ナースのミカタ 小児看護
知っておきたい53の疾患

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小児看護に必要な基礎知識とともに、知っておきたい53の疾患をわかりやすく解説。「小児のがんが早い段階で見つかりにくいのは、なぜ?」「チアノーゼがあっても酸素を使わないことがあるのは、なぜ?」など、臨床で生じる疑問に応えながら解説するから、臨床と知識がつながりやすい。やさしい解説と豊富なイラストで、小児看護に必要な知識がしっかり身につく。小児看護に携わるすべてのナースの必携書。
編集 右田 真
発行 2013年05月判型:B6頁:224
ISBN 978-4-260-01618-6
定価 2,640円 (本体2,400円+税)

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はじめに

 これまでの看護の教科書は,机に向かって背筋をピンと伸ばして読む,そんな印象ではないでしょうか。この『ナースのミカタ 小児看護』は,小児医療の現場で日々忙しく働く看護師の皆さんや,これから看護師を目指す看護学生さんが「気楽にゴロッと寝転びながら読める」小児看護の読み物として,読みやすさを第一に編集しました。
 『ナースのミカタ』というタイトルには,多忙な看護師さんの「味方」になりたいという気持ちと,病める子ども達をみる看護師さんに,これまでと少し違った「看方」をしてほしいという気持ちが込められています。
 日本医科大学小児科学教室の若手医師を中心とした執筆陣が,我々のパートナーとして小児医療にあたる看護師さんたちと患児の病態の理解を同じくしたい,という気持ちで執筆しました。
 本書では,小児の成長発達や小児の特徴を解説するとともに,小児の主要な53の疾患について,病態,検査,診断,治療を中心に解説しています。患児の症状や病態を記憶にとどめていただくために,図表も多く取り入れました。
 この本が小児看護,小児医療に携わる方々の一助になることを切望いたします。

 最後に,『ナースのミカタ』の名付けの親であり,本書を出版するにあたり多大なるご協力をいただいた,医学書院の品田暁子さんに心から感謝いたします。

 日本医科大学小児科准教授
 日本医科大学武蔵小杉病院 周産期・小児医療センター
 右田 真

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Chapter 1 小児をみるとき,最初に必要なこと
   1 小児の成長発達
   2 小児の栄養
   3 小児の一般状態,バイタルサイン

Chapter 2 小児をみるとき,知っておきたい疾患
1 先天異常
 先天異常の基本
   1 フェニルケトン尿症
   2 ダウン症
   3 ターナー症候群
2 感染症
 感染症の基本
  ウイルス感染症
   1 麻疹
   2 水痘,帯状疱疹
   3 風疹
   4 流行性耳下腺炎
   5 突発性発疹
   6 インフルエンザ
   7 伝染性紅斑
   8 伝染性単核球症
  細菌感染症
   9 溶連菌感染症
   10 ブドウ球菌感染症
3 呼吸器疾患
 呼吸器疾患の基本
   1 気管支炎,肺炎
   2 気管支喘息
   3 クループ症候群
   4 閉塞性睡眠時無呼吸症候群
4 循環器疾患
 循環器疾患の基本
  先天性心疾患
   1 心室中隔欠損(VSD)
   2 心房中隔欠損(ASD)
   3 動脈管開存(PDA)
   4 大動脈縮窄症(CoA)
   5 ファロー四徴症(TOF)
   6 心内膜床欠損症(ECD)
   7 完全大血管転位症(TGA)
  機能的心疾患
   8 不整脈
   9 川崎病
5 消化器疾患
   1 急性胃腸炎
   2 腸重積
   3 急性虫垂炎
   4 アセトン血性嘔吐症
6 腎臓疾患
 腎臓疾患の基本
   1 糸球体腎炎
   2 ネフローゼ症候群
   3 尿路感染症
7 神経疾患
   1 中枢神経感染症(髄膜炎,脳炎,脳症)
   2 熱性けいれん
   3 てんかん
   4 脳性麻痺
8 筋疾患
   1 筋ジストロフィー
   2 脊髄進行性筋萎縮症
9 血液疾患,悪性腫瘍
   1 貧血
   2 白血病
   3 悪性リンパ腫
   4 固形腫瘍
   5 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
   6 播種性血管内凝固症候群(DIC)
10 アレルギー性疾患,膠原病
   1 若年性特発性関節炎
   2 全身性エリテマトーデス(SLE)
   3 アレルギー性紫斑病(HSP)
11 内分泌代謝疾患
   1 糖尿病
   2 低身長
   3 肥満
12 新生児の疾患
 新生児の疾患の基本
   1 呼吸障害
   2 新生児黄疸

もう少し詳しく
 アレルギーマーチ
 発達障害とは
 「出血傾向」の現れ方
 肺サーファクタント(界面活性物質)と表面張力

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子どもの「看方」を教えてくれる,心強い一冊
書評者: 関根 弘子 (済生会横浜市東部病院こどもセンター看護師長/小児看護専門看護師)
 『ナースのミカタ 小児看護』は,主に小児科の若手の臨床医が執筆しており,序文には「病める子ども達をみる看護師さんに,これまでと少し違った『看方』をしてほしい」,「(医師の)パートナーとして小児医療にあたる看護師さんたちと患児の病態の理解を同じくしたい」という気持ちで執筆したと書かれている。本書を読み進めると,子どもと家族のために一緒に頑張ろう,という看護師への優しさが随所に感じられ,その内容は小児特有の成長発達や病態を理解するための道しるべになっている。

