ニューロリハビリテーション
リハビリテーションの臨床が変わる!
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近年リハビリの現場で注目を集めている「ニューロリハビリテーション」。本書では本来の“Neuroscience based rehabilitation”の立場から、脳の可塑性をはじめとする最新の脳科学の知見から発展したCI療法などの各種ニューロリハビリテーションの実際について、運動制御や運動学習を中心とした視点から解説。高度な記載は随時コラムで補足するなど初学者にも分かりやすくまとめられている。
編集 | 道免 和久 |
---|---|
発行 | 2015年05月判型:B5頁:328 |
ISBN | 978-4-260-02009-1 |
定価 | 4,620円 (本体4,200円+税) |
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
序
内科的治療を行う場合,その基礎となる生理学の理解とともに病態生理学の理解が必須であることは当然である.また,骨折の治療において,骨の解剖学を理解せずに手術を行うこともあり得ない.同様に,運動障害を治療するリハビリテーション医学において運動制御や運動学習の脳科学を理解することは大前提であると考える.
ところが実際には,数十年前のごく単純な生理学だけをもとにして,リハビリテーション治療の「体系」ができ上がっていたり,極めて簡略化された脳の理解だけで運動療法全般が論じられていることが少なくない.近年の脳科学の発展は著しく,特に非侵襲脳機能イメージングの進歩により,脳の機能に関する知見は爆発的に増えている.その中には,運動制御や運動学習に関わる知見も多く,基礎研究の論文や研究実績の報道において,「リハビリテーションへの応用が期待される」などのフレーズを見かける機会も増えている.
さて,問題はその「応用」である.脳科学を臨床に応用するためには,脳科学と臨床の両方の理解が必要であり,その能力をもつ適切な橋渡し役が必要となる.特に脳の計算論などの発達により脳の理解のためには理工学系の知識が必須となっていることや,ロボットなどの機器を使ったリハビリテーションが増加していることなどから,その役割の重要性が認識されつつある.数多くのニューロリハビリテーションが考案されている今,成功している治療には,このような橋渡し役としてすぐれた研究者や臨床家が存在している.編者はリハビリテーションという臨床分野から初めて,Pennsylvania州立大学のMark L Latash先生,およびATR Human Information Processing Research Laboratory(ATR人間情報通信研究所)の川人光男先生のそれぞれの研究室に留学し,その後,脳科学のリハビリテーションへの応用をキーワードに活動してきた.また,基礎研究者との議論の中で,その知見を患者さんや社会のために役立てたいと願う研究者の熱意を感じてきた.一方で,基礎研究に関心をもたない臨床家や,どうせ麻痺は治らない,と最初から諦める臨床家も目にしてきた.運動障害の治療と運動制御理論は無関係と言われたこともあった.しかし,ノーベル賞クラスの基礎研究者にはできない臨床家の特権は何か,考えてみるとよい.それは,患者さんの訴えに耳を傾け,じっくり診察することとともに,基礎研究の成果をその患者さんに応用することである.この特権は,私たち臨床家にだけ与えられたものであると同時に,先端医療の推進は私たちの義務でもある.このことの重みを忘れてはならない.脳科学が進歩した今こそ,その成果を患者さんのために応用しようとする臨床家が必要とされている.
本書は,そのような思いから,編者らが取り組んでいるCI療法に限らず,広くニューロリハビリテーションの基礎となる知見とニューロリハビリテーションの代表例を紹介している.本書が,さらなる脳科学の発展を志す基礎研究者や,脳科学を応用して少しでも患者さんの回復を願う臨床家の一助となれば幸いである.
2015年4月
道免 和久
内科的治療を行う場合,その基礎となる生理学の理解とともに病態生理学の理解が必須であることは当然である.また,骨折の治療において,骨の解剖学を理解せずに手術を行うこともあり得ない.同様に,運動障害を治療するリハビリテーション医学において運動制御や運動学習の脳科学を理解することは大前提であると考える.
ところが実際には,数十年前のごく単純な生理学だけをもとにして,リハビリテーション治療の「体系」ができ上がっていたり,極めて簡略化された脳の理解だけで運動療法全般が論じられていることが少なくない.近年の脳科学の発展は著しく,特に非侵襲脳機能イメージングの進歩により,脳の機能に関する知見は爆発的に増えている.その中には,運動制御や運動学習に関わる知見も多く,基礎研究の論文や研究実績の報道において,「リハビリテーションへの応用が期待される」などのフレーズを見かける機会も増えている.
