• HOME
  • 書籍
  • イラストレイテッド 脳腫瘍外科学


イラストレイテッド 脳腫瘍外科学

もっと見る

脳腫瘍の外科に必要とされる包括的な知識と技術のエッセンスを、豊富なカラーイラストを用いて解説した手術書。発生頻度や画像診断などの術前知識にはじまり、体位や器具の使い方といった基本的事項から各腫瘍別の手術法まで、その要点を各々の分野のエキスパートがコンパクトにまとめた本書は、まさに“イラストで理解する脳腫瘍外科学”。脳腫瘍手術に携わるすべての脳神経外科医、必携!
編集 河本 圭司 / 本郷 一博 / 栗栖 薫
発行 2011年03月判型:A4頁:272
ISBN 978-4-260-01104-4
定価 17,600円 (本体16,000円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次
  • 書評
  • 正誤表

開く



 脳腫瘍の外科においては,単に手術の術式のみならず,解剖・生理・画像・病理・化学療法などを含めた,診断および治療の包括的な知識と技量が必要とされます.しかし,これらの知識や技量をすべてマスターし,脳腫瘍の手術の術者になるのは簡単なことではなく,長い年月がかかります.
 そこで,これから脳腫瘍の手術に取り組んでいこうとされている若い脳神経外科の先生方に向けて,まずその足がかりとなるような本ができないだろうかと考え,本書を企画しました.

 本書では,忙しくて詳細な手術書を読む時間のない若い先生方にまず脳腫瘍の外科の全体像を手早く理解していただくために,以下のような方針で編集を行いました.

 ・脳腫瘍の外科に必要とされる基礎的・技術的・臨床的な包括的事項について,そのエッセンスをコンパクトにまとめる.
 ・時間のない読者のために,見開き単位を基本とし,文章は簡潔にして,できるだけ図を多く用いることで,素早く視覚的に理解できるようにする.
 ・術中所見は原則としてすべてカラーイラストとし,手術の要点がわかるようにする.
 ・手術のコツも随所に取り入れる.手術法や考え方は術者によって異なるが,本書ではスタンダードな手術書になるようにする.
 ・各項目の執筆は,それぞれの分野でのエキスパートの先生にお願いする.

 本書でははじめて“脳腫瘍外科学”という名称を用いましたが,これは本書が単なる手術書ではなく,脳腫瘍の外科をひとつの学問としてとらえ,その全般的な知識を解説した書であることを表わしています.
 本書を手にとっていただければ,脳腫瘍の外科に必要な知識の要点と全体像が見えてくると思います.上述のとおり脳腫瘍の手術の術者になるには多くの症例と手術経験が必要で,長い年月がかかりますが,読者の若い先生方には本書によって理解を早めていただき,早く脳腫瘍の手術に慣れ親しんでいただければ幸いです.また,一部まれな腫瘍の手術法についても解説してありますので,若い先生だけでなく,ある程度の経験を積まれた先生にも,脳腫瘍の外科の全体像をとらえるために有用な書となっていると思います.

 脳腫瘍の手術に取り組まれるすべての先生方にとって,本書が何らかのお役に立てれば,大変うれしく思います.

 最後になりましたが,本書の趣旨をご了解いただき,ご多忙のなか快くご協力くださった執筆者の先生方に,あらためて厚くお礼申し上げます.また,解剖や術中所見などそのほとんどをイラストに仕上げていただいたあすか企画の林 健二氏,編集に情熱を注いで下さった医学書院の飯村祐二氏に,深く感謝申し上げます.

