M-Test
経絡と動きでつかむ症候へのアプローチ
すべての医療職者のための東洋医学的な診断と治療
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M-Testとは、「動き」の分析によって痛みなどの症候の原因を探り、医療職者であれば誰でも治療すべき経絡を容易に、迅速に、的確に判断し、診断・治療につなげることができる方法である。西洋医学の方法論だけでは見えてこない病気の側面を観察することで、EBMとNBMの橋渡しとなる治療を実現できるM-Testのすべてがわかる1冊。鍼灸師のみならず医師、理学療法士、看護師などにもお勧めしたい。臨床にすぐに役立つ別冊付録付。
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
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はじめに(向野 義人)/序論
はじめに
2008年11月,米国のカリフォルニア州,サンディエゴで開催されたM-Testセミナーで通訳を務めてくださったStephen Brown先生が,私の古くからの友人である金澤信二郎先生に,「金澤さん,経絡テストが既成の流派のテクニックと違うのは,死んでいないんですよ。息づいて成長し続けているんです」と言われた1)とお聞きして,ここ最近のM-Test(経絡テスト)の成長の証しをわかりやすく示すことが必要だと考え,本書を執筆した。
本書は,医療に携わるすべての人を対象としている。本書に示した診断および治療法は,これまで東洋医学を学び実践してきた人とそうでない人との壁を越え,両者が共通の理解を得ることが可能な方法論である。
従来の鍼灸治療の多くは,脈診や腹診などを学ぶ必要があり,診断のためにかなりの修行を積むことを求められるので,初学者には取り組みにくかった。しかしM-Testは,理学的検査法にも似た動きで診断を行うので,東洋医学に接する機会の少ない医師や理学療法士,看護師なども取り組みやすい。さらには,治療手順も確立しており,図式化した手順書どおりに進めることができるので,まずは試みてはいかがだろうか。
これまで,非常に多くの方々から指導を受け,また親しく仕事をさせてもらったおかげで本書は完成した。この場を借りて深甚なる感謝を捧げたい。また,本書の共著者である松本美由季女史,山下なぎさ女史,イラストレーションを描いてくださった久保隆夫氏,表紙に躍動感あふれる墨絵を描いてくださった茂本ヒデキチ氏,そして出版にご尽力いただいた医学書院および担当者に感謝したい。特に,図表の作成・編集にあたって,いかんなく発揮された山下なぎさ女史の能力と献身的な協力なしには本書は完成しなかったことを申し添えたい。
最後に,筆者を鍼灸という素晴らしい世界に導いてくれた亡き父に本書を献呈したい。このささやかな仕事が病気に苦しんでいる方々の救いに役立ちますように。
2012年5月
向野 義人
序論
M-Test(経絡テスト)は,誕生してやがて20年が経過する。その間,人の成長と同じように成長し続けて,その成長の過程はこれまで出版された5冊の本2~6)の中で表現されてきた。しかしながら,ここ数年の著しい成長については未だまとめられていない。
当初,M-Testは「経絡テスト」と呼称していたが,2006年にケア・ワークモデル研究会(Coffee Break 1,6頁参照)を設立するにあたり,より広い人が利用できる診断治療体系の確立を目指して「M-Test」と簡潔な呼称に改めた。経絡という言葉を避けたのは,この言葉が医学界であまり知られていないためにスムーズな普及を妨げる要因になると考えたからである。経絡テストを「The Meridian Test」,「Motion-induced somatic response Test」とも表現していたので,M-Testはこれらの頭文字をとったことになる。好都合にも筆者の名前であるMukainoのMを意味する名称ともなった。
なぜ,M-Testは誕生したのか。これから学ぼうとしている人のために,その背景と開発された経緯について語ってみよう。それを知ることがM-Testについての理解を深める確実な道となるであろう。