さて,問題はその「応用」である.脳科学を臨床に応用するためには,脳科学と臨床の両方の理解が必要であり,その能力をもつ適切な橋渡し役が必要となる.特に脳の計算論などの発達により脳の理解のためには理工学系の知識が必須となっていることや,ロボットなどの機器を使ったリハビリテーションが増加していることなどから,その役割の重要性が認識されつつある.数多くのニューロリハビリテーションが考案されている今,成功している治療には,このような橋渡し役としてすぐれた研究者や臨床家が存在している.編者はリハビリテーションという臨床分野から初めて,Pennsylvania州立大学のMark L Latash先生,およびATR Human Information Processing Research Laboratory(ATR人間情報通信研究所)の川人光男先生のそれぞれの研究室に留学し,その後,脳科学のリハビリテーションへの応用をキーワードに活動してきた.また,基礎研究者との議論の中で,その知見を患者さんや社会のために役立てたいと願う研究者の熱意を感じてきた.一方で,基礎研究に関心をもたない臨床家や,どうせ麻痺は治らない,と最初から諦める臨床家も目にしてきた.運動障害の治療と運動制御理論は無関係と言われたこともあった.しかし,ノーベル賞クラスの基礎研究者にはできない臨床家の特権は何か,考えてみるとよい.それは,患者さんの訴えに耳を傾け,じっくり診察することとともに,基礎研究の成果をその患者さんに応用することである.この特権は,私たち臨床家にだけ与えられたものであると同時に,先端医療の推進は私たちの義務でもある.このことの重みを忘れてはならない.脳科学が進歩した今こそ,その成果を患者さんのために応用しようとする臨床家が必要とされている.
本書は,そのような思いから,編者らが取り組んでいるCI療法に限らず,広くニューロリハビリテーションの基礎となる知見とニューロリハビリテーションの代表例を紹介している.本書が,さらなる脳科学の発展を志す基礎研究者や,脳科学を応用して少しでも患者さんの回復を願う臨床家の一助となれば幸いである.
2015年4月
道免 和久
目次
開く
第1章 ニューロリハビリテーション概論
1 脳の可塑性に関する歴史
2 ニューロリハビリテーションの時代へ
3 ニューロリハビリテーション臨床の歴史
第2章 ニューロリハビリテーションの基礎
1 脳の可塑性と皮質の再編成-使用依存性脳可塑性-
1 古典的な体性機能局在
2 体性局在の変化
3 幻肢痛患者における「皮質の再編成」
4 運動関連皮質の体性局在
5 巧緻性訓練による運動関連皮質の可塑性
6 皮質間の線維連絡の変化
7 大脳皮質における神経可塑性のメカニズム
2 運動制御理論
1 運動制御のために脳が解決すべき問題
2 古典的運動制御仮説
3 計算神経科学
4 冗長性の問題
3 古典的運動学習理論
1 シュミットのスキーマ理論
1 スキーマ理論の背景
2 スキーマ理論
3 スキーマ理論と運動学習
4 スキーマ理論と感覚運動学習
2 ダイナミカル・システム・アプローチによる運動制御・学習の研究
1 はじめに
2 自己組織化は拘束因子によってもたらされる
3 自己組織化をどのように研究するのか?
