機能解剖ポケットブック

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20年にわたって書き続けられた名著“Anatomy and Human Movement”のエッセンスを凝縮したポケットブックの全訳。豊富なカラー図と簡潔な解説により、知りたいポイントが一目でわかる。運動学の基本解説や臨床関連コラムも多数収載し、巻末の和英・英和索引はミニ用語集としても活用できる。ハンディなサイズで、臨床現場や実習先で知りたいときにすぐにチェック。運動器のリハビリテーションに携わるすべての職種必携の1冊。
Nigel Palastanga / Roger Soames / Dot Palastanga
野村 嶬
発行 2009年08月判型:B6頁:288
ISBN 978-4-260-00825-9
定価 3,740円 (本体3,400円+税)

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訳者まえがきまえがき

訳者まえがき
 本書は,現在5版まで発刊され欧米でよく使用されている,700頁を超える大著である「anatomy and human movement structure and function」のエッセンスを抜粋し,再編集したポケットブックの翻訳書である.したがって,本書だけで人体構造の全体像を学ぶことは量的に適切ではない.むしろ,本書は一通り人体解剖学を学んだ方々が臨床現場や現場への行き帰りの電車内などで確認や復習のために手軽に利用していただくのに適している.
 本書はポケットブックでありながら,驚くほど多くの図を本文とバランスよく同じ頁に配置し,本文では「人の動き」を担う骨,関節,靱帯,筋,神経およびそれらに関連する主要な疾患が簡潔に記述されている.医学的知識を手軽に得るツールとして医学電子辞書は大変有用である.しかし,医学電子辞書では「人の動き」に関連した諸構造の説明はもちろん一通り掲載されているけれども,それらが図解されているものは少ない.「人の動き」に関連した諸構造は図解されていないとイメージし難いものも多くある.その点で本書は優れているので,重要ポイントを指摘したポケットブックとして有用であろう.
 臨床現場やスポーツ関連の施設で働く若いPT,OT,看護師,柔道整復師,鍼灸師,スポーツトレーナーなどのコ・メディカルスタッフや健康科学関連分野で活躍中の方々に大いに活用していただければ幸いである.
 本書の出版にあたり,御尽力いただいた医学書院の関係者の皆様に御礼を申し上げます.

 2009年6月
 野村 嶬


まえがき
 Nigel PalastangaとRoger Soamesは『Anatomy and Human Movement(AHM )』の執筆と発刊にほぼ20年間関わってきた.そして,その5版の発刊となった今,AHM は非常に成功した解剖学テキストとなった.AHM は解剖学を詳細に記載しているので,どうしても大著となり重くもなる.そこで,多くの場で学生や臨床家からAHM の内容を変更することなく,携帯できるより小さいポケットブックの発刊を依頼された.この要請に応えて,Dot Palastangaが著者として加わった.彼は理学療法士と作業療法士の解剖学教育の経験豊かな教師であり,AHM の初版からこれまでの版のすべてに深く関わっている.
 このポケットブックのアイディアは,詳細なテキストであるAHM の内容をより扱いやすいものに凝縮することで,とりわけ健康科学の分野で専門領域の発展のために解剖学を学ぶ方々を支援することである.しかし,本書の内容は多くの専門領域に必要とされる解剖学的知識のレベルからすれば不十分と言わざるを得ない.したがって,本書は解剖学的知識を得る最初でかつ唯一のものとして役立つよりも,むしろ解剖学的知識の復習に有用であろう.また,本書は小型なので臨床の場面で実習生や臨床家が確認や復習のために素早く利用できるであろう.この点は,別売りのAHM 学習カードでもさらに補うことができる(訳注 本書の著者によって作成されたカード形式による著作).
 本書の図はAHM から引用した.特に主要な関節に関連した機能的な筋群を示す場合には複数の図を一緒にした.また,本書の図は主要な関節を中心にして局所的に描かれている.

