正常分娩の助産術
トラブルへの対応と会陰裂傷縫合
正常分娩の介助に必要な助産手技がこの1冊に
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院内助産成功の鍵は助産師の自立。自立した助産師は、お産のメカニズムを知り、予後を予測して迅速な対応ができなければならない。本書にはスムーズなお産の進行のためのケアや会陰裂傷縫合など、正常分娩介助に際して知っておきたい知識と技が満載。
シリーズ | ブラッシュアップ助産学 |
---|---|
著 | 進 純郎 / 堀内 成子 |
発行 | 2010年08月判型:B5頁:144 |
ISBN | 978-4-260-01082-5 |
定価 | 3,300円 (本体3,000円+税) |
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序文
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序(進 純郎)/はじめに(堀内 成子)
序
産科医不足の折から,全国的に助産外来,院内助産が積極的に推進される状況にあります。しかしながら,院内助産推進のための技術を磨くテキストはほとんど見受けられません。院内助産成功のカギは,少しでも産科医の手を煩わせないで助産師だけで分娩を完了できるスキルをもつことであり,スキルアップが急務です。
全国的に産科医不足の折,行政・医師会の後押しを受けて多くの施設が院内助産に取り組んでいますが,院内助産を開設しても60~80%の分娩は産科医を呼ばなければならず,本来の院内助産の機能をほとんど果たしていません。その原因として,会陰裂傷,産科出血,遷延分娩,CTGの異常,などが挙げられています。この傾向は過去3年間,全国を行脚して自分の目で確認した多くの施設で同様な傾向にあります。
会陰裂傷縫合は現在,全国の助産学校,看護大学で講義が行なわれるようになりましたが,実地臨床の場ではまだまだ助産師が行なう体制にはなっておらず,きちんとしたテキストも出版されていません。遷延分娩に関しても,理論に根ざした管理が助産師側にできていないため,ほとんどの施設で分娩が遷延すると産科医による分娩促進が行なわれています。その結果,胎児機能不全を誘発させ,吸引・鉗子分娩,帝王切開になる症例が後を絶ちません。西洋医学偏重は自然なお産の流れを中断させ,母児に多くの合併症を招いています。今こそ代替医療(alternative medicine)をも用いたお産の管理が必要です。
本書は助産師のケアによりスムーズなお産の進行を促進させること,会陰保護により会陰裂傷を予防すること,助産師が自ら会陰裂傷縫合の技を身につけることなどを目的にしています。現在全国で助産外来は300か所近く,院内助産は70か所以上の施設で行なわれているようですが,その数はますます増えることが予想されます。本書が安全に,安心して満足な院内助産遂行のために役立てていただければ幸いです。
本書作成に関し多大なご尽力をいただきました医学書院の綿貫桂子氏,伊藤恵氏に深謝申し上げます。
2010年7月
進 純郎
はじめに
お産をする場所がない「お産難民」,産婦人科医の不足による総合病院産科の閉鎖……1次医療機関や2次医療機関が次々に閉鎖した結果,3次医療機関にハイリスクではない妊産婦が押し寄せる結果を招き,真にハイリスクの人々のニーズを満たせなくなることが危惧されています。もっと1次医療システムを人々の手の届くところで展開しなければ,ますます女性は子どもを産み育てることに戸惑うようになるでしょう。
