神経理学療法学
養成校のカリキュラムを意識して「脳卒中の理学療法」を中心に展開させた新教科書
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新たに創刊される系別(領域別)理学療法学のテキストの1冊。理学療法士の養成校でも多くの時間が割かれる「脳卒中の理学療法」を重点的に学べるよう項目を整理。臨床を意識したクリニカルリーズニングの章を組み込むなど、この1冊が学生時代だけでなく臨床家として巣立っていくであろう読者への“贈り物”となるような教科書を目指し編集された新テキスト。一流の執筆陣が漏れなく、分かりやすく神経理学療法を教授する。
*「標準理学療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ | 標準理学療法学 専門分野 |
---|---|
シリーズ監修 | 奈良 勲 |
編集 | 吉尾 雅春 / 森岡 周 |
編集協力 | 阿部 浩明 |
発行 | 2013年03月判型:B5頁:416 |
ISBN | 978-4-260-01640-7 |
定価 | 5,500円 (本体5,000円+税) |
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- 目次
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序文
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序
「標準理学療法学 専門分野」シリーズが刊行され始めて12年が経過した.このシリーズが次々に刊行されることで,わが国における理学療法教育が格段に底上げされたことは,喜ぶべき事実である.また,これらの刊行を契機に「理学療法の標準(standard)とは何か」という議論が関連学会などで巻き起こり,根拠ある理学療法の提供が意識されるようになった.その成果あってか,幅広い知識を有し,問題を解決しようとする高い志をもつ理学療法士が増えてきたように思える.このたび,この「標準理学療法学 専門分野」のなかに長年の読者の要望に応える形で本書が新たに加わることになった.
高齢社会を迎えたわが国においては,理学療法の対象のうち,神経障害はその中心に据えられている.中枢神経障害によっておこる症状・病態は多彩であり,根拠ある理学療法を適切かつ柔軟に行っていくためには,それぞれの症状・病態に関する知見を1つひとつ詳細に知る必要がある.特に常に変化する症状に対し柔軟に対応するためには,表面だけの知識ではなく,病態に関する知見を深く理解することが大切である.
「標準理学療法学」は箇条書きによって知見を羅列し記憶するといったスタイルをとらず,読者が文章を読み込み,前後の文脈や関係性から理学療法を理解することをねらいとしている.これは多彩な症状・病態を示す神経障害を深く理解するために最もふさわしいスタイルであるといえるであろう.
ご存知のとおり,人間の脳機能に関しては,今なお世界中の科学者によって,その解明作業が進められている.現代の理学療法士は,近年の神経科学(neuroscience)の発展動向に伴い,そこで明らかにされた科学的知見を適宜臨床に応用し,新たな根拠に基づいた理学療法をつくっていくことが求められている.臨床における新たな根拠の構築のためには,日々更新される基礎科学の知見と臨床でおこる現象を統合し,理学療法士自らの手でそれを解釈しなければならない.
この解釈過程は臨床推論(クリニカルリーズニング)とも呼ばれる.科学的知見と臨床的経験の融合に伴うクリニカルリーズニング作業を経て,最適化された臨床意思決定(clinical decision making)が行われるわけである.こうしたクリニカルリーズニングに基づく臨床計画およびその実践による検証作業の積み上げが臨床の場で行われることで,新しい根拠がつくられる.そして,それがわが国のみならず諸外国に公表されることによって,標準化が行われていく.
今日,脳卒中リハビリテーションの世界的な潮流においては,McDonnell Project(2011年)と題され,「患者と医療チームの契約」「脳機能解剖と行動障害の関係」「信頼性と妥当性のある客観的な評価」「介入目的および一般的な予後」「治療時間内に提供される治療量(dose)」,そして「運動学習に関係する治療環境」が検討されている.しかしながら,いまだ世界的にみても標準化に相当するような根拠ある理学療法の提案は足りていない.
