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“実践的”抗菌薬の選び方・使い方

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抗菌薬の選び方・実践的な使い方をユニークな構成で解説。はじめに起因菌・薬剤の構造・投与経路別に抗菌薬の基礎知識を、次にスペクトラムが重なる抗菌薬の特徴を比べてその違いに注目しながら使い分けのポイントをわかりやすくまとめた。感染症診療に携わるすべての人にお勧めしたい。
編集 細川 直登
発行 2014年06月判型:A5頁:236
ISBN 978-4-260-01962-0
定価 3,630円 (本体3,300円+税)

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  • 序文
  • 目次
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 本書は抗菌薬の基礎知識を解説するだけにとどまらず,抗菌薬を比較しその使い分けを理解するのに必要な知識を解説する,という点で今までにないコンセプトで編集されている.実際の処方をするときにどちらの薬剤を使えばよいか,が決められるように実践的な内容を意識した.
 現在,抗菌薬の解説書は多数出版されているが,添付文書の内容を基にしてまとめられたものが多い.しかし,添付文書にはその薬剤がどの系統(例えば第3世代セフェム系である,など)に属しているか,臨床的にどのような場面で使用すべきかなどは記載されておらず,適応菌種と適応疾患が羅列されているだけである.適応菌種と適応疾患が重複する場合,添付文書を読んでも実際にどちらの薬剤を使用したらよいのかわからず,使い分けることができないため,根拠をもって処方するには有用でない.また,添付文書によらず国際的な使用法をまとめた書籍や翻訳本もあり,系統ごと,薬剤ごとに解説されているが,共通のスペクトラムをもつ薬剤のどちらを使用すべきか,などで迷うことがある.同じ系統の抗菌薬には共通の特徴があり,その特徴が臨床的に使用すべき場面を想起させる.また,共通の特徴をもった抗菌薬を使い分けるには,異なる部分を理解することも必要である.本書は『medicina』誌の特集を基に各項目をさらにブラッシュアップしてその違いがより明確に理解できるよう編集した.
 抗菌薬を選択するには理由が必要であり,原則に従って選択すれば自ずと根拠をもった治療を行うことができ,短期的に熱が下がらない場合や改善が得られない場合でも,不安になって理由なく抗菌薬を変更したり,治療方針の策定に行き詰まったりしなくてすむと考えられる.本書によって今まではっきりしなかった抗菌薬選択の根拠や使い分けを理解し,自信をもって感染症治療が行えるようになっていただければ幸いである.

 2014年6月
 細川直登

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第I部 総論-添付文書だけでなく,サンフォードだけでもない抗菌薬の使い方
 1 抗菌薬使用の大原則
  βラクタム系薬が使用可能なときはこれを優先する
  同じクラスのβラクタム系薬の薬効は原則的に同じである
  単剤で治療できるものは単剤を用いる
  過量投与が問題になるアミノグリコシドやバンコマイシンはTDMを利用する
  経口抗菌薬はスペクトラムだけで選ばない
 2 日本と海外で異なる抗菌薬の用法・用量
  日本と海外の用法・用量の違い
  近年承認された薬剤は海外における用法・用量と同じであることが多い
  用法・用量を修正して新たに発売された薬剤もある
  従来の薬剤の最大用量,適応疾患の拡大
  保険適用量と標準使用量に違いがある場合の対応
  抗菌薬の適正な用法・用量はまだ不明な点が多い
  用法・用量の適正化を目指して
 3 PK/PDから考える合理的投与方法とは?
  PK/PD理論の基本知識
  ケース1:bioavailabilityから考えた経口抗菌薬の使い方
  ケース2:組織移行性を考慮しなければいけないとき
  ケース3:殺菌的抗菌薬と静菌的抗菌薬のどちらがよいか?
  ケース4:時間依存性か濃度依存性か
       -外来や在宅で使える点滴抗菌薬はどちらがよい?
  ケース5:添付文書と標準使用量のギャップへの対応策
 4 感受性検査の結果をどう解釈するか
  抗菌薬感受性はどのようにして決められているのか?
  感受性結果解釈のピットフォール
 5 抗菌薬の適正使用
  なぜ今,抗菌薬適正使用が必要なのか
  抗菌薬の使用制限の方法
  病院の耐性菌対策と患者アウトカム向上の両立
   -今後の日本の抗菌薬適正使用の進む道