わが国の助産師は,その免許により「助産所」を開業できるユニークな助産プライマリケアシステム(1次医療機関)の担い手です。しかし,助産所に就業する助産師は,就業助産師全体の6%しかいません。一方,7割の助産師が就労する病院では,チーム医療を隠れみのとして,助産師が自立して助産診断・ケアすることを妨げているように思えます。臨床の場は,安易に産科医の指示と承認を求めることに迎合しやすい環境にあります。正常分娩に産科医の立ち会いを常態化させていること自体,助産師が独立して診断・ケアする責任を回避しています。もっと助産師の能力を最大限に発揮していく必要があります。それは開業できる免許にふさわしい実力を身につけるということです。
そのためにまずは助産師が複数でグループとして実践を行なうこともできるのではないでしょうか。一足飛びに助産所開業というハードルが高ければ,助産師を応援してくれる産科医と手をつなぎ,病院の外に独立した助産ケアシステムができないかと考えていました。ちょうど私は好機に恵まれ,聖路加国際病院の院外に助産施設を創る構想に関わることができました。2008年1月から準備を重ねて,ようやく2010年6月に聖路加産科クリニックが開院しました。
病院内の助産師がもっと自立するために必要な研修や訓練の内容を考えたときにすぐに思いついたのは,妊娠が正常に経過するような身体と精神の養生法を含んだ妊婦健診であり,正常分娩の生理でした。それは生理学的なホルモン動態を熟知すること。ホルモンを味方につけて,より生理的なメカニズムを発露させる助産ケアを実践すること。そして,グレーゾーンと呼ばれるハイリスクとの境界領域にある遷延分娩と微弱分娩,破水と羊水混濁,胎児心拍数モニタリング,会陰保護と会陰縫合,予定日超過へ適切に対応できる能力を鍛えることでした。そのためには妊娠・分娩のメカニズムを知り,予後を予測して迅速な対応を学ぶ必要性があります。これらを習得すれば,正常妊娠・分娩に関して,自立して助産師がもっと活動できるのではないかと考えました。
生理的な現象を熟知し,妊娠・分娩が正常範囲内に留まるよう見守るには,妊産婦と助産師との命がけの相互作用が必須であり,健康であるための生活改善の努力と,過剰な医療介入のチェーン(鎖)を回避することが重要です。同じフロアにいる産科医に安易に指示や承認を仰ぐことを抑制して,正常範囲からの逸脱を助産師自身の責任で判断して,必要なときに適時の医療連携を行なうための学習は,実践を積んだ助産師にとって再度必要だと考えました。
私は,助産道は何かと問い続けています。関わってきた女性が母親となり,成長していく様子を傍らで見守ること,女性が本来持っている能力を発揮して,生理的な能力を開花する傍らにいることが助産師の幸いです。
助産師の一番の喜びは,子どもが誕生したときにお母さんが,「よく生まれてきたね! がんばったね!」と家族と喜び合い,自分自身の達成感に浸っている姿を眺めることにあります。自分自身の身体と心に没頭する時間が出産であると思います。児娩出と同時に助産師が大きな声で「おめでとうございます!」と声をかけると,反射的に「ありがとうございました」とお母さんが返答するようではダメだと思うのです。分娩後お母さんが誇らしげに「ふうぅ…産まれたぁ…わたしがやった!…自分で産み出したぁ」と思ってくれれば成功です。それも,傍らにいる助産師を忘れて。
私は黒子に徹する助産師でありたいと願っています。黒子に徹するためにも,主役に何が起こっても可能性を探りリスクに対応できる専門家としての学習の積み重ねが必須です。
そのテキストとして,この本が役に立つことを願ってやみません。
堀内 成子
序
産科医不足の折から,全国的に助産外来,院内助産が積極的に推進される状況にあります。しかしながら,院内助産推進のための技術を磨くテキストはほとんど見受けられません。院内助産成功のカギは,少しでも産科医の手を煩わせないで助産師だけで分娩を完了できるスキルをもつことであり,スキルアップが急務です。