 2011年3月
 河本圭司
 本郷一博
 栗栖 薫

開く

A 術前
 A-I  脳腫瘍外科の歴史
 A-II 脳腫瘍の分類と発生頻度
  1 分類
  2 発生頻度
 A-III 画像診断
  1 病変を意識した撮像法
  2 画像鑑別診断
  (1)グリオーマと類似疾患
  (2)悪性脳腫瘍における再発,放射線壊死,pseudoprogressionの鑑別と治療
B 術中
 B-I 術中モニタリング
 B-II 術中迅速病理診断
 B-III 術中ナビゲーション
 B-IV 脳腫瘍手術における静脈の処理
C 脳腫瘍の手術
 C-I 体位
 C-II 開頭
  1 前頭,前頭側頭,側頭,後頭,頭頂開頭術
  2 頭蓋底手術の開頭(前頭蓋底,中頭蓋底)
 C-III アプローチ
  1 眼窩頬骨アプローチ
  2 外側後頭下アプローチ
  3 錐体骨アプローチ
  4 後頭蓋窩アプローチ(大後頭孔,頚静脈孔)
  5 脳室内へのアプローチ
 C-IV 顕微鏡・手術器具とその使い方
  1 全般
  2 下垂体腺腫
  3 内視鏡
 C-V 新手術法
  1 覚醒下手術:eloquent areaの手術
  2 光線力学的診断
  3 神経内視鏡手術
  4 定位的生検
 C-VI 各種脳腫瘍の手術
  1 グリオーマ
  (1)低悪性度グリオーマ
  (2)膠芽腫
  2 髄膜腫
  (1)円蓋部髄膜腫
  (2)傍矢状洞髄膜腫
  (3)大脳鎌髄膜腫
  (4)蝶形骨縁髄膜腫
  (5)テント髄膜腫
  (6)錐体斜台部髄膜腫
  (7)鞍結節部髄膜腫
  (8)小脳橋角部髄膜腫
  (9)嗅溝部髄膜腫
  (10)側脳室三角部髄膜腫
  (11)大後頭孔髄膜腫
  3 神経鞘腫
  (1)三叉神経鞘腫
  (2)前庭神経鞘腫
  (3)頚静脈孔神経鞘腫
  4 トルコ鞍近傍腫瘍
  (1a)下垂体腺腫(顕微鏡下経鼻的-経蝶形骨洞的手術)
  (1b)下垂体腺腫(内視鏡下経鼻的-経蝶形骨洞的手術)
  (2)頭蓋咽頭腫
  (3)脊索腫
  5 転移性脳腫瘍
  6 その他の腫瘍
  (1)髄芽腫
  (2)小脳血管芽腫
  (3)松果体部腫瘍
  (4)脳室内腫瘍(神経細胞腫を中心に)
  (5)嗅神経芽腫
  (6)眼窩腫瘍
  (7)頭蓋顔面領域の線維性骨異形成症
 C-VII 閉頭
  1 頭蓋骨形成と閉頭
  2 頭蓋底の修復と閉頭
D その他の治療法
 D-I 定位的放射線照射
 D-II 原発性悪性脳腫瘍に対する放射線化学療法
 D-III 間脳下垂体腫瘍に対する薬物療法

付録 脳腫瘍の治療効果判定
索引

開く

若い脳神経外科医の入門書として最適
書評者: 吉田 純 (名大名誉教授/中部ろうさい病院院長)
 脳腫瘍は脳神経外科において重要な分野であり,テーマである。そしてその医療の質と内容は,近年の生命科学,情報科学,そして科学技術の進歩により,大きく変貌・発展してきた。特に病態解明や診断においては,分子生物学,遺伝子工学,そして画像工学が大きな役割を果たしてきた。一方治療においては,19世紀に欧米で開発された近代脳神経外科より現在に至るまで,中心は外科手術である。そして現在の主流は顕微鏡手術,内視鏡手術および最近導入されてきたナビゲーションとモニタリングを用いた画像誘導手術となっている。

 そのような中,脳腫瘍手術の最前線で活躍されている63名の脳神経外科医が分担執筆され,河本圭司・本郷一博・栗栖 薫先生により編集された『イラストレイテッド脳腫瘍外科学』が,医学書院より出版された。

 本書を手にとってみて,私の大先輩である杉田虔一郎教授が発刊され,世界中でロングセラーとなった脳外科手術のバイブル『Microneurosurgical Atlas』を思い浮かべた。先生はすべての手術にあたり,術直後,教授室にて術中思い描いた術野のスケッチを絵具で描いていた。そして弟子達に“手術は技術ではなく,アートだ”と教え,Atlasの中の絵図には先生自身が手術した脳動脈瘤や脳腫瘍の一例一例で開発・発展させた術式が描かれていた。

