EVTスタッフマニュアル

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本書は、末梢血管カテーテル治療(EVT)に携わるスタッフ(看護師、臨床工学士、放射線技師など)を読者対象の中心にすえ、治療する部位ごとにカテーテル室での経過を追って構成。知っておくべき病態や解剖、アプローチ法による使用デバイスの選択、術前・術中・術後にチェックすべきポイントなど、コメディカルスタッフの視点から習得すべきEVTの知識をまとめている。
編集 中村 正人
発行 2009年07月判型:B5頁:128
ISBN 978-4-260-00862-4
定価 3,300円 (本体3,000円+税)

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─本書の刊行にあたり

 この度,医学書院から『EVTスタッフマニュアル』を出版する運びとなった.本書は末梢血管インターベンション(endovascular treatment;EVT)に必要なアイテム,治療の中での重要なポイントをまとめたコメディカル・スタッフ向けのマニュアルである.
 本書を企画するきっかけになった出来事は,2008年4月から導入された“立会い規制”という“新たなルール”である.日常臨床における“立会い”の影の部分が強調され,このような規制が導入されるに至ったと推察されるが,“立会い”にはメリットがなかったわけではない.他の施設での手技/経験の伝達,デバイスの選択,使用運用に関する専門的知識の供与などで大いに治療の助けとなったことも少なくないからである.
 規制導入の結果として現場では多かれ少なかれ混乱を生んだが,ことに取り組まれて間もないEVTの領域ではその影響は大きかった.各々施設の経験,知識がいまだ限られたものであったことや,治療部位によってさまざまな異なるデバイスが必要となるなど,冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention;PCI)の経験が豊富な施設であっても容易に対応ができなかったであろう.とはいえ,複雑な冠動脈病変,重篤な血行動態に対する安全かつスムーズなPCIも一日にして可能となった訳ではない.各々の心臓カテーテル室に歴史があり,医師の研鑽のみならず,コメディカル・スタッフの経験の積み重ねにより,良好な連携プレイが日常臨床であたりまえのように行われるようになったはずである.
 EVTにおいても同じ道を辿っていくであろうが,その過程において“立会い不在”になってしまったことは痛手である.そのため今回の企画では,たくさんのEVTの経験を有し国内で指導的立場にある施設の医師,コメディカル・スタッフの方々にそれぞれの視点に則って治療部位ごとのノウハウを記載していただくようお願いした.年月をかけて積み重ねた創意工夫の産物が満載されているわけである.編集を終えまさに頭に描いていたマニュアルが完成したと実感している.
 忙しい日常臨床の中,ご協力いただいた医師,コメディカル・スタッフの方々に深く感謝するとともに,適切な助言をもらった医学書院の大野氏,増江氏には深く謝意を表したい.本書がコンダクターとなり,カテーテル室の歴史作りの一助となれば望外の喜びである.今後ますます普及するであろうEVTが安全に実施されることを望んでいる.

 2009年6月
 東邦大学医療センター大橋病院
 中村正人

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1 EVT看護のチェックポイント[腸骨動脈~BTK領域]
2 頸動脈
3 鎖骨下動脈
4 腎動脈
5 大動脈-腸骨動脈
6 大腿-膝窩動脈
7 BTK
8 IVUS
9 腹部大動脈
10 胸部大動脈

索引

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EVTのすべてが凝縮されている
書評者: 小崎 信子 (滋賀医大附属病院看護部)
 EVTすなわち末梢血管インターベンションは,日々発展を遂げています。それは,ひとえに診断機器の進歩とカテーテルやステント類の開発・改良が進んでいることによります。そのため,医療現場にいるスタッフは,日々行われるEVTという業務をこなすことに精一杯ではないでしょうか。

 2008年4月に立ち会い規制が始まってはや1年半。臨床工学技士を配置した施設,業者と有償契約を結んだ施設とその対応はさまざまです。しかしながら,現場にいるマンパワーだけで日々のEVTをこなしているのが多くの施設の現状でしょう。次々導入される機械や器具の種類も操作方法もわからない。また,カテーテルやステント類の多さに振り回され時間を取られ,看護師であれば本来行うべき患者看護やモニタリングがおろそかになる。それは決してあってはならないことです。

 本書は,現場に即した豊富な写真と図解入りで構成されています。カテーテルなどの器具類のサイズバリエーションについても具体的な商品名を含め詳細に記載されています。

 さらに,チェックポイントとして,看護で行うべき観察項目も手技ごとに詳細に述べられています。よって,初めてEVTに携わるスタッフには,現場の雰囲気をそのまま伝えるものとなっています。

 しかしながら,本書の真価は,EVTスタッフとしての業務に慣れたころ発揮されるでしょう。現場で使用する業務マニュアルは,通常手順を追ったものにすぎません。EVTの現場では,まずは手順が追えないことには進まないのも現状です。

 ですから,真にEVTスタッフとして動くためには本書に述べられているような解剖を含めた手技の理解が必要なのです。本文を丸ごと暗記するのではなく,実際自分が携わるEVTと照らし合わせながら身に付けていくべき内容です。そうすることで,看護師であれば患者への看護をより良いものとできるでしょう。

 もちろん100%身に付ける必要はありません。本書はEVT時にそばに置いておけば,マニュアルとして,参考書として,辞書として,様々な役割を果たしてくれるでしょう。

 また,コメディカルスタッフ向けの本にありがちなのが,用語をすべて日本語のみで掲載し,略語や原語との対比ができないというものです。しかし,本書は違います。本文中に出てくる用語のほとんどが,日本語・原語・略語の併記で記載されています。現場で多用される略語が何を意味するのか,またその関連する手技は何かを索引から検索することもできます。

 具体的な商品に関しては,施設ごとに採用しているものが違う場合もあるでしょう。医師によって若干の手順の違いがあるかも知れません。ですが,同様の手技において,極端に違うサイズのステントが選択されるということはあり得ません。手順は違っても全く別の治療法でない限り本書は必ず役に立つでしょう。

 EVTで行われることのすべてが一つ一つの項目に凝縮されています。EVTにかかわるすべてのスタッフが自らの役割を果たし,EVTが安全かつ確実に実施されることにつながるでしょう。まさに「マニュアル」と呼ぶにふさわしい一冊です。

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