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臨床に活かす病理診断学 第2版
消化管・肝胆膵編

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この1冊で「病理に強い臨床医」といわれよう! 今、現場で知りたい消化器検体提出時の注意点/病理診断報告書の読み方から、明日の一歩に差がつく学会・論文発表のコツまで、病理情報活用の術を解説。入門/基礎/応用/資料編の4部構成で段階的に読める! 用語集/抗体早見表/正常組織像アトラスですぐに調べられる! 外科医、内科医、放射線科医に必須の消化器病理情報がこの1冊に。オールカラー化でますます充実の第2版。
編集 福嶋 敬宜 / 二村 聡
執筆 福嶋 敬宜 / 二村 聡 / 坂谷 貴司
発行 2011年04月判型:B5頁:300
ISBN 978-4-260-01095-5
定価 9,350円 (本体8,500円+税)
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第2版 はじめに

 初版が世に出てから6年以上もの月日が流れました.とにかく「病理診断に関する基本情報を臨床の現場に届けたい」との思いだけで出版にこぎつけた初版でしたが,出版以来,予想にも増して多くの支持を頂き,結果として増刷もされました.そして,こうして改訂第2版であらためて皆さまにご挨拶できる機会を頂き嬉しく思います.

 今回の改訂の目的は明確です.より一層,臨床の現場に病理情報を届けるためであり,より一層,臨床医に役立つわかりやすい本にするためです.このため,写真をオールカラーとし,組織像などに馴染みの少ない入門者に配慮しました.全体構成としては,入門編をQ&A形式にし,応用編もポイントを簡潔に示して贅肉をそぎ落とす一方,リファレンスとしての役割も十分に果たせるように,病理関連用語集や基礎編の項を充実させました.また,目次,索引や表紙の裏側の見返しなどを利用すれば,疾患名からだけではなくキーワードからでもその項目に到達できるよう,使いやすさについても十分検討しました.
 また,意図したことではありませんが,本書の改訂作業は,偶然にも新WHO分類の改訂と同時並行的になされました.幸い,本書編集の福嶋がWHO分類の作成委員に選出されたため,逐一新たな情報を加えながら本書の改訂作業も進めることができました.本書の目的は,必ずしも国際的な最新動向をフォローすることではありませんが,それらが日常診療の現場に到達する速度はこれまで以上に速くなっていることから,本書の読者に有益と思われる事項のみ厳選して記述しました.

 本書のウリ自体は初版と変わりありません.「主義主張先行の単著」ではなく,「単なる分担執筆」でもないところと考えています.執筆,編集の過程で,主に消化管担当の二村と肝胆膵担当の福嶋が,その執筆内容のみならず,記述や図表に至るまで,医学書院の会議室で,容赦なくお互い指摘しあって仕上げていきました.「二村君のここの文章はちょっとくどいな~」,「結局何を読者に伝えたいの?」と福嶋が言い,図を含めた大幅な構成の変更を迫ったこともあれば,「福嶋先生の文章は淡々としすぎているような気がします.これでいいんですか?」,「この本に対する情熱は福嶋先生と同じ,いやそれ以上ですよ」,「絶対中途半端なものは世に出したくありません」と二村が語気を強めることも一度や二度ではありませんでした.初校後,再校後と,休みなし5時間ぶっ通しの会議もよい思い出です.初版以来,われわれを支え続けてくださっている編集部の志澤真理子氏は,そんな二人のやり取りを煽るでもなく,無理にまとめに入るでもなく,夜の9時を過ぎて終了した日も,「今日もいい会議ができてよかった」といってくださり,幸せな気持ちで帰路についたこともありました.こんなにも著者と編集者の目指すベクトルが一致し,心地よくも刺激的な共同作業でつくられる本は意外に少ないのではないかと自負しています.また,今回新たに執筆者として加わった坂谷の役割は,総論部分を主体に担当し,全体をクールな目で見渡すことでした.また自治医科大学消化器外科の宇井崇先生はじめ臨床現場で活躍中の先生方にも多くの助言をいただきました.この場を借りてお礼申し上げます.ありがとうございました.

