対応困難事例に出会う医療者のための
メンタルヘルスの知識と技術
メンタル障害の豊富な知識と事例から困難事例へのヒントが
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健康づくりの指針としてメンタルヘルス対策が謳われるようになったが、まださまざまなハードルがある。またこれまで経験しなかった複雑なケースや、現代社会が生み出した新しいメンタル障害が増えている。本書は、メンタル障害に対する正確な知識と具体的な事例を通じて、援助者ができるだけ実際の業務に応用できる内容となっている。
著 | 姫井 昭男 |
---|---|
発行 | 2011年10月判型:A5頁:224 |
ISBN | 978-4-260-01448-9 |
定価 | 2,640円 (本体2,400円+税) |
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
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はじめに
健康づくりの指針としてメンタルヘルスが謳〈うた〉われるようになりましたが,いまだメンタルヘルスに関してはさまざまなハードルがあります。そのハードルの1つは「障害に対する偏見」です。メンタルヘルスに対する啓発がさかんな国では,障害をもつ人が暮らしやすいような整備が進んでいますが,「現状の日本は?」と言えば,他の先進国に比べて遅れていると言わざるをえないでしょう。つい最近まで,精神科で治療を受けることさえタブー視されていたのは周知の事実です。
この問題の原因の1つには,われわれ精神科医の医療外に向けた啓発活動がうまく機能しなかったことがあります。もう1つは,“右へ習え”式の日本特有の考え方により,障害をもつ個性を異種性として排除していったことや,障害をもつ者自らがその方向を選ばざるをえない社会背景があったからだと考えています。
ただ,うつ病に関してはこの数年で啓発が進み,以前よりかなり高い率で早期治療を始められるようになってきました。これは精神科医療にとって大きな進歩であると考えます。ところがその一方で,これまでには経験しなかったような問題とメンタル障害が融合した複雑なケースや,現代社会が生み出した新しいメンタル障害が増えてきています。これがメンタルヘルスに関わるもう1つのハードルであり,年々増加している傾向にあります。
エネルギーを使う対応困難例
すでに対応困難なケースを担当した方ならわかると思いますが,対応困難事例の対応には途方もない労力を使います。物理的に時間がかかるということで体力を失うばかりでなく,精神的なストレスは相当なもので,相談者としての自信を失ったり,燃えつきてしまうのです。対応困難なケースに関わり,このような疲弊した状況になってしまうのはなぜでしょう? それは,“巻き込まれる”からです。
私自身も精神科医駆け出しの頃,巻き込まれてただがむしゃらに全力で立ち向かったため無駄な労力を使ったことがありました。「治療なのに“無駄な労力”とはけしからん!」と叱られないように書き添えますが,このような対応困難例での労力のほとんどは,「治療に使う労力ではなく,病気でない部分に巻き込まれることによる労力」なのです。さらに悪いことには,対応困難となるケースでは,非常に個人的な問題で他者には理解不能なことをもち込んできたり,自己中心的な責任転嫁,病気であることは否認するものの自分が不利益を被る状況にあることは主張する,などということが非常に多いために,解決方法がなく行き詰まるのです。
また,もう1つ治療者や援助者を疲れさせる原因があります。どのような病気でも,人間には回復のための治癒能力が備わっています。「健康に戻りたい」という“精神力”の有無によって改善率や治療の時間に差が出るのはよく知られた事実です。しかし問題を起こすケースのほとんどが,その状況改善のために使うべきエネルギーの間違った使い方をするのです。それらは「しきりに訴えること」や「理不尽な怒り」のエネルギーに変えられて治療者や援助者へ向けられます。こちらが熱意をもって接すれば接するほど,カウンターパンチをくらうがごとくそのパワーに圧倒され,ついには巻き込まれ,燃えつきてしまうのです。人の揚げ足を取ってはそれを餌にするようなクレーマータイプのケースでは,こちらのエネルギーを吸い取ってしまうことさえあります。