全国的に産科医不足の折,行政・医師会の後押しを受けて多くの施設が院内助産に取り組んでいますが,院内助産を開設しても60~80%の分娩は産科医を呼ばなければならず,本来の院内助産の機能をほとんど果たしていません。その原因として,会陰裂傷,産科出血,遷延分娩,CTGの異常,などが挙げられています。この傾向は過去3年間,全国を行脚して自分の目で確認した多くの施設で同様な傾向にあります。
会陰裂傷縫合は現在,全国の助産学校,看護大学で講義が行なわれるようになりましたが,実地臨床の場ではまだまだ助産師が行なう体制にはなっておらず,きちんとしたテキストも出版されていません。遷延分娩に関しても,理論に根ざした管理が助産師側にできていないため,ほとんどの施設で分娩が遷延すると産科医による分娩促進が行なわれています。その結果,胎児機能不全を誘発させ,吸引・鉗子分娩,帝王切開になる症例が後を絶ちません。西洋医学偏重は自然なお産の流れを中断させ,母児に多くの合併症を招いています。今こそ代替医療(alternative medicine)をも用いたお産の管理が必要です。
本書は助産師のケアによりスムーズなお産の進行を促進させること,会陰保護により会陰裂傷を予防すること,助産師が自ら会陰裂傷縫合の技を身につけることなどを目的にしています。現在全国で助産外来は300か所近く,院内助産は70か所以上の施設で行なわれているようですが,その数はますます増えることが予想されます。本書が安全に,安心して満足な院内助産遂行のために役立てていただければ幸いです。
本書作成に関し多大なご尽力をいただきました医学書院の綿貫桂子氏,伊藤恵氏に深謝申し上げます。
2010年7月
進 純郎
はじめに
お産をする場所がない「お産難民」,産婦人科医の不足による総合病院産科の閉鎖……1次医療機関や2次医療機関が次々に閉鎖した結果,3次医療機関にハイリスクではない妊産婦が押し寄せる結果を招き,真にハイリスクの人々のニーズを満たせなくなることが危惧されています。もっと1次医療システムを人々の手の届くところで展開しなければ,ますます女性は子どもを産み育てることに戸惑うようになるでしょう。
わが国の助産師は,その免許により「助産所」を開業できるユニークな助産プライマリケアシステム(1次医療機関)の担い手です。しかし,助産所に就業する助産師は,就業助産師全体の6%しかいません。一方,7割の助産師が就労する病院では,チーム医療を隠れみのとして,助産師が自立して助産診断・ケアすることを妨げているように思えます。臨床の場は,安易に産科医の指示と承認を求めることに迎合しやすい環境にあります。正常分娩に産科医の立ち会いを常態化させていること自体,助産師が独立して診断・ケアする責任を回避しています。もっと助産師の能力を最大限に発揮していく必要があります。それは開業できる免許にふさわしい実力を身につけるということです。
そのためにまずは助産師が複数でグループとして実践を行なうこともできるのではないでしょうか。一足飛びに助産所開業というハードルが高ければ,助産師を応援してくれる産科医と手をつなぎ,病院の外に独立した助産ケアシステムができないかと考えていました。ちょうど私は好機に恵まれ,聖路加国際病院の院外に助産施設を創る構想に関わることができました。2008年1月から準備を重ねて,ようやく2010年6月に聖路加産科クリニックが開院しました。
病院内の助産師がもっと自立するために必要な研修や訓練の内容を考えたときにすぐに思いついたのは,妊娠が正常に経過するような身体と精神の養生法を含んだ妊婦健診であり,正常分娩の生理でした。それは生理学的なホルモン動態を熟知すること。ホルモンを味方につけて,より生理的なメカニズムを発露させる助産ケアを実践すること。そして,グレーゾーンと呼ばれるハイリスクとの境界領域にある遷延分娩と微弱分娩,破水と羊水混濁,胎児心拍数モニタリング,会陰保護と会陰縫合,予定日超過へ適切に対応できる能力を鍛えることでした。そのためには妊娠・分娩のメカニズムを知り,予後を予測して迅速な対応を学ぶ必要性があります。これらを習得すれば,正常妊娠・分娩に関して,自立して助産師がもっと活動できるのではないかと考えました。