第II部 薬剤同士の“同じ部分=類似性”をまとめてその特徴を理解する
【対象微生物でまとめる】
 1 グラム陽性菌用の薬剤
  グラム陽性菌用抗菌薬を考えるにあたって
  グラム陽性球菌
  グラム陽性桿菌
 2 グラム陰性菌用の薬剤
  βラクタム系薬
  アミノグリコシド系
  ニューキノロン系
  ST合剤
 3 抗嫌気性菌薬
  嫌気性菌感染症治療の基本
  どの抗菌薬を選ぶか
  嫌気性菌感染で使用される薬剤の特徴
 4 抗緑膿菌薬
  ペニシリン系
  セフェム系
  カルバペネム系
  キノロン系
  アミノグリコシド系
  colistin
  耐性菌への対応
 5 抗MRSA薬
  グリコペプチド系
  オキサゾリジノン系
  アミノグリコシド系
  リポペプチド系
  そのほかの抗MRSA薬

【抗菌薬の構造でまとめる】
 6 βラクタム系薬
  作用機序
  PK/PD上の特徴
  抗菌薬選択のポイント
  βラクタム系薬の用法・用量設定のコツ
  副作用
 7 ニューキノロン系薬
  作用機序
  PK/PDの特徴
  使用すべき臨床状況
  副作用,相互作用
 8 アミノグリコシド系薬
  作用機序
  スペクトラム
  PK/PD上の特徴
  投与方法
  使用すべき臨床状況
  副作用
 9 マクロライド系薬
  作用機序
  PK/PDの特徴
  耐性のメカニズム
  スペクトラム,使用すべき臨床状況
  副反応
  相互作用
  エリスロマイシンの抗菌作用以外の効果
 10 テトラサイクリン系薬
  歴史・構造・作用機序
  PK/PDの特徴
  スペクトラム
  使用すべき臨床状況
  マイコプラズマ肺炎における適応
  免疫抑制作用
  副作用
  ヒト以外への使用

【投与経路でまとめる】
 11 経口抗菌薬の使い方
  経口抗菌薬を処方する際に考慮すべき点
  外来で経口抗菌薬による治療を行う場合

第III部 薬剤同士の“違い=個別性”を理解して実践的な使い分けを習得する
 1 ペニシリンGとアンピシリン
  PCGが使用される臨床状況
  ABPCが使用される臨床状況
  de-escalationをしっかりと行おう
  ブドウ球菌菌血症にペニシリンは使用できるか
  中枢神経への移行
  投与法
  使用上の注意
  アレルギーがある場合の代替薬
  おわりに
 2 アンピシリン・スルバクタムとピペラシリン・タゾバクタム
  βラクタマーゼとβラクタム阻害薬
  スペクトラムの違い,使い分け
  ペニシリンアレルギーがある場合の代替薬
  オキサセフェム系やセファマイシン系との使い分け
  薬価
 3 セファゾリンとoxacillin/nafcillin
  世代別セファロスポリン系薬の特徴
  セファゾリンのスペクトルと使用すべき臨床状況
  抗黄色ブドウ球菌薬としてのセファゾリン
  グラム陰性桿菌治療薬としてのセファゾリン
  セファゾリンの使い方
 4 セフォチアムとセフォタキシム/セフトリアキソン
  セフォチアム
  セフォタキシム/セフトリアキソン
 5 セフタジジムとセフェピム
  セフタジジム
  セフェピム
 6 メロペネムとイミペネム・シラスタチンとドリペネム
  使用される臨床状況:カルバペネムを使うべきか,使うべきでないか?
  カルバペネムを使うとして,どの薬剤を選ぶか
  カルバペネムの投与法
  カルバペネムの適正使用のすすめ方
 7 シプロフロキサシンとレボフロキサシンとモキシフロキサシン
  キノロン系薬の特徴
  シプロフロキサシン
  レボフロキサシン
  モキシフロキサシン
 8 ゲンタマイシンとトブラマイシンとアミカシン
  スペクトラム,使用すべき臨床状況
  投与法
  各薬剤の使い分け
  少なすぎる日本の保険適用量
 9 バンコマイシンとテイコプラニン
  スペクトラム
  PK/PDから考える投与法
  バンコマイシンとテイコプラニンの使い分け
  MRSA感染症の治療期間
 10 リネゾリドとダプトマイシン
  バンコマイシン,リネゾリド,ダプトマイシンの使い分け
  敗血症・心内膜炎に対する使い分け
  肺炎に対する使い分け:バンコマイシンとリネゾリドのどちらを用いるか?
  そのほかの感染症に対する使い分け
  副作用
 11 ドキシサイクリンとミノサイクリン
  使用すべき臨床状況
  ドキシサイクリンとミノサイクリンの使い分け
 12 アジスロマイシンとクラリスロマイシン
  スペクトラム
  使用すべき臨床状況
  副作用,相互作用
  column マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎
 13 クリンダマイシン
  スペクトラム,薬剤の特徴
  使用される臨床状況と投与法
  副作用
 14 メトロニダゾール
  スペクトラム
  薬物動態
  使用される臨床状況と投与法
  副作用,相互作用
  静注薬の国内承認が待たれる
 15 ST合剤
  古い薬を今使いこなす
  作用機序
  スペクトラム
  適応
  剤形,用法・用量
  副作用,相互作用

