臨床外科看護各論 第8版

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本講座の専門分野「成人看護学」では、各臓器の疾患とその看護を系統別に記述しています。しかし、個々の疾患の病態像は同じでも、適用される治療は内科的治療と外科的治療では著しく異なっています。外科看護は手術という非常に厳しい手段を治療の主体とするため、十分な知識と技術が求められます。本書は、このような視点から外科看護の各論として発行されたものです。 第8版では、全体の構成は前版を踏襲しましたが、新知見の導入をはかり、時代に対応した内容が習得できるように心がけました。医学面では、症状・診断・治療を最新の知見に基づいて記述しました。また、看護面では、科学的根拠に基づいた記述を心がけました。 外科看護は、的確な判断能力に加えて、質の高いチーム医療、さらに倫理的態度などが求められます。こうした視点も盛り込まれています。 全ページのカラー化に伴い、多数の図・写真を新しく作製し、ビジュアル的にも一段とわかりやすい内容に仕立てています。
*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
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はしがき

本書のねらい
 すでに発行されている「系統看護学講座」のなかには,「成人看護学」として,各臓器の疾患とその看護について系統的に詳しく解説されている。また,そこでは1つの系統の疾患を通して,その患者の病態生理・治療および看護を,内科・外科の区別なく一貫して学習できるようになっている。もちろん,これもりっぱな1つの学習方法である。しかし,個々の疾患は,内科的・外科的側面からみても病態像は同じであるはずであるが,適用される治療となると,内科的治療と外科的治療とでは,その内容は著しく異なってくる。とくに外科的治療においては,手術という非常に厳しい手段を治療の主体とするために,これらの治療に対する精神的不安や心配は,患者にとって大きな負担となるものである。そのうえ,手術によって引きおこされる生体の反応は短期間に大きな変化を示すために,その処置と看護には的確な外科学の知識・技術,および豊富な経験が要求される。
 とくに近年,外科の各領域がそれぞれ専門化して,新しい機器が取り入れられるとともに手術術式が進歩し,10年前,20年前にはなかった新しい治療法がつぎつぎと取り入れられている。
 また現在の外科看護では,個々の疾患の病態生理に深い理解と知識を持ち,そこでどのような適応のもとに,どのような手術が行われるか,さらに術後合併症や患者の生活の変化をも十分に認識し,それに必要な知識・技術を習得しておかなければならない。またそうしてこそ,あるべきすがたの外科看護がおのずから出てくるものと確信している。
 このような観点にたって編集したのが本書である。
 本書の執筆にあたった各筆者は,いずれも看護教育に多年の経験を持ち,上記のような現代における新しい外科看護学の必要性をつねづね痛感し,それにはよい外科看護学書がぜひとも必要であると感じていた者ばかりである。期せずして,このような同志が集まり,本書の編集に着手したしだいである。まさに,需要と要求が本書を生み出したといってよいと思う。
 外科看護を学ぶうえの参考書あるいはテキストとして,別巻「臨床外科看護総論」と合わせてこの「臨床外科看護各論」を活用され,看護に必要な外科的疾患の病態と治療を理解し,看護を行ううえでの基礎的知識を十分に身につけられることを願っている。また執筆にあたっては,ベッドサイドで実際に役だつものということを,つねに念頭において書かれているので,本書が臨床外科看護の必携書となることを期待している。