生理的な現象を熟知し,妊娠・分娩が正常範囲内に留まるよう見守るには,妊産婦と助産師との命がけの相互作用が必須であり,健康であるための生活改善の努力と,過剰な医療介入のチェーン(鎖)を回避することが重要です。同じフロアにいる産科医に安易に指示や承認を仰ぐことを抑制して,正常範囲からの逸脱を助産師自身の責任で判断して,必要なときに適時の医療連携を行なうための学習は,実践を積んだ助産師にとって再度必要だと考えました。
私は,助産道は何かと問い続けています。関わってきた女性が母親となり,成長していく様子を傍らで見守ること,女性が本来持っている能力を発揮して,生理的な能力を開花する傍らにいることが助産師の幸いです。
助産師の一番の喜びは,子どもが誕生したときにお母さんが,「よく生まれてきたね! がんばったね!」と家族と喜び合い,自分自身の達成感に浸っている姿を眺めることにあります。自分自身の身体と心に没頭する時間が出産であると思います。児娩出と同時に助産師が大きな声で「おめでとうございます!」と声をかけると,反射的に「ありがとうございました」とお母さんが返答するようではダメだと思うのです。分娩後お母さんが誇らしげに「ふうぅ…産まれたぁ…わたしがやった!…自分で産み出したぁ」と思ってくれれば成功です。それも,傍らにいる助産師を忘れて。
私は黒子に徹する助産師でありたいと願っています。黒子に徹するためにも,主役に何が起こっても可能性を探りリスクに対応できる専門家としての学習の積み重ねが必須です。
そのテキストとして,この本が役に立つことを願ってやみません。
堀内 成子
目次
開く
1章 正常分娩介助に際して知っておきたいこと
1.お産とホルモン
自然なお産に関わるホルモン
2.お産の体位とリラックス法
お産の体位
陣痛とうまくつき合う方法
分娩中のリラックスの指導
3.スムーズなお産のために
スムーズなお産のための11のケア
4.リスクとマタニティケア
医療の介入なしに正期産の介助はどのくらいできるか
2章 正常分娩の経過中のトラブルとその対処法
1.遷延分娩と微弱陣痛
遷延分娩の原因と種類
フリードマン曲線を用いたお産の経過把握
お産の経過をつかむポイント
なかなか進まないお産とその対応
遷延分娩での母児の状態評価
ケーススタディ さまざまなお産の進行とその対応
回旋異常が疑われるときの対処法
2.破水と羊水混濁,胎児well-being
破水入院の際の対応
破水の有無の確認法
破水後の羊水量測定は必要か
破水から娩出までの時間が長引いたときの対応
破水に伴う母児の感染の診断
羊水過少に伴う胎児心拍数の異常
羊水混濁とその問題点
羊水混濁と胎児心拍数モニタリング
羊水混濁での他の新生児合併症-MASを中心に
3.過期産
過期産の定義と頻度
過期妊娠の捉え方の歴史的変遷
過期妊娠の問題点
過期産児症候群とは
過期産での胎盤機能不全とは
過期産における胎児機能不全(胎児ジストレス)と羊水過少とは
過期産でのIUGRのメカニズム
予定日を過ぎても児は大きくなり続けるのか
過期産では難産,胎児死亡,母児の罹病率が増加するか
予定日を超過した妊婦の取り扱い-基本的な考え方
妊娠41週の対応-誘発と待機はどちらが得策か
妊娠42週以降-誘発か待機か
待機時に必要なチェック
院内助産施設での過期産の分娩管理法
分娩誘発の方法
過期産で生まれたハイリスク新生児のチェック・ポイント
4.産婦に勧める「出産の間の自己管理」
お産についての産婦への情報
3章 会陰保護と会陰裂傷縫合
1.会陰保護
会陰裂傷予防につながる分娩第2期の中休み
会陰裂傷軽減のための呼吸法と「いきみ」
分娩第2期にできる援助
会陰裂傷発生の主な原因
会陰保護と会陰裂傷発生の関連性
さまざまな分娩体位と会陰保護技術
2.助産手技のニューウェーブ-会陰裂傷縫合