 NPP / RS / DP

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1 総論
 面と方向/動き/骨/関節/筋/
 末梢神経/てこ/皮膚/リンパ系

2 上肢
 序論/上肢帯/肩関節/肘関節/前腕/
 手関節と手根/手/まとめ-筋と動き/神経支配/血管

3 下肢
 序論/下肢帯/股関節/膝関節/脛腓関節/足関節/
 足/足関節と足/まとめ-筋と動き/神経支配/血管

4 体幹と頸部
 胸部/脊柱/まとめ-筋と動き/
 神経支配/血管/腹部と骨盤

5 頭部と脳
 頭蓋/耳/目

索引

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臨床で疑問が生じたら,解剖学という原点に戻る
書評者: 稲葉 康子 (昭和大講師・理学療法学)
 「わからなくなると,いつも解剖の本を開いてよく考えてみる」。これは,臨床一筋三十数年の理学療法士の言である。

 私たち医療技術者は,学生時代に運動学,生理学,そして解剖学といった基礎学問を学習し,それらの知識を積み重ねた上で臨床を行う。その際に生じる疑問に対しては,常に原点である基礎学問に立ち戻ることで,疑問を解決できることが少なくない。

 上記の発言を聞いたとき,このようなベテランの臨床家でも,目の前の患者さんに生じている症状に対して解決できないことがあると,常に解剖学という一つの原点に戻るという作業を欠かさないことを知り,非常に感じ入った。基礎を築き,その上で知識や技術を積み重ねて患者さんと向き合い,それと並行していつも基礎を補い固めていく作業を続けていくことが大切なのだと。

 一般的に,解剖学の書籍というのは,非常に分厚い,大きい,重い,そして高価である。それはもちろん,それだけの情報量と内容があるからである。しかしそれ故に,医療技術職として戻るべき原点の一つでありながらも,重厚な解剖学の本をバッグに入れて毎日持ち歩くのは,相当強靭な体力および精神力の持ち主でない限り,困難なのが現実であろう。生じた疑問をすぐに確認したいという時に,残念ながら手元にないということが多いのではないだろうか。

 本書は,欧米で発刊されている700ページを超える大著『Anatomy and Human Movement(AHM)』の内容を再編集した『Anatomy and Human Movement Pocketbook』の翻訳書である。著者のまえがきにもあるように,AHMが大著で重いという点に対して,内容を変更せずに,携帯できるようにまとめたポケットブックであり,それを翻訳したのが本書である。

 内容は,第1章総論,第2章上肢,第3章下肢,第4章体幹と頸部,第5章頭部と脳という章立てである。総論には解剖学的基礎事項や運動学の基礎である「てこ」についての解説が記されており,第2章以降には各身体部位の解説と,まとめとして筋と動き,神経支配と血管と続く。巻末は,和文索引と欧文索引の2種類の索引となる。

 大著をポケットブックにしたものとなると,内容を簡略化したという印象であるが,本書はオールカラーの図と解説が豊富である。また,関節可動域や動きと機能,触診部位についても盛り込まれている。そして,図の隣には当該関節のX線像まで配置する入念さである。加えて,当該部位によくみられる疾患が解説されているコラムなど,ポケットブックにするにあたり内容を凝縮したという言葉が適当だと思われる。巻末の和文と欧文の2種類の索引は,単語自体を知りたい場合にも役立つ便利な機能である。

 しかし,著者および訳者がまえがきで明記しているように,本書だけで解剖学を学ぶのには内容量的に不十分であることは否めない。解剖学をこれから学ぶという立場であれば,一般的な解剖学書籍で十分な知識を得て,深めるのが最適である。

 いつでもどこでも学習できるポケットブックの機能として,本書は必要十分条件を満たしている。臨床現場で働くコメディカルの方々や解剖学を学んだ学生が,解剖学的知識を復習,再確認するために手軽に携帯できる本として,最も力を発揮すると思われる。

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