 初版の「はじめに」でも説明してありますが,構成について少し補足しておきます.テキストは,なるべく客観的な事実を効率よく伝えることを目標に書かれています.本書を手に取っていただきたい臨床医や臨床現場近くで働く病理医・病理関係者などを常に頭に思い浮かべながら,なるべく枝葉末節を排除し基本的な要点を押さえるものにしたつもりです.随所に配置されたコラムには4種類あります.「ここがホット」は,各分野で最近話題になっている新たな事実や学会などでの争点について書かれています.「耳より」は,一言でいえば,ちょっとした豆知識で,読むと,少しだけ得をした気になるはずです.「Coffee Break」は,ほっと一息ついたときに読んでもらえたら嬉しく思います.そして今回新たに「臨床と病理の架け橋」が加わりました.また,初版にひき続き配置した側注は,少しだけパワーアップし,(注釈の)つぶやきにとどまらず,時にテキストに収まらないディープな内容も盛り込まれています.執筆者の本音が垣間みられるところも多く,ぜひ「つぶやき」をフォローしてみてください.

 以上のような改訂と本書の変わらぬ特徴をして,「臨床医に必要な消化器病理の情報はほぼこの一冊のなかにある」と,自信をもって言えるようになりました.

 皆さまが,診療や研究に際して,本書を十分に活かしきってくださることを期待しております.また,ご意見も是非お寄せください.「臨床に活かす病理診断学」プロジェクトに終わりはありません.それでは,また,どこかでお会いしましょう.

 2011年3月
 著者を代表して 福嶋敬宜

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I.入門編:病理診断のことがざっくりわかる Q&A 30問
【1】病理診断全般に関すること
 Q1.病理学的な検索でどのようなことがわかりますか?
 Q2.ほかの診断方法と異なる病理診断の特長を教えてください
 Q3.病理診断の弱点は何ですか?
 Q4.腫瘍についての病理学的な診断項目は?
 Q5.病理診断で用いられる特殊な検査・診断の方法は?
 Q6.社会的には「がん診療」の地域格差が問題になっていますが,病理診断の地域格差もありますか?
 Q7.病理診断は,それ自体の専門性が高いと思いますが,そのなかで「消化器病理の専門家」になるための認定制度などはあるのでしょうか?
【2】病理検体の固定から切り出しまで
 Q8.提出した組織検体は,その後,どのように処理され診断されているのでしょうか?
 Q9.病理検体の(ホルマリン)固定時の注意点を教えてください
 Q10.最近,ホルマリンによる環境汚染に対する規制も強化されているようですが,標本上ではホルマリンについての何か負の影響はありますか?
 Q11.ホルマリンで固定してはいけない検体はありますか?
 Q12.腫瘍の肉眼観察のポイントを教えてください
 Q13.「切り出し」で重要なことは何ですか?
【3】病理組織診断から報告書まで
 Q14.病理医の検鏡のスピードが速くて驚いたことがありました.標本を見るときのコツを教えてください
 Q15.よく病理医は「タチの悪そうな癌だ」などと言ったりしますが,具体的に何を見てそう判断しているのですか?
 Q16.病理診断は顕微鏡による診断だと思いますが,なぜ臨床情報(経過や画像所見など)が必要なのですか?
 Q17.病理組織診断の申込書にどの程度の臨床情報を書けばよいのでしょうか?
 Q18.「検体不良(insufficient material)」は,何となくイメージできますが,結構しっかり組織が採れたと思う検体でもこのようにコメントされたことがあります.具体的にはどういうことでしょうか?
 Q19.病理診断に付記される用語(see comments,probably,most likely…,suggestive of,suspicious of,etc)のニュアンスを教えてください
 Q20.病理組織診断報告書のなかで診断以外に重要なチェックポイントは何ですか?
 Q21.病理組織診断報告書の読み方にコツがありますか?
 Q22.病理組織診断報告書を患者に見せてもよいでしょうか?
【4】術中迅速病理診断
 Q23.術中迅速病理診断と普通の病理診断の違いはどこにありますか?
 Q24.術中迅速病理診断の流れを教えてください
 Q25.術中迅速病理診断をオーダーする際に病理医に伝えるべきことで重要なことは何ですか?
 Q26.術中迅速時検体で,変性や細胞の脱落を防ぐにはどうすればよいのでしょうか?
【5】細胞診
 Q27.消化器疾患の診断で細胞診が有効なものについて教えてください
 Q28.提出した細胞検体が診断報告されるまでの流れも教えてください.病理検体と同じですか?
 Q29.胆汁・膵液細胞診の診断精度を上げる方法はありませんか?
 Q30.わが国以外では細胞診のクラス分類は使わないと聞きました.どのように評価するのが主流なのでしょうか?