会陰切開は本当に必要か
会陰保護に必要な基本解剖の知識
会陰裂傷の原因と程度
会陰裂傷発生の必然性
会陰切開とその種類
会陰裂傷縫合の実際
応用編
特別な縫合法
会陰切開と会陰裂傷の予後の比較
おわりに
索引
1.お産とホルモン
自然なお産に関わるホルモン
2.お産の体位とリラックス法
お産の体位
陣痛とうまくつき合う方法
分娩中のリラックスの指導
3.スムーズなお産のために
スムーズなお産のための11のケア
4.リスクとマタニティケア
医療の介入なしに正期産の介助はどのくらいできるか
2章 正常分娩の経過中のトラブルとその対処法
1.遷延分娩と微弱陣痛
遷延分娩の原因と種類
フリードマン曲線を用いたお産の経過把握
お産の経過をつかむポイント
なかなか進まないお産とその対応
遷延分娩での母児の状態評価
ケーススタディ さまざまなお産の進行とその対応
回旋異常が疑われるときの対処法
2.破水と羊水混濁,胎児well-being
破水入院の際の対応
破水の有無の確認法
破水後の羊水量測定は必要か
破水から娩出までの時間が長引いたときの対応
破水に伴う母児の感染の診断
羊水過少に伴う胎児心拍数の異常
羊水混濁とその問題点
羊水混濁と胎児心拍数モニタリング
羊水混濁での他の新生児合併症-MASを中心に
3.過期産
過期産の定義と頻度
過期妊娠の捉え方の歴史的変遷
過期妊娠の問題点
過期産児症候群とは
過期産での胎盤機能不全とは
過期産における胎児機能不全(胎児ジストレス)と羊水過少とは
過期産でのIUGRのメカニズム
予定日を過ぎても児は大きくなり続けるのか
過期産では難産,胎児死亡,母児の罹病率が増加するか
予定日を超過した妊婦の取り扱い-基本的な考え方
妊娠41週の対応-誘発と待機はどちらが得策か
妊娠42週以降-誘発か待機か
待機時に必要なチェック
院内助産施設での過期産の分娩管理法
分娩誘発の方法
過期産で生まれたハイリスク新生児のチェック・ポイント
4.産婦に勧める「出産の間の自己管理」
お産についての産婦への情報
3章 会陰保護と会陰裂傷縫合
1.会陰保護
会陰裂傷予防につながる分娩第2期の中休み
会陰裂傷軽減のための呼吸法と「いきみ」
分娩第2期にできる援助
会陰裂傷発生の主な原因
会陰保護と会陰裂傷発生の関連性
さまざまな分娩体位と会陰保護技術
2.助産手技のニューウェーブ-会陰裂傷縫合
会陰切開は本当に必要か
会陰保護に必要な基本解剖の知識
会陰裂傷の原因と程度
会陰裂傷発生の必然性
会陰切開とその種類
会陰裂傷縫合の実際
応用編
特別な縫合法
会陰切開と会陰裂傷の予後の比較
おわりに
索引
書評
開く
助産と産科がドッキングした,お産教本 (雑誌『助産雑誌』より)
書評者: 毛利 多恵子 (毛利助産所)
長年産科医として臨床をされ,多くの助産師とともに協働されてきた進医師ならではの視点と,助産実践に根ざした研究指導をされてきた助産師・堀内氏の両者による正常出産に関する本がついに発行された。
第1章は,正常出産とは何か,正常出産の要である「お産のホルモン」を理解することからはじまる。生理的なお産のしくみをホルモンの働きから理解し,そのホルモンをうまく働かせるために,どのような助産ケアが効果的なのかが述べられている。
第2章では,助産師が自立し正常出産を担う上で必ず出会う,正常経過を逸脱しそうになるグレーゾーンや遷延分娩,微弱陣痛,破水と羊水混濁,過期産についても,産科学的な母児管理と助産ケアが,具体的に提示されている。出産中の女性がどのような自己管理ができるか,産婦に直接語りかける形で紹介されていることもユニークな点である。どのような分娩経過になっても,その女性にとって一生の思い出となるような出産経験を支援することが重視されている。