現代の理学療法士には,根拠を利用するだけでなく,新たな根拠をつくることが求められている.本書にクリニカルリーズニングの内容を含んだ意図は,新たな根拠の構築に挑む理学療法士(学生)がわが国から出現することを期待していることにある.
神経病変によって生じるさまざまな病態の詳細な理解,そして神経科学に基づいた神経障害に対するクリニカルリーズニング作業なくして,新しい根拠ある理学療法の構築ならびに提案は難しい.その構築の礎を築くうえで,本書を役立てていただければ,編者・執筆者一同この上ない喜びである.
2013年3月
森岡 周・吉尾雅春
「標準理学療法学 専門分野」シリーズが刊行され始めて12年が経過した.このシリーズが次々に刊行されることで,わが国における理学療法教育が格段に底上げされたことは,喜ぶべき事実である.また,これらの刊行を契機に「理学療法の標準(standard)とは何か」という議論が関連学会などで巻き起こり,根拠ある理学療法の提供が意識されるようになった.その成果あってか,幅広い知識を有し,問題を解決しようとする高い志をもつ理学療法士が増えてきたように思える.このたび,この「標準理学療法学 専門分野」のなかに長年の読者の要望に応える形で本書が新たに加わることになった.
高齢社会を迎えたわが国においては,理学療法の対象のうち,神経障害はその中心に据えられている.中枢神経障害によっておこる症状・病態は多彩であり,根拠ある理学療法を適切かつ柔軟に行っていくためには,それぞれの症状・病態に関する知見を1つひとつ詳細に知る必要がある.特に常に変化する症状に対し柔軟に対応するためには,表面だけの知識ではなく,病態に関する知見を深く理解することが大切である.
「標準理学療法学」は箇条書きによって知見を羅列し記憶するといったスタイルをとらず,読者が文章を読み込み,前後の文脈や関係性から理学療法を理解することをねらいとしている.これは多彩な症状・病態を示す神経障害を深く理解するために最もふさわしいスタイルであるといえるであろう.
ご存知のとおり,人間の脳機能に関しては,今なお世界中の科学者によって,その解明作業が進められている.現代の理学療法士は,近年の神経科学(neuroscience)の発展動向に伴い,そこで明らかにされた科学的知見を適宜臨床に応用し,新たな根拠に基づいた理学療法をつくっていくことが求められている.臨床における新たな根拠の構築のためには,日々更新される基礎科学の知見と臨床でおこる現象を統合し,理学療法士自らの手でそれを解釈しなければならない.
この解釈過程は臨床推論(クリニカルリーズニング)とも呼ばれる.科学的知見と臨床的経験の融合に伴うクリニカルリーズニング作業を経て,最適化された臨床意思決定(clinical decision making)が行われるわけである.こうしたクリニカルリーズニングに基づく臨床計画およびその実践による検証作業の積み上げが臨床の場で行われることで,新しい根拠がつくられる.そして,それがわが国のみならず諸外国に公表されることによって,標準化が行われていく.
今日,脳卒中リハビリテーションの世界的な潮流においては,McDonnell Project(2011年)と題され,「患者と医療チームの契約」「脳機能解剖と行動障害の関係」「信頼性と妥当性のある客観的な評価」「介入目的および一般的な予後」「治療時間内に提供される治療量(dose)」,そして「運動学習に関係する治療環境」が検討されている.しかしながら,いまだ世界的にみても標準化に相当するような根拠ある理学療法の提案は足りていない.
現代の理学療法士には,根拠を利用するだけでなく,新たな根拠をつくることが求められている.本書にクリニカルリーズニングの内容を含んだ意図は,新たな根拠の構築に挑む理学療法士(学生)がわが国から出現することを期待していることにある.
神経病変によって生じるさまざまな病態の詳細な理解,そして神経科学に基づいた神経障害に対するクリニカルリーズニング作業なくして,新しい根拠ある理学療法の構築ならびに提案は難しい.その構築の礎を築くうえで,本書を役立てていただければ,編者・執筆者一同この上ない喜びである.
