教育学 第6版

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看護のなかに含まれる教育的側面を理解するうえで、有用な教育学の基礎的知識を盛り込んでいます。 歴史的な流れにそって、とくに教育基本法・学校教育法を柱に教育の目的、教育の目標が解説されています。 学習指導の目標・原理・形態・技術の概要、ならびにさまざまな教育評価法が紹介されています。 学校で展開されている生活指導の意義・目標・方法・具体的指導内容が取り上げられています。 初等・中等諸学校の諸問題の比重を軽くし、かわりに家庭教育、社会教育、特別支援教育に目を向けています。 *2011年版より表紙が新しくなりました。
シリーズ 系統看護学講座
編集 大浦 猛
執筆 石部 元雄 / 大浦 猛 / 境澤 和男 / 坂本 昇一 / 中澤 次郎 / 長谷川 栄 / 真野 宮雄 / 山村 賢明 / 山本 恒夫
発行 2010年01月判型:B5頁:232
ISBN 978-4-260-00965-2
定価 2,200円 (本体2,000円+税)
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  • 序文
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はしがき

 看護教育の水準を高める必要が強調されるに伴い,それに寄与しうるものとして教育学的教養が求められるようになったことは,きわめて意義深い。
 なぜならば,看護という営みの相手は人間であり,その人間が健康を回復することこそ,医療および看護の目的でなければならないが,その真の回復は,身体・生理ばかりではなく,心のすがた,とりわけ生活態度にも依存しているからである。もともと,身体の健康は生き生きした精神に支えられて初めて保持されるものであり,その意味で「自主的精神に満ちた心身ともに健康な」人間にまで立ち直り,またそこまで発展して初めて,真に回復し得た,ということができるはずである。そして,現実の人間を,教育基本法の第1条に規定された,そのような人間像にまで育成しようとする日常的な努力こそ,「教育」の名に値する行為なのである。看護はそのような教育の作用につながるものであってほしい。そしてさらには,そのような教育を含みうるはずである。看護のはたらきがそこまで広げられ,また高められた時に,このようなはたらきから,一般に教育と言われている仕事(とりわけ健康教育)は,多くのものを学びうることになる。
 私はこのような信念をもち,それを第1章の11においても述べたが,看護の理論と教育学が内面的に,また具体的にかかわり合う諸点のくわしい究明は,ここでは試みられていない。その企ては,看護学あるいは看護教育の専門家たち,あるいは看護の営みに実際に取り組んでおられる人々,そして読者の皆さんの将来の努力に期待することとして,今ここでは,関係者のそのような努力に対していくぶんかはお役に立ちうるようにと念願しつつ,教育学の主要な内容を展開することにした。
 ところで,現代の教育学における諸成果をじゅうぶんに盛り込むためには,相当の分量を必要とする。しかし,本書の分量は限られている。そこでわれわれは,いわゆる学問論を省略し,歴史的叙述や諸論説の引用を少なくして,それよりはむしろ教育的現実を形づくる内容的な問題を取り上げることにより,その具体的な論究を通じておのずから教育学の性格が端的に理解されていくことを,期待した方がよい,と考えた。
 なお,この教育学書が,看護の仕事に取り組もうとしている人々を対象にしていることを考慮して,教育行政に関する章を省き,初等・中等諸学校の諸問題の比重を軽くし,家庭教育・社会教育に加え,心身障害者の教育を取り上げることとした。
 本書はまた,平素から交流をはかっている研究上の仲間たちが,それぞれ得意の箇所を分担するという仕方で,構成されている。どの執筆者も学界においてすぐれた活動を続けてきており,しかも同時に教育界の実際にも通じている人々なので,本書の内容はじゅうぶんに信頼していただいてよいと思う。本文によって学習されたことを,各章の終りに示してあるゼミナール──学習課題や参考文献をよりどころにして,さらにいっそう発展させていただき,将来の看護の営みを教育の観点からも見直してくださるならば,われわれの期待はじゅうぶんに満たされることになる。
 1995年10月
 大浦 猛