鍼灸師の息子として生を受けた筆者は,小児期からずっと父の治療で治っていく人を垣間見ながら,いつの日か鍼灸の未知なる素晴らしい力を医療の中で生かしたいとの思いを抱き続けて医学を志した。内科医として働き始めた1971年以来,主として大学病院で鍼治療を応用しながら,西洋医学的手段のようなわかりやすいスタンダードな方法がないものかと思い悩んできた。転機は1989年に訪れた。新設される体育学部大学院のスポーツ医学部門の責任者として転属したからである。
これをきっかけに,体育館に併設されている診療室で多くのスポーツ選手の鍼治療に携わるようになり,あるとき診察した19歳の女子バレーボール選手からスタンダードな方法を見出すヒントを得た。彼女はスパイク時の肩痛を訴えて受診したが,肩には外見上異常がなかった。よく話を聞くと,数日前の練習中に転倒して膝や足首の外側に軽い打撲を受けていたが気にもとめていない様子だった。しかし,押さえてみると打撲部位に著明な圧痛があった。そこに刺鍼したところスパイク時の肩痛が即座に消失した。圧痛部位が胆経(GB)の陽陵泉(GB34)と丘墟(GB40)に相当したことから,次のような仮説を立てた。①局所のわずかな異常でもからだの動きの連鎖に影響し,動きに伴う症状の原因となる。②経絡・経穴を応用するとからだの動きに伴う症状を指標とした診断・治療法を開発できる。この仮説に基づいて他の例を観察しているうちに,ある時,“目から鱗が落ちる”ように,経絡と姿勢やからだの動きをリンクすることで,動きに伴う身体症状を指標とした診断および治療ができることがわかった。
このテストは痛みなどを誘発ないし増悪させる動きの分析から治療すべき経絡を判断する方法で,治療すべき経絡を容易に,迅速に,的確に判断でき,しかも,病態の変化も把握しやすく,同時に効果判定の指標としても有用であった。体育学部転属時から兼務している大学病院でも運動器に限らず,さまざまな疾患や病態にも応用してみて,これはスタンダードな方法論になりえると確信した。1992年のことである。
現在,医師になってすでに40年が経過したが,その後のM-Testの成長で以下のような特徴が明らかになり,医療に確実に生かせる方法論をやっと世に出せたと思っている。
M-Testは東洋医学の経絡・経穴の考え方を基礎とし,誰もが容易に理解できる身体の動きに伴う症状から病態を把握できる。その特徴は西洋医学では見えてこない病気の側面を観察することを可能とし,患者1人ひとりが抱える症状・病態に合わせた医療を実現させる。また,治療プロセスから日常生活動作で起こる症状に潜むからだの歪みを推理できるので,どのようにケアすればよいかがわかる。M-Testは安全で簡便であり,診断・効果は的確かつ迅速である。また,管理・標準化が容易で構造化が可能であることから,診療プロセスの標準化システムを構築できる。
2006年には,以前より懸案であった皮膚を傷つけない刺激ツールであるマイクロコーン(第6章で詳述)が商品化され,刺激の定量化が実現して,この標準化システムの構築はさらにはずみがついた。M-Testとマイクロコーンと皮膚の特性とが相互に影響を及ぼし合って展開される数々の現象は,これまでの医学の常識では測ることのできない未知の領域である。この原理を究め,臨床医学に広く応用する道を開くことは医療に新たな光を当てることに繋がるであろう。
M-Testは,職種や専門の壁を越え,医療者相互の共通言語となりうる。さらには患者との普遍的な共通言語となり,患者個々人の抱える症状・苦痛を安全に的確に,かつ迅速に和らげるケアを実現する。さらに,その成果に基づいたケア・ワークモデルを開発できる。また,患者自らがセルフメディケーションに参加するという,患者参加型の新たな医療の実現に貢献できるにちがいない。
参照文献
1)Kanazawa S:Meridian Test Seminar. North American Journal of Oriental Medicine 16(45), 2009
2)向野義人,他:経絡テスト.医歯薬出版,1999
3)向野義人:経絡テストによる診断と鍼治療.医歯薬出版,2002
