病理学・病理検査学
医師と臨床検査技師のコラボによる新しい教科書【標準MT】シリーズ
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臨床検査技師を目指す人のための教科書シリーズが全面リニューアル。国試出題基準に沿った内容で、実際の診療や研究の現場のトピックスも適宜紹介。卒前に習得しておきたい病理学の要点と病理検査手技の基本を網羅しており、豊富な写真や図表で効率よく学習できる。実習の予復習や試験前の確認に最適。
*「標準臨床検査学」は株式会社医学書院の登録商標です。
医学書院の“青本”シリーズ≪標準臨床検査学≫が完全リニューアル! 臨床検査技師を志す学生向けの新しい教科書シリーズです。 ●シリーズの特徴 ・標準的なカリキュラムに対応し、使い勝手のよい編成 ・臨床検査技師国家試験出題基準に完全対応、必要にして十分な記述内容 ・医師と臨床検査技師のコラボで生まれた教科書 ●ラインナップ ≫全12巻の一覧はこちら
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- 序文
- 目次
- 書評
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序文
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刊行のことば(矢冨 裕・横田浩充)/序(仁木利郎・福嶋敬宜)
刊行のことば
「標準臨床検査学」シリーズは,「臨床検査技師講座」(1972年発刊),「新臨床検査技師講座」(1983年発刊),さらには「臨床検査技術学」(1997年発刊)という医学書院の臨床検査技師のための教科書の歴史を踏まえ,新しい時代に即した形で刷新したものである.
臨床検査は患者の診断,治療効果の判定になくてはならないものであり,医療の根幹をなす.この臨床検査は20世紀の後半以降,医学研究,生命科学研究の爆発的進歩と歩調を合わせる形で,大きく進歩した.そして臨床検査の項目・件数が大きく増加し,内容も高度かつ専門的になるにつれ,病院には,臨床検査の専門部署である検査部門が誕生し,臨床検査技師が誕生した.臨床検査の中央化と真の専門家による実践というこの体制が,わが国の医療の発展に大きく貢献したこと,そして,今後も同じであることは明らかである.
このような発展めざましい臨床検査の担い手となることを目指す方々のための教科書となることを目指し,新たなシリーズを企画した.発刊にあたっては,(1)臨床検査の実践において必要な概念,理論,技術を俯瞰できる,(2)今後の臨床検査技師に必要とされる知識,検査技術の基礎となる医学知識などを過不足なく盛り込む,(3)最新の国家試験出題基準の内容をすべて網羅することを念頭に置いた.しかしながら国家試験合格のみを最終目的とはせず,実際の臨床現場において医療チームの重要な一員として活躍できるような臨床検査技師,研究マインドが持てるような臨床検査技師になっていただけることを願って,より体系だった深い内容となることも目指している.また,若い方々が興味を持って学習を継続できるように,レイアウトや記載方法も工夫した.
本書で学んだ臨床検査技師が,臨床検査の現場で活躍されることを願うものである.
2012年春
矢冨 裕
横田浩充
序
本書は,「標準臨床検査学」シリーズの1冊として,「病理学・病理検査学」を新たに編集,執筆したものである.
病理学はすべての疾患の病理,病態を包括的にまとめた学問であり,したがって,病理学・病理検査学の教科書も扱う範囲は広範にわたる.さらに近年は,臨床医学,分子生物学の進歩が著しく,病理診断,病理検査においても,これらの分野における進歩を知っておくことが必要となってきている.このような時代の要請にこたえつつ,その一方で,従来から変わらない病理学・病理検査学の基本をいかにわかりやすく記述するかが,本書に与えられた課題といえる.
本書は,大きく病理学と病理検査学の2部から構成されている.
病理学総論では,病理学の歴史に触れたあと,さまざまな疾患を系統的に述べている.ここで読者は,さまざまな疾患の分類,病理,病態の体系を概観することができるであろう.病理学各論では,それぞれの臓器・器官を主座とする疾患について,その病理,病態を学ぶことができる.総論と各論で重複した部分もあるが,互いに参照し有機的に学べるように心がけた.
