緊急度・重症度からみた
症状別看護過程+病態関連図

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イラストやフローチャートを多用した“病態生理、患者の訴え方、原因や考えられる疾患、治療法・対症療法”。ケアの流れとポイントがわかる“看護過程フローチャート、情報収集、アセスメント、ケアプラン、評価”。患者の全体像がみえる“病態関連図”。さらに、観察やアセスメントをしながら対処しなければならない緊急対応までをカバーしたオールインワン。
シリーズ からみた看護過程
編集 井上 智子 / 佐藤 千史
発行 2011年11月判型:A5頁:1120
ISBN 978-4-260-01136-5
定価 5,500円 (本体5,000円+税)
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  • 目次
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はじめに

 いつの頃からか入院患者の高齢化や重症化がすすみ,その一方で平均在院日数は短縮化の一途をたどるようになった.医療の場が外来や在宅にシフトすることは,家庭や職場,地域で生活をしつつ医療を受けられるという点で喜ばしいことであるが,そのことが初めて看護を学ぶ人々にとっての学びのハードルを高めていることに気づく.
 すなわち看護学生が臨地実習の場として足を踏み入れる病棟は,急性・重症・複雑化した病態をもつ人々が多数を占め,それに向き合う看護スタッフの業務密度は驚くほど濃くなっている.看護学生にとっては学びやすい現場とは言い難いだろう.
 「社会の中での授業」といわれる臨地実習は,その複雑さや人間関係も含めた多くの動的要因が絡むため,いつの時代においても看護学生にとっては緊張の場であるとともに,かけがえのない学びの機会でもあることに変わりはない.しかし,患者の病態が急性・重症化した今日では,それに応じた学び方が求められているのである.
 本書は,その書名『緊急度・重症度からみた 症状別看護過程+病態関連図』がすべてを物語るように,60以上に及ぶ様々な「症状」を軸にして,思考と行動が展開できるような構成となっている.まず「症状の知識」として,その現れ方(目で見る症状),病態生理,患者の訴え方,診断,考えられる疾患,治療法・対症療法と続き,「看護ケア」につなげるための看護過程の展開へと移る.看護過程フローチャートで看護の全体像を示した後,看護の基本的な考え方,アセスメント,看護問題リスト,問題ごとの看護計画と続くが,何といっても本書の特徴は,「症状の知識」と「看護ケア」の双方で,病期・病態・重症度に応じた視点(治療フローチャートおよびケアのポイント)が記載されていることであろう.
 医療は,人々の症状や病態を軽減・回復させるために提供されるものであるが,悪化・重症化することは決して稀ではない.本書はそれらを想定し,むしろその徴候をいち早くつかみ,予防するための看護ケアを組み立てることを意図している.
 臨床の場がいかに複雑・高度化しようとも,患者の苦痛や心身の不調の一つ一つを見逃さず,持てる知識や技術を総動員して問題解決のために力を注ぐ看護のスタンスはいつの時代も変わりない.「緊急度・重症度」にも動じない有能な次世代を担う看護職が育つことを願っている.
 本書も,これまでの「~からみた」シリーズと同様に,我が国第一線の多彩な執筆陣のご協力を得ることで,発刊に至ることができた.この場を借りてお礼を申し上げる.また最後に,限りない情熱を注いで下さった医学書院編集者の方々にも感謝の意を表したい.

 2011年8月
 編集者を代表して 井上智子

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 はじめに
 本書のコンセプトと効果的な学習法
 本書の構成と使い方