理解を深めるための27題-解答
索引

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初学者から「もう感染症の本は十分」と思われるベテランにもお薦め
書評者: 青木 眞 (感染症コンサルタント)
 現在,世界のカルバペネムの7割を消費するわが国に戻ったのは20年ほど前。当時,評者は「西欧かぶれ」の感染症医と呼ばれるにふさわしく,参加する学会,購読するジャーナル,棚に並ぶ成書,全てが「洋物」であった。理由はわが国でメトロニダゾールがアメーバ赤痢や嫌気性菌に使えるようになったのが2012年,わずか2年前(P197)という極めてユニークな風景と無関係ではなかったと思う。しかしこの20年で臨床感染症を取り巻く風景は一変した。わが国にも抗菌薬の適正使用を熱く語れる真の臨床感染症の訓練を受けた医師が次々と生まれたからである。グローバルスタンダードを意識した本書はそのような評者と価値を共有する仲間によってのみ執筆された。評者は各章を読み始めるとき,ついつい章末の執筆者の名前を見ては得心するのだった。

 しかし,本書の特徴を「グローバルスタンダードに基づいた抗菌薬の本」と定義するだけでは不十分となる。なぜなら本書は今までにない新しい切り口で書かれているからである。具体的には添付文書が同じ菌,同じ疾患に適応を示す抗菌薬同士の比較が記載されている。一見似たような抗菌薬を,より精密に使い分けるのが目的である。序文で編者いわく「抗菌薬の選択には理由が必要である」。広域抗菌薬を手にした社会が,思考停止にならないための警鐘から始まっている。

 今日,わが国の感染症専門医は米国の感染症専門医よりも,より精密に抗菌薬の適応を考えていると思う。「市中感染ならばレボフロキサシン」といった雑な整理ではなく,グラム染色で起炎菌を想定して可能な限り狭域の抗菌薬の使用を心掛ける日本の感染症専門医。ある意味,日本人で米国感染症専門医第一号になった喜舎場朝和先生の非常に繊細な世界である。彼らは闇雲にグローバルスタンダードを錦の御旗とする「西洋かぶれ」ではなく,日本の状況に合わせて創意工夫する,より緻密で創造的な感染症専門医といってもよい。

 感染症専門医とはペニシリンGとカルバペネムの強さが同じであることを知る人々である。抗菌薬の枯渇が声高に叫ばれる今日,抗菌薬をより丁寧に大切に使用する文化は,この新しい日本の感染症専門医からしか生まれない。「抗菌薬は使用すればするほどその価値が下がるという点では他の薬剤と一線を画している(p24)」これこそが編者,細川直登先生がよって立つ,本書の原点である。