病理検査学は,総論,組織学的検査,細胞学的検査,電子顕微鏡検査,病理解剖から構成されており,それぞれの検査で必要とされる技術,知識を学ぶことができる.組織学的検査と電子顕微鏡検査では,標本の作製,染色法などの技術面に記載が詳しい.細胞学的検査では,細胞診にあたり知っておくべき知識がまとめてある.理解を深めるため,必要に応じて図表や写真を挙げてある.
基本的な事項をわかりやすく伝えるため,各章の冒頭にポイントを挙げてまとめるとともに,やや詳しく知っておいてほしい点については,コラムを設けた.総じて,臨床検査技師国家試験の対策はもちろんのこと,現在の医療のなかで臨床検査技師が学ぶべき病理学・病理検査学の範囲をカバーした教科書となったのではないかと思っている.
本書により,多くの臨床検査技師が育ち,医療の現場で活躍されることを祈っている.
2012年2月
仁木利郎
福嶋敬宜
刊行のことば
「標準臨床検査学」シリーズは,「臨床検査技師講座」(1972年発刊),「新臨床検査技師講座」(1983年発刊),さらには「臨床検査技術学」(1997年発刊)という医学書院の臨床検査技師のための教科書の歴史を踏まえ,新しい時代に即した形で刷新したものである.
臨床検査は患者の診断,治療効果の判定になくてはならないものであり,医療の根幹をなす.この臨床検査は20世紀の後半以降,医学研究,生命科学研究の爆発的進歩と歩調を合わせる形で,大きく進歩した.そして臨床検査の項目・件数が大きく増加し,内容も高度かつ専門的になるにつれ,病院には,臨床検査の専門部署である検査部門が誕生し,臨床検査技師が誕生した.臨床検査の中央化と真の専門家による実践というこの体制が,わが国の医療の発展に大きく貢献したこと,そして,今後も同じであることは明らかである.
このような発展めざましい臨床検査の担い手となることを目指す方々のための教科書となることを目指し,新たなシリーズを企画した.発刊にあたっては,(1)臨床検査の実践において必要な概念,理論,技術を俯瞰できる,(2)今後の臨床検査技師に必要とされる知識,検査技術の基礎となる医学知識などを過不足なく盛り込む,(3)最新の国家試験出題基準の内容をすべて網羅することを念頭に置いた.しかしながら国家試験合格のみを最終目的とはせず,実際の臨床現場において医療チームの重要な一員として活躍できるような臨床検査技師,研究マインドが持てるような臨床検査技師になっていただけることを願って,より体系だった深い内容となることも目指している.また,若い方々が興味を持って学習を継続できるように,レイアウトや記載方法も工夫した.
本書で学んだ臨床検査技師が,臨床検査の現場で活躍されることを願うものである.
2012年春
矢冨 裕
横田浩充
序
本書は,「標準臨床検査学」シリーズの1冊として,「病理学・病理検査学」を新たに編集,執筆したものである.
病理学はすべての疾患の病理,病態を包括的にまとめた学問であり,したがって,病理学・病理検査学の教科書も扱う範囲は広範にわたる.さらに近年は,臨床医学,分子生物学の進歩が著しく,病理診断,病理検査においても,これらの分野における進歩を知っておくことが必要となってきている.このような時代の要請にこたえつつ,その一方で,従来から変わらない病理学・病理検査学の基本をいかにわかりやすく記述するかが,本書に与えられた課題といえる.
本書は,大きく病理学と病理検査学の2部から構成されている.
病理学総論では,病理学の歴史に触れたあと,さまざまな疾患を系統的に述べている.ここで読者は,さまざまな疾患の分類,病理,病態の体系を概観することができるであろう.病理学各論では,それぞれの臓器・器官を主座とする疾患について,その病理,病態を学ぶことができる.総論と各論で重複した部分もあるが,互いに参照し有機的に学べるように心がけた.