病気の知識の重要性
ではなぜこのようなことになってしまうのでしょうか? それは治療者や援助者にメンタル障害に対する正確な知識がないからです。
知識を得ることで,病気への対応のみならず,病気でない部分の問題による巻き込まれを防ぐこともできるのです(病気の種類によっては後者のほうが重要な場合もあります)。と言っても,すべてのメンタル障害について端から端まで知ることは難しいですし,またそれが本業ではない人にとってはなおさらです。知識を得るならできるだけ効率よく,的を絞って勉強したいものです。
しかしながら,日本で今日入手できる,疾患を勉強するための教科書は,病因論や学術的な内容に偏っています。臨床現場の実際に触れたものや,実践的なものがないとは言いませんが,アップデートが追いつかないというのが現状です。またメンタル障害の場合,治療といっても当事者が医療機関につながって初めて実現する話ですし,薬物療法が主な治療でないものや個人個人で対応の異なるものなどは記載さえないのです。
そこで,本書では,メンタル障害のなかの“教科書では言いつくせない部分”や“対応についての具体例”をあげ,できるだけ実業務に応用できるような形で解説しました。そして私の実際の経験をもとに典型的な仮想ケースを事例としてあげて,「どのような問題が隠されているのか」「どのようなポイントに着目すべきか」を指摘しながら解説しています。
なお本書は,月刊誌『保健師ジャーナル』の2008年6月号(64巻6号)から2009年12月号(65巻12号)に連載された「対応困難ケースに出会う保健師のためのメンタルヘルスの知識と技術」の内容を再編成し,さらに最近のメンタルヘルスのトピックスを新たに追記したものです。
メンタルヘルスに関わる保健師の対応技術の向上が連載のねらいでしたが,連載当時から医療者以外の多くの方にもお読みいただき好評を得ました。そのことも踏まえての編纂ですから,企業の人事担当者,相談業務をされている方,もちろん精神科を専門としない医療関係者の皆さんなど,相談や接遇に関わるすべての支援者の仕事が円滑に行われるためのヒントも多く含められていると自負しております。
2011年9月
姫井昭男
健康づくりの指針としてメンタルヘルスが謳〈うた〉われるようになりましたが,いまだメンタルヘルスに関してはさまざまなハードルがあります。そのハードルの1つは「障害に対する偏見」です。メンタルヘルスに対する啓発がさかんな国では,障害をもつ人が暮らしやすいような整備が進んでいますが,「現状の日本は?」と言えば,他の先進国に比べて遅れていると言わざるをえないでしょう。つい最近まで,精神科で治療を受けることさえタブー視されていたのは周知の事実です。
この問題の原因の1つには,われわれ精神科医の医療外に向けた啓発活動がうまく機能しなかったことがあります。もう1つは,“右へ習え”式の日本特有の考え方により,障害をもつ個性を異種性として排除していったことや,障害をもつ者自らがその方向を選ばざるをえない社会背景があったからだと考えています。
ただ,うつ病に関してはこの数年で啓発が進み,以前よりかなり高い率で早期治療を始められるようになってきました。これは精神科医療にとって大きな進歩であると考えます。ところがその一方で,これまでには経験しなかったような問題とメンタル障害が融合した複雑なケースや,現代社会が生み出した新しいメンタル障害が増えてきています。これがメンタルヘルスに関わるもう1つのハードルであり,年々増加している傾向にあります。
エネルギーを使う対応困難例
すでに対応困難なケースを担当した方ならわかると思いますが,対応困難事例の対応には途方もない労力を使います。物理的に時間がかかるということで体力を失うばかりでなく,精神的なストレスは相当なもので,相談者としての自信を失ったり,燃えつきてしまうのです。対応困難なケースに関わり,このような疲弊した状況になってしまうのはなぜでしょう? それは,“巻き込まれる”からです。