4)向野義人:スポーツ鍼灸ハンドブック.文光堂,2003
5)Mukaino Y:Sports Acupuncture:The Meridian Test and Its Applications Eastland press,2008
6)向野義人,他:競技力向上と障害予防に役立つ経絡ストレッチと動きづくり.大修館書店,2006
はじめに
2008年11月,米国のカリフォルニア州,サンディエゴで開催されたM-Testセミナーで通訳を務めてくださったStephen Brown先生が,私の古くからの友人である金澤信二郎先生に,「金澤さん,経絡テストが既成の流派のテクニックと違うのは,死んでいないんですよ。息づいて成長し続けているんです」と言われた1)とお聞きして,ここ最近のM-Test(経絡テスト)の成長の証しをわかりやすく示すことが必要だと考え,本書を執筆した。
本書は,医療に携わるすべての人を対象としている。本書に示した診断および治療法は,これまで東洋医学を学び実践してきた人とそうでない人との壁を越え,両者が共通の理解を得ることが可能な方法論である。
従来の鍼灸治療の多くは,脈診や腹診などを学ぶ必要があり,診断のためにかなりの修行を積むことを求められるので,初学者には取り組みにくかった。しかしM-Testは,理学的検査法にも似た動きで診断を行うので,東洋医学に接する機会の少ない医師や理学療法士,看護師なども取り組みやすい。さらには,治療手順も確立しており,図式化した手順書どおりに進めることができるので,まずは試みてはいかがだろうか。
これまで,非常に多くの方々から指導を受け,また親しく仕事をさせてもらったおかげで本書は完成した。この場を借りて深甚なる感謝を捧げたい。また,本書の共著者である松本美由季女史,山下なぎさ女史,イラストレーションを描いてくださった久保隆夫氏,表紙に躍動感あふれる墨絵を描いてくださった茂本ヒデキチ氏,そして出版にご尽力いただいた医学書院および担当者に感謝したい。特に,図表の作成・編集にあたって,いかんなく発揮された山下なぎさ女史の能力と献身的な協力なしには本書は完成しなかったことを申し添えたい。
最後に,筆者を鍼灸という素晴らしい世界に導いてくれた亡き父に本書を献呈したい。このささやかな仕事が病気に苦しんでいる方々の救いに役立ちますように。
2012年5月
向野 義人
序論
M-Test(経絡テスト)は,誕生してやがて20年が経過する。その間,人の成長と同じように成長し続けて,その成長の過程はこれまで出版された5冊の本2~6)の中で表現されてきた。しかしながら,ここ数年の著しい成長については未だまとめられていない。
当初,M-Testは「経絡テスト」と呼称していたが,2006年にケア・ワークモデル研究会(Coffee Break 1,6頁参照)を設立するにあたり,より広い人が利用できる診断治療体系の確立を目指して「M-Test」と簡潔な呼称に改めた。経絡という言葉を避けたのは,この言葉が医学界であまり知られていないためにスムーズな普及を妨げる要因になると考えたからである。経絡テストを「The Meridian Test」,「Motion-induced somatic response Test」とも表現していたので,M-Testはこれらの頭文字をとったことになる。好都合にも筆者の名前であるMukainoのMを意味する名称ともなった。
なぜ,M-Testは誕生したのか。これから学ぼうとしている人のために,その背景と開発された経緯について語ってみよう。それを知ることがM-Testについての理解を深める確実な道となるであろう。
鍼灸師の息子として生を受けた筆者は,小児期からずっと父の治療で治っていく人を垣間見ながら,いつの日か鍼灸の未知なる素晴らしい力を医療の中で生かしたいとの思いを抱き続けて医学を志した。内科医として働き始めた1971年以来,主として大学病院で鍼治療を応用しながら,西洋医学的手段のようなわかりやすいスタンダードな方法がないものかと思い悩んできた。転機は1989年に訪れた。新設される体育学部大学院のスポーツ医学部門の責任者として転属したからである。