病理検査学は,総論,組織学的検査,細胞学的検査,電子顕微鏡検査,病理解剖から構成されており,それぞれの検査で必要とされる技術,知識を学ぶことができる.組織学的検査と電子顕微鏡検査では,標本の作製,染色法などの技術面に記載が詳しい.細胞学的検査では,細胞診にあたり知っておくべき知識がまとめてある.理解を深めるため,必要に応じて図表や写真を挙げてある.
基本的な事項をわかりやすく伝えるため,各章の冒頭にポイントを挙げてまとめるとともに,やや詳しく知っておいてほしい点については,コラムを設けた.総じて,臨床検査技師国家試験の対策はもちろんのこと,現在の医療のなかで臨床検査技師が学ぶべき病理学・病理検査学の範囲をカバーした教科書となったのではないかと思っている.
本書により,多くの臨床検査技師が育ち,医療の現場で活躍されることを祈っている.
2012年2月
仁木利郎
福嶋敬宜
目次
開く
I 病理学
第1章 病理学総論
A 病理学の概要
B 病因
C 細胞傷害と創傷治癒,適応現象
D 炎症
E 感染症
F 免疫異常
G 循環障害
H 代謝異常
I 腫瘍
J 発生異常と遺伝子,染色体異常
第2章 病理学各論
A 循環器系
B 呼吸器系
C 消化器系
D 内分泌系
E 腎・尿路系
F 生殖器系
G 血液・造血器系
H 神経・感覚・運動器系
I 皮膚および胸壁
II 病理検査学
第3章 病理検査学総論
A 病理検査の意義と概要
B 病理検体の取扱いと医療事故防止対策
C 試薬の管理
D 組織標本・病理診断記録の保管
E 病理診断における動向
第4章 組織学的検査法
A 組織検査の流れと概要
B 検体処理と固定
C 検体の切り出し
D 脱灰法
E 包埋法
F 薄切法
G 染色:総論
H 各種染色法
I 免疫組織検査法
J 遺伝子検査法
第5章 細胞学的検査法
A 細胞診総論
B 女性性器の細胞診
C 呼吸器系の細胞診
D 泌尿器系の細胞診
E 男性生殖器の細胞診
F 体腔液の細胞診
G 脳脊髄液の細胞診
H 乳腺の細胞診
I 甲状腺の細胞診
J 消化器系の細胞診
K 唾液腺の細胞診
L 軟部腫瘍の細胞診
第6章 電子顕微鏡検査法
A 電子顕微鏡の種類
B 透過型電子顕微鏡用標本の作製
C 走査電子顕微鏡用標本の作製
D 電顕的オートラジオグラフィー法
E 免疫電顕法
第7章 病理解剖検査法
A 解剖検査とは
B 病理解剖の実際
巻末付録
和文索引
欧文索引
第1章 病理学総論
A 病理学の概要
B 病因
C 細胞傷害と創傷治癒,適応現象
D 炎症
E 感染症
F 免疫異常
G 循環障害
H 代謝異常
I 腫瘍
J 発生異常と遺伝子,染色体異常
第2章 病理学各論
A 循環器系
B 呼吸器系
C 消化器系
D 内分泌系
E 腎・尿路系
F 生殖器系
G 血液・造血器系
H 神経・感覚・運動器系
I 皮膚および胸壁
II 病理検査学
第3章 病理検査学総論
A 病理検査の意義と概要
B 病理検体の取扱いと医療事故防止対策
C 試薬の管理
D 組織標本・病理診断記録の保管
E 病理診断における動向
第4章 組織学的検査法
A 組織検査の流れと概要
B 検体処理と固定
C 検体の切り出し
D 脱灰法
E 包埋法
F 薄切法
G 染色:総論
H 各種染色法
I 免疫組織検査法
J 遺伝子検査法
第5章 細胞学的検査法
A 細胞診総論
B 女性性器の細胞診
C 呼吸器系の細胞診
D 泌尿器系の細胞診
E 男性生殖器の細胞診
F 体腔液の細胞診
G 脳脊髄液の細胞診
H 乳腺の細胞診
I 甲状腺の細胞診
J 消化器系の細胞診
K 唾液腺の細胞診
L 軟部腫瘍の細胞診
第6章 電子顕微鏡検査法
A 電子顕微鏡の種類
B 透過型電子顕微鏡用標本の作製
C 走査電子顕微鏡用標本の作製
D 電顕的オートラジオグラフィー法
E 免疫電顕法
第7章 病理解剖検査法
A 解剖検査とは
B 病理解剖の実際
巻末付録
和文索引
欧文索引
書評