II.基礎編(1):臓器・病変別 病理学的アプローチ
【1】食道
 1.食道検体の取り扱い
 2.食道の非腫瘍性病変へのアプローチ
 3.食道の腫瘍性病変へのアプローチ
【2】胃
 1.胃検体の取り扱い
 2.胃の非腫瘍性病変へのアプローチ
 3.胃の腫瘍性病変へのアプローチ
【3】十二指腸・小腸(十二指腸乳頭部を除く)
 ○はじめに
 1.十二指腸・小腸検体の取り扱い
 2.十二指腸・小腸病変へのアプローチ(十二指腸乳頭部を除く)
【4】大腸
 1.大腸検体の取り扱い
 2.大腸の炎症性疾患へのアプローチ
 3.大腸の良性ポリープへのアプローチ
 4.大腸原発癌へのアプローチ
【5】肝臓
 1.肝臓検体の取り扱い
 2.肝臓の非腫瘍性病変へのアプローチ
 3.肝臓の腫瘍性病変へのアプローチ
【6】胆道・十二指腸乳頭部
 1.胆道・十二指腸乳頭部検体の取り扱い
 2.胆道・十二指腸乳頭部の非腫瘍性病変へのアプローチ
 3.胆道・十二指腸乳頭部の腫瘍性病変へのアプローチ
【7】膵臓
 1.膵臓検体の取り扱い
 2.膵臓の結節性病変へのアプローチ
 3.膵臓の嚢胞性病変へのアプローチ
【8】消化器のリンパ増殖性疾患
 1.総論的事項
 2.各論的事項

III.基礎編(2):特殊染色の基礎知識
【1】組織化学検査
 1.結合組織を染める
 2.粘液を染める
 3.脂肪や沈着物・細胞内顆粒を染める
 4.組織内病原体を染める
 5.組織内無機物を染める
 6.細胞診で用いられる染色
【2】免疫組織化学検査
【3】染色方法の選択と結果解釈
 1.サイトケラチン抗体免疫組織化学
 2.免疫組織化学によく用いられる抗体および染色選択法

IV.応用編:病理診断を研究に活かす!
【1】病理形態と病理診断学を研究に活かすポイント
 1.組織凍結保存のポイント
 2.通常検体・パラフィンブロックを活かすポイント
 3.特殊(免疫組織化学を含む)染色を活かすポイント
 4.病理情報を活かすポイント
【2】学会発表・論文投稿に役立つ病理写真の見せ方
 1.病理写真呈示の大原則:気配りのススメ
 2.肉眼写真撮影の基礎
 3.顕微鏡写真撮影の基礎
【3】病理検体を使った研究とその倫理問題

V.資料編:すぐに確かめて安心!
【1】病理診断関連用語集
【2】正常組織像アトラス
【3】抗体早見表

索引

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画像診断の実力向上にお薦めの一冊
書評者: 鶴田 修 (久留米大教授・消化器病センター)
 消化器疾患に携わる臨床医が日常の診断・治療をより確実に行う上で,画像診断は避けて通ることのできない重要な診断法の一つである。初心者にとって画像診断は興味深く,最初は画像診断の参考書などを片手に診断を行い,ある程度の診断能力を身につけることはできるが,必ず突き当たるところは画像所見と病理所見の対応であり,病理学的知識の無さが原因で画像所見の理解・評価に難渋してしまうことになる。画像診断には病理学的所見との対応が必要であることがわかり,一念発起して病理の教科書を読み始めても途中で挫折してしまい,画像診断の実力アップが叶わないままの臨床医はかなり多いと思われる。