 本書も,熟練した脳神経外科医が執刀した脳腫瘍手術において,術者が術中に思い描いた術式をイラストレイテッドした絵図を中心にまとめられている。本書は大きく「A 術前」「B 術中」「C 脳腫瘍の手術」「D その他の治療法」の4つに章立てされており,本書の中心となる「脳腫瘍の手術」の章では,前半は脳腫瘍手術の総論として,体位,開頭,アプローチ,顕微鏡・手術器具の使い方について現在の標準的術式,ならびに最近注目されている新手術法が紹介されている。そして後半には各論として,腫瘍型ごとの症例について,術前のMRI画像,術中写真,そして使用する手術器具とともに,イラストレイテッドされた術式を紹介している。また,局所解剖,適応,アプローチ,手術法そして術後管理について,豊富な手術経験に基づく適切な説明文が書き加えられている。

 編者らは本書を“脳腫瘍外科学”と称し,単なる手術書ではなく,脳腫瘍の外科を学問ととらえ,その全般的な知識を解説した書と位置付けているが,私も同感であり,本書は若い脳神経外科医の入門書として最適であるとともに,熟練した脳神経外科医に対しても術前の確認書として有益な本であると思う。多くの先生方の手元に置かれ,親しまれる本になることを期待している。
ScienceとArtが織りなす“脳腫瘍外科学”
書評者: 寺本 明 (日医大大学院医学研究科長/(社)日本脳神経外科学会理事長)
 東日本大震災直後の2011年3月15日,医学書院から,河本圭司・本郷一博・栗栖 薫の3名の先生方の編集による『イラストレイテッド脳腫瘍外科学』が発刊された。わが国には「日本脳腫瘍の外科学会」という既に定着した学会があるので,この本の名称自体には違和感はなかったが,“脳腫瘍外科学”という名前の成書はこれまでなかったのではなかろうか? そもそも脳腫瘍は,その治療過程において原則として何らかの手術を必要とする。そのため,主な脳腫瘍に関する手術書は数多く出版されてきた。また一方では,脳腫瘍のいわゆる解説書も少なからず入手することができる。

 しかし,本書は,“脳腫瘍の手術は脳腫瘍を包括的に理解した上で取り組むべきである”,という編者らの強い思い入れによって制作されている。ちなみに筆者は,下垂体外科を専門としているが,常々下垂体腫瘍を手術する医師は間脳下垂体内分泌学に精通していなければならないと考えている。すなわち,外科医的な発想だけで手術をすると,腫瘍全摘出イコール治癒と考えがちである。下垂体腫瘍の治療体系において手術は確かに重要なステップではあるが,薬物療法や放射線療法,さらには術後のホルモン補償療法などを十分念頭に置いて治療しなければ,患者をトータルに治したことにはならないのである。同様に,脳腫瘍の手術では,単に手術のテクニックという側面だけでなく,術前・術中・術後管理や長期フォローを含めて総合的に脳腫瘍を理解していなければ優れた手術を実施することはできない。そのような編者らのコンセプトが本書を貫いていると思われる。

 本書は,その前半を脳腫瘍手術の基本的事項が占め,後半を主要な脳腫瘍手術の包括的理解に当てている。前半については,基本とはいえ最新の知見までが包含されている。後半は,一つの脳腫瘍に関して見開き,あるいはその2倍として簡潔な誌面構成を心掛けている。また,全体を通して図解を多くすることにより読者の理解を深めるための努力が随所にみられる点も特徴である。執筆者はそれぞれの分野で実際に多くの手術に従事しているエキスパートぞろいであり,編者らの意向をくんで,力のこもった記述がなされている。

 本書を通して,多くの脳神経外科医が脳腫瘍の手術の基本やコツを学ぶとともに,その技術を取り巻く学術的背景を認識してくれることを期待したい。そして,真の脳腫瘍外科学とは,ScienceとArtが正に二重らせんのように織りなすところにあることを感じ取ってもらいたいと思う。
脳腫瘍手術の前にぜひ一読してほしい力作
書評者: 堀 智勝 (女子医大名誉教授/森山記念病院名誉院長)
 『イラストレイテッド脳腫瘍外科学』が,このたび河本圭司・本郷一博・栗栖 薫の三先生によって共同で編集され,上梓された。本書は「A.術前」「B.術中」「C.脳腫瘍の手術」「D.その他の治療法」の章に分かれている。特に手術の項目ではわが国のトップの先生方に分担執筆していただいており,それぞれ非常にコンパクトではあるが,力作ぞろいの,濃い執筆内容になっている。専門医試験の受験者にとって,非常にためになる本であるといえよう。