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「標準」の名を冠するにふさわしい臨床検査技師養成のための教科書
書評者: 坂本 穆彦 (大森赤十字病院顧問)
臨床検査技師資格の取得を目指す臨床検査技師養成コースの学生向け教科書は,医学書院からはこれまでに時代の要請に合わせていくつかのシリーズが編纂されてきた。このたび,1997年からのシリーズ「臨床検査技術学」が全面的に刷新され,新たなシリーズとして「標準臨床検査学」がスタートした。本書『病理学・病理検査学』はその一翼を担って刊行されたものである。
本書の構成は大きく2つに分かれている。すなわち,前半に病理学そのものの解説があり,後半では実地臨床の場で展開されている病理技術について解説されている。それぞれがわかりやすく記述されており,これらは本文全259ページをほぼ半分ずつに分けあっている。つまり,両者とも臨床検査技師にとって甲乙つけ難い重要な知識であることを物語っている。
前半の病理学については,第1章と第2章に大別され,第1章 病理学総論では病理学の概容,病因のほか,病気のカテゴリー別の解説(炎症・循環障害・代謝障害・腫瘍など)が8項目に分けて述べられている。第2章では,系統別に各臓器病変が取り上げられている。循環器系,呼吸器系,消化器系など,全身を9系統に分け,その中では,循環器系であれば心臓,血管,リンパ管などのように臓器ごとに腫瘍病変の説明がなされている。全体の項目立てや,説明対象として取り上げた病気の選択は極めてオーソドックスである。
病理検査学については,第3章 病理検査学総論,第4章 組織学的検査法,第5章 細胞学的検査法,第6章 電子顕微鏡検査法,第7章 病理解剖検査法に分けられ,各章とも標準的な検査技術の解説にあてられている。細胞診のスクリーニングとしての鏡検作業や病理解剖の業務介助では医師の行為や手技と重なる面があるが,それ以外の標本作製に関しては臨床検査技師のプロとしての独壇場であり,当然,本書の核の中でも重要な部分である。
ところで,昨今の医学・医療の動向は医学研究や生命科学研究の成果を積極的に取り入れつつ早いテンポでたえず変化している。他方,ホルマリン規制などで具体的に示されているように,職場環境・自然環境への配慮も十分なものが要請されている。このように検査技術に関して学ばねばならない範囲は広い。このような時代の要求に応え,本書では過不足なくさまざまな事項が手際よく整理され,まとめられている。全編を通じて,図,表,シューマが多用されており,章ごとにまとめがあるので読みやすい体裁になっている。
本書の編集・執筆は医科大学の一つの部門のメンバーが総力をあげて取り組んでおり,その長所が十分に活かされた安定した出来栄えである。まさに「標準」という名を冠するにふさわしいものとなっており,各章の記述を媒介として検査技術の基礎の基本を身につけていただきたい。
本書での学習により,一人でも多くの臨床検査技師が輩出されることを期待している。
病理検査技術を学ぶための基本的教科書
書評者: 福田 利夫 (群大大学院教授・生体情報検査科学)
臨床検査技師をめざす人のための教科書シリーズとして定評のある医学書院の“青本”シリーズが全面的にリニューアルされ,その第一弾として『病理学・病理検査学』が刊行された。
『標準臨床検査学』シリーズは,『臨床検査技師講座』(1972年-),『新臨床検査技師講座』(1983年-),さらには『臨床検査技術学』(1997年-)という医学書院の臨床検査技師のための教科書の歴史を踏まえ,新しい時代に即した形で刷新されたものである。
この青本シリーズは,1)臨床検査技師の標準的な養成カリキュラムに対応,2)臨床検査技師国家試験出題基準に完全対応かつ必要にして十分な記述内容,3)医師と臨床検査技師のコラボレーションで生まれた教科書シリーズであり,2013年春までにすべての科目の発刊が予定されている。