 そこでお薦めの病理教科書が『臨床に活かす病理診断学――消化管・肝胆膵編 第2版』である。本書は病理学的知識のあまりない肝・胆・膵,消化管などの消化器病の臨床にこれから携わろうと志す医師を対象としている。まず各臓器の正常組織像や疾患の概念を解説し,次に病変のマクロ写真,病理組織写真・シェーマ像を数多く提示の上,わかりやすく解説してあり,初心者でも途中で挫折することなく,比較的容易に画像診断に役立つ病理学的知識を得ることができるよう工夫された内容となっている。実際の臨床の場で本書を片手に画像所見と対応させながら,繰り返し,繰り返し読んでいくと,普通ではなかなか習得の難しい病理学的知識がみるみる身につき,それに並行して病理学的所見を考慮した画像診断を行うようになり,いつの間にか画像診断の実力が向上しているであろう。

 以前にかなり時間をかけて消化管病理を学んだ筆者からみると,このような病理書で苦労少なく知識を得ることは,うらやましい限りであり,これから学ぶ医師にとっては夢のようにありがたい話である。ぜひ,消化器疾患の画像所見を行う際には本書を携帯されることをお勧めする。
消化器病に携わる医師必携の臨床病理のテキストブック
書評者: 高田 忠敬 (帝京大病院名誉・客員教授・肝胆膵外科学/日本肝胆膵外科学会理事長)
 このたび,医学書院から出版された『臨床に活かす病理診断学 第2版――消化管・肝胆膵編』(編集:福嶋敬宜・二村聡)の書評を依頼されました。

 私は,雑誌『胆と膵』の編集委員長をしている関係で,委員の一人である福嶋敬宜先生とは親しい関係にあります。私が福嶋敬宜先生に異才を感じたのは,彼が雑誌『胆と膵』に繰り出してくる企画に対してです。

 それらの企画を紹介しますと,まず,「ぼくは病理学研修生―診断ときどきリサーチ」を6回(前編,後編と二部作)掲載しました。これはいわばQ&A方式で,標本の整理,染色,診断などから研究の展開まで幅広く読者に身近に感じられる病理を紹介したものです。臨床医として大変興味深く,“なるほど”とうなずきながら読ませていただきました。

 次に,インタビュー「その『道』の究め方―消化器病に挑み続ける先駆者たち―」が16回掲載されました。さらに,現在も続いているインタビュー「その『世界』の描き方」があります。

 これらの企画では,インタビュアーの福嶋敬宜先生の多大の努力とともに,先人たちから“旨み”を引き出す能力の高さに感心しました。インタビューを受ける先人たちが,素直に研究の苦しみ,目的に到達したときの喜び,人生観などをよどみなく話しているのを読み,遠くに感じていた先人たちがすーっと近づいてきたのを感じさせられました。

 このような背景を基に,今回,福嶋敬宜・二村聡編集による『臨床に活かす病理診断学 第2版――消化管・肝胆膵編』(以下,本書)を読んでみました。消化器病に携わる医師にとっては,最低限知らなくてはならない臨床病理のテキストブックだと感心しました。

 実は,私は,病理学については全くの素人ではありません。東京女子医科大学消化器病センターの外科レジデント(医療練士)の6年の間には一時期病理部門に配属され,標本整理などを行いましたが,レジデントが終了してから1年間,東京女子医科大学第一病理学教室に助手として入局し勉強しました。本書の入門編や基礎編に書かれているようなことを実際に行ってきたわけですが,問題は,当時は,ガイドをするような良い参考書がなかったので,先輩や教授に,あるいは,技師たちに直接教わって,検体の固定,切り出し,染色,検鏡などをたどたどしく行っていました。また,学生の病理実習では,検鏡でわからないところを私に聞いてくるのですが,まだ勉強していないところも多く,たびたび,恥をかくことがありました。

 本書は,学生時代のレベルの低い知識や経験,医師になってからのうろ覚えの知識に対して,入門者が勉強し,身につけやすいQ&A方式を基本的に採用しており,注釈も簡潔でわかりやすくなっています。消化器病医(内・外科を問わず)と病理医とのやりとりだけでなく,カンファランスや学会での発表のみならず,討論のベースをつくる知識を得ることができます。また,ちょっとわからない病理用語などについては辞書代わりにこのテキストを見ればよく理解できます。

 また,「ここがホット」や「耳より」は,ちょっと読んでおくと少し偉くなったような感じを与えてくれます。念のため,「臨床と病理の架け橋」については,一読されることをお勧めします。