2013年3月
森岡 周・吉尾雅春
目次
開く
I 脳卒中の理学療法
1 脳卒中の障害総論
1 中枢神経系の構造と機能
A 神経系の構成
B 中枢神経系の構造と機能
2 脳卒中の発症および回復メカニズム
A 脳動脈の構造と神経系
B 脳卒中の発症メカニズム
C 神経の可塑性
D 脳卒中後の機能回復に影響する因子
3 脳画像と臨床症状
A 脳画像の基礎的概念
B MRI水平断面と脳解剖
C 脳画像における皮質脊髄路と言語野の把握
D 脳画像所見と臨床症状
4 脳卒中理学療法の評価とアプローチ
A 脳卒中と障害の関係
B 脳卒中後の障害に対する評価の意義
C 脳卒中患者に対する代表的評価
D 脳卒中後の理学療法の役割とリスク管理
2 脳卒中の障害と理学療法
1 意識障害
A 意識障害とは
B 意識維持・調節の機構
C 意識障害の原因
D 意識障害患者の診方
E 意識レベルの判定
F 意識狭窄
G 意識変容
H 特殊な意識障害
I 軽度意識障害の留意点
J 意識障害に対する理学療法
2 運動麻痺
A 運動に必要な神経機構
B 運動麻痺の発生メカニズム
C 運動麻痺の種類と症状
D 運動麻痺の理学療法評価
E 理学療法の実際
3 感覚障害
A 感覚の定義と検査の意義
B 感覚の神経機構と障害のメカニズム
C 理学療法評価の実際
D 理学療法への展開(アプローチの考え方)
4 異常筋緊張
A 筋緊張を規定する因子
B 筋緊張の神経機構
C 異常筋緊張の種類
D 痙縮の病態と発生機序
E 筋緊張の評価
F 異常筋緊張に対する理学療法
5 運動失調
A 運動失調とは
B 協調運動の神経機構
C 運動失調の発生メカニズム
D 運動失調の種類とその症状
E 運動失調の評価
F 運動失調の理学療法
6 身体失認,病態失認
A 身体の認識とは
B 身体失認
C 病態失認
7 半側空間無視
A 半側空間無視
B なぜ半側空間無視がおこるのか
C 半側空間無視の評価
D 半側空間無視の理学療法
8 失行
A 意図的な行為とは
B 失行の発生メカニズム
C 失行の種類とその症状
D 失行の評価と理学療法
9 注意・遂行機能障害
A 注意・遂行機能障害とは
B 注意・遂行機能障害の評価
C 注意・遂行機能障害と脳領域
D 注意・遂行機能障害の理学療法
E 理学療法上の留意点
10 精神・知能障害
A 脳卒中後の精神障害
B 脳卒中後の知能障害
11 痛み
A 痛みの定義と分類
B 脳卒中の痛みの概要
C 脳卒中後の末梢性疼痛
D 脳卒中後の中枢性疼痛
E 診断
F 治療
G 肩手症候群
H 評価
I 理学療法
12 二次的機能障害(関節可動域制限,筋力低下,体力低下)
A 脳卒中後の関節可動域制限の発生メカニズム
B 脳卒中後の筋力低下のメカニズム
C 脳卒中後の体力低下のメカニズム
13 姿勢定位障害
A pushing
B lateropulsion
14 姿勢バランス障害
A バランスおよび姿勢制御とその病態
B バランス能力評価
C バランス能力改善のための理学療法
15 起居動作障害
A 起居動作とは
B 適応的な運動機能に関与する神経機構
C 理学療法士にとっての動作分析とは
D 片麻痺者の起居動作
E まとめ
16 歩行障害
A 歩行障害はどのようなものか
B 歩行障害をどうとらえるか(評価を含む)
C 理学療法をどう展開していくか(具体的なアプローチ)
17 上肢機能障害
A 上肢の役割について
B 内部モデルとは
C 上肢の到達運動に関与する神経機構
D 手の把握・操作に関与する神経機構
E 脳卒中片麻痺の上肢機能障害の特徴について
F 上肢機能障害とセルフケアの関係
G 理学療法の実際
H 理学療法における新しい試み
I おわりに
3 脳卒中に対するクリニカルリーズニング
1 クリニカルリーズニングとは
