妊婦健診に一歩差がつく
産科超音波検査

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超音波検査の基本手技や画像の判読法、観察のポイントなど、豊富な画像を用いて解説。検者としてだけでなく、検査補助者として助産師が知っておくとよい知識をぎゅっと凝縮。妊婦・胎児の健康管理だけでなく、保健指導のツールとして役立てる能力を養う。
谷垣 伸治
発行 2014年04月判型:B6頁:120
ISBN 978-4-260-01947-7
定価 2,420円 (本体2,200円+税)

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読者の皆さんへ

 「今日,超音波しないんですか」と訊かれた経験はありませんか。実は,胎児超音波検査の標準は明らかではありません。では,超音波検査をいつ行い,何を,どこまで見たらよいのでしょうか。
 そこで本書は,(1)画像を通して,妊産婦と胎児の状態をイメージできる,(2)画像を説明できる,さらには,(3)その結果を健診・指導にいかす,ことを目標に,検者として,また検査補助者として知っておいて欲しい知識をコンパクトにまとめました。
 第I章では,月齢ごとに,胎児の発育過程と主な検査・保健指導項目を,超音波画像を交えてまとめました。第II章では,超音波検査装置の基本的な操作法と,きれいな画像の作り方を解説してあります。第III章では,いよいよ胎児体重計測にチャレンジです。プローブの動かし方など,実際の手順がイメージできるよう,step by stepで説明しました。
 また,検査を行っていく中で,「あれ? 何か変」と思うような画像に遭遇するかもしれません。そこで,第IV章では,疾患発見の端緒になる異常画像をまとめました。疾患理解と患者説明に役立てられるよう,医師が行っている胎児スクリーニングについても簡単に解説しました。さらに,超音波検査に関連して,胎児心拍モニタリングを含む胎児のwell-beingの評価や超音波に関する略語も加えました。
 助産外来の拡がりにより,プローブを握ることになった助産師さんも多いと思います。本書を契機に,超音波検査が妊婦・胎児と皆さんとを繋なぐ架け橋になれば幸いです。
 最後に,本書の編集という以上にお力添え頂いた医学書院 山内梢さんに深甚の謝辞を捧げます。

 平成26年3月吉日
 谷垣 伸治

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I.胎児の発育過程

II.超音波検査の基本
 超音波検査の種類
 画像の種類とモニターのみかた
 撮像断面
 画像に関連した設定
 アーチファクト

III.計測と観察
 検査時期・回数
 計測・観察項目
 胎位の確認
 羊水量の計測
 児頭大横径(BPD)の計測
 腹部周囲長(AC)の計測
 大腿骨長(FL)の計測
 胎児発育の評価
 子宮頸管長の計測
 血流測定

IV.異常所見
 異常所見と胎児管理
 子宮頸部の異常
 頭部の異常
 胸部の異常
 心臓の異常
 腹部の異常
 四肢・骨格の異常
 羊水量の異常
 臍帯動脈の数の異常

V.胎児well-beingの評価
 胎児心拍数モニタリング
 BPSとmodified BPS

付録1.産科超音波検査でよく用いられる略語
付録2.児頭大横径(BPD)の妊娠週数ごとの基準値
付録3.頭囲(HC)の妊娠週数ごとの基準値
付録4.腹部周囲長(AC)の妊娠週数ごとの基準値
付録5.大腿骨長(FL)の妊娠週数ごとの基準値
付録6.推定児体重(EFW)の妊娠週数ごとの基準値

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この一冊で妊娠・分娩期の診断ができるようになる
書評者: 齋藤 益子 (帝京科学大教授・看護学)
 今日,産科施設では毎回の妊婦健診で当然のように超音波機器が用いられており,助産外来を担う助産師にも超音波機器の操作は必須能力になっている。助産師教育課程でも,超音波検査は妊婦健診の必要項目で,教育機関では妊娠期の超音波診断に関する教育が強化されており,卒後教育でも超音波検査に関する研修の機会は増えている。

 一方,臨床現場で用いられている超音波装置は3D,4Dなどの高度な機能を有する高額なもので,妊婦健診で気軽に操作する助産師は多くはない。そのため機器の操作に不慣れで,触れるのを臆する気持ちがあり,触れないから慣れないという悪循環ができあがっている。本書は,そんな気後れする助産師たちが,超音波検査を身近に感じ,超音波機器に「触れてみる」という最初の一歩を踏み出す後押しをしてくれる。そして「超音波検査をやってみよう,どうしたらいいかな?」という思いにズバリ応えてくれている。まさに,助産師たちの待ち焦がれていた一冊とも言えよう。