第3章では,会陰裂傷予防の会陰保護とともに,自然にできた裂傷に対する会陰縫合についても解剖生理の理解から縫合の技術まで記載されている。かつて会陰切開と会陰縫合に関する専門書の著者であった進医師が,あえて助産師が縫合を学ぶ上で必要な知識と技術を提供されている。
院内助産で助産師が行なう分娩症例をそばで見ておられた結果,自然にできた会陰裂傷は二度以内であり,動脈,静脈,神経が切断されないこと,会陰切開と自然にできた会陰裂傷の予後を比較しても,自然な会陰裂傷の予後のほうが疼痛と腫脹も少ないことが示されている。
共著者である堀内氏は,「助産師は,正常分娩の生理,とくにホルモンを味方につけて生理的なメカニズムを発露させるケアを実践することが自立する上で必要だ」と述べている。また進医師は,助産師のケアによりスムーズなお産の進行を促進させること,会陰保護により会陰裂傷を予防すること,裂傷が起きたら助産師自ら縫合できる技を身につけておくことを目的に本書を作成したという。
臨床実践している助産師なら「なるほど」と思わずうなずいてしまう,示唆に富んだお産教本といえる。この本は,とくに実践をされている助産師にとって,自らの助産実践の臨床経験を意味づけたり見直したりできるのではないだろうか? また助産学生にとっては,産科や助産の知識を臨床場面で統合することにつながるのではないだろうか?
ついに,助産と産科がドッキングした正常出産の教科書が生まれたといえよう。
(『助産雑誌』2011年1月号掲載)
書評者: 毛利 多恵子 (毛利助産所)
長年産科医として臨床をされ,多くの助産師とともに協働されてきた進医師ならではの視点と,助産実践に根ざした研究指導をされてきた助産師・堀内氏の両者による正常出産に関する本がついに発行された。
第1章は,正常出産とは何か,正常出産の要である「お産のホルモン」を理解することからはじまる。生理的なお産のしくみをホルモンの働きから理解し,そのホルモンをうまく働かせるために,どのような助産ケアが効果的なのかが述べられている。
第2章では,助産師が自立し正常出産を担う上で必ず出会う,正常経過を逸脱しそうになるグレーゾーンや遷延分娩,微弱陣痛,破水と羊水混濁,過期産についても,産科学的な母児管理と助産ケアが,具体的に提示されている。出産中の女性がどのような自己管理ができるか,産婦に直接語りかける形で紹介されていることもユニークな点である。どのような分娩経過になっても,その女性にとって一生の思い出となるような出産経験を支援することが重視されている。
第3章では,会陰裂傷予防の会陰保護とともに,自然にできた裂傷に対する会陰縫合についても解剖生理の理解から縫合の技術まで記載されている。かつて会陰切開と会陰縫合に関する専門書の著者であった進医師が,あえて助産師が縫合を学ぶ上で必要な知識と技術を提供されている。
院内助産で助産師が行なう分娩症例をそばで見ておられた結果,自然にできた会陰裂傷は二度以内であり,動脈,静脈,神経が切断されないこと,会陰切開と自然にできた会陰裂傷の予後を比較しても,自然な会陰裂傷の予後のほうが疼痛と腫脹も少ないことが示されている。
共著者である堀内氏は,「助産師は,正常分娩の生理,とくにホルモンを味方につけて生理的なメカニズムを発露させるケアを実践することが自立する上で必要だ」と述べている。また進医師は,助産師のケアによりスムーズなお産の進行を促進させること,会陰保護により会陰裂傷を予防すること,裂傷が起きたら助産師自ら縫合できる技を身につけておくことを目的に本書を作成したという。
臨床実践している助産師なら「なるほど」と思わずうなずいてしまう,示唆に富んだお産教本といえる。この本は,とくに実践をされている助産師にとって,自らの助産実践の臨床経験を意味づけたり見直したりできるのではないだろうか? また助産学生にとっては,産科や助産の知識を臨床場面で統合することにつながるのではないだろうか?
ついに,助産と産科がドッキングした正常出産の教科書が生まれたといえよう。
(『助産雑誌』2011年1月号掲載)