改訂のねらい
 外科的治療によって侵襲を受けた患者は,その回復過程において,身体の損傷に伴う痛み,臓器の喪失に伴う機能障害,ボディイメージの変化,自尊感情の低下などが生じ,さらに生活行動が規制されるため,より専門的で熟練した看護ケアが求められる。
 現在は,医療技術の進歩と看護ケアシステムの発達により,患者がよりよい医療を受けられる条件は整ってきている。その一方で,看護に携わる者1人ひとりに,人々のヘルスニーズや健康問題,さらには健康問題に対する人間の反応を的確に判断する能力,実践した看護行為に責任を持つ倫理的態度,チーム医療の質を高めていく職業的アイデンティティの確立が,ますます求められてきている。このような包括的で,個人的な看護ケアを提供するためには,看護の専門的知識やクリティカルシンキングの技能,ケアリングの能力が必須となってきている。
 本書は,1980年に初版が発行されてから,実に30年以上を経過している。その間,定期的に改訂を行ってきた。
 前回の第7版では,看護学生の教科書としての質的な向上と時代の要請に応じた専門的知識が提供できるよう,内容の吟味を行った。とくに治療方法や看護方法の見直しを行い,使用頻度が高いものや科学的根拠が明確で新しい方法(アプローチ)については,evidence-based medicine(EBM)やevidence-based nursing(EBN)の基本概念を重視して加筆した。
 看護の項では,アセスメントの視点を明確にし,看護の実際(看護介入)はEBNの考えに基づき,科学的根拠をできるだけ記述するように努めた。また,本書を貫く重要な概念,すなわちインフォームドコンセント,患者の意思決定,リスクマネジメント,安寧のためのケア,アセスメント―看護介入―看護評価のリンケージ,チーム医療とパートナーシップなどが全体の記述に反映するように心がけた。
 そして今回の第8版では,この方針を一層推し進めるとともに,周手術期経過の全体像を知り予測性を持って看護を行うことができるよう,代表的な術式においてクリティカルパスを掲載した。また看護の実際(看護介入)においては,より具体的で実践的な記述を目ざした。このほか,全ページにカラー印刷を導入し,図・写真の描きかえや追加を行い,よりビジュアルな紙面としたことも大きな特徴である。これらにより,学習効果の一層の向上を期待したい。
 今回の改訂でも,これまでご活用いただいた教育現場の方々からのご質問やご意見を参考にさせていただいた。今後とも忌憚のないご意見をお寄せいただければ幸いである。
 2011年1月
 編者

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序章 はじめに (北島政樹・江川幸二)
第1章 肺および胸部 (池田徳彦・池田正・江川幸二・熊谷智子)
 I 肺・胸部の疾患
  A 肺および気管支の疾患
  B 胸膜・縦隔の疾患
  C 胸部外傷
  D 乳腺の疾患
 II 肺・胸部疾患患者の看護
  A 肺切除術患者の看護
  B 胸部外傷患者の看護
  C 乳房切除術患者の看護
  D 乳房再建術患者の看護
第2章 心臓および脈管系
   (今村洋二・四津良平・志水秀行・松本賢治・北野正剛・太田正之・高島尚美)
 I 心臓・脈管系の疾患
  A 心臓の疾患
  B 血管の疾患
  C リンパ系の疾患
  D 脾臓の疾患
 II 心臓・脈管系疾患患者の看護
  A 心臓手術を受ける患者に共通する看護
  B 主要な心臓手術を受ける患者の看護
  C 血管手術を受ける患者の看護
第3章 消化器および腹部
   (小澤壯治・北川雄光・北島政樹・前田耕太郎・渡邊昌彦・井原厚・
   青木克憲・島津元秀・高橋伸・吉野肇一・星長清隆・早川邦弘・佐藤正美)

 I 消化器・腹部の疾患
  A 食道の疾患
  B 胃・十二指腸の疾患
  C 腸・腹膜の疾患
  D 肝臓・肝外胆道系の疾患
  E 膵臓の疾患
  F 門脈の疾患
  G ヘルニア
  H 副腎の疾患
 II 消化器・腹部疾患患者の看護
  A 開腹術を受ける患者の看護
  B 腹腔鏡手術を受ける患者の看護
  C 消化管手術患者の看護
  D 肝がん患者の看護
  E 胆嚢・胆道手術患者の看護
  F 膵臓手術患者の看護
  G 副腎摘出術患者の看護
第4章 脳および神経 (矢崎貴仁・島本佳憲・熊谷智子)
 I 脳・神経の疾患
  A 脳の疾患
  B 脊髄の疾患
  C 末梢神経の疾患
 II 脳・神経疾患患者の看護
  A 開頭術を受ける患者の看護
  B 頭部外傷患者の看護
  C 脳室-腹腔シャント手術(V-Pシャント手術)時の看護
第5章 頭部および頸部 (高見博・大釜徳政)
 I 頭部・頸部の疾患
  A 口腔・頸部の疾患
  B 甲状腺・副甲状腺(上皮小体)の疾患
 II 頭部・頸部疾患患者の看護
  A 顔面外傷患者の看護
  B 頭頸部がん患者の看護
第6章 小児の外科 (韮澤融司・森川康英・加藤木利行・宮谷恵・金城やす子・熊谷智子)
 I 小児の外科疾患
  A 小児外科の基礎知識
  B 消化器および一般外科疾患
  C 先天性心疾患
  D 小児の脳・神経疾患
 II 小児の外科患者の看護
  A 新生児期手術患者の看護
  B 乳幼児期手術患者の看護
  C 主要な手術を受ける小児の看護

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