• HOME
  • 書籍
  • 個人授業 心臓ペースメーカー


個人授業 心臓ペースメーカー
適応判断から手術・術後の管理まで

もっと見る

心電図でさえ苦手なのに、ペースメーカーなんてお手上げ! と思っているあなた。本書に予備知識や事前の準備は不要。まずは1日1章からスタート。1か月後にはひととおりの知識を得られるはず。さらに余力のある読者には、アドバンス項目も充実。ペースメーカーを知りたい医師、看護師、臨床工学技士、臨床検査技師に最適の入門書。さあ、さっそく“個人授業”をはじめよう!
監修 永井 良三
執筆 杉山 裕章 / 今井 靖
発行 2010年03月判型:A5頁:264
ISBN 978-4-260-00952-2
定価 4,180円 (本体3,800円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次
  • 書評

開く

監修の序(永井良三)/(杉山裕章・今井 靖)

監修の序
 心臓ペースメーカー治療の決定には,電気生理学的検査を始めとするさまざまな知識を学ばなければならない.特に,生理検査所見の読み方,複雑なペースメーカーの作動モードとそれぞれの適応,外来管理におけるポイントなどの理解には,一定のトレーニングが必要である.さらに,ペースメーカー挿入には細心の注意が求められることはいうまでもない.実際,挿入時に心タンポナーデやリード感染などの極めて重篤な合併症が生じることがあり,術後もセンシングあるいはペーシング不良などに対して,注意深い観察が必須である.このため心臓ペースメーカー治療は不整脈専門医に限定された仕事とされてきた.しかしながら,近年,高齢者の増加とあいまって,ペースメーカー治療を受ける患者が急増しつつある.このため非専門医にあっても,心臓ペースメーカーの適応や管理に関する基本的考え方は必須になりつつある.
 心臓ペースメーカーの解説書は初学者には難解であることが多い.これは以上のような背景が原因と考えられる.このため,不整脈グループに入門しなくとも,非専門医,特に現場で患者のケアに追われる研修医,看護師,コメディカルスタッフにとってわかりやすい心臓ペースメーカーの解説書が,長い間,求められていた.
 今回,当教室の若手により「個人授業」という形で,大変わかりやすい心臓ペースメーカーの入門書が上梓された.基本的な事項から実践的手技にいたるまで,対話形式で解説されており,どこから読んでも明確にメッセージが伝わってくる.これは日々の診療と教育に対する熱意があればこそ可能になったものである.
 最近,医療が高度・複雑化しており,大学病院でも多くの時間を臨床現場で割くようになった.しかしながら,どのような場にいても,自らの医療の位置づけを示すことが重要である.それは診療実績だけでなく,次世代の医療者に対する教育においても然りである.本書を通じて心臓ペースメーカーに関する知識だけでなく,医学と医療に対する姿勢も学んでいただければ幸いである.

 2010年2月
 東京大学大学院医学系研究科循環器内科教授
 永井良三



 ペースメーカーが徐脈性不整脈の治療法として本格的に本邦において導入されたのは昭和40年を過ぎたころですが,その後の進歩は目覚ましく,いまや年間何万件ものペースメーカー植込み手術がなされ,さらにその何倍もの植込み症例のマネージメントが日本中の病院で行われています.機能も多彩となり,患者のさまざまな病態にあわせてさらに的確に機種選択・設定を行えるようになってきました.ペースメーカーは本来,徐脈性不整脈を対象とする治療器具ですが,この植込み型デバイスは現在においては除細動器,心臓再同期療法と頻脈性不整脈や心不全をターゲットとするものまで登場してきました.しかし一方で,その機能,デバイスの多彩さのためにかえって難解・複雑といったイメージを持ち抵抗感を抱く人が少なくないのが現状です.現在,初期研修制度の導入で研修医は循環器を含む内科のローテーションが必須となっており,少なくとも一定期間は不整脈治療としてのペースメーカーに接することになりますし,その後将来において循環器以外の専門領域に進んだとしてもペースメーカーが挿入されている症例の手術や管理を担当する機会は多くあるわけで,進路が循環器科でなくともペースメーカーに関する基礎知識とそのマネージメントの方法を把握しておく必要があると思います.
 この本はベテラン医師と新人医師との対話で構成されており,あたかも病院内で実際に行われているなにげない会話と同様に特に構えることなく短時間で読み通せるような構成になっています.医師,看護師,技師あるいはそれを志す学生さんが手にとって数日で読み終えることができ,しかしながらペースメーカーの基本概念,植込み手技,管理の全体像をしっかりと理解し現場での実践に即座に役立てられるよう配慮しました.また手術手技ではエコーガイド下腋窩静脈穿刺,リード留置位置では古典的な右心耳,右室心尖部への留置のみならず,最近試みられることが多い心房中隔・心室中隔への留置についても解説を加え,最新のトレンドを盛り込んだ内容に致しました.ぜひこの本をペースメーカー・不整脈領域への入門書の一つとしてご活用していただければ幸いです.
 当科永井良三教授には監修の労をお取り頂き,また心臓血管研究所付属病院循環器科の相良耕一・山下武志両部長から頂いた臨床現場におけるアドバイスは症例提示も含めて本書の大きな礎となっています.また,当科安喰恒輔先生,藤生克仁先生,小島敏弥先生をはじめとする不整脈スタッフにはペースメーカー手術を含め多大なサポートを頂きました.さらに各製造・販売業者の方々には画像をご提供いただき,特に16~18章の画像作成ではフクダ電子の山畑博史氏らの協力を仰ぎました.校正段階では当科の假屋太郎先生ら若手の医師や臨床工学技士諸氏に参画して頂きました.最後に医学書院医学書籍編集部の中根冬貴氏に感謝の意を表します.