私自身も精神科医駆け出しの頃,巻き込まれてただがむしゃらに全力で立ち向かったため無駄な労力を使ったことがありました。「治療なのに“無駄な労力”とはけしからん!」と叱られないように書き添えますが,このような対応困難例での労力のほとんどは,「治療に使う労力ではなく,病気でない部分に巻き込まれることによる労力」なのです。さらに悪いことには,対応困難となるケースでは,非常に個人的な問題で他者には理解不能なことをもち込んできたり,自己中心的な責任転嫁,病気であることは否認するものの自分が不利益を被る状況にあることは主張する,などということが非常に多いために,解決方法がなく行き詰まるのです。
また,もう1つ治療者や援助者を疲れさせる原因があります。どのような病気でも,人間には回復のための治癒能力が備わっています。「健康に戻りたい」という“精神力”の有無によって改善率や治療の時間に差が出るのはよく知られた事実です。しかし問題を起こすケースのほとんどが,その状況改善のために使うべきエネルギーの間違った使い方をするのです。それらは「しきりに訴えること」や「理不尽な怒り」のエネルギーに変えられて治療者や援助者へ向けられます。こちらが熱意をもって接すれば接するほど,カウンターパンチをくらうがごとくそのパワーに圧倒され,ついには巻き込まれ,燃えつきてしまうのです。人の揚げ足を取ってはそれを餌にするようなクレーマータイプのケースでは,こちらのエネルギーを吸い取ってしまうことさえあります。
病気の知識の重要性
ではなぜこのようなことになってしまうのでしょうか? それは治療者や援助者にメンタル障害に対する正確な知識がないからです。
知識を得ることで,病気への対応のみならず,病気でない部分の問題による巻き込まれを防ぐこともできるのです(病気の種類によっては後者のほうが重要な場合もあります)。と言っても,すべてのメンタル障害について端から端まで知ることは難しいですし,またそれが本業ではない人にとってはなおさらです。知識を得るならできるだけ効率よく,的を絞って勉強したいものです。
しかしながら,日本で今日入手できる,疾患を勉強するための教科書は,病因論や学術的な内容に偏っています。臨床現場の実際に触れたものや,実践的なものがないとは言いませんが,アップデートが追いつかないというのが現状です。またメンタル障害の場合,治療といっても当事者が医療機関につながって初めて実現する話ですし,薬物療法が主な治療でないものや個人個人で対応の異なるものなどは記載さえないのです。
そこで,本書では,メンタル障害のなかの“教科書では言いつくせない部分”や“対応についての具体例”をあげ,できるだけ実業務に応用できるような形で解説しました。そして私の実際の経験をもとに典型的な仮想ケースを事例としてあげて,「どのような問題が隠されているのか」「どのようなポイントに着目すべきか」を指摘しながら解説しています。
なお本書は,月刊誌『保健師ジャーナル』の2008年6月号(64巻6号)から2009年12月号(65巻12号)に連載された「対応困難ケースに出会う保健師のためのメンタルヘルスの知識と技術」の内容を再編成し,さらに最近のメンタルヘルスのトピックスを新たに追記したものです。
メンタルヘルスに関わる保健師の対応技術の向上が連載のねらいでしたが,連載当時から医療者以外の多くの方にもお読みいただき好評を得ました。そのことも踏まえての編纂ですから,企業の人事担当者,相談業務をされている方,もちろん精神科を専門としない医療関係者の皆さんなど,相談や接遇に関わるすべての支援者の仕事が円滑に行われるためのヒントも多く含められていると自負しております。
2011年9月
姫井昭男
目次
開く
はじめに
第1章 困難事例に出会うかもしれないあなたへ
1.メンタル障害と対応困難との関係
2.メンタル障害を抱える人との関わり方
3.対応困難なケースに直面したとき
第2章 対応に困りやすい疾患と,事例に学ぶ対応
1.うつ(抑うつ状態,うつ病)
ケースカンファレンス 職場のうつ
2.躁病,躁状態(双極性障害)