 本書は,小児の成長発達と疾患の解説の2章で構成されており,一般的な教科書にある記述だけでなく,小児科の臨床医の「診方」が記述されているのが特徴である。

 Chapter 1 は,「小児をみるとき,最初に必要なこと」と題し,生理的・機能的成長発達,栄養,一般状態,バイタルサインで構成され,小児の正常な発達を理解するための基礎知識が得られる。しかし,看護師として子どもを理解するために重要な認知や言語の発達,心理社会的発達に関する記述が無いのが残念である。看護師は,身体的だけでなく,心理的,社会的に子どもを理解し,子どもと家族の日常を支える役割を持つからである。

 Chapter 2 は,「小児をみるとき,知っておきたい疾患」として,53の疾患を解説している。どの疾患もカラーの図や写真を使って説明がされており,2~4ページ以内で読みやすく,小児の病態生理の専門書をわかりやすく要約した内容である。

 私は小児看護専門看護師として病院に勤務しているが,新卒看護師や小児病棟に異動してきた看護師に,必ず伝えていることがある。それは,「小児医療に携わる看護師として必要な知識は,子どもの成長発達と病態生理の二本柱」ということである。これらを同時にアセスメントした看護実践が,小児医療に携わる看護師の「看方」である。つまり,小児医療において看護師は,子ども特有の成長発達,病態に関する専門的知識を持ち,これらを相互に関連させたアセスメントをすることが求められる。

 小児を専門とする医療者であれば,この二本柱の知識を統合して理解するのは容易だが,新卒看護師や成人病棟から異動してきたばかりの看護師には難しい。

 本書には,その二本の柱をつなぎ,知識の整理を助ける記述がある。例えば,急性虫垂炎を例に挙げると,学童以降の発症が多いことは多くの教科書に書かれているが,その根拠として,「虫垂は消化管のなかでは,最もリンパ組織が発達した臓器の一つです。そのため,小児の成長過程でリンパ組織が急激に発達する5~6歳くらいから発症が多くなります」(本書,p. 96)と小児の生理学的発達が根拠として明示され,成長発達と病態の二本柱が,一段落に集約して記述されている。

 冒頭で紹介した序文にあるように,「看護師が小児科医と病態の理解を同じくする」には,小児の成長発達と病態を統合した理解を支援する教育が必要である。煩雑な日常業務に翻弄されながらも,本書を道しるべに子どもの成長発達と疾患の要点を理解し,小児のフィジカル・アセスメントの奥深さ,面白さを知り,さらに専門書を調べて知識を深めれば,臨床判断や実践力が高まる。

 小児医療に携わる看護師に,臨床で大切な子どもの「看方」を教えてくれる,心強い「味方」となる一冊である。
「小児看護は難しい」そんな声に応える一冊
書評者: 川出 素子 (板橋中央看護専門学校専任教員・小児看護学)
 「早くこのような本に出会いたかった」。この本を読み終えて思ったことである。

 小児の特徴の一つに,疾病の進み方が一般に成人より速く,短期のうちに危険な状態に陥りやすいということがある。そのため医療者の観察力,疾患の理解,豊富な知識が求められる。そのための助けとなると感じたからである。

 また,新人看護師や看護学生から「小児看護は覚えることが多く難しい」という声をよく聞く。検査値・数値が記載されているポケットサイズの本を参考にしていることがあるが,ポケットサイズで詳しく疾患について書かれているものはほとんどない。

 その点でも『ナースのミカタ 小児看護』は新人看護師や学生の助けになりそうだ。本書は持ち運びにも容易なサイズでありながら,小児の成長発達や特徴,主要な53の疾患,臨床現場で生じる疑問などが写真・イラストを交え解説され,誰にでも活用しやすいものとなっている。

 Chapter 1では,小児を理解するために必要な,成長発達や栄養,バイタルサインなどの基本事項について解説されている。小児看護は,成長発達の理解から始まるといわれるが,何から覚えていいか混乱することがある。本書では,要点がまとめて記載されているため,必要な情報がすぐに見つけられる。例えば小児のバイタルサイン測定時の知識や観察については,成人との正常値の基準の違いだけでなく,「乳幼児の場合は脈が触れる範囲が狭いので,第2,3指の指腹部を用います」など具体的な測定方法が挙げられており,小児と接したことのない新人看護師や学生にも十分に理解できる内容となっている。さらに,異常呼吸である陥没呼吸などについては患児の写真が掲載されており,観察していく上で参考になる。

 混合病棟などでは,緊急で小児の入院があった際,本書が一冊あれば,最低限必要な小児とその疾患の理解ができると思われる。

 Chapter 2では,先天異常,感染症,呼吸器疾患,循環器疾患,消化器疾患,腎臓疾患,神経疾患,筋疾患,血液疾患・悪性腫瘍,アレルギー性疾患・膠原病,内分泌代謝疾患,新生児の疾患と12項目に分け,それぞれ主要な疾患が解説されている。取り上げられている疾患のほとんどが,評者が小児病棟に勤務していたころ看てきた疾患であり,臨床の場面で疑問となることや家族への対応なども,本書で具体的に解説されている。

 疾患の解説は,随所にイラストや写真が記載されているため,読みやすく理解しやすい。また,X線写真,CTの読影についても触れられており,病態の理解が深められる。

 感染症については,予防接種や感染症の臨床経過も解説され,医療従事者だけでなく,小児にかかわるすべての人に理解しやすい。他職種に活用できる内容であり,家族への説明などにも使えそうだ。

 また「小児看護は守備範囲が広く,どこを学習したらいいかわからない」という学生には,主要な疾患の「基礎知識」「検査と診断」「治療」と系統立てた解説がされているため,学習するポイントの参考にもなるだろう。

 本書は小児にかかわるすべての人に,間違いなく「早くこのような本に出会いたかった」と思ってもらえる一冊である。

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