専門医のための循環器病学

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循環器内科専門医をめざす医師、臨床医のために編まれた教科書。臨床家が必要とする知識、特に治療の実際に重きをおき、わが国を代表する執筆陣が解説した渾身の1冊。年々増加する新知見・医学技術、特に心臓移植、遺伝子異常、臨床応用の緒についたばかりの最新医療などにもページを割いたほか、各学会最新の診療ガイドラインも網羅する。循環器病学の“今”が俯瞰できる。
編集 小川 聡 / 井上 博 / 筒井 裕之
発行 2014年04月判型:B5頁:600
ISBN 978-4-260-01884-5
定価 15,400円 (本体14,000円+税)

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 医学の新知見は年々増加し,医療の新技術も進歩と集積の一途をたどっている.日本循環器学会からは最新の2013年版を含めて54の心臓病の診療ガイドラインが策定,公開されている.その時点における標準的内容が網羅されているとはいえ,医学の進歩に応じて5年毎には改訂が必要となるものが多い.一方,わが国の医療のあり方そのものも,少子・高齢化,地域間格差といった課題をかかえて,大きな変革の過程にあるといえる.
 このようななか,われわれは,循環器内科専門医を目指す若手医師および,循環器科臨床医を対象とする実践書を新たに刊行することとした.本書は2001年に発行した医学生向けの教科書『標準循環器病学』を土台とし,実地臨床に必要な内容,特に治療の実際に関する記載を盛り込み,臨床医向けに装いも新たに誕生した専門書である.今回からは,小川,井上の両名に筒井が加わり,企画編集を行った.
 本書では,全体を通して循環器病学の進歩を網羅すること,特に『標準循環器病学』発行後に一般化した領域(心臓移植,循環器疾患と遺伝子異常など)について,新たに章を設けて解説したことに加え,前回は教科書という性格上,十分に盛り込めなかった個々の具体的治療に関する記載を特に充実させたのが特徴である.臨床応用の緒についたばかりの再生医療についてもページを割いた.その結果,大幅にページ数が増え,600ページの専門書として生まれ変わることとなった.
 本書の執筆は,わが国を代表する循環器医の方々に分担していただき,さらにすべての原稿はわれわれ編集者が目を通し,記載の重複を避け,さらに過不足のないように内容の削除,加筆をお願いした.紙幅の都合上,不本意な変更をお願いしたにもかかわらず,本書のために貴重な時間を割いていただいた執筆者の方々に深甚なる感謝の意を表する.
 専門医を目指す医師および日々の診療を担う臨床医たちが本書をより一層活用されることを願っている.
 
 2014年3月
 編集 小川 聡
     井上 博
     筒井裕之

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第1章 症候学
第2章 身体所見
 1 一般的な身体所見
 2 血管の診察
 3 胸部の視診と触診
 4 心臓の聴診
 5 各種疾患における聴診所見
第3章 検査法
 1 心電図
 2 胸部X線
 3 心エコー図
 4 心機図
 5 CT,MRI
 6 核医学検査
 7 心臓カテーテル検査
 8 心筋バイオマーカー
第4章 BLS/ACLS
第5章 心不全
 1 心臓のポンプ作用
 2 心不全
第6章 ショック
第7章 不整脈
 1 不整脈の基礎
 2 不整脈の診断
 3 不整脈の治療
 4 各種不整脈の管理
第8章 先天性心疾患
 1 心臓,血管の発生と構造
 2 先天性心疾患の各論
第9章 後天性弁膜疾患
第10章 動脈硬化症
第11章 冠動脈疾患
 1 冠動脈の形態と冠循環
 2 狭心症
 3 心筋梗塞症
第12章 心筋・心膜の疾患
 1 心筋症・心筋炎
 2 感染性心内膜炎
 3 心膜疾患
第13章 肺循環の異常
第14章 血圧の異常
 1 血圧-その調節,降圧薬の薬理
 2 本態性高血圧
 3 二次性高血圧
 4 低血圧症,失神
第15章 大動脈疾患
 1 大動脈瘤
 2 解離性大動脈瘤
 3 高安病(高安動脈炎・大動脈炎症候群)
 4 大動脈弁輪拡張症,Marfan症候群
 5 Leriche症候群
第16章 末梢動脈・静脈,リンパ管疾患
第17章 心血管の外傷
第18章 原発性心臓腫瘍
第19章 全身疾患に伴う心・血管の異常
第20章 心臓移植
第21章 遺伝子異常・チャネル病
第22章 再生医療