4 振子モデルのダイナミクスが表す周期運動パフォーマンスの特徴
5 身体運動を“ポテンシャルの場に展開するダイナミクス”として捉える
6 拘束因子としての動作生成の意図と習得された動作の記憶
7 ダイナミカル・システムの概念からみた運動学習
8 運動学習を促進するための指導の指針
9 まとめ
4 最近の基礎研究
1 はじめに
2 第一次運動野損傷動物モデルを用いた脳の機能回復メカニズムの研究
3 動物モデルを用いた脳損傷後の機能回復にかかわる脳研究
4 まとめ
5 脳計算論における運動学習理論
1 はじめに
2 計算論とは
3 運動学習理論
4 腕の運動学習
5 まとめ
6 運動学習理論の臨床的考察
1 脳科学を臨床的に応用する前の注意点
2 運動制御理論の対立から融合
3 フィードバック誤差学習の脳科学
4 フィードバック誤差学習の臨床
5 教師なし学習
6 強化学習
7 メタ学習
第3章 ニューロリハビリテーションの実際
1 CI療法
1 CI療法概説
1 概要
2 歴史
3 適応
4 エビデンス
5 CI療法と脳の可塑性
2 CI療法の実際
1 はじめに
2 CI療法の適応
3 CI療法の構成要素
4 CI療法の運営方法
5 まとめ
3 Transfer packageの実際
1 Transfer packageとは
2 UABと兵庫医科大学病院のtransfer packageの違い
3 Transfer packageの構成要素
4 まとめ
4 運動学習療法としてのCI療法
1 はじめに
2 麻痺手による訓練
3 課題指向型訓練
4 多様性と繰り返し
5 達成感(報酬),難易度調整,対象者とのかかわり方
6 Transfer package
7 まとめ
5 CI療法の最近の議論から
1 はじめに
2 CI療法の実践形態に関する議論
3 CI療法の効果予測に関する議論
4 脳卒中上肢以外に対するCI療法の臨床応用
5 両手動作訓練か? 片手動作訓練か?
6 CIAT
1 CIATの概要
2 CIATの治療内容
3 評価方法
4 CIATの臨床研究
5 CIATと脳機能イメージング
6 最近の知見
7 まとめ
2 ロボット療法
1 上肢リハビリロボット
1 はじめに
2 上肢ロボットの実際
3 上肢ロボットの効果
4 今後の課題
5 まとめ
2 下肢リハビリロボット
1 ニューロリハビリテーテョンにおけるロボット介入の意義
2 ロボットによる運動制御
3 代表的な歩行支援ロボット
4 ロボットの今後の展望
3 HANDS療法
1 はじめに
2 HANDS療法とは
3 HANDS療法の実際
4 研究成果
5 問題点と今後の課題
4 反復経頭蓋磁気刺激法,経頭蓋直流刺激法を用いたニューロリハビリテーション
1 はじめに
2 ニューロモデュレーション
3 ニューロモデュレーションを用いた治療
4 刺激方法の問題点
5 ニューロモデュレーションの応用
6 まとめ
5 促通反復療法などの神経筋促通手技
1 はじめに
2 従来の神経筋促通手技とその問題点
3 促通反復療法とその理論
4 促通反復療法のエビデンス
5 促通反復療法の適応と実際
6 神経筋促通手技の今後
6 下肢に対する機能的/治療的電気刺激
1 はじめに
2 機能的電気刺激(FES)療法とは(歴史・種類)
3 表面刺激型機能的電気刺激療法(使用方法)
4 体内埋め込み型磁気刺激駆動型装置
5 治療的電気刺激(TES)の効果
6 治療的電気刺激(TES)の今後の展望
7 下肢のその他のニューロリハビリテーション
1 はじめに
2 課題特異的訓練とそれに影響する因子
3 免荷式トレッドミル歩行訓練(BWSTT)
4 下肢装具の有用性
5 下肢麻痺に対するCI療法
8 認知系からのニューロリハビリテーションアプローチ
1 はじめに
2 ミラーセラピー
3 運動イメージ
4 プリズム適応
5 その他の認知系からのリハビリテーションアプローチ
6 まとめ
9 ニューロリハビリテーションとしてのボツリヌス療法
1 はじめに
2 痙縮に対するボツリヌス療法
3 痙縮の病態