第1章 全身
 1 発熱
 2 低体温
 3 全身倦怠感
 4 けいれん
 5 ショック
 6 チアノーゼ
 7 脱水
 8 浮腫
 9 リンパ節腫脹
 10 発疹
 11 そう痒感(かゆみ)
 12 褥瘡
 13 肥満
 14 やせ
 15 貧血
 16 出血傾向
 17 易感染性
第2章 脳・神経系
 18 頭痛
 19 失神
 20 意識障害
 21 言語障害
 22 不眠
 23 不安
第3章 感覚器系
 24 感覚障害
 25 視覚障害
 26 耳鳴
 27 めまい
第4章 呼吸器系
 28 咳嗽・喀痰
 29 血痰・喀血
 30 呼吸困難
 31 喘鳴
 32 嗄声
 33 胸水
第5章 循環器系
 34 胸痛
 35 動悸
 36 高血圧
 37 低血圧
第6章 消化器系
 38 腹痛
 39 嚥下困難
 40 食欲不振
 41 悪心・嘔吐
 42 口渇
 43 腹部膨満(感)
 44 吐血
 45 下血
 46 下痢
 47 便秘
 48 黄疸
第7章 腎・泌尿器系
 49 排尿痛
 50 乏尿・無尿・尿閉
 51 多尿・頻尿
 52 尿失禁
 53 膿尿・細菌尿
 54 血尿
 55 タンパク尿
第8章 筋・骨格系
 56 腰痛
 57 レイノー現象
 58 関節痛
 59 四肢のしびれ
 60 運動麻痺・運動失調
 61 筋萎縮
 62 不随意運動

 索引

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書評 (雑誌『訪問看護と介護』より)
書評者: 榊原 千佐子 (北海道文教大学人間科学部看護学科)
 看護学生にとって、臨地実習での学びはいつまでも鮮明に記憶に残るものです。しかし、実習中の学生は、同時に、「看護過程」の学習に追われ、眠れない日々を過ごしたことも覚えています。在宅看護の実習の場になる“訪問看護”に向けて、その緊張はさらに高まるものです。

 現在、在院日数は短縮し、看護学生が短期間の実習中に看護過程を展開していくことが難しくなっています。予測した看護が待ったなしに展開できるよう臨床推理・判断力を学習することを求められる臨地実習では、そこでの看護過程の展開において「症状」と「看護」を効率的に結びつけることが、学習効果を高めるポイントとなっています。

 看護過程は、看護実践に不可欠な思考過程と言われて久しいですが、看護学生にとっては、とくに臨地実習の場面では患者さんの状態に看護過程の学習内容が追いつかず、学生は緊張感と焦燥感で右往左往することが多々あります。

 座学での看護過程の学習を終え、実習前になると学生が教員に「何を勉強すればいいのか」「役に立つ参考書はどれか」「何をしっかり復習すればいいか」などと不安気な顔で多くの質問をしてきます。学内での学習を臨地実習で活かせばよいと答えはするものの、臨地実習中の学生の学習量が増えることも目に見えて明らかであり、患者さんの症状と根拠のある看護援助を結びつける参考書を、実習に出る前の学生にまず示したいと思っていました。本書はその期待に応える構成になっています。

 また、看護学生が苦手としている看護過程の要素に「看護実践の評価」があります。本書ではこの苦手意識の高い看護評価のポイントが的確に示されています。

 学生は看護計画を、患者さんの反応を確かめながら、そして実習指導者や教員に指導を受けつつ実践することで精いっぱいになりがちです。

 「評価」の必要性と大切さをわかりながらも、臨床での学習場面では、看護計画を立案し、看護援助の実践をすることで力尽きてしまい、学生のなかには看護援助の実践に重きを置き、十分な評価までに至らないまま臨地実習を終えてしまうことがあります。この看護評価が不足すると、次につながる看護援助にならずに実習を終えてしまいます。学生の臨地実習にご協力いただいた患者さん・利用者ご家族、そして訪問看護ステーションの皆様に対しても残念な学習結果になります。本書にあるような流れを把握し、学生に示すことは教える側の大きな責務です。そして、臨地実習の醍醐味を学生が実感する場面の1つとして、「知識として理解していることを、看護援助に結びつけて看護実践を展開していくこと」があります。本書の活用によって、臨地実習で看護が“切れ目のない実践”であることを体感する学習の機会へと導くことができるでしょう。

 在宅では、このような切れ目のない看護がより重要であり、看護過程を学ぶ意義もまた深まります。臨地実習が長くつらい時間ではなく、臨地実習が学習の場であることを自覚し、学生自身が満足できる学習結果になることを力強くサポートする1冊です。

(『訪問看護と介護』2012年5月号掲載)

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