本書の前身の『《臨床検査技術学 5》病理学・病理検査学』の刊行は2001年であり,その後10年の間の病理学,病理組織検査,細胞診検査の進歩には目覚ましいものがある。本書はそれらの進歩を積極的に取り入れ,わかりやすく解説している。
特徴の第一は医師と臨床検査技師のコラボレーションによる新しい教科書シリーズの一巻であることである。病理検査学の基礎となる病理学総論,病理学各論から始まり,実際の診療や研究の現場のトピックスも適宜紹介されており,卒業までに習得しておきたい病理学の要点と病理検査手技の基本を網羅し,それらを豊富な写真や図表で丁寧に解説している。そのため,授業や実習を受けるときの教科書として効率よく学習でき,さらに参考書として,予復習や試験前の確認に最適である。
第二の特徴は臨床検査技師国家試験出題基準に沿って編集され,国家試験をクリアするための必要,十分な内容が網羅されていることである。
あらためて「臨床検査技師等に関する法律施行規則」に定める試験科目を確認してみると,病理組織細胞学の分野では1)人体の構造と機能,2)医学検査の基礎と疾病と関連,3)形態検査学が該当している。当然本書はこのすべての項目を網羅しているのに加え,病理検査業務でその重要性が高くなっている免疫組織検査法,遺伝子検査法や,細胞診検査で近年導入されている液状処理検体(LBC),ベセスダシステムについても解説されており,最新の検査技術を学ぶのに十分な内容である。さらに病理学・病理検査の基本である病理解剖検査法については,それが法的に知っておく必要のある項目であることを含めて解説されている。また病理検査の基本的手法でありながら,近年その重要性が忘れられつつある電子顕微鏡検査法についても,標本の作成法,観察法が解説されており,臨床検査技師国家試験の対策はもちろんのこと,現在の医療の中で臨床検査技師が学ぶべき病理学・病理検査学の範囲を網羅した教科書である。
本書により,多くの臨床検査技師が育ち,医療の現場で活躍されることを願っている。
書評者: 坂本 穆彦 (大森赤十字病院顧問)
臨床検査技師資格の取得を目指す臨床検査技師養成コースの学生向け教科書は,医学書院からはこれまでに時代の要請に合わせていくつかのシリーズが編纂されてきた。このたび,1997年からのシリーズ「臨床検査技術学」が全面的に刷新され,新たなシリーズとして「標準臨床検査学」がスタートした。本書『病理学・病理検査学』はその一翼を担って刊行されたものである。
本書の構成は大きく2つに分かれている。すなわち,前半に病理学そのものの解説があり,後半では実地臨床の場で展開されている病理技術について解説されている。それぞれがわかりやすく記述されており,これらは本文全259ページをほぼ半分ずつに分けあっている。つまり,両者とも臨床検査技師にとって甲乙つけ難い重要な知識であることを物語っている。
前半の病理学については,第1章と第2章に大別され,第1章 病理学総論では病理学の概容,病因のほか,病気のカテゴリー別の解説(炎症・循環障害・代謝障害・腫瘍など)が8項目に分けて述べられている。第2章では,系統別に各臓器病変が取り上げられている。循環器系,呼吸器系,消化器系など,全身を9系統に分け,その中では,循環器系であれば心臓,血管,リンパ管などのように臓器ごとに腫瘍病変の説明がなされている。全体の項目立てや,説明対象として取り上げた病気の選択は極めてオーソドックスである。
病理検査学については,第3章 病理検査学総論,第4章 組織学的検査法,第5章 細胞学的検査法,第6章 電子顕微鏡検査法,第7章 病理解剖検査法に分けられ,各章とも標準的な検査技術の解説にあてられている。細胞診のスクリーニングとしての鏡検作業や病理解剖の業務介助では医師の行為や手技と重なる面があるが,それ以外の標本作製に関しては臨床検査技師のプロとしての独壇場であり,当然,本書の核の中でも重要な部分である。
