内容に関連するコラムやイラストの追加といった工夫により,学生が読みやすく,理解しやすい紙面を目ざした。章末のゼミナールについても,看護師国家試験の出題を分析し,一層学習に役だつものになるように本文の内容に合わせて改めた。そのほか,研究により明らかになった知見を加え,医療制度・ガイドラインの変更などに関しても最新のものに対応した。巻末には,付録として2014年5月に公表された「日本人の食事摂取基準(2015年版)」を抄録として掲載している。
それぞれの専門職種が,チームワークによって保健・医療・福祉を連携させる必要性の叫ばれている昨今,患者の生活という面を視野におかなければならない看護業務にとって,栄養学を学ぶことには重要な意味があると信じている。
2014年10月
著者ら
栄養の意味
「この食べ物はからだによい」とか,あるいは「からだにわるい」とか,人間は古くから食べ物が身体にどうであるかという問題に大きな関心を持ってきた。どのような時代にも,不老長寿の食べ物を熱望してさがし求める人々が存在し,経験をもととした知恵を集積させ,多くの議論を繰り返してきた。
この議論の行き着くところは,「私たちは,なにを食べればよいのか」ということであり,人間にとってきわめて大きなテーマである。このテーマに科学的に取り組み始めたのは18世紀になってからであり,それを今日まで「栄養学」として発展させてきた。
生体が発育・成長して生命を維持し,健全な生命活動を営むために,体外から取り入れるべき必須物質が栄養素nutrientsである。これらが不足すると種々の欠乏症が出現し,さらに進展すれば死にいたる。栄養学は,エネルギーとさまざまな栄養素のはたらきを解明する学問分野である。
たとえば,タンパク質はからだづくりに利用され,脂質はエネルギー源になると同時に,脂溶性ビタミンの吸収をよくし,必須脂肪酸を供給する。糖質は,脳・神経系,各種細胞のエネルギー源となり,食物繊維は便通をよくすると同時に,低エネルギー源物質として,脂肪や糖質の吸収遅延をおこして肥満や糖尿病の予防に役だつ。各種のビタミン・ミネラルも,微量ながら体内においてさまざまなはたらきを有している。栄養学は,これらのことを明らかにしてきたのである。
栄養学の新たな課題
ところで,日本人の栄養状態に関しては,かつての食料不足による単純な欠乏症にかわって,生活環境やライフスタイルの変遷に伴う新たな問題が生じている。
交通手段の発達や労働形態の変化などによって,エネルギー消費量が減少した一方,豊富な食品,高エネルギー食品の普及,食生活の簡便化などによって過食(エネルギー摂取過剰)状態が引きおこされ,このような食習慣が肥満・糖尿病・高血圧症・脂質異常症・動脈硬化・脂肪肝など,いわゆる生活習慣病の一大誘因になってきている。
他方,若年女性・傷病者・高齢者には,食料不足ではない新たな要因による低栄養状態が出現してきている。低栄養によって体力や免疫能の低下,薬効の低下,病気からの回復の遅延,さらに生活の質(QOL)の低下や入院日数の増加,医療費の増大などの問題を生じている。
これらの多様な問題を解決するには,「人間」を対象とした新たな栄養学としての取り組みが必要とされる。
改訂の趣旨
本書は1968年に,看護師を志す者が栄養学を系統的に学ぶためのテキストとして刊行され,その後,数度の改訂を重ねて内容を刷新してきた。
今回の改訂(第12版)では,まず,前版から一部目次構成を変更した。第11版の第2章では,「栄養状態の評価・判定」として,看護師が担う栄養アセスメントの内容と重要性を述べていたが,これを第12版では,学生の学習進度などに鑑み,第6章の「栄養ケア・マネジメント」に続けて学べるよう,第7章に置いた。第3章では,解剖生理学・生化学ともかかわりの深い「食物の消化と栄養素の吸収・代謝」について解説した。第5章では,それまでに学んだエネルギー・栄養素に関する栄養学の基礎的な知識と,第6章以降の応用・臨床的な栄養学をつなぐものとして,「食事と食品」について解説した。ここでは,食品やその調理に関する知識に加え,「日本人の食事摂取基準(2015年版)」についての基本的な説明と,新たに加えられた考え方や従来からの変更点を述べている。第9章では,臨床の状況と2013年に発表された看護師国家試験の出題基準を考慮し,「咀嚼・嚥下障害患者の食事療法」や「がんの食事療法」の追加などの変更を行った。なお,本書の内容よりもさらに具体的な栄養療法・食事療法について学習する場合は,系統看護学講座の別巻『栄養食事療法』を参照されたい。
また,第12版では全章を通じて,学習内容に関連するコラムやイラストの追加といった工夫により,学生が読みやすく,理解しやすい紙面を目ざした。章末のゼミナールについても,看護師国家試験の出題を分析し,一層学習に役だつものになるように本文の内容に合わせて改めた。そのほか,研究により明らかになった知見を加え,医療制度・ガイドラインの変更などに関しても最新のものに対応した。巻末には,付録として2014年5月に公表された「日本人の食事摂取基準(2015年版)」を抄録として掲載している。