これをきっかけに,体育館に併設されている診療室で多くのスポーツ選手の鍼治療に携わるようになり,あるとき診察した19歳の女子バレーボール選手からスタンダードな方法を見出すヒントを得た。彼女はスパイク時の肩痛を訴えて受診したが,肩には外見上異常がなかった。よく話を聞くと,数日前の練習中に転倒して膝や足首の外側に軽い打撲を受けていたが気にもとめていない様子だった。しかし,押さえてみると打撲部位に著明な圧痛があった。そこに刺鍼したところスパイク時の肩痛が即座に消失した。圧痛部位が胆経(GB)の陽陵泉(GB34)と丘墟(GB40)に相当したことから,次のような仮説を立てた。①局所のわずかな異常でもからだの動きの連鎖に影響し,動きに伴う症状の原因となる。②経絡・経穴を応用するとからだの動きに伴う症状を指標とした診断・治療法を開発できる。この仮説に基づいて他の例を観察しているうちに,ある時,“目から鱗が落ちる”ように,経絡と姿勢やからだの動きをリンクすることで,動きに伴う身体症状を指標とした診断および治療ができることがわかった。
このテストは痛みなどを誘発ないし増悪させる動きの分析から治療すべき経絡を判断する方法で,治療すべき経絡を容易に,迅速に,的確に判断でき,しかも,病態の変化も把握しやすく,同時に効果判定の指標としても有用であった。体育学部転属時から兼務している大学病院でも運動器に限らず,さまざまな疾患や病態にも応用してみて,これはスタンダードな方法論になりえると確信した。1992年のことである。
現在,医師になってすでに40年が経過したが,その後のM-Testの成長で以下のような特徴が明らかになり,医療に確実に生かせる方法論をやっと世に出せたと思っている。
M-Testは東洋医学の経絡・経穴の考え方を基礎とし,誰もが容易に理解できる身体の動きに伴う症状から病態を把握できる。その特徴は西洋医学では見えてこない病気の側面を観察することを可能とし,患者1人ひとりが抱える症状・病態に合わせた医療を実現させる。また,治療プロセスから日常生活動作で起こる症状に潜むからだの歪みを推理できるので,どのようにケアすればよいかがわかる。M-Testは安全で簡便であり,診断・効果は的確かつ迅速である。また,管理・標準化が容易で構造化が可能であることから,診療プロセスの標準化システムを構築できる。
2006年には,以前より懸案であった皮膚を傷つけない刺激ツールであるマイクロコーン(第6章で詳述)が商品化され,刺激の定量化が実現して,この標準化システムの構築はさらにはずみがついた。M-Testとマイクロコーンと皮膚の特性とが相互に影響を及ぼし合って展開される数々の現象は,これまでの医学の常識では測ることのできない未知の領域である。この原理を究め,臨床医学に広く応用する道を開くことは医療に新たな光を当てることに繋がるであろう。
M-Testは,職種や専門の壁を越え,医療者相互の共通言語となりうる。さらには患者との普遍的な共通言語となり,患者個々人の抱える症状・苦痛を安全に的確に,かつ迅速に和らげるケアを実現する。さらに,その成果に基づいたケア・ワークモデルを開発できる。また,患者自らがセルフメディケーションに参加するという,患者参加型の新たな医療の実現に貢献できるにちがいない。
参照文献
1)Kanazawa S:Meridian Test Seminar. North American Journal of Oriental Medicine 16(45), 2009
2)向野義人,他:経絡テスト.医歯薬出版,1999
3)向野義人:経絡テストによる診断と鍼治療.医歯薬出版,2002
4)向野義人:スポーツ鍼灸ハンドブック.文光堂,2003
5)Mukaino Y:Sports Acupuncture:The Meridian Test and Its Applications Eastland press,2008
6)向野義人,他:競技力向上と障害予防に役立つ経絡ストレッチと動きづくり.大修館書店,2006
目次
開く
はじめに
本書をお読みになる前に
序論
第1章 M-Test概説
1.M-Testとは
2.M-Testを特徴づけるポイント
3.M-Testが可能とすること
4.応用可能な領域