ところで,昨今の医学・医療の動向は医学研究や生命科学研究の成果を積極的に取り入れつつ早いテンポでたえず変化している。他方,ホルマリン規制などで具体的に示されているように,職場環境・自然環境への配慮も十分なものが要請されている。このように検査技術に関して学ばねばならない範囲は広い。このような時代の要求に応え,本書では過不足なくさまざまな事項が手際よく整理され,まとめられている。全編を通じて,図,表,シューマが多用されており,章ごとにまとめがあるので読みやすい体裁になっている。
本書の編集・執筆は医科大学の一つの部門のメンバーが総力をあげて取り組んでおり,その長所が十分に活かされた安定した出来栄えである。まさに「標準」という名を冠するにふさわしいものとなっており,各章の記述を媒介として検査技術の基礎の基本を身につけていただきたい。
本書での学習により,一人でも多くの臨床検査技師が輩出されることを期待している。
病理検査技術を学ぶための基本的教科書
書評者: 福田 利夫 (群大大学院教授・生体情報検査科学)
臨床検査技師をめざす人のための教科書シリーズとして定評のある医学書院の“青本”シリーズが全面的にリニューアルされ,その第一弾として『病理学・病理検査学』が刊行された。
『標準臨床検査学』シリーズは,『臨床検査技師講座』(1972年-),『新臨床検査技師講座』(1983年-),さらには『臨床検査技術学』(1997年-)という医学書院の臨床検査技師のための教科書の歴史を踏まえ,新しい時代に即した形で刷新されたものである。
この青本シリーズは,1)臨床検査技師の標準的な養成カリキュラムに対応,2)臨床検査技師国家試験出題基準に完全対応かつ必要にして十分な記述内容,3)医師と臨床検査技師のコラボレーションで生まれた教科書シリーズであり,2013年春までにすべての科目の発刊が予定されている。
本書の前身の『《臨床検査技術学 5》病理学・病理検査学』の刊行は2001年であり,その後10年の間の病理学,病理組織検査,細胞診検査の進歩には目覚ましいものがある。本書はそれらの進歩を積極的に取り入れ,わかりやすく解説している。
特徴の第一は医師と臨床検査技師のコラボレーションによる新しい教科書シリーズの一巻であることである。病理検査学の基礎となる病理学総論,病理学各論から始まり,実際の診療や研究の現場のトピックスも適宜紹介されており,卒業までに習得しておきたい病理学の要点と病理検査手技の基本を網羅し,それらを豊富な写真や図表で丁寧に解説している。そのため,授業や実習を受けるときの教科書として効率よく学習でき,さらに参考書として,予復習や試験前の確認に最適である。
第二の特徴は臨床検査技師国家試験出題基準に沿って編集され,国家試験をクリアするための必要,十分な内容が網羅されていることである。
あらためて「臨床検査技師等に関する法律施行規則」に定める試験科目を確認してみると,病理組織細胞学の分野では1)人体の構造と機能,2)医学検査の基礎と疾病と関連,3)形態検査学が該当している。当然本書はこのすべての項目を網羅しているのに加え,病理検査業務でその重要性が高くなっている免疫組織検査法,遺伝子検査法や,細胞診検査で近年導入されている液状処理検体(LBC),ベセスダシステムについても解説されており,最新の検査技術を学ぶのに十分な内容である。さらに病理学・病理検査の基本である病理解剖検査法については,それが法的に知っておく必要のある項目であることを含めて解説されている。また病理検査の基本的手法でありながら,近年その重要性が忘れられつつある電子顕微鏡検査法についても,標本の作成法,観察法が解説されており,臨床検査技師国家試験の対策はもちろんのこと,現在の医療の中で臨床検査技師が学ぶべき病理学・病理検査学の範囲を網羅した教科書である。
本書により,多くの臨床検査技師が育ち,医療の現場で活躍されることを願っている。
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。
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