それぞれの専門職種が,チームワークによって保健・医療・福祉を連携させる必要性の叫ばれている昨今,患者の生活という面を視野におかなければならない看護業務にとって,栄養学を学ぶことには重要な意味があると信じている。
2014年10月
著者ら
目次
開く
第1章 人間栄養学と看護 (中村丁次)
A 栄養を学ぶということ
B 保健・医療における栄養学
C 看護と栄養
第2章 栄養素の種類とはたらき (鈴木志保子)
A 糖質
B 脂質
C タンパク質
D ビタミン
E ミネラル
F 食物繊維
G 水
第3章 食物の消化と栄養素の吸収・代謝 (小野章史)
A 食物の消化
B 栄養素の吸収
C 血漿成分と栄養素
D 栄養素の代謝
E 吸収・代謝産物の排泄
第4章 エネルギー代謝 (鈴木志保子)
A 食品のエネルギー
B 体内のエネルギー
C エネルギー代謝の測定
D エネルギー消費
第5章 食事と食品 (中村丁次・鈴木志保子)
A 人間の食事と食文化
B 日本人の食事摂取基準
C 食品と栄養素
D 食品群とその分類法
E 食品の調理
第6章 栄養ケア・マネジメント (杉山みち子)
A チームアプローチと栄養ケア・マネジメント
B 栄養スクリーニング
C 栄養アセスメント
D 栄養ケア計画
E 栄養ケア計画の実施とその確認
F 栄養ケア・マネジメントの評価
第7章 栄養状態の評価・判定 (杉山みち子)
A 栄養アセスメントとその歴史
B 栄養アセスメントの目的
C 栄養状態の評価・判定法
第8章 ライフステージと栄養 (鈴木志保子・杉山みち子)
A 乳児期における栄養
B 幼児期における栄養
C 学童期における栄養
D 思春期・青年期における栄養
E 成人期における栄養
F 妊娠期における栄養
G 授乳期における栄養
H 更年期における栄養
I 高齢期における栄養
第9章 臨床栄養 (外山健二・中村丁次)
A チームで取り組む栄養管理
B 栄養補給法
C 病院食
D 経腸栄養製品
E 静脈栄養剤
F 疾患・症状別食事療法の実際
G 場面別の栄養管理
H がんの食事療法
第10章 健康づくりと食生活 (中村丁次)
A 食生活の変遷と栄養の問題点
B 生活習慣病の予防
C 食生活の改善への施策
D 食の安全性と表示
付録 日本人の食事摂取基準(2015年版)抄録
付録 日本人の身体計測基準値
参考文献
索引
A 栄養を学ぶということ
B 保健・医療における栄養学
C 看護と栄養
第2章 栄養素の種類とはたらき (鈴木志保子)
A 糖質
B 脂質
C タンパク質
D ビタミン
E ミネラル
F 食物繊維
G 水
第3章 食物の消化と栄養素の吸収・代謝 (小野章史)
A 食物の消化
B 栄養素の吸収
C 血漿成分と栄養素
D 栄養素の代謝
E 吸収・代謝産物の排泄
第4章 エネルギー代謝 (鈴木志保子)
A 食品のエネルギー
B 体内のエネルギー
C エネルギー代謝の測定
D エネルギー消費
第5章 食事と食品 (中村丁次・鈴木志保子)
A 人間の食事と食文化
B 日本人の食事摂取基準
C 食品と栄養素
D 食品群とその分類法
E 食品の調理
第6章 栄養ケア・マネジメント (杉山みち子)
A チームアプローチと栄養ケア・マネジメント
B 栄養スクリーニング
C 栄養アセスメント
D 栄養ケア計画
E 栄養ケア計画の実施とその確認
F 栄養ケア・マネジメントの評価
第7章 栄養状態の評価・判定 (杉山みち子)
A 栄養アセスメントとその歴史
B 栄養アセスメントの目的
C 栄養状態の評価・判定法
第8章 ライフステージと栄養 (鈴木志保子・杉山みち子)
A 乳児期における栄養
B 幼児期における栄養
C 学童期における栄養
D 思春期・青年期における栄養
E 成人期における栄養
F 妊娠期における栄養
G 授乳期における栄養
H 更年期における栄養
I 高齢期における栄養
第9章 臨床栄養 (外山健二・中村丁次)
A チームで取り組む栄養管理
B 栄養補給法
C 病院食
D 経腸栄養製品
E 静脈栄養剤
F 疾患・症状別食事療法の実際
G 場面別の栄養管理
H がんの食事療法
第10章 健康づくりと食生活 (中村丁次)
A 食生活の変遷と栄養の問題点
B 生活習慣病の予防
C 食生活の改善への施策
D 食の安全性と表示
付録 日本人の食事摂取基準(2015年版)抄録
付録 日本人の身体計測基準値
参考文献
索引
正誤表
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。
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