第2章 理論的背景(基礎編)
1.ヒトの動きの分析と治療
2.M-Testとヒトの動きの分析
3.治療点としての経穴
4.まとめ
第3章 M-Testの実際(基礎編)
1.M-Test所見用紙
2.M-Test所見と陽性動作
3.基礎治療
4.治療手順
5.有効な経穴/刺激部位の見つけ方と治療法
6.基礎治療ダイジェスト
第4章 理論的背景(中・上級編)
1.序論
2.ヒトの動きと五行
3.M-Testと五行
4.治療点としての五行穴
5.その他の治療点
6.まとめ
第5章 M-Testの実際(中・上級編)
1.Step 3の治療
2.所見からツボを読む
第6章 治療器具と手技
1.治療器具
2.手技
第7章 症例
第8章 M-Test症状別治療-初学者のためのファーストステップ
1.使用手順と使用例
2.症状別治療
1)肩こり,頸こり,寝違い
2)肩痛,肩や腕のだるさ,背中のはり
3)肘の痛み
4)手首の痛み
5)腰痛
6)股関節痛
7)膝痛
8)足関節痛
9)頭痛
10)こむら返り,下腿の痛み,アキレス腱部の痛み
11)胃腸症状
12)頭位性めまい
13)月経痛,月経不順
14)排尿異常
15)眼精疲労
16)足のふるえ
17)手のふるえ
おわりに-将来展望・M-Testのこれから
参照文献
所見用紙
索引
MEMO
1.症状の程度をスコアでうまく表現できない場合
2.代償運動とは
3.経絡の流注や皮膚のテンションを考慮する
4.なぜ患者の自覚症状のスコアが0になるまで治療をしないのか?
5.専門医へのコンサルト
Coffee Break
1.ケア・ワークモデル研究会とは
2.経穴に2つのロケーションが!? どちらが有効?
3.歯科医の症例では,どのようなストレッチを指導したのか?
4.M-Testの海外事情(1)
5.M-Testの海外事情(2)
6.M-Testに関する研究
7.M-Testの国内事情
8.だれでもM-Testを学ぶことができるのか?
9.深い鍼でも浅い鍼でも効果に差はない!?
別冊付録
・M-Test 7原則
・所見用紙(初心者用)
・24穴のロケーション
・所見の取り方と診断
・上肢前面の治療手順(基礎治療)
・下肢前面の治療手順(基礎治療)
・上肢後面の治療手順(基礎治療)
・下肢後面の治療手順(基礎治療)
・上肢側面の治療手順(基礎治療)
・下肢側面の治療手順(基礎治療)
・24穴サークル(日本語:漢字表記版)
・24穴サークル(WHO表記版)
本書をお読みになる前に
序論
第1章 M-Test概説
1.M-Testとは
2.M-Testを特徴づけるポイント
3.M-Testが可能とすること
4.応用可能な領域
第2章 理論的背景(基礎編)
1.ヒトの動きの分析と治療
2.M-Testとヒトの動きの分析
3.治療点としての経穴
4.まとめ
第3章 M-Testの実際(基礎編)
1.M-Test所見用紙
2.M-Test所見と陽性動作
3.基礎治療
4.治療手順
5.有効な経穴/刺激部位の見つけ方と治療法
6.基礎治療ダイジェスト
第4章 理論的背景(中・上級編)
1.序論
2.ヒトの動きと五行
3.M-Testと五行
4.治療点としての五行穴
5.その他の治療点
6.まとめ
第5章 M-Testの実際(中・上級編)
1.Step 3の治療
2.所見からツボを読む
第6章 治療器具と手技
1.治療器具
2.手技
第7章 症例
第8章 M-Test症状別治療-初学者のためのファーストステップ
1.使用手順と使用例
2.症状別治療
1)肩こり,頸こり,寝違い
2)肩痛,肩や腕のだるさ,背中のはり
3)肘の痛み
4)手首の痛み
5)腰痛
6)股関節痛
7)膝痛
8)足関節痛
9)頭痛
10)こむら返り,下腿の痛み,アキレス腱部の痛み
11)胃腸症状
12)頭位性めまい
13)月経痛,月経不順
14)排尿異常
15)眼精疲労
16)足のふるえ
17)手のふるえ
おわりに-将来展望・M-Testのこれから
参照文献
所見用紙
索引
MEMO
1.症状の程度をスコアでうまく表現できない場合
2.代償運動とは
3.経絡の流注や皮膚のテンションを考慮する
4.なぜ患者の自覚症状のスコアが0になるまで治療をしないのか?