 初学者から「もう感染症の本は十分」と思われるベテランにもお薦めします。
短期間の集中学習でも現場でも役立つ実践書
書評者: 徳田 安春 (地域医療機能推進機構本部研修センター長・総合診療教育チームリーダー)
 抗菌薬について調べたり勉強したりするときには何を使えばよいか。まず,サンフォードは意外に使いにくい。日本では使用できない薬剤があったり,用量も国内で認可されていない量が記載されていたりする。網羅的ではあるがポイントがわかりにくいので学習リソースには向かない。製造元の発行する添付文書はそれにも増して使いにくい。当該抗菌薬において抗菌作用のある菌種名を延々と羅列しているのをよく見るが,いくら眺めてもどのような感染症で適応があるのかが不明だ。

 そんな中で本書が出版された。読みやすく書かれたスタイルの本書は,抗菌薬の使用に関しての実践書として,とても役に立つ本である。まず,著者グループは臨床感染症の実地診療を精力的に行っている若手感染症医たちである。構成と内容をみると,実際の臨床医が行うスキームで抗菌薬の選択の在り方が書かれていることがわかる。また,日本の臨床シーンでよくあるピットフォールがわかりやすく書かれている。例えば,bioavailabilityのよくない第3世代セフェムの経口抗菌薬の使用が勧められないこと,抗菌薬の適正使用のための実践的やり方などだ。また,最近話題のピットフォールについてもよくまとめている。クリンダマイシンのBacteroides fragilis に対するカバーが不良になっていること,ニューキノロンの大腸菌カバーが不良になっていることなどだ。各章末についている27のクイズは,ピットフォールを意識したポイントをカバーしており,これを解いてみるだけでもかなりの学習効果が得られるであろう。

 抗菌薬について短期間で集中学習できる本としてのみならず,現場で繰り返し参照できる実践書としてもお薦めしたい。
抗菌薬の基本と微妙な使い分けのこつがよくわかる
書評者: 林 寛之 (福井大病院教授・総合診療部)
 「アメリカでは,アメリカでは」と連呼する留学帰りの医者は,ややもすると『出羽の神』とやゆされて煙たがられることがある。日本とアメリカの医療との大きな違いの一つに抗菌薬の使い方が挙げられる。今でこそ感染症の良書が散見されるが,以前はどうしても日本の感染症教育が遅れていたため,現場に立ち続けた年配の医者は,製薬会社や薬剤添付文書を頼りに独学し,抗菌薬の知識が自分でも系統立って整理がついておらず,弱点を突かれるようで『出羽の神』を煙たく思ったものだ。またアメリカと同様に高用量(本書では「標準使用量」としている)を使用すれば,保険適用外で削られたりもするので,そんな知識は役に立たないと現場では思われた。

 でももう大丈夫。本書は,日本で保険診療をする上でどう戦っていけばいいかをきちんと解説してくれる。保険適用範囲内であくまでも戦いたい医者,保険適用を超えて使用したい医者,双方が納得いく医療を本書で見つけることができる。決して『出羽の神』ではなく,日本で医療をしていく上でどう落としどころを見つけながらやっていけばいいのかがわかる点は,実地医家にとって本書は大きな福音となるだろう。

 第II部は薬剤の特性の基本を学ぶことができ,初学者にとって頭を整理するのに役に立つだろう。どんな敵(細菌)にどんな武器(抗菌薬)で戦うべきか,各武器(抗菌薬)の特徴はどうなっているのかの全体像がよくわかる。

 第III部はかゆいところに手が届く一押しの章だ。腕に自信のある実地医家にとっては,同じ系統の武器(抗菌薬)でも微妙な使い分けがわかっていい。「同じ系統だから何でもいいよ」とは言わなくなるはず。うんちく好きにはたまらない秀逸なまとめ方をしている。ドラえもんだって空を飛ぶときはタケコプターだけに頼っているのではないじゃないか。空を飛ぶ道具は他にもたくさんあって,「ふわふわ薬」「強力うちわ『風神』」「乗り物ボール」「乗り物アクセサリー」「フワフワオビ」「たんぽぽくし」「風ため機」「バードキャップ」他にも……あ,もういい?……とにかく微妙なさじ加減で使い分けるこつが満載だ。血となり肉となるように3回は読み返してほしい。本書を読んで抗菌薬を使い分ければ,抗菌薬もきっと泣いて喜ぶはず……?

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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