4 ボツリヌス療法の効果と脳機能への影響
5 ボツリヌス療法と他の治療法の併用の意義
6 上肢のボツリヌス併用療法
7 下肢のボツリヌス併用療法
8 ニューロリハビリテーションとしてのボツリヌス療法の意義
第4章 ニューロリハビリテーションの展望
1 BCI
1 はじめに
2 頭皮脳波を利用したBCI
3 BCIにおけるリハビリテーション要素
4 BCIによるニューロリハビリテーションの試み
5 今後のBCIニューロリハビリテーション研究
6 まとめ
2 再生医療とニューロリハビリテーション
1 はじめに
2 幹細胞の基礎
3 中枢神経系の再生医療とは
4 再生医療の具体的なアプローチ方法
5 神経新生・軸索伸長に注目したリハビリテーションの効果
6 再生医療とリハビリテーションの併用
7 今後の展望
3 先端医療としてのニューロリハビリテーション
1 現代医療におけるニューロリハビリテーションの考え方
2 治療の有効性
3 運動学習療法としてのCI療法
4 運動学習療法
5 有効なハイブリッド化が次の課題
6 再生医療の時代
あとがき
索引
1 脳の可塑性に関する歴史
2 ニューロリハビリテーションの時代へ
3 ニューロリハビリテーション臨床の歴史
第2章 ニューロリハビリテーションの基礎
1 脳の可塑性と皮質の再編成-使用依存性脳可塑性-
1 古典的な体性機能局在
2 体性局在の変化
3 幻肢痛患者における「皮質の再編成」
4 運動関連皮質の体性局在
5 巧緻性訓練による運動関連皮質の可塑性
6 皮質間の線維連絡の変化
7 大脳皮質における神経可塑性のメカニズム
2 運動制御理論
1 運動制御のために脳が解決すべき問題
2 古典的運動制御仮説
3 計算神経科学
4 冗長性の問題
3 古典的運動学習理論
1 シュミットのスキーマ理論
1 スキーマ理論の背景
2 スキーマ理論
3 スキーマ理論と運動学習
4 スキーマ理論と感覚運動学習
2 ダイナミカル・システム・アプローチによる運動制御・学習の研究
1 はじめに
2 自己組織化は拘束因子によってもたらされる
3 自己組織化をどのように研究するのか?
4 振子モデルのダイナミクスが表す周期運動パフォーマンスの特徴
5 身体運動を“ポテンシャルの場に展開するダイナミクス”として捉える
6 拘束因子としての動作生成の意図と習得された動作の記憶
7 ダイナミカル・システムの概念からみた運動学習
8 運動学習を促進するための指導の指針
9 まとめ
4 最近の基礎研究
1 はじめに
2 第一次運動野損傷動物モデルを用いた脳の機能回復メカニズムの研究
3 動物モデルを用いた脳損傷後の機能回復にかかわる脳研究
4 まとめ
5 脳計算論における運動学習理論
1 はじめに
2 計算論とは
3 運動学習理論
4 腕の運動学習
5 まとめ
6 運動学習理論の臨床的考察
1 脳科学を臨床的に応用する前の注意点
2 運動制御理論の対立から融合
3 フィードバック誤差学習の脳科学
4 フィードバック誤差学習の臨床
5 教師なし学習
6 強化学習
7 メタ学習
第3章 ニューロリハビリテーションの実際
1 CI療法
1 CI療法概説
1 概要
2 歴史
3 適応
4 エビデンス
5 CI療法と脳の可塑性
2 CI療法の実際
1 はじめに
2 CI療法の適応
3 CI療法の構成要素
4 CI療法の運営方法
5 まとめ
3 Transfer packageの実際
1 Transfer packageとは
2 UABと兵庫医科大学病院のtransfer packageの違い
3 Transfer packageの構成要素
4 まとめ
4 運動学習療法としてのCI療法
1 はじめに
2 麻痺手による訓練
3 課題指向型訓練
4 多様性と繰り返し
5 達成感(報酬),難易度調整,対象者とのかかわり方
6 Transfer package
7 まとめ
5 CI療法の最近の議論から
1 はじめに
2 CI療法の実践形態に関する議論
3 CI療法の効果予測に関する議論
4 脳卒中上肢以外に対するCI療法の臨床応用
5 両手動作訓練か? 片手動作訓練か?