5.専門医へのコンサルト
Coffee Break
1.ケア・ワークモデル研究会とは
2.経穴に2つのロケーションが!? どちらが有効?
3.歯科医の症例では,どのようなストレッチを指導したのか?
4.M-Testの海外事情(1)
5.M-Testの海外事情(2)
6.M-Testに関する研究
7.M-Testの国内事情
8.だれでもM-Testを学ぶことができるのか?
9.深い鍼でも浅い鍼でも効果に差はない!?
別冊付録
・M-Test 7原則
・所見用紙(初心者用)
・24穴のロケーション
・所見の取り方と診断
・上肢前面の治療手順(基礎治療)
・下肢前面の治療手順(基礎治療)
・上肢後面の治療手順(基礎治療)
・下肢後面の治療手順(基礎治療)
・上肢側面の治療手順(基礎治療)
・下肢側面の治療手順(基礎治療)
・24穴サークル(日本語:漢字表記版)
・24穴サークル(WHO表記版)
書評
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すべての医療職者のための東洋医学的な診断と治療法
書評者: 水間 正澄 (昭和大教授・リハビリテーション医学)
“M-test”とは,初めて耳にする方も多いことと思う。副題に『経絡と動きでつかむ症候へのアプローチ』とあり,東洋医学的な診断法や治療に関する書であろうことがわかる。
著者である向野義人氏は内科医であるが,長年にわたり鍼灸治療の西洋医学への応用を模索されておられ,従来からの手技を用いて内科診療の中に鍼治療を応用されていた。本書のタイトルである“M-Test”の開発は,著者が現職である福岡大学でスポーツ医学に携わるようになってからであり,あるスポーツ選手を診療したときにひらめいた“症候へのアプローチ”であったとのことである。すなわち,従来の鍼治療の方法である“症状とツボ“との関係で鍼治療を行うのではなく,症状発現の誘因,原因となっている部位や関連する経穴への施術の試みが劇的な効果を示した1例からヒントを得てこの方法の開発につながったというエピソードが,本書の序論につづられている。その後,著者の指導の下で福岡大学の研究グループにより,M-Testはスポーツのみならずさまざまな領域での応用が試みられ,治療法として体系付けられるようになって成果を上げており,近年はその治療効果が海外からも非常に注目されている新しい方法である。
また,著者は多方面の研究者に声をかけて“ケア・ワークモデル研究会”を発足させ,研修会,研究会を開催し,広く医療従事者への普及に努められている。名称についても,それまでは“経絡テスト”と呼んでいたものを現在のM-Testに変更され,さらなる普及をめざした本格的な活動が開始されている。
本書は現在に至るまでの著者の集大成的な書であるが,常に活動を共にされ普及・指導にあたられている鍼灸師である2人の共著者により,実践的でよりわかりやすいものとなっている。
本書の構成はM-Testの概説に始まり,人の動きの分析に着目した診断とアプローチ手技(最適な治療点の見極め方)について基礎編,中・上級編にわけてわかりやすく述べられている。特に基礎編は初学者にも比較的理解しやすい内容となっている。また,M-test症状別治療の項目でも,初学者のためのファーストステップとして,日常遭遇することの多い症状に対する治療応用について述べられており,実践的で役立つ構成となっている。
著者はこの方法を,スポーツ医学のみならず広く産業医学,地域医療,リハビリテーション医療,介護領域などにも応用できると考え,普及に努めてこられた。本書は多くの医療関係の方々がM-Testに接し,臨床現場で応用していただくためにも,実践に向けての研修会受講などの参考書としても有用であると思われる。
看護師による日々のケアの質を変える
書評者: 川嶋 みどり (日赤看護大名誉教授)
ある学会の懇親会の場で,久しぶりに出会った友人に「肩凝っているのでは?」と問われ,「すごく凝ってる。パソコンに向かい過ぎかしら……」と答えた私の右手の人差し指の根元を,彼女は「ちょっと失礼」というが早いかぎゅっとつまんだ。あっけにとられながら,そのまま首をぐるぐる回して見ると,首筋から肩胛骨にかけて突っ張っていた感じが取れているのを感じた。これがM-Testとの最初の出会いであった。