 2010年1月
 杉山裕章
 今井 靖

開く

イントロダクション
 1 心拍数の数え方(基本編)-マス・目盛りって本当に便利!
  アドバンス1 心拍数の数え方(応用編)-R-Rが不整でも対応できるぞ
 2 徐脈性不整脈の基本-不整脈の世界へようこそ

ペースメーカー適応
 3 ペースメーカーってどんな時に必要?-本当に必要な人をきちんと見分ける
  コラム 電磁干渉-見えない電波が飛びかう便利すぎる世の中で
 4 症状がない時どうする?-洞不全症候群なら大丈夫?
 5 時には無症状でも入れなきゃ-房室ブロックは危険だぞ

房室ブロック
 6 房室ブロックに対するペースメーカー-PとQRSの“つながり”とは?
  アドバンス2 VDDリード-1本2役のスグレモノ
 7 2度房室ブロックは難しい?-ウェンケバッハそれともモービッツ?
  アドバンス3 2度房室ブロック完全マスター-ウェンケバッハのほうが難しい?
  アドバンス4 房室ブロック部位-ヒス束との位置関係は?
 8 心房細動中のレギュラーな徐脈-絶対に見逃しちゃダメ!
  アドバンス5 心房静止-心房筋の“慢性疲労”

洞不全症候群
 9 洞不全症候群に対するペースメーカー-洞不全症候群は疲弊したボクサー?
  アドバンス6 電気生理学的検査の限界-この世に“絶対”なんてない
 10 洞停止と洞房ブロックの区別-キャリパー1つで勝負!

ペースメーカー手術
 11 ペースメーカー手術-実際に体験してみよう
  アドバンス7 静脈造影検査-何事も事前の準備がタイセツ
 12 ペースメーカーのX線診断学-胸部CTを最大限利用して

ペースメーカー機能
 13 ペースメーカー事始-ペースメーカー“ロボット”現る
 14 シングルチャンバー・ペースメーカー-基本的な立ち振舞いに慣れよう
  アドバンス8 心房性不整脈とDDIモード-モード・スイッチとは?
 15 デュアルチャンバー・ペースメーカー-リード2本ならオールマイティ
 16 ペースメーカー・チェック入門-プログラマーの“いろは”から
 17 ペースメーカー閾値-“安全確保”しながら“省エネ”も目指そう
 18 センシング閾値-“ロボット”の“聴力”検査

合併症
 19 手術の思わぬ“落とし穴”-一寸先は“肺”
  アドバンス9 リードが“凶器”にかわるとき-“進み過ぎ”に注意!
 20 いつまでも“そこ”にいると思うなよ-リードは足の生えた生き物?

ペースメーカーの設定
 21 最終設定を決めよう(シングルチャンバー編)-“はじめ”が肝心
 22 最終設定を決めよう(デュアルチャンバー編)-ここまでできれば“免許皆伝”

索引

開く

新人からプリセプターまで苦手意識が解消する1冊 (雑誌『看護管理』より)
書評者: 渡辺 真理 (財団法人心臓血管研究所付属病院 看護部管理室)
◆心電図の理解は不可欠だが,ハードルは高い!?

 「循環器」が苦手な理由に“心電図がよく分からないから”という看護師は多いのではないでしょうか。ましてやペースメーカーとなると敬遠する人も少なくないでしょう。そもそも不整脈の専門用語自体が難しいこともあります。ところが,筆者の勤務先のような循環器専門病院の看護師採用面接時に,循環器を志望する理由や,何を学びたいかを聞くと大半は,“心電図を読めるようになりたいから”と口にします。つまり,心電図の理解は看護師にとって必要不可欠と理解しているものの,ハードルはかなり高いというのが現実です。

 心電図を学習するなら何らかの参考書は必要でしょう。そこでお勧めするのが本書です。実際に不整脈,しかもペースメーカーといえば堅苦しく眠くなる本が多いなか,本書は今までにない形式をとっています。心電図の基礎からペースメーカーチェックまでをベテラン医師と若手医師の対話形式で書かれてあり,そのやりとりが実に面白く,“ここはどうなっているのだろう?”という読み手の疑問を若手医師がしてくれ,それにベテラン医師が答えるといった感じで進められています。最後まで眠くならず楽しく読めてしまいます。心電図の基本を理解するにはうってつけです。