ケースカンファレンス 躁病と双極性障害
3.境界性パーソナリティ障害(BPD)
ケースカンファレンス BPDの事例から
【TOPICS】子どもの虐待─親たちの共通点
4.依存症(アディクション)
ケースカンファレンス 依存症
5.依存症の精神症状:離脱症状とフラッシュバック
ケースカンファレンス 依存症の離脱症状とフラッシュバック
6.統合失調症
ケースカンファレンス 統合失調症
7.病的体験を伴う疾患(非定型精神病,パラフレニー)
ケースカンファレンス 非定型精神病とパラフレニー
8.せん妄(認知症,パーキンソン病)
ケースカンファレンス せん妄(認知症とパーキンソン病)
【TOPICS】高齢者支援への提言
9.職場不適応
第3章 効果的なメンタルヘルス対策のために─職場での対応を中心に
1.メンタルヘルス対策における「啓発」活動の基本
2.職場復帰の進め方
3.相談者とスムーズに関わるためのヒント
おわりに
索引
第1章 困難事例に出会うかもしれないあなたへ
1.メンタル障害と対応困難との関係
2.メンタル障害を抱える人との関わり方
3.対応困難なケースに直面したとき
第2章 対応に困りやすい疾患と,事例に学ぶ対応
1.うつ(抑うつ状態,うつ病)
ケースカンファレンス 職場のうつ
2.躁病,躁状態(双極性障害)
ケースカンファレンス 躁病と双極性障害
3.境界性パーソナリティ障害(BPD)
ケースカンファレンス BPDの事例から
【TOPICS】子どもの虐待─親たちの共通点
4.依存症(アディクション)
ケースカンファレンス 依存症
5.依存症の精神症状:離脱症状とフラッシュバック
ケースカンファレンス 依存症の離脱症状とフラッシュバック
6.統合失調症
ケースカンファレンス 統合失調症
7.病的体験を伴う疾患(非定型精神病,パラフレニー)
ケースカンファレンス 非定型精神病とパラフレニー
8.せん妄(認知症,パーキンソン病)
ケースカンファレンス せん妄(認知症とパーキンソン病)
【TOPICS】高齢者支援への提言
9.職場不適応
第3章 効果的なメンタルヘルス対策のために─職場での対応を中心に
1.メンタルヘルス対策における「啓発」活動の基本
2.職場復帰の進め方
3.相談者とスムーズに関わるためのヒント
おわりに
索引
書評
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書評 (雑誌『訪問看護と介護』より)
書評者: 新納 美美 (保健師、北海道大学理学院自然史科学専攻博士後期課程)
「最近、対象者から大泣きで電話がかかってきて振り回される」「家庭訪問のとき、対象者の機嫌が悪く、罵声を浴びせられたりして、なかなか帰してもらえなかった」……。
◆“困った人”が増えている現場で
前者は母子、後者は高齢者の事例であり、いずれも一見、精神保健とは無縁の事例です。ここ数年、地域保健のみならず、さまざまな分野で“困った人”が増えていると聞きます。待ち時間に腹を立て執拗に苦情や罵声を浴びせ外来診療を滞らせてしまう患者。役所の窓口で閉庁まで行政への不満を述べ職員を拘束してしまう市民。上司が勤務態度の問題を指摘したところ、パワハラで訴えると大騒ぎする自称“うつ”の社員……。このような事態に直面すると、その理不尽と思わざるを得ない攻撃性に、誰でも戸惑いを覚えます。「目の前で起こっていることの意味と対応方法を知りたい」多くの方がそう思われるのではないでしょうか。
◆多数の事例がリアリティある理解を助ける
本書は、保健師や地域看護に関わる実務家が対応困難事例に直面したときに、困難さを大きくしない(相手に巻き込まれない)ための対応方法をはじめ、訴えや行動のなかで注目すべき点などが具体的に記述されています。リアリティのある理解を助けてくれるのが、多数紹介されている事例です。診断がつく事例としては数少ないものも含まれていますが、かえって「世の中にはこういう人もいるよなぁ」と驚かされることでしょう。いずれの事例も人物が見えてくるようなショートストーリー仕立てで提示されており、読み手は困難事例に遭遇したかのような体験ができます。