A クリニカルリーズニング
B 論理的思考過程
C クリニカルリーズニングに求められる条件
D クリニカルリーズニングのモデル
2 皮質脊髄路障害に対するクリニカルリーズニング
A 皮質脊髄路の構造と神経機構
B 皮質脊髄路の障害
C クリニカルリーズニングにあたって
D 脳卒中後の運動機能回復
E 手指の機能障害に対するクリニカルリーズニング
F 足関節の背屈不良に対するクリニカルリーズニング
G 今後のクリニカルリーズニングに向けて
3 皮質連合野障害に対するクリニカルリーズニング
A 前頭連合野損傷における社会的行動障害
B 高次運動野と脳梁の損傷における他人の手徴候(道具の強迫的使用)
C 右頭頂・側頭連合野損傷における左半側空間無視
D 右頭頂・側頭連合野損傷における病態失認,半側身体失認,ソマトパラフレニア
E 左頭頂・側頭連合野損傷における失行
4 視床障害に対するクリニカルリーズニング
A 視床の構造と機能
B 視床の機能不全に基づいた臨床症状
C 視床障害に対するクリニカルリーズニング
5 大脳小脳連関障害に対するクリニカルリーズニング
A 大脳小脳連関の機能
B 大脳小脳連関の機能不全に基づいた臨床症状
C 小脳機能に関連した科学的知見に基づくクリニカルリーズニング
6 皮質-基底核ループの障害に対するクリニカルリーズニング
A 皮質-基底核ループ,基底核-脳幹系の神経機構
B 皮質-基底核ループ,基底核-脳幹系による症状
C 皮質-基底核ループの障害に対する理学療法におけるクリニカルリーズニング
7 運動学的視点からみたクリニカルリーズニング
A はじめに
B クリニカルリーズニングにあたって
C クリニカルリーズニングの実際と課題
II 神経筋疾患の理学療法
1 Parkinson病の理学療法
A Parkinson病(PD)の症状と病態
B PDの理学療法評価
C PDの理学療法
D 理学療法上の注意点
2 脊髄小脳変性症の理学療法
A 脊髄小脳変性症(SCD)とは
B SCDの評価
C SCDの理学療法
3 筋萎縮性側索硬化症の理学療法
A 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の疾患概要
B ALSの評価
C 理学療法介入
4 多発性硬化症の理学療法
A 疾患・障害像はどのようなものか
B 疾患・障害をどうとらえるか
C 理学療法をどう展開していくか
5 Guillain-Barré症候群の理学療法
A 疾患概念
B 亜型
C 診断
D 病態
E 治療
F 理学療法
索引
1 脳卒中の障害総論
1 中枢神経系の構造と機能
A 神経系の構成
B 中枢神経系の構造と機能
2 脳卒中の発症および回復メカニズム
A 脳動脈の構造と神経系
B 脳卒中の発症メカニズム
C 神経の可塑性
D 脳卒中後の機能回復に影響する因子
3 脳画像と臨床症状
A 脳画像の基礎的概念
B MRI水平断面と脳解剖
C 脳画像における皮質脊髄路と言語野の把握
D 脳画像所見と臨床症状
4 脳卒中理学療法の評価とアプローチ
A 脳卒中と障害の関係
B 脳卒中後の障害に対する評価の意義
C 脳卒中患者に対する代表的評価
D 脳卒中後の理学療法の役割とリスク管理
2 脳卒中の障害と理学療法
1 意識障害
A 意識障害とは
B 意識維持・調節の機構
C 意識障害の原因
D 意識障害患者の診方
E 意識レベルの判定
F 意識狭窄
G 意識変容
H 特殊な意識障害
I 軽度意識障害の留意点
J 意識障害に対する理学療法
2 運動麻痺
A 運動に必要な神経機構
B 運動麻痺の発生メカニズム
C 運動麻痺の種類と症状
D 運動麻痺の理学療法評価
E 理学療法の実際
3 感覚障害
A 感覚の定義と検査の意義
B 感覚の神経機構と障害のメカニズム