 「A.術前」の章では,脳腫瘍外科の歴史,分類と発生頻度,画像診断が述べられている。歴史と分類は河本先生,発生頻度は渋井壮一郎先生,画像診断は藤井幸彦先生,画像鑑別診断は泉山 仁先生,宮武伸一先生がそれぞれ執筆を担当されており,非常にわかりやすい。特に宮武先生のグリオーマ再発,放射線壊死,pseudoprogressionの項は,先生ご自身の最新の臨床経験に基づいた力作であり,一読に値する。私の患者さんで右帯状回を含んだ悪性グリオーマの部分摘出術後,宮武先生にBNCTを行っていただき,完治?している患者さんの結婚式に招かれた経験などを読んでいて思い出した。そのほかにも悪性髄膜腫などの難治例にもBNCTが効果ありと聞いているが,帝京大の故・畠中 坦教授が精力的に行っていた治療法を,より最新のモダリティを使用して完成度の高い治療法に仕立て上げた情熱に敬意を払いたい。

 「B.術中」の章では,モニタリングについて片山容一先生が執筆されている。コンパクトではあるがMEPモニタリングに必要な知識,問題点などがきちんと記載されており,試験前に一読しておく必要があると思われる。私自身は経頭蓋刺激を主として,必要に応じて硬膜下電極あるいは皮質直接刺激で筋電図モニターを行っているが,片山先生のD-waveはモニターとしては最も完成度の高いものである。さらに誌面が許せば下位脳神経刺激,VEP,嗅神経刺激なども記載されていると良かったのではないかと思うし,試験によく出る,脊髄脂肪腫などの際に必要な膀胱直腸機能・下肢筋のモニタリングなども必要と思われたが,紙幅の都合上致し方ないと思われる。

 術中迅速診断も大変重要な項目である。特にグリオーマなどで術中MRIを行う場合や,ホルモン産生下垂体腺腫の場合のcomplete remissionを求めた治療の際には,この術中迅速診断が非常に重要である。

 術中ナビゲーションに関しては,術中のreal timeのエコーを以前から精力的に研究されている大西丘倫先生の記載と見事な画像に感心させられた。一般病院では術中MRIは高嶺の花である。術中エコーであれば何とか一般的使用に耐えるので,この方面を発展させていただいている大西先生に感謝したい。

 脳腫瘍手術における静脈の処置に関しては宝金清博先生の記載が良い。静脈温存の大切さは脳腫瘍手術に限るものではない。厳しくいえばすべての静脈は温存して脳外科の手術を行うべきであるが,そうはいかない場合には静脈灌流の術前の精密な把握によって最小限の静脈の犠牲が必要となることもある。しかし,脳腫瘍手術で温存すべき最も重要な静脈を挙げろといわれれば,錐体静脈と視床線条体静脈の温存である。

 「C.脳腫瘍の手術」の章に関しては,それぞれの専門家の力作が並んでいるので,専門医試験受験者必読の項である。私は引退してからも手術を行っているが,特に上矢状静脈洞に絡んだ髄膜腫の手術において,静脈洞に浸潤した腫瘍を中途半端に摘出し,SRSを行い,悪性化して非常に治療に難渋している患者が後を絶たない。静脈洞を開けて摘出する必要があるとはいえないが,安易に残存腫瘍に放射線治療を行っても再発することが多いので,どうせなら静脈洞が閉塞して側副血行が十分発達するのを待ってから全摘するのが良いのではないかと思っている。

 「D.その他の治療法」の章の項目も力作であるが,紙幅の関係で上記にて書評を終わりとしたい。本書は最近の進歩をほぼ網羅しており,専門医試験受験のためばかりでなくすべての実地医家にとって有用である。脳腫瘍摘出の前にぜひ一読することをお薦めする。

 最後にこの分野だけではないが医学は日進月歩であるので,できれば頻繁に改訂して,最新の脳腫瘍外科学としていただきたいものである。

開く

本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

正誤表はこちら

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。