本書によると,M-Testとは経絡テストのことで,「からだの動きを負荷することで,経絡・経穴の異常を見つけ出す診断治療体系」のことをいい,その特徴は,西洋医学では見えてこない病気の側面を観察しながら,個々の患者の症状発現の背景をその人の日常生活動作から発見できるという。友人は,この技術を看護師がマスターすれば,かなり応用範囲が広がるはずとも言った。
全部で361もあるツボ(経穴)を今から覚えるのは至難だと思う一方,こんなに劇的に愁訴が治るとしたら,ぜひその原理と方法を知りたいと思った。半信半疑で初級の講習会に出て,M-Testではとりあえず24の著効穴を覚えればよいと聞いた。たった一度の講習ではあったが,患者の苦痛や愁訴に直接向き合う頻度の高い看護師らがこの方法に習熟したら,日々のケアの質が変わるのではないかと直観した。昨今の看護師たちが,自身の手を用いたケアから遠のいている現状をギアチェンジできるのではないかとも思った。
本書は,医師,鍼灸師による共著であるが,M-Testの産みの親である向野義人教授の,臨床医の経験を通して培われた思想が脈々と流れている。本法誕生以来20年の間,仮説の反復検証を重ねて到達された標準化システムは,診断から治療までのプロセスの再現性故に,その信頼性が担保され,多職種が活用できるというのもうれしい。患者と対面しコミュニケーションを交わしながら,その動きと主観を尊重しつつ診断施術を図る方法は,文字通り患者参加型医療のモデルでもある。
序論では,本法発想の経緯と命名の主旨が簡潔に述べられ,初学者なら誰でも興味をそそるであろう。続く概説であらかたの知識を得た後,理論的背景と実践面それぞれを,基礎から中・上級にステップアップしながら学べるように構成され,実際の症例や症状別治療まで,豊富な図やイラストによって深めることができる。
施設在宅を問わず,ケアを必要とする人びとがますます増え続けることが予想されるだけに,ケアのワークモデルとしてのM-Testの可能性は,今後も広がることは間違いない。そのためにもケア提供の主力である看護師として,医薬品に頼らない苦痛緩和の有用な方法を知る意味は大きい。多くの看護師が,本書によって知識を深めた後に,実際に使える技術を身につけ実践することで,患者のQOLが高まることは間違いないと思う。多くの看護師たちにぜひ読んでいただきたい書としてお薦めする。
書評者: 水間 正澄 (昭和大教授・リハビリテーション医学)
“M-test”とは,初めて耳にする方も多いことと思う。副題に『経絡と動きでつかむ症候へのアプローチ』とあり,東洋医学的な診断法や治療に関する書であろうことがわかる。
著者である向野義人氏は内科医であるが,長年にわたり鍼灸治療の西洋医学への応用を模索されておられ,従来からの手技を用いて内科診療の中に鍼治療を応用されていた。本書のタイトルである“M-Test”の開発は,著者が現職である福岡大学でスポーツ医学に携わるようになってからであり,あるスポーツ選手を診療したときにひらめいた“症候へのアプローチ”であったとのことである。すなわち,従来の鍼治療の方法である“症状とツボ“との関係で鍼治療を行うのではなく,症状発現の誘因,原因となっている部位や関連する経穴への施術の試みが劇的な効果を示した1例からヒントを得てこの方法の開発につながったというエピソードが,本書の序論につづられている。その後,著者の指導の下で福岡大学の研究グループにより,M-Testはスポーツのみならずさまざまな領域での応用が試みられ,治療法として体系付けられるようになって成果を上げており,近年はその治療効果が海外からも非常に注目されている新しい方法である。
また,著者は多方面の研究者に声をかけて“ケア・ワークモデル研究会”を発足させ,研修会,研究会を開催し,広く医療従事者への普及に努められている。名称についても,それまでは“経絡テスト”と呼んでいたものを現在のM-Testに変更され,さらなる普及をめざした本格的な活動が開始されている。
