大腸肛門病ハンドブック

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長年にわたり消化管診療に携わってきた著者らが、その豊富な症例データをもとに大腸肛門疾患の診断と治療を解説。特に肛門疾患の症例データは豊富であり、その数の多さから本邦の肛門疾患全体の傾向を表したものといえる。また年間10,000例実施している大腸内視鏡検査についても取り上げられ解説されている。
監修 辻仲 康伸
発行 2011年07月判型:B5頁:392
ISBN 978-4-260-01342-0
定価 13,200円 (本体12,000円+税)

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(辻仲康伸)/Foreword(Steven D. Wexner, M.D.)


 どの医学書を作るにも非常な熱意とその専門領域に対する愛着が必要である。この教科書も例外ではない。担当した先生方の熱意の総和が結実して初めて誕生するものである。
 この教科書のゴールは多くの臨床で活躍する外科医が日々疑問に感じることや,患者にとって,最良の指針となることである。特に大腸肛門病を専門とした若い臨床医は,多くの経験を持たずして診断と治療に当たらざるを得ないことも多い。
 本書はまず解剖学的視点から,より骨盤,直腸,肛門に力点を置き,日々不確実な知識を明示したいと考えた。これには東京医科歯科大学解剖学教室の秋田恵一先生の専門的な知識を生かしていただいた。また,大腸内視鏡の診断と治療については福島県立医科大学冨樫一智先生にご尽力をいただいた。さらにMRI 診断については洛和会音羽病院の加川先生にお願いした。そのほか大腸肛門病の各論については辻仲病院大腸肛門病センターの指導医,専門医が分担執筆した。これらの各論説は最新の研究と臨床診断と治療に基づいて執筆なされている。日常極めて多忙な診療の合間に最新の論文を読み,自分の研究成果を読者に十分理解できるよう書き下ろすことは容易ではない。協力し努力を惜しまなかった同僚医師に心から感謝したい。
 また,更に特筆すべきは世界の大腸肛門病学のリーダーであり,数多くの教科書を執筆されているSteven D. Wexner 博士(Cleveland Clinic Florida, Director of Colorectal Surgery, Chief of Staff)に寄せ書きをいただいたことである。Steven D. Wexner と辻仲は毎年東京でColorectal Disease Symposium in Tokyo(CDST)を開催し,主として日本の大腸肛門病学の著名な教授たちとともに有意義な会議を持続している。今後ますます国際化が進む日本において,英語による国際的シンポジウムを東京において毎年開催する意義は極めて大きい。若い研修医,レジデントがその会議にも積極的に参加されることが望まれる。
 本書は近年そのシンポジウムなどで発表された内容も一部含まれている。日進月歩の著しい今日にあって,大腸肛門病学の理解と実践に少しでも役立つことを願ってやまない。

 2011年6月
 辻仲康伸


Foreword
It is with great pleasure that I write the Foreword to the Colorectal Disease Handbook, edited by Dr. Yasunobu Tsujinaka. Despite the prevalence of anorectal disease, not all general surgeons are fluent in every nuance of the evaluation and management of those myriad of maladies. For this reason, many textbooks have been published in every language to help explain the plethora of both traditional and new innovative diagnostic and therapeutic alternatives. Fundamental topics such as anatomy and physiology are the cornerstones on which the study of the disease of the colon, rectum, and anus are built. Dr. Tsujinaka has assembled a team of expert colorectal surgeons recruited from within the ranks of his internationally renowned Tsujinaka Hospitals. The subject matter for the book is very comprehensive insuring the reader complete, detailed, and current up-to-date review in each of these key areas. Each chapter is authoritatively written, well referenced, and well illustrated. Accordingly, these highly skilled surgeons have done a superlative job of laying the foundation and building upon it. They elucidate the simple, explore the complex, and off all of the newest and most controversial debates. One of the several very unique features of this excellent textbook is the homogeneity of thoughts. It is not always easy to achieve a fluent, fluid, and cohesive multi-authored volume. All too often the varied practice nuances and personal preferences of each of the authors differ amongst the numerous contributors. In these instances the reader is left to interpret the often significant conflict amongst the contributors. Because Dr. Tsujinaka has limited authorship to the staff of his high quality faculty, a smooth seamless and user friendly volume is the result. After reading this book, I am sure that every practicing general and colorectal surgeon, as well as every general and colorectal surgery resident, will want to keep this volume close at hand as a continuous source of reference on these topics. I wish to congratulate Dr. Tsujinaka and his team for having created this very practical comprehensive and up to date guide to colorectal surgery.