そして、読み進めるうちに、提案されている対応方法が対象者の“本当のニーズ”に応えていることや、困難の正体が“ディスコミュニケーション”だったのだということに気づかれることでしょう。文章全体に、対象者にも実務家にも同様に注がれる著者の温かいまなざしが感じられます。
◆「明日から実践」の励みになる
内容は、メンタルヘルスの予備知識がなくてもわかりやすく、比較的長文で書かれている箇所も心地よく頭に入ってきます。そのようにやわらかなタッチで記述されているにもかかわらず、科学的裏づけと時流に合ったトピックスが豊富に織り込まれており、精神保健に詳しい人にも読みごたえと共感が得られる内容と言えるでしょう。読んでいる間は、まるで有能で親しみやすいスーパーバイザーから助言してもらっているような心強さを感じます。そして、読後は、メンタルヘルスの実務研修を受けたあとのように、「よし、明日から実践しよう!」と元気になれるでしょう。
医療者のみならず、福祉・人事に携わる方、地域で幅広い相談業務に携わる方たちにもお勧めできる1冊です。
(『訪問看護と介護』2012年4月号掲載)
書評者: 新納 美美 (保健師、北海道大学理学院自然史科学専攻博士後期課程)
「最近、対象者から大泣きで電話がかかってきて振り回される」「家庭訪問のとき、対象者の機嫌が悪く、罵声を浴びせられたりして、なかなか帰してもらえなかった」……。
◆“困った人”が増えている現場で
前者は母子、後者は高齢者の事例であり、いずれも一見、精神保健とは無縁の事例です。ここ数年、地域保健のみならず、さまざまな分野で“困った人”が増えていると聞きます。待ち時間に腹を立て執拗に苦情や罵声を浴びせ外来診療を滞らせてしまう患者。役所の窓口で閉庁まで行政への不満を述べ職員を拘束してしまう市民。上司が勤務態度の問題を指摘したところ、パワハラで訴えると大騒ぎする自称“うつ”の社員……。このような事態に直面すると、その理不尽と思わざるを得ない攻撃性に、誰でも戸惑いを覚えます。「目の前で起こっていることの意味と対応方法を知りたい」多くの方がそう思われるのではないでしょうか。
◆多数の事例がリアリティある理解を助ける
本書は、保健師や地域看護に関わる実務家が対応困難事例に直面したときに、困難さを大きくしない(相手に巻き込まれない)ための対応方法をはじめ、訴えや行動のなかで注目すべき点などが具体的に記述されています。リアリティのある理解を助けてくれるのが、多数紹介されている事例です。診断がつく事例としては数少ないものも含まれていますが、かえって「世の中にはこういう人もいるよなぁ」と驚かされることでしょう。いずれの事例も人物が見えてくるようなショートストーリー仕立てで提示されており、読み手は困難事例に遭遇したかのような体験ができます。
そして、読み進めるうちに、提案されている対応方法が対象者の“本当のニーズ”に応えていることや、困難の正体が“ディスコミュニケーション”だったのだということに気づかれることでしょう。文章全体に、対象者にも実務家にも同様に注がれる著者の温かいまなざしが感じられます。
◆「明日から実践」の励みになる
内容は、メンタルヘルスの予備知識がなくてもわかりやすく、比較的長文で書かれている箇所も心地よく頭に入ってきます。そのようにやわらかなタッチで記述されているにもかかわらず、科学的裏づけと時流に合ったトピックスが豊富に織り込まれており、精神保健に詳しい人にも読みごたえと共感が得られる内容と言えるでしょう。読んでいる間は、まるで有能で親しみやすいスーパーバイザーから助言してもらっているような心強さを感じます。そして、読後は、メンタルヘルスの実務研修を受けたあとのように、「よし、明日から実践しよう!」と元気になれるでしょう。
医療者のみならず、福祉・人事に携わる方、地域で幅広い相談業務に携わる方たちにもお勧めできる1冊です。
(『訪問看護と介護』2012年4月号掲載)
更新情報
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更新情報はありません。
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