第6版の序

 1947(昭和22)年の教育基本法の制定以来,わが国の教育はさまざまな発展を遂げてきたが,この間,科学技術の進歩や情報化社会の進展,国際化,少子高齢化など,教育をめぐる状況が大きく変化するとともに,それに伴うさまざまな課題が生じてきた。教育にかかわるこのような状況の変化に鑑みて,わが国の教育の根幹をなす教育基本法が,2006(平成18)年12月に60年ぶりに改正され,また,この改正を受けて2007(平成19)年6月に学校教育法の一部改正がなされた。
 これらの法改正に対して,本書では巻末資料として掲載していた教育基本法の条文をさしかえるなど,増刷時に可能な限りの対応を行ってきた。しかし,「障害者の教育」については,特別支援教育の成立など制度の変更を伴う大幅な改正がなされており,増刷では十分に対応できていなかった。このような状況を受け,このたび「第9章 障害者の教育」の内容を現行の法や制度に準じたものに更新し,その知識をより確かに学習できるものとするべく改訂するはこびとなった。
 なお,今回の改訂にあたって他章,とくに執筆者がすでに故人となっている第1・2・4・6(A~B)章に関しては,原則的に前版の内容を継続して掲載するものとしたことを,あらかじめご了解いただきたい。
 本書では,看護の仕事に取り組もうとしている人々を対象にしていることを考慮して,教育学の主要な内容を展開するとともに家庭教育や社会教育,障害者の教育を取り上げることにしている。今回の改訂により障害者の教育について十分な学習がなされ,看護につながる人間および教育に関する理解がより深まることを切に望むものである。
 2009年12月
 著者ら

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第1章 人間の成長と教育の意義 (大浦猛)
 A 教育と物の形成との相違
 B 生物の生成過程
 C 人間の生成過程の特質
 D 人間の学習と成長・発達
 E 人間の生成への環境の影響
 F 意図的な人間形成作用としての教育
 G 人間を形成する諸力の中での教育の位置
 H 教育の力を左右する諸条件
 I 教育の種類
 J 自主的な学習と生活との関連
 K 看護と教育
第2章 家庭教育 (山村賢明)
 A 家庭教育の意義
 B 子どもの社会化と家庭教育
 C 現代の家庭と教育の問題
第3章 生涯学習支援の社会教育 (山本恒夫)
 A 生涯学習社会への移行と,社会教育
 B 社会教育の領域
 C 生涯各期の学習を支援する社会教育
 D 社会教育の施設
第4章 学校教育の制度 (真野宮雄)
 A 学校制度の成立と発展
 B 各国における学校制度
 C わが国の学校制度
 D 現代学校制度改革の動向
 E 各種学校と専修学校
 F 看護教育制度の課題
 G 現代社会と学校制度
第5章 教育の目的 (境澤和男)
 A 教育目的の考え方
 B わが国現行法の教育目的と教育目標
第6章 学習指導 (大浦猛・長谷川栄)
 A 教育意図・教育実践・教育方法
 B 教育方法の基本原則
 C 学習指導の意義
 D 学習指導の目標
 E 教育内容と教材
 F 学習指導の原理
 G 学習指導過程
 H 学習指導の形態
 I 学習集団
 J 指導技術
 K 学習指導メディア
第7章 生活指導 (坂本昇一)
 A 生活指導の意義・方法
 B 生活指導の実際
第8章 教育評価 (中澤次郎)
 A 教育評価の意義と目的
 B 教育評価の方法
 C 自己評価とフィードバック
 D 到達度評価
 E 絶対評価の重視
第9章 特別支援教育の推進 (石部元雄)
 A 障害の概念と障害児教育の現状
 B 障害者教育の発達と特別支援教育の成立
 C 障害者教育の施策・実践等
 D 障害の種類に応じた教育
 E 高等部卒業期とその後

資料 教育基本法
索引

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