C 理学療法評価の実際
D 理学療法への展開(アプローチの考え方)
4 異常筋緊張
A 筋緊張を規定する因子
B 筋緊張の神経機構
C 異常筋緊張の種類
D 痙縮の病態と発生機序
E 筋緊張の評価
F 異常筋緊張に対する理学療法
5 運動失調
A 運動失調とは
B 協調運動の神経機構
C 運動失調の発生メカニズム
D 運動失調の種類とその症状
E 運動失調の評価
F 運動失調の理学療法
6 身体失認,病態失認
A 身体の認識とは
B 身体失認
C 病態失認
7 半側空間無視
A 半側空間無視
B なぜ半側空間無視がおこるのか
C 半側空間無視の評価
D 半側空間無視の理学療法
8 失行
A 意図的な行為とは
B 失行の発生メカニズム
C 失行の種類とその症状
D 失行の評価と理学療法
9 注意・遂行機能障害
A 注意・遂行機能障害とは
B 注意・遂行機能障害の評価
C 注意・遂行機能障害と脳領域
D 注意・遂行機能障害の理学療法
E 理学療法上の留意点
10 精神・知能障害
A 脳卒中後の精神障害
B 脳卒中後の知能障害
11 痛み
A 痛みの定義と分類
B 脳卒中の痛みの概要
C 脳卒中後の末梢性疼痛
D 脳卒中後の中枢性疼痛
E 診断
F 治療
G 肩手症候群
H 評価
I 理学療法
12 二次的機能障害(関節可動域制限,筋力低下,体力低下)
A 脳卒中後の関節可動域制限の発生メカニズム
B 脳卒中後の筋力低下のメカニズム
C 脳卒中後の体力低下のメカニズム
13 姿勢定位障害
A pushing
B lateropulsion
14 姿勢バランス障害
A バランスおよび姿勢制御とその病態
B バランス能力評価
C バランス能力改善のための理学療法
15 起居動作障害
A 起居動作とは
B 適応的な運動機能に関与する神経機構
C 理学療法士にとっての動作分析とは
D 片麻痺者の起居動作
E まとめ
16 歩行障害
A 歩行障害はどのようなものか
B 歩行障害をどうとらえるか(評価を含む)
C 理学療法をどう展開していくか(具体的なアプローチ)
17 上肢機能障害
A 上肢の役割について
B 内部モデルとは
C 上肢の到達運動に関与する神経機構
D 手の把握・操作に関与する神経機構
E 脳卒中片麻痺の上肢機能障害の特徴について
F 上肢機能障害とセルフケアの関係
G 理学療法の実際
H 理学療法における新しい試み
I おわりに
3 脳卒中に対するクリニカルリーズニング
1 クリニカルリーズニングとは
A クリニカルリーズニング
B 論理的思考過程
C クリニカルリーズニングに求められる条件
D クリニカルリーズニングのモデル
2 皮質脊髄路障害に対するクリニカルリーズニング
A 皮質脊髄路の構造と神経機構
B 皮質脊髄路の障害
C クリニカルリーズニングにあたって
D 脳卒中後の運動機能回復
E 手指の機能障害に対するクリニカルリーズニング
F 足関節の背屈不良に対するクリニカルリーズニング
G 今後のクリニカルリーズニングに向けて
3 皮質連合野障害に対するクリニカルリーズニング
A 前頭連合野損傷における社会的行動障害
B 高次運動野と脳梁の損傷における他人の手徴候(道具の強迫的使用)
C 右頭頂・側頭連合野損傷における左半側空間無視
D 右頭頂・側頭連合野損傷における病態失認,半側身体失認,ソマトパラフレニア
E 左頭頂・側頭連合野損傷における失行
4 視床障害に対するクリニカルリーズニング
A 視床の構造と機能
B 視床の機能不全に基づいた臨床症状
C 視床障害に対するクリニカルリーズニング
5 大脳小脳連関障害に対するクリニカルリーズニング
A 大脳小脳連関の機能
B 大脳小脳連関の機能不全に基づいた臨床症状
C 小脳機能に関連した科学的知見に基づくクリニカルリーズニング
