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エコーでコラボ
主治医と検査者の相互理解を深める心エコー奥義

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循環器疾患のチーム医療では、主治医と検査者の双方が相手の考えを理解することが非常に重要となる。短時間で効率よく患者の病態を把握するうえで、心エコーは素晴らしい力を発揮する。本書では検査をオーダーする際の疾患の捉え方、検査へのリクエスト、検査者の応え方、新たな所見をみつけたときの考え方・伝え方を丁寧に解説。「エコーでコラボレーション!」を実感し、心エコーの持つ力を最大限に活用するための実践書。
監修 三神 大世
編集 湯田 聡 / 山田 聡 / 赤坂 和美
発行 2014年03月判型:B5頁:292
ISBN 978-4-260-01742-8
定価 5,500円 (本体5,000円+税)
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 開発から60年以上,わが国での本格的な臨床応用から40年以上を経て,心エコーは循環器診療の要を担う検査法にまで成長してきました.その間,検査法の進歩とその役割の拡大は,検査需要をどんどん増やし,それに呼応して検査の担い手は医師からソノグラファーへと移行してきました.心エコーという繊細な検査法を考えるとき,それは必然的な流れといえるでしょう.

 検査技師の大学・大学院教育に携わる私は,もちろん,それを好ましく思っています.しかし,プローブを握らなくなった医師とそれを渡されたソノグラファーとの関係には,一抹の不安もあります.果たして医師はどのくらい心エコー所見を理解しているのか,ソノグラファーはどの程度,医師の目線を意識しているのか,互いの意思の疎通は本当に大丈夫なのでしょうか.

 循環器専門医と心エコーソノグラファーとを繋ぐ架け橋が,今こそとても大事です.本書は,このような視点から企画されました.専門医とソノグラファーが,一言で,あるいは,アイコンタクトでもわかり合えるくらい,互いに共通の理解をもってコラボレーションできるようになることが,本書の究極の目標といえます.

 執筆陣のコラボなくして,この難しい目標を達成できるはずがありません.本書の執筆陣は,医師とソノグラファーがほぼ半々ですが,全員が北海道民です.北海道の最大の特長は,かつて日本の各地から移住した人々が築いてきたコラボレーションの伝統です.本書の企画と編集にあたった湯田聡,山田聡,赤坂和美の三氏は,各々が本道三大学の循環器病診断を担う気鋭の心エコー専門医ですが,日頃から肝胆相照らす間柄でもあります.この三氏を中心に集った専門医やソノグラファー諸氏も,日頃から検査室で,あるいは研究会で親しく語り合う,気心の知れた仲間たちです.

 北の豊穣な大地から,日本全国の心エコーラボに,コラボの真髄をお届けしたいと思います.

 2014年2月
 監修 三神 大世

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 序
 本書の構成と利用法

総論 おさえておきたい心エコーの基本
 1 検査時の注意点と装置の設定
 2 経胸壁心エコー法の基本断面
 3 経食道心エコー法
 4 心内径と容積の計測
 5 左室肥大の評価
 6 心機能と血行動態評価の基本的な考え方
 7 左室収縮能と拍出量の評価
 8 左室拡張能と充満圧の評価
 9 静脈うっ血,肺高血圧と右室収縮能の評価
 10 左右短絡の評価
 11 弁狭窄の評価
 12 弁逆流の評価
 13 人工弁機能の評価

各論 心エコーの活かしかた
 14 不明熱に対する心エコー
 15 呼吸困難に対する心エコー
 16 労作時胸痛に対する心エコー
 17 駆出性収縮期雑音に対する心エコー
 18 全収縮期雑音に対する心エコー
 19 拡張期雑音に対する心エコー
 20 連続性雑音に対する心エコー
 21 心電図の左室肥大所見に対する心エコー
 22 心電図の異常Q波に対する心エコー
 23 高血圧症例に対する心エコー
 24 心房細動に対する心エコー
 25 急性冠症候群に対する心エコー
 26 急性大動脈解離に対する心エコー
 27 拡張型心筋症の経過観察
 28 肥大型心筋症の経過観察
 29 人工弁置換術後の経過観察
 30 心嚢液貯留症例に対する心エコー
 31 透析症例に対する心エコー
 32 右脚ブロックに対する心エコー

 本書で用いた主な略語
 索引

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心エコーを臨床で最大限に活かす
書評者: 戸出 浩之 (群馬県立心臓血管センター技術部)
 循環器疾患の診断と病態把握における心エコー検査の重要性は広く認識され,各施設での心エコー実施数は飛躍的に増加してきている。心エコー検査は,ベッドサイドにおいて主治医自身が聴診器代りに探触子を持ち,必要最小限の情報だけを得るという一つの側面がある。一方,超音波装置の高性能化と検査技術の進歩と相まって,より詳細で高精度な情報まで得られるようになり,多くの施設の大多数の検査がエコー室においてエコー専門医や技師の手により実施されるようになってきている。そのような状況では,心エコーを依頼する主治医と,それを受けて検査を実施する検査者の間で十分な意思疎通が必要で,それがなければ患者にとって万全な心エコー検査が実施できない可能性もある。そして,昨今の電子カルテ化やオーダリングの普及は,主治医の顔が見えない検査依頼と,検査者の声が聞こえない検査レポートという弊害を生んでいる背景がある。