Steven D. Wexner, M.D., FACS, FRCS, FRCS(ED)

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第1章 序論
第2章 骨盤内臓の基本的解剖
第3章 直腸肛門部の診察
第4章 痔核
 A.PPH
 B.ALTA
 C.痔核の結紮切除法
第5章 裂肛
第6章 痔瘻
 A.総論
 B.筋保存法
 C.seton法,切開開放術
 D.MRIによる痔瘻の診断
第7章 肛門部超音波診断法
第8章 大腸肛門機能障害
第9章 炎症性腸疾患の診断と治療
第10章 直腸脱の診断と治療
第11章 直腸瘤の診断と治療
第12章 直腸腟瘻の診断と治療
第13章 大腸内視鏡の挿入法
第14章 大腸内視鏡診断と治療
第15章 大腸癌の発生と遺伝子異常
第16章 大腸癌の診断と治療
第17章 大腸憩室疾患
第18章 直腸肛門の稀な病気
第19章 その他の疾患
 A.女性の肛門疾患
 B.性感染症
 C.毛巣洞
 D.肛門周囲炎

索引

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エキスパートの知見を提供する集大成
書評者: 土屋 周二 (横市大名誉教授)
 本書は簡便なガイドブックというより,この分野の全体を網羅した成書である。ご承知のように大腸と肛門は密接な関係があり,この両者を一体とした知識と技術をもとにした専門的な医療が求められる。近代,欧米ではそのような視点から水準の高い施設がつくられていったが,わが国では少し遅れ1970~80年代ごろから各地にセンター的施設が創設され,優れた実績を挙げている。またオーストラリア,アジア諸国地域にも欧米の一流施設に比肩するものができ,その水準も高い。有名なGoligherの名著は既に1961年に刊行されたが,その後世代が代わり,内容を新たにした成書が内外で次々に発刊されている。

 本書監修者の辻仲康伸氏は外科,特に大腸肛門病について修練と研究を積まれ,評者の現職時代には大変に教えられるところが多かった。そして高い志を持って大腸肛門病専門の施設を開設されたのである。約20年が経過した現在では大規模な真の意味での大腸肛門病センターとなり,多数のエキスパートと共に活動されている。

 本書の一つの特徴として多数の執筆者がかかわっているにもかかわらず,記述に不統一性がないことが挙げられる。主要部分は辻仲氏自身が直接執筆され,他の部分は辻仲病院にスタッフとして集っているエキスパートによるものであるが,監修者の理念や思考がすべてに行き渡っている。また治療効果の評価や適応の選択などは豊富な自験例による検証がなされており,あいまいさがない。一方,局所解剖,内視鏡検査,MRIその他画像診断などについてはわが国の名だたる専門家が担当され,斬新な知識を惜しみなく提供されているのは心強い。本書の序文には,この教科書のゴールは臨床で活躍する外科医,消化器科医,肛門科医の方々の日々の疑問を解き,大腸肛門病の専門医を志す若手医師には正しい指針を示すことである旨が述べられているが,この目的に十分合致していると思う。

 全体として記述は明解で,図表,写真は豊富でこの上なく鮮明である。各章は旧来の成書にみられた一般的な事項の羅列とは異なり,重要な点を余さずはっきりと示しており,実際に診療を進めるために役立つ場合が多いだろうと思う。新しい視点から他の大腸疾患では機能性疾患などについても解説し,余すところはない。