本書は現在に至るまでの著者の集大成的な書であるが,常に活動を共にされ普及・指導にあたられている鍼灸師である2人の共著者により,実践的でよりわかりやすいものとなっている。
本書の構成はM-Testの概説に始まり,人の動きの分析に着目した診断とアプローチ手技(最適な治療点の見極め方)について基礎編,中・上級編にわけてわかりやすく述べられている。特に基礎編は初学者にも比較的理解しやすい内容となっている。また,M-test症状別治療の項目でも,初学者のためのファーストステップとして,日常遭遇することの多い症状に対する治療応用について述べられており,実践的で役立つ構成となっている。
著者はこの方法を,スポーツ医学のみならず広く産業医学,地域医療,リハビリテーション医療,介護領域などにも応用できると考え,普及に努めてこられた。本書は多くの医療関係の方々がM-Testに接し,臨床現場で応用していただくためにも,実践に向けての研修会受講などの参考書としても有用であると思われる。
看護師による日々のケアの質を変える
書評者: 川嶋 みどり (日赤看護大名誉教授)
ある学会の懇親会の場で,久しぶりに出会った友人に「肩凝っているのでは?」と問われ,「すごく凝ってる。パソコンに向かい過ぎかしら……」と答えた私の右手の人差し指の根元を,彼女は「ちょっと失礼」というが早いかぎゅっとつまんだ。あっけにとられながら,そのまま首をぐるぐる回して見ると,首筋から肩胛骨にかけて突っ張っていた感じが取れているのを感じた。これがM-Testとの最初の出会いであった。
本書によると,M-Testとは経絡テストのことで,「からだの動きを負荷することで,経絡・経穴の異常を見つけ出す診断治療体系」のことをいい,その特徴は,西洋医学では見えてこない病気の側面を観察しながら,個々の患者の症状発現の背景をその人の日常生活動作から発見できるという。友人は,この技術を看護師がマスターすれば,かなり応用範囲が広がるはずとも言った。
全部で361もあるツボ(経穴)を今から覚えるのは至難だと思う一方,こんなに劇的に愁訴が治るとしたら,ぜひその原理と方法を知りたいと思った。半信半疑で初級の講習会に出て,M-Testではとりあえず24の著効穴を覚えればよいと聞いた。たった一度の講習ではあったが,患者の苦痛や愁訴に直接向き合う頻度の高い看護師らがこの方法に習熟したら,日々のケアの質が変わるのではないかと直観した。昨今の看護師たちが,自身の手を用いたケアから遠のいている現状をギアチェンジできるのではないかとも思った。
本書は,医師,鍼灸師による共著であるが,M-Testの産みの親である向野義人教授の,臨床医の経験を通して培われた思想が脈々と流れている。本法誕生以来20年の間,仮説の反復検証を重ねて到達された標準化システムは,診断から治療までのプロセスの再現性故に,その信頼性が担保され,多職種が活用できるというのもうれしい。患者と対面しコミュニケーションを交わしながら,その動きと主観を尊重しつつ診断施術を図る方法は,文字通り患者参加型医療のモデルでもある。
序論では,本法発想の経緯と命名の主旨が簡潔に述べられ,初学者なら誰でも興味をそそるであろう。続く概説であらかたの知識を得た後,理論的背景と実践面それぞれを,基礎から中・上級にステップアップしながら学べるように構成され,実際の症例や症状別治療まで,豊富な図やイラストによって深めることができる。
施設在宅を問わず,ケアを必要とする人びとがますます増え続けることが予想されるだけに,ケアのワークモデルとしてのM-Testの可能性は,今後も広がることは間違いない。そのためにもケア提供の主力である看護師として,医薬品に頼らない苦痛緩和の有用な方法を知る意味は大きい。多くの看護師が,本書によって知識を深めた後に,実際に使える技術を身につけ実践することで,患者のQOLが高まることは間違いないと思う。多くの看護師たちにぜひ読んでいただきたい書としてお薦めする。
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