6 皮質-基底核ループの障害に対するクリニカルリーズニング
A 皮質-基底核ループ,基底核-脳幹系の神経機構
B 皮質-基底核ループ,基底核-脳幹系による症状
C 皮質-基底核ループの障害に対する理学療法におけるクリニカルリーズニング
7 運動学的視点からみたクリニカルリーズニング
A はじめに
B クリニカルリーズニングにあたって
C クリニカルリーズニングの実際と課題
II 神経筋疾患の理学療法
1 Parkinson病の理学療法
A Parkinson病(PD)の症状と病態
B PDの理学療法評価
C PDの理学療法
D 理学療法上の注意点
2 脊髄小脳変性症の理学療法
A 脊髄小脳変性症(SCD)とは
B SCDの評価
C SCDの理学療法
3 筋萎縮性側索硬化症の理学療法
A 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の疾患概要
B ALSの評価
C 理学療法介入
4 多発性硬化症の理学療法
A 疾患・障害像はどのようなものか
B 疾患・障害をどうとらえるか
C 理学療法をどう展開していくか
5 Guillain-Barré症候群の理学療法
A 疾患概念
B 亜型
C 診断
D 病態
E 治療
F 理学療法
索引
書評
開く
理学療法学教育にとって非常に役立ち,臨床現場でもより良い理学療法提供に有益な本が刊行された!
書評者: 長澤 弘 (神奈川県立保健福祉大学教授・リハビリテーション領域)
中枢神経系の障害が生じた場合,特に脳卒中患者に対する理学療法学として,近年の神経科学を基礎とした臨床推論(クリニカルリーズニング)を展開しながら理学療法を提供することが必須である。このような知識と技術を身につけた理学療法士による理学療法が行われなければ,患者にとってそれは最大の効果が期待できるものにはならない。ここに刊行された『神経理学療法学』は,卒前教育・学習のための知識を整理するための構成になっており,またその知識の裏付けとなる神経科学における近年の知見を織り交ぜて記述してあるため,中枢神経系の障害とその回復とを理解する上で,大変有益な内容になっている。また,卒後の理学療法士にとっても,近年の神経科学の重要な知見を再確認することが容易であり,知っておくべき詳細な知識に関しても「コラム」として適切にまとめられているため,臨床現場でもすぐに役立つ内容として整理されている。
脳卒中の障害に関する総論では,中枢神経系の構造と機能をはじめとして,脳卒中の発症および回復メカニズム,脳画像と臨床症状,脳卒中理学療法の評価とアプローチについて明快に書かれている。「脳卒中の障害と理学療法」の章では,意識障害,運動麻痺,感覚障害,異常筋緊張,運動失調,身体失認・病態失認,半側空間無視,失行,注意・遂行機能障害,精神・知能障害,痛み,二次的機能障害(関節可動域制限,筋力低下,体力低下),姿勢定位障害,姿勢バランス障害,起居動作障害,歩行障害,上肢機能障害と,さまざまな症状と具体的なアプローチ方法が詳細に記述されている。次の「脳卒中に対するクリニカルリーズニング」の章では,各皮質機能とおのおのの連絡経路から理解・考慮すべき症状とその解決策の考え方が,具体的なリーズニングとして基本から臨床場面での例を挙げて書かれている。さらに,上記を解説・説明する図表や写真が多用されているが,これらが大変わかりやすいということも,本書の優れている点の一つである。多色刷りであり,とても見やすく,されど詳細な部分まで精緻に掲載されており,図表を見るだけでも楽しく接することができる本だといえる。
さらに,本書の後半部分には神経筋疾患の理学療法として,理学療法士が多く接するいわゆる神経難病疾患として,パーキンソン病,脊髄小脳変性症,筋萎縮性側索硬化症,多発性硬化症,ギランバレー症候群に関する理学療法をわかりやすくまとめ掲載している。