 症例が多い肛門疾患についてはかなり重点が置かれ,現在行われている有用な治療方法について詳述されており,さらに最新の方法も批判的な視点を含めて紹介されている。専門家の陥りやすい独善性や執着のようなものはなく,辻仲氏の進取の気象や優れた判断力が随所に垣間見られ感慨深いものがあった。

 辻仲氏は国際的にも活躍されているが,親交のある米国の指導的専門学者,S. D. Wexner教授が現時点での大腸肛門病学の問題点や展望を述べた章は貴重である。辻仲氏自身もまた,序論でこの方面の医学の沿革と展望を詳しく示しており,ある種の意気込みが感ぜられるのは評者だけではあるまい。

 本書は大腸肛門病学を志す方,これに関心のある方の座右の書としてぜひお薦めしたい。
大腸肛門病の診療に携わる医師にとって有用な最新のmonograph
書評者: 小西 文雄 (自治医大さいたま医療センター教授/一般・消化器外科)
 このたび,医学書院から辻仲康伸氏の監修による『大腸肛門病ハンドブック』が出版された。本来,大腸疾患と肛門疾患の診断と治療は,歴史的に見ても一体となった一つの領域として取り組まれてきており,現在でもその必要性があると思われる。わが国においては,日本大腸肛門病学会がその要となる組織であり,大腸疾患と肛門疾患を包括してその臨床と研究に関する発展における重要な学会としての役割を果たしている。しかし,現在わが国では,大腸疾患と肛門疾患は専門とする医師が異なり,二つの独立した領域として診療体制が取られている傾向がある。

 一方,欧米においては,現在に至るまで,大腸外科医は肛門疾患の治療も同時に行っていることが多く,癌の専門病院を除いては,両者を含めた幅の広い診療と研究が行われている。このような欧米における体制は,以前私が留学した英国のSt. Mark's Hospitalにおいても現在に至るまで,継続して行われており,同病院の外科医たちは大腸肛門病において幅の広い活動を展開している。

 監修者の辻仲康伸氏が本書の序論で述べておられるように,この領域における欧米の著名な専門書は,大腸疾患と肛門疾患の両者を含む内容となっている。辻仲氏は,横浜市立大学外科において大腸外科の研鑽を積まれた後,主として肛門疾患を中心に診療を発展してこられた。今回出版された『大腸肛門病ハンドブック』においては,肛門疾患に重点が置かれているが,一方,大腸内視鏡の挿入法や内視鏡診断の最新知見,さらに,炎症性腸疾患の診断と治療や大腸癌の基礎と臨床に至るまで,幅広く大腸疾患についての重要な内容にまで及んで書かれており,本書を監修された辻仲氏の見識の高さがよく理解できる。

 肛門疾患に関する各章においては,最新の治療について素晴らしい図と写真を駆使して詳細にかつわかりやすく解説されており,日常診療において経験することが多い肛門疾患のup to dateの治療方法を理解する上で大変有用である。内容は具体的で詳細に記述されており,かつ,各章の統一性がとれている。特定の治療法に偏ることなく,現在一般的に施行されている複数の治療法について紹介されており,肛門疾患の適切な治療法の選択を考える上で大変役に立つ内容である。

 三大肛門疾患の中でも,特に痔核と痔瘻の治療に関しては,治療法の選択基準などが具体的に記述されており,実際の診療に当たる外科医にとって大変参考になる。肛門超音波検査や大腸肛門の機能検査,さらに過敏性腸症候群や便失禁治療法についての記述もあり,わが国においても特に最近問題となってきているこれら大腸肛門の機能性疾患を理解し,適切な治療法を選択する上で有用である。

 本書の執筆は,これまで精力的に大腸肛門疾患の治療に携わってこられた辻仲康伸氏および辻仲病院に勤務されている大腸肛門疾患治療の豊かな経験を有する医師が中心となってなされており,内容的に統一性がよく保たれている。本書は二つの辻仲病院における大腸肛門病診療の努力の結晶であり,このような経験豊かな執筆者らによって書かれた本書が,大腸肛門病の診療に携わる医師にとって有用な最新のmonographとなることは間違いないであろう。

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