◆いつの間にか心電図やペースメーカーが楽しくなってしまう本

 とかく看護師は,いや私に限ってなのかもしれませんが,自分がどのように理解したかを相手にきちんと説明することが苦手です。プリセプターなどから,“新人指導で不整脈をどのように指導したらいいのか”“新人がどこまで理解しているのかわからない”といったことをよく耳にすることを考えると,これは私だけの不安ではないようです。しかし,この本にはペースメーカーを理解する際の思考回路やその習得過程が書かれているので,学習する新人にとってはどのように理解していけばよいのか,教える際には,どのように説明すればわかりやすいのかが見えてきます。

 つまりペースメーカーを学びたい人にはもちろんですが,指導する人にもお勧めなのです。要点を押さえて,難しいところも簡単にサクっと理解するためのアドバイスや,かゆいところに手が届く質問にもわかりやすい答えが書かれており,新人からプリセプターまで,みんなで参考にしたい1冊といえるでしょう。

 ペースメーカー機能は複雑で,心電図波形だけでは理解しがたいことが現場ではよくありますが,基本事項の理解が目的の本書で,考え方のプロセスを理解することによって,苦手で読み始めた方も読み終えたときには,ペースメーカー,いや心電図は楽しいかも,と思わせてくれるでしょう。

(『看護管理』2011年3月号掲載)
循環器にかかわるすべての医療関係者に
書評者: 大野 実 (虎の門病院循環器センター内科部長)
 レジデント向けに非常によくまとまった本である。

 最初は心電図での簡単な心拍数の推定法から始まり,最後まで読むと自分でペースメーカーを入れることができるようになり,また簡単なペースメーカーチェックができるようになる本である。私も管理職になり特別な事情以外では自身がペースメーカーの植込み手術に入ることは少なくなったが,そのような私でも良い復習となり,研修医の教育のために良い資料となっている。また新しいペースメーカーの機能など学ぶ点も多々ある。

 本書は非常に読みやすく研修医,特に循環器を志す研修医に薦めたい本である。コメディカルの人たちにも適している。また循環器の専門医が復習および頭の整理に使用するにも良い本である。私自身新たに学ぶ点もあった。

 合併症の記載も著者らの経験に基づいたもので,非常に具体的に書かれている。ペースメーカーは決して安全な手技ではなく,細心の注意を必要とする手技であることが理解できる。

 本書は循環器にかかわるすべての医療関係者にお薦めしたい。
すべての医療関係者に心臓ペースメーカーへの門戸を開く本
書評者: 山下 武志 (財団法人心臓血管研究所常務理事・研究本部長)
 「心臓ペースメーカー」という言葉はそれ自体が人を遠ざけてしまう傾向があるのではないだろうか? ペースメーカー適応患者の担当医となった研修医の頃,まったく理解できないことの連続,挙げ句の果て教授回診で頭が真っ白になった記憶が評者には残っている。当時1980年代後半,ペースメーカーのことを勉強するための書物は英語のテキストに限られ,さらにその本を開いたとたんに脳が拒絶してしまう「マニアもの」だった。

 20年あまり経ち,ようやくどんな読者でも受け入れてくれるペースメーカーの良書が上梓されたことを大変喜ばしく思う。著者の一人は杉山裕章先生,まだ30歳代前半の新進気鋭の若手である。彼は内科研修後,(財)心臓血管研究所付属病院でレジデントを3年間修める中で,不整脈,心臓電気生理学,不整脈デバイスを自らの専門に決めたという経緯があり,評者はその著しい成長ぶりを熟知しているつもりである。

 本書のすばらしさはその間口の広さにあるようだ。現在,不整脈関連デバイスに関する日本語テキストがいくつか出版されているが,他書より格段に「マニアもの」を脱している。研修医,看護師に限らず,すべて医療関係者に対して,ペースメーカーをより身近なものに感じてもらおうという著者の気概がそうさせているのだろう。

 テキスト構成としてはほぼ5部構成で,(1)心電図の基本を押さえるためのイントロダクション,(2)ペースメーカー植え込みを要する病態・適応,(3)ペースメーカー手術の実際,(4)ペースメーカーの機能,(5)ペースメーカーの設定となっており,読者のレベルや必要に応じてどこからでも読めるように工夫されている。

 加えて,ベテラン医師と若手医師の対話形式で話が進められているため,あっという間に読み終えてしまう(評者の先輩である村川裕二先生によれば,これが良書の基準だそうである)。

 若手医師がどうしてこのようなテキストを著すことができたのだろう。実は,杉山先生がレジデント時代に必死になって自分が学んだことをきちんと記録していたノートの存在を評者は知っているので,きっとそれが本書の種になったものと想像している。もちろん,共著者の今井先生,監修の永井先生がそれをより洗練させたであろうことも。

 いずれにせよ,未曾有の高齢化社会を迎え,ペースメーカー装着患者が増加している現在,ペースメーカーを専門家以外に門戸を開こうとする本書の価値は疑いようもなく,医師に限らない医療関係者すべてに推薦できる良書である。評者は関西人なので,会話が関西弁ならばもっと親しみやすかっただろうにと,あり得ない希望を抱いてしまったことを最後に打ち明けておく。

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。