 そのような中,「エコーでコラボ」と題した本書が登場した。本書は,心エコー検査において患者の主治医と検査者の相互理解を深め,両者のコラボにより心エコーを臨床に最大限に活かすことを主眼に置いた今までにない心エコーの実践書である。

 本書は,前半の総論において検査を依頼する主治医とそれに応える検査者の両者が知っておくべき基本的事項を述べている。ここでは,経胸壁および経食道心エコーの基本断面や基本計測に加え,心機能計測,弁疾患や短絡疾患などにおける定量計測の方法,注意点について述べている。

 後半の各論においては,実際の心エコー検査の依頼を想定し,依頼目的覧に記されることが多い症状や身体所見の異常,基礎疾患,主な心疾患などに項目分けし,それぞれで主治医が検査依頼する際の疾患の捉え方,検査(者)へ求めるもの,検査者がそれにどう応えるべきかが簡潔に述べられ,さらには想定外の異常を見つけた際の考え方にまで踏み込んでいる。本書により,検査者は臨床のそれぞれの場面で心エコーに何が求められているか,どう応えるべきかを知ることができ,主治医は心エコーに何を求め,それをどう伝えるべきかを理解することができるであろう。

 本書のもう一つの大きな特徴として,執筆者がすべて北海道の心エコー専門医と技師ということがある。かつて北畠顕先生(北大名誉教授)により北海道の地にまかれた心エコーの種を,本書の監修をされた三神大世先生が大切に育て,編集に携われた湯田聡先生,山田聡先生,赤坂和美先生らにより北海道全体で今大きく花を開かせている。つまり,本書は北海道の心エコーの集大成であるともいえる。明治当初に北海道の厳しい自然の中で開墾・開拓していくためには,人々の協力,コラボレーションなくしてはなし得なかったであろう。本書は,そのような北海道だからこそ生まれた主治医と検査者のコラボのための一冊である。

 心エコー検査に携わる医師,技師はもちろん,依頼する多くの循環器医,他科の医師にもぜひ利用いただきたい一冊である。
依頼理由別の心エコーと所見別の対応がわかる初学者向け教科書
書評者: 竹中 克 (日大板橋病院客員教授・循環器内科/東大病院検査部客員研究員)
 執筆陣全員が北海道民の心エコーの教科書が誕生しました。さて,「北海道民だけで執筆した教科書」にどんな意味があるのでしょうか? 執筆陣の中心となるわが友山田聡先生は信州出身ですが,監修の三神先生は「かつて日本の各地から移住した人々が築いてきたコラボレーションの伝統」「北の豊穣な大地」とその意義を説明されています。私自身は,本書は北海道民の「気概」を示すものと理解して,それではその内容は全国区で通用するものか否かを拝読吟味させていただきました。

 心エコー初学者対象の292ページの教科書です。最初に総論として心エコーの基本がコンパクトにまとめられています。初学者対象でありながら,経食道心エコー法まで解説されており,また「心機能と血行動態評価の基本的な考え方」は短いながらも読み応えのある力作です。次に各論「心エコーの活かしかた」が配置されていますが,この部分が本書の特徴となります。従来の教科書は,疾患別に組まれているものがほとんどですが,日常臨床で患者さんが疾患別に心エコー検査室に来られることはありません(経過観察などを除く)。初診患者さんが心エコー室に来られる際の情報は「主治医からの依頼理由と臨床所見」です。私自身も「依頼理由別の心エコー」を単行本で著したり,雑誌の企画で取り上げたりしてきましたが,本書は最新の「依頼理由別の心エコー」教科書であります。さらに,心エコー室で依頼内容とは無関係の重要所見が偶然得られることもあります。これ,すなわち「得られた心エコー所見別の対応」にも十分なページが割かれています。前者が,主治医から検査者への投げ掛けで,後者が検査者から主治医への投げ掛けとなり,この二つが本書のタイトル「エコーでコラボ」「主治医と検査者の相互理解」の内容そのものであります。それでは,「心エコーの奥義」とは何でしょうか? 「人生とは死ぬことと見つけたり」のような至言・箴言がどこかに隠されているのかと思い読み進みましたが,各論14から32に盛り込まれた症例提示を通じた「主治医と検査者のやりとり(コラボ)」の数々が本書にちりばめられた奥義であることを納得しました。例えば「残留多重反射」「悪性リンパ腫」「左脚ブロック」のような内容が漏れて(省かれて)はいますが,それは単行本としての紙数制限のために致し方ないことと思います。「主治医と検査者のやりとり」という目で各論を読み進むと,特に初学者にとって心エコーの醍醐味・楽しさが味わえる素晴らしい読み物であることがわかります。各項における緊張感はやはり「道民の気概」を示していると言わざるを得ず,道民以外の日本人にも推薦したい心エコー法の教科書であります。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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