6 CIAT
1 CIATの概要
2 CIATの治療内容
3 評価方法
4 CIATの臨床研究
5 CIATと脳機能イメージング
6 最近の知見
7 まとめ
2 ロボット療法
1 上肢リハビリロボット
1 はじめに
2 上肢ロボットの実際
3 上肢ロボットの効果
4 今後の課題
5 まとめ
2 下肢リハビリロボット
1 ニューロリハビリテーテョンにおけるロボット介入の意義
2 ロボットによる運動制御
3 代表的な歩行支援ロボット
4 ロボットの今後の展望
3 HANDS療法
1 はじめに
2 HANDS療法とは
3 HANDS療法の実際
4 研究成果
5 問題点と今後の課題
4 反復経頭蓋磁気刺激法,経頭蓋直流刺激法を用いたニューロリハビリテーション
1 はじめに
2 ニューロモデュレーション
3 ニューロモデュレーションを用いた治療
4 刺激方法の問題点
5 ニューロモデュレーションの応用
6 まとめ
5 促通反復療法などの神経筋促通手技
1 はじめに
2 従来の神経筋促通手技とその問題点
3 促通反復療法とその理論
4 促通反復療法のエビデンス
5 促通反復療法の適応と実際
6 神経筋促通手技の今後
6 下肢に対する機能的/治療的電気刺激
1 はじめに
2 機能的電気刺激(FES)療法とは(歴史・種類)
3 表面刺激型機能的電気刺激療法(使用方法)
4 体内埋め込み型磁気刺激駆動型装置
5 治療的電気刺激(TES)の効果
6 治療的電気刺激(TES)の今後の展望
7 下肢のその他のニューロリハビリテーション
1 はじめに
2 課題特異的訓練とそれに影響する因子
3 免荷式トレッドミル歩行訓練(BWSTT)
4 下肢装具の有用性
5 下肢麻痺に対するCI療法
8 認知系からのニューロリハビリテーションアプローチ
1 はじめに
2 ミラーセラピー
3 運動イメージ
4 プリズム適応
5 その他の認知系からのリハビリテーションアプローチ
6 まとめ
9 ニューロリハビリテーションとしてのボツリヌス療法
1 はじめに
2 痙縮に対するボツリヌス療法
3 痙縮の病態
4 ボツリヌス療法の効果と脳機能への影響
5 ボツリヌス療法と他の治療法の併用の意義
6 上肢のボツリヌス併用療法
7 下肢のボツリヌス併用療法
8 ニューロリハビリテーションとしてのボツリヌス療法の意義
第4章 ニューロリハビリテーションの展望
1 BCI
1 はじめに
2 頭皮脳波を利用したBCI
3 BCIにおけるリハビリテーション要素
4 BCIによるニューロリハビリテーションの試み
5 今後のBCIニューロリハビリテーション研究
6 まとめ
2 再生医療とニューロリハビリテーション
1 はじめに
2 幹細胞の基礎
3 中枢神経系の再生医療とは
4 再生医療の具体的なアプローチ方法
5 神経新生・軸索伸長に注目したリハビリテーションの効果
6 再生医療とリハビリテーションの併用
7 今後の展望
3 先端医療としてのニューロリハビリテーション
1 現代医療におけるニューロリハビリテーションの考え方
2 治療の有効性
3 運動学習療法としてのCI療法
4 運動学習療法
5 有効なハイブリッド化が次の課題
6 再生医療の時代
あとがき
索引
書評
開く
大きな可能性を秘めた脳科学分野リハビリテーションの現在がわかる
書評者: 三上 靖夫 (京都府立医大病院教授・リハビリテーション医学)
脳の可塑性を生かしたリハビリテーションが目覚ましい進歩を遂げ,注目を集めている。基礎から順序立てて勉強したいと思っていたところ,脳科学分野のリハビリテーションを学ぶのに最適の書物が刊行された。編者の兵庫医科大学リハビリテーション医学教室主任教授である道免和久先生は,本年,教授就任10周年を迎えられた。道免先生にとって記念すべきこの年に,ご自身がライフワークとして取り組んでこられたニューロリハビリテーションのエッセンスを医学書院から上梓されたのである。
ニューロリハビリテーションというワードが講演や論文で広く用いられているが,コンセンサスを得た定義はまだない。本書の第1章の概論では「ニューロリハビリテーションとは,ニューロサイエンスとその関連した研究によって明らかになった脳の理論等の知見を,リハビリテーション医療に応用した概念,評価法,治療法,機器など」である「neuroscience based rehabilitation」と明確に定義されている(3,4ページ)。本書には,ニューロリハビリテーションの基礎から先端の治療法に至るまで網羅されている。
脳の可塑性の話から運動学習理論に進む第2章では,最新の知見を含んだ脳科学の基礎が凝縮されている。この章の内容を頭の中で整理した上で次章の臨床の項に進むと理解が深まるので,読み飛ばさずじっくり読んでいただきたい。難解な内容もあるが,豊富で分かりやすい図と読みやすいコラムが理解を助けてくれる。