 第I章では,胎児の発育過程とそれに伴う留意点や保健指導項目が丁寧に書かれており,妊娠週数に沿って発育をチェックし,保健指導につなぐノウハウが一目瞭然に示されている。そして週数ごとに「何を見て何を計測するのか」を掴むことができ,その結果からどのような指導をすれば良いのかがわかる。第II章では,超音波装置の基礎的理解のために,表示モードや色調,周波数,アーチファクトなど聞き慣れない難解な電気工学的説明がサラリと理解しやすく記載されている。第III章では,計測と観察の仕方を妊娠週数ごとの観察項目に沿って,わかりやすい明瞭な画像とそれぞれにイラストを付ける丁寧さで示されており,何といっても非常に見やすく活用しやすい。ここまででも助産師には十分であるが,さらに第IV章では妊娠中の異常所見の画像にも触れ,第V章では,胎児well-beingのモニタリングの所見,巻末には産科超音波検査で用いられる略語や,各超音波測定値を評価するための基準値が丁寧に示されており,この一冊で妊娠・分娩期の診断ができるようにまとめられている。

 見やすい,理解しやすい,具体的で活用しやすいという三拍子そろった本書は,助産学生にも必須の一冊といえよう。また,大きさが白衣のポケットに入るコンパクトサイズで,臨床の助産師にとっても忙しいなかで,肌身離さず身に付けておける有用な一冊になるはずである。著者は,助産師への超音波検査の講演の経験が多く,臨床で超音波操作ができるようになりたいという助産師の思いに応えて本書を上梓したとのことである。本書を手にすると「これなら私にもできる」という気持ちになること間違いなしである。助産師に対する優しいエールの感じられる本で,妊産婦に関わる全ての助産師の座右の書としてぜひお薦めしたい。
学生,新人助産師必携 コンパクトにまとまった産科超音波検査テキスト
書評者: 小笹 幸子 (聖バルナバ助産師学院教務部長)
 助産師は対象妊婦の健康診査から,ガイドラインに従って,対象妊婦を独自で管理してよいのか,産婦人科医が管理すべきかを識別ができなくてはならない。包括的な胎児の健康状態の評価法として,バイオフィジカルプロファイルスコアなどがあり,胎児心拍数モニタリングと産科超音波の所見の判読が求められている。助産師国家試験出題基準にも,母体,胎児の健康診査に必要な検査についての基礎知識として,超音波検査機器の使用法・超音波胎児計測・超音波血流計測がある。その一方,法的な整備はなく,看護では画像そのものを判読し判断する経験をしてきていない。初学者にとって,超音波画像の白黒やカラードプラーの映像は,妊婦さんと同様,説明されるまで「なにがなんやら」である。

 本書は,産科超音波検査でどこを見るべきで,それはどのように描出されるのか,イメージしやすいようイラストが添えられ,正常と異常がわかりやすく対比されている。超音波検査の基本や用語の解説はよりすぐってあり,明快である。また超音波検査に関連して,モニタリング,陣痛周期,胎児下降度など覚えなくてはならない数値がやたらと多いが,ポイントとなる胎児の発育過程や計測値などがコンパクトに示されている。

 本学の妊娠期の実習では,妊婦健診の待ち時間から付き添ってお話を伺い,診察の介助後に保健相談させていただく。妊娠時期(出産予定日がどう決定され,現在の妊娠週数は妥当か),妊娠経過(母体の健康状態や子宮頸管長に問題はないか),胎児の発育と健康状態,体位,胎児付属物に異常はないかを評価する。さらに,妊婦の生活やマイナートラブルや心理状態をアセスメントし,保健相談(指導)を行う。「何も問題がない」妊婦さんでも,妊娠の時期に応じた保健指導の項目がある。これら一連の流れを体験し,その内容を教員や指導者に伝える。当日に同意を得られる妊婦さんに行うため,ぶっつけ本番。また,お待たせする時間をなるべく短くすべく,助産診断せねばならない。これらを短時間で行わなければならないという不安や焦りのなかで,本書が大いに活用されると思う。

 知識や数値が頭に入っていないとき,テキストが身近にあればと思う人も多いだろう。実習で経験を積んでいく上で,即時参照できる本書は学生にとって大変に有用である。また,実習時の学生の荷物は重いが,ユニホームのポケットにすっきり入り,すぐに取り出して確認できるのも利点である。助産師学生だけでなく,新人助産師,助産師外来を担当し始める方がたにもお薦めの一冊である。

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