中枢神経疾患を理解し,その理学療法学の知識を整理し,具体的な臨床推論の下に展開すべき理学療法について,この1冊でおおよその事項が網羅されているという,優れたものになっている。理学療法学教育における教科書の1冊として,また臨床現場での身近なところに置いておき,確認しながらより良い理学療法を提供するためにも,本書を推薦するものである。長い付き合いのできる1冊といえる。
書評者: 長澤 弘 (神奈川県立保健福祉大学教授・リハビリテーション領域)
中枢神経系の障害が生じた場合,特に脳卒中患者に対する理学療法学として,近年の神経科学を基礎とした臨床推論(クリニカルリーズニング)を展開しながら理学療法を提供することが必須である。このような知識と技術を身につけた理学療法士による理学療法が行われなければ,患者にとってそれは最大の効果が期待できるものにはならない。ここに刊行された『神経理学療法学』は,卒前教育・学習のための知識を整理するための構成になっており,またその知識の裏付けとなる神経科学における近年の知見を織り交ぜて記述してあるため,中枢神経系の障害とその回復とを理解する上で,大変有益な内容になっている。また,卒後の理学療法士にとっても,近年の神経科学の重要な知見を再確認することが容易であり,知っておくべき詳細な知識に関しても「コラム」として適切にまとめられているため,臨床現場でもすぐに役立つ内容として整理されている。
脳卒中の障害に関する総論では,中枢神経系の構造と機能をはじめとして,脳卒中の発症および回復メカニズム,脳画像と臨床症状,脳卒中理学療法の評価とアプローチについて明快に書かれている。「脳卒中の障害と理学療法」の章では,意識障害,運動麻痺,感覚障害,異常筋緊張,運動失調,身体失認・病態失認,半側空間無視,失行,注意・遂行機能障害,精神・知能障害,痛み,二次的機能障害(関節可動域制限,筋力低下,体力低下),姿勢定位障害,姿勢バランス障害,起居動作障害,歩行障害,上肢機能障害と,さまざまな症状と具体的なアプローチ方法が詳細に記述されている。次の「脳卒中に対するクリニカルリーズニング」の章では,各皮質機能とおのおのの連絡経路から理解・考慮すべき症状とその解決策の考え方が,具体的なリーズニングとして基本から臨床場面での例を挙げて書かれている。さらに,上記を解説・説明する図表や写真が多用されているが,これらが大変わかりやすいということも,本書の優れている点の一つである。多色刷りであり,とても見やすく,されど詳細な部分まで精緻に掲載されており,図表を見るだけでも楽しく接することができる本だといえる。
さらに,本書の後半部分には神経筋疾患の理学療法として,理学療法士が多く接するいわゆる神経難病疾患として,パーキンソン病,脊髄小脳変性症,筋萎縮性側索硬化症,多発性硬化症,ギランバレー症候群に関する理学療法をわかりやすくまとめ掲載している。
中枢神経疾患を理解し,その理学療法学の知識を整理し,具体的な臨床推論の下に展開すべき理学療法について,この1冊でおおよその事項が網羅されているという,優れたものになっている。理学療法学教育における教科書の1冊として,また臨床現場での身近なところに置いておき,確認しながらより良い理学療法を提供するためにも,本書を推薦するものである。長い付き合いのできる1冊といえる。
正誤表
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。
更新情報
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更新情報はありません。
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