 本書は,病理学的事項をやさしく記載した入門書であるとともに,著者たちが実際に学会や委員会などに臨むときに,“ちょこっと”走り読みして,部外者にもわかりやすく説明できるように考えて企画したのではないかと考えてしまいました。それほど使い勝手がいいテキストだと感心しています。
画期的な病理診断学の学習機会を与えてくれる一冊
書評者: 角谷 眞澄 (信州大教授・画像医学)
 福嶋敬宣先生,二村聡先生編集による『診療・研究に活かす病理診断学――消化管・肝胆膵編』が,「より一層,臨床の現場に病理情報を届けるため」に改訂され,『臨床に活かす病理診断学――消化管・肝胆膵編(第2版)』として医学書院から上梓されました。B5判の283ページからなる病理診断学の解説書ですが,病理写真はオールカラーとなり,見出しにもカラーが加えられ,とても見やすい教科書に華麗に変身しました。

 改訂版は初版と同様に,入門編,基礎編,応用編,資料編に分かれています。入門編では,病理診断を概観した上で,病理検体の扱い方,病理組織診断から報告書の作成と進み,迅速病理診断や細胞診へと続きます。初版のコラムにあった「FAQ」がここに内包され,全体を30問のQ&A形式にし,病理診断を臨床に活かすポイントが「ざっくり」と書かれています。

 基礎編は2章に分割されました。基礎編(1)では,臓器・病変別に検体の取り扱いと病理学的アプローチが扱われていますが,疾患名の網羅ではなく,実臨床で遭遇度の高い疾患や重要度の高い疾患を中心に内容が厳選されています。臨床医として「知っていれば得する」,まさに本書のメインコンテンツです。基礎編(2)では特殊染色が扱われ,組織化学検査と免疫組織化学検査の基礎的知識が記載されていますが,ヘマトキシリン・エオシンによる病理組織診断に立脚して初めて特殊染色の威力が発揮できることが強調され,染色方法の選択と結果解釈も具体的に示されています。まさに「病理に強い臨床医」になれる内容で,読み応えがあります。応用編では,初版と同様,病理診断を研究に活かすポイントや学会発表・論文投稿に役立つ病理写真の見せ方まで伝授してくれています。最後の資料編では,「病理診断関連用語」数が125から158へとパワーアップしました。また,「正常組織像アトラス」がカラー写真となり,抗体早見表が新たに追加されています。折に触れ,多角的に知識を想起したり確認したりするのに,「ますます便利」になっています。

 随所に配置された4種類のコラムは,内容の大半が新しくなりました。「ここがホット」では各分野における最新事実や学術的争点がわかります。「耳より」ではちょっとした豆知識がゲットでき得した気分になれます。「Coffee Break」で一息つきましょう。「FAQ」に代わって「臨床と病理の架け橋」が新たに加わりました。どのコラムも楽しく読めて学習意欲をかき立ててくれます。

 私は放射線診断専門医で,肝胆膵領域の画像診断を中心に診療・研究に携わっていますが,病理診断と画像診断は表裏一体で,診断への思考過程には相通ずるものがあります。本書の至るところに登場する「側注」に込められた病理診断医の本音やつぶやきも見逃せません。病理診断学の深い部分が語られているのですが,私にとっては画像診断学へのヒントが満載です。

 画像診断医にとって,病理診断を学び,その知識を画像診断に融合させることは,患者に貢献するために欠くことのできない作業です。しかし,学会や研究会で病理医の診断やコメントを拝聴しながら病理組織診断の知識を学び取っていく方法は,時間的制約が大きく,残念ながら効率が良くありませんでした。そんな私にとって,本書は「目からウロコ」であり,画期的な病理診断学の学習機会を与えてくれる至高の存在になっています。

 本書は,主に消化器系の診療と研究に携わる臨床医向けですが,短時間に実践的な消化器病理診断学の知識や手順を習得したい臨床検査技師,一般病理医,臨床実習中の医学生にもお勧めです。専門が異なれば利用法も違うでしょうが,本書はどなたにも十分満足のいく内容であると確信します。カラフルにバージョンアップされた改訂版で,魅力にあふれた病理診断学の世界に浸ってみましょう。

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