索引

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専門的な分野を広く展望し基本的な知識を整理して提示
書評者: 杉本 恒明 (東大名誉教授)
 『専門医のための循環器病学』をいただいて,早速に一読した。久しぶりにまとまった成書を通読して,満ち足りた思いがあった。専門医のための教科書には,先進的な医療も含めた詳細を辞書的に盛り込んだ場合があるのであるが,他方,専門的な分野を広く展望し,基本的な知識を整理して提示する場合がある。本書はまさに,後者の立場の教科書である。読者対象としているのは専門医資格を持つ方々である。従って,解説自体が高いレベルから始まっていて,しかもコンパクトである。専門医である以上,これだけは知っていてほしい,という執筆者の思いが込められているようでもあった。B5判,600ページと手頃である。文字も大きく,読みやすかった。

 中心となっているのは,症候学,身体所見,検査法,BLS/ACLS,心不全,ショック,不整脈,先天性心疾患,後天性弁膜疾患,動脈硬化症,冠動脈疾患,心筋・心膜の疾患,肺循環の異常,血圧の異常,大動脈疾患,末梢動脈・静脈・リンパ管疾患,心血管の外傷,原発性心臓腫瘍,全身疾患に伴う心・血管の異常という通例の19章であるが,近年,特に話題となっている心臓移植,遺伝子異常・チャネル病,再生医療の3章がこれに加えられている。

 医学の進歩は目覚ましい。MRIでは心筋浮腫や心内膜下梗塞が描出でき,CT画像上でも,冠動脈プラーク性状を知り,脂質変性も検出できる時代となった。そのような中で,身体所見の項に,「病歴聴取は患者の言葉で記載する」と一言あって,今なお生きている昔の教えに嬉しくなった。心音図は昨今,記録されることが少なくなったが,きれいな図が示されていて,わかりやすい。心不全の項では,収縮不全と拡張不全の関係が圧・容積曲線で説明されていて,わが意を得た思いがあった。突然死管理には遺伝子検査が大事であるが,やはり電気生理学的検査は必要のようである。三次元エコー検査で弁帆状態は可視化され,治療面でも経皮的インターベンションが進歩した。細動脈狭心症は左脚ブロックがなければ予後はよいという。細動脈攣縮もあるのだそうである。心筋梗塞リハビリテーションは詳述されていたが,身体障害者認定基準となったメッツへの言及はなかった。心筋緻密化障害診断の基準も挙げられていた。高血圧の病態に内因性ジギタリス様物質としてマリノブファゲニンが注目されていることを知った。再生医療には期待は大きいが,現状では有効性が確認されている成績は多くはないようである。疾患単位,あるいは手技別に数多く出ている関係学会ガイドラインにはあまり周知されていないものがあるのであるが,これらに眼を向けさせて,自在に活用させることも狙いとなっているようであった。

 分担執筆であるが,それぞれが大きなテーマを分担しているので,ありがちな重複がなく,一方,執筆者の個性が光って,分担執筆のよさ,面白さがみられているように思った。

 執筆者の視線の先にあるのは専門医であり,研修医ではない。循環器専門医資格を持つ者,あるいは循環器専門医たることを志向する者は一度は本書を通読して,循環器疾患の診療一般に関しての知識に欠けるところはないか,確認することが求められるであろう。

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