第3章は,CI療法を中心とするニューロリハビリテーションの実際である。CI療法は,evidenceに乏しかったリハビリテーション医学をscienceに押し上げたニューロリハビリテーションの代表的治療法である。道免先生は,米国で開発されたCI療法をわが国に導入し,得られた知見をたくさんの著書や論文に記してこられた。CI療法の項は,本法を実践してきた兵庫医大病院リハビリテーション部のスタッフが最新の知見を織り交ぜながら,その神髄をまとめている。本章では,さらにロボット療法,HANDS療法,反復経頭蓋磁気刺激療法・経頭蓋直流刺激療法,神経筋促通手技,機能的/治療的電気刺激,ボツリヌス療法などについて,脳科学の切り口から解説されている。現在,リハビリテーションの最前線で行われている治療法が,脳の可塑性の上に成り立っていることが強調されている。
最後の4章は,「ニューロリハビリテーションの展望」と題され,開発が進むBCI(brain computer interface),リハビリテーションなしでは成し遂げられない再生医療,そして締めくくりとして,道免先生が先端医療としてのニューロリハビリテーションについてまとめられている。
本書は実践書ではなく,ニューロリハビリテーションを知るための読み物である。一度損傷されると二度と再生されないと言われてきた人間の脳が,実は可塑性を持ち,いかに可能性を秘めた臓器であるかを知らしめてくれる書物である。ニューロリハビリテーションの奥深さと面白さを感じてもらいたい。
書評者: 三上 靖夫 (京都府立医大病院教授・リハビリテーション医学)
脳の可塑性を生かしたリハビリテーションが目覚ましい進歩を遂げ,注目を集めている。基礎から順序立てて勉強したいと思っていたところ,脳科学分野のリハビリテーションを学ぶのに最適の書物が刊行された。編者の兵庫医科大学リハビリテーション医学教室主任教授である道免和久先生は,本年,教授就任10周年を迎えられた。道免先生にとって記念すべきこの年に,ご自身がライフワークとして取り組んでこられたニューロリハビリテーションのエッセンスを医学書院から上梓されたのである。
ニューロリハビリテーションというワードが講演や論文で広く用いられているが,コンセンサスを得た定義はまだない。本書の第1章の概論では「ニューロリハビリテーションとは,ニューロサイエンスとその関連した研究によって明らかになった脳の理論等の知見を,リハビリテーション医療に応用した概念,評価法,治療法,機器など」である「neuroscience based rehabilitation」と明確に定義されている(3,4ページ)。本書には,ニューロリハビリテーションの基礎から先端の治療法に至るまで網羅されている。
脳の可塑性の話から運動学習理論に進む第2章では,最新の知見を含んだ脳科学の基礎が凝縮されている。この章の内容を頭の中で整理した上で次章の臨床の項に進むと理解が深まるので,読み飛ばさずじっくり読んでいただきたい。難解な内容もあるが,豊富で分かりやすい図と読みやすいコラムが理解を助けてくれる。
第3章は,CI療法を中心とするニューロリハビリテーションの実際である。CI療法は,evidenceに乏しかったリハビリテーション医学をscienceに押し上げたニューロリハビリテーションの代表的治療法である。道免先生は,米国で開発されたCI療法をわが国に導入し,得られた知見をたくさんの著書や論文に記してこられた。CI療法の項は,本法を実践してきた兵庫医大病院リハビリテーション部のスタッフが最新の知見を織り交ぜながら,その神髄をまとめている。本章では,さらにロボット療法,HANDS療法,反復経頭蓋磁気刺激療法・経頭蓋直流刺激療法,神経筋促通手技,機能的/治療的電気刺激,ボツリヌス療法などについて,脳科学の切り口から解説されている。現在,リハビリテーションの最前線で行われている治療法が,脳の可塑性の上に成り立っていることが強調されている。
最後の4章は,「ニューロリハビリテーションの展望」と題され,開発が進むBCI(brain computer interface),リハビリテーションなしでは成し遂げられない再生医療,そして締めくくりとして,道免先生が先端医療としてのニューロリハビリテーションについてまとめられている。
本書は実践書ではなく,ニューロリハビリテーションを知るための読み物である。一度損傷されると二度と再生されないと言われてきた人間の脳が,実は可塑性を持ち,いかに可能性を秘めた臓器であるかを知らしめてくれる書物である。ニューロリハビリテーションの奥深さと面白さを感じてもらいたい。