高齢期作業療法学 第2版

もっと見る

OTを目指す学生のための「標準」教科書シリーズの1冊。高齢者をとりまく社会環境や高齢者に特徴的な身体・精神機能、疾患を明示し、実施場所や病期、疾患に応じた援助方法をわかりやすく解説する。さらに様々なケースの実践事例を紹介。第2版では成年後見制度や後期高齢者医療制度などの社会制度に対応し、巻末資料として対象者の世代の流行歌や出来事をまとめた年表を掲載する。高齢期作業療法のすべてを凝縮した1冊。
*「標準作業療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 標準作業療法学 専門分野
シリーズ監修 矢谷 令子
編集 松房 利憲 / 小川 恵子
編集協力 新井 健五
発行 2010年03月判型:B5頁:272
ISBN 978-4-260-00887-7
定価 4,180円 (本体3,800円+税)
  • 販売終了

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次

開く

第2版 序

 2009年9月20日の総務省による「敬老の日」にちなんだ発表では,わが国の65歳以上の高齢者人口は,2,898万人となり,総人口(1億2,756万人)に占める割合(高齢化率)は22.7%となった.そのうち後期高齢者(75歳以上)は1,370万人(男性519万人,女性851万人)で,総人口の10.7%となった.高齢者人口が1,000万人を突破したのは1980年であるから,とてつもない速さで高齢化が進んでいる.高齢化率は今後も上昇を続け,2050年には35.7%にも達すると見込まれていることから,高齢者および高齢者をかかえる人々に対する支援はますます重要になる.
 長い人生を歩んできた高齢者がこれからも人生を豊かに過ごすために,作業療法が援助できることは多い.健康な人はできるだけ健康状態を保ち,はからずも障害をかかえた人は障害を最小限に抑えて,意義ある人生を送ることが高齢期のあるべき姿と考える.その意味からも,本書では障害をもった高齢者のみでなく,健康高齢者にも焦点を当てた.
 さて,“生”の行き着く先は“死”である.「よき生き方」が「よき死に方」へとつながる.個人の人生を肯定できることが,その人にとって最高の人生と考える.人が自分の人生を肯定できるように,言い換えれば,人の「よき生き方」に援助することができるのが作業療法である.これからの高齢社会では,疾患や障害へのアプローチもさながら,障害を予防する視点が重視されなければならない.
 本書の編集にあたって,高齢期作業療法の基礎,高齢期作業療法の実践,高齢期作業療法の実践事例,高齢期作業療法学の発展に向けてとストーリーを描いた.高齢期に焦点を当てた作業療法がなぜ必要なのか,高齢者をどのようにとらえればよいのかを理解することで,高齢期作業療法の必要性を知ってほしい.そして高齢期の特徴を知ることで,高齢者にかかわる際の留意点を学んでほしい.それらを学ぶことで,実践的な考え方や実践事例を理解することができると考える.高齢期作業療法は発展途上である.それらを勘案して目次立てしたつもりである.初版の序で述べたように,本書の編集にあたって,「高齢者は,若中年者をそのまま延長したものではなく,また,高齢者という1つのグループにまとめられるものではない」ところに重点をおいた.
 人が長生きするようになった現在,認知症は避けては通れない部分である.認知症に関する情報は以前に比べて飛躍的に多くなり,社会的認知も進んできたが,同時に,増加する認知症高齢者および認知症高齢者をかかえる家族を,社会でどう支えるかという問題もクローズアップされてきた.ここに認知症を大きな節として取り上げた理由がある.
 注意点として,認知症を大きく取り上げた関係で,認知症ではない,あるいは認知症があっても軽度の高齢者は一般高齢者という扱いにした.
 2006年度の介護サービスの年間実受給者数は429万人に上っている.後期高齢者のますますの増加が見込まれるなか,介護サービス年間実受給者数も増加することは間違いないといえよう.高齢社会の進展に合わせて,医療はもとより,保健・福祉の分野での作業療法士の需要増が見込まれるが,作業療法士だけで対応できるものではない.介護福祉士などケアにかかわる他職種との協働が必要である.他職種とのかかわりの必要性も本書を
通して学んでほしいところである.
 「標準」というこのシリーズ全体のコンセプトから,できるだけ標準的な内容にふれたつもりであるが,高齢者に対する作業療法はまだ確立されたものではない.臨床現場において,試行錯誤しているのが現状であろう.高齢者に対する作業療法も,今後形を変えていくものと思われる.
 誰もが経験したことのない高齢社会において,高齢者をとりまく制度そのものも試行錯誤で変わっている.短期間で変化すると予想される図表などについては,巻末に移した.また,高齢者が歩んできた時代の出来事,流行歌など,参考となる事柄を年表形式にして巻末にまとめた.巻末資料にもしっかり目を通してほしい.
 本書の読者対象として,作業療法士を目指す学生が多いという観点から,できるだけわかりやすく編集することを試みた.前述したように,この分野での作業療法は未成熟であると同時に,日進月歩の発展をみせている分野でもある.社会制度の変化も含めて,絶えず新しい情報を吸収するよう努力してほしい.本書が,作業療法に携わる人の勉学に役立ち,さらにわが国の高齢期作業療法の発展に貢献できることを願う.

 2009年9月 執筆者を代表して
 松房 利憲
 小川 恵子
 新井 健五

開く

序章 高齢期作業療法学を学ぶ皆さんへ
第1章 高齢期作業療法学の基礎
 I 高齢社会
 II 高齢期の課題
 III 社会制度
 IV 高齢期の作業療法
 V 高齢期の一般的特徴
 VI 高齢期に多い疾患
 VII 認知症
第2章 高齢期作業療法の実践
 I 高齢期作業療法の実践過程
 II 病期に応じた治療・援助内容の違い
 III 実施場所に応じた治療・援助内容の違い
 IV 一般高齢者の作業療法
 V 認知症高齢者の作業療法
第3章 高齢期作業療法の実践事例
 I 虚弱高齢者のケース
 II 寝たきり高齢者のケース
 III 重度の認知症高齢者のケース
 IV 中等度の認知症高齢者のケース
 V 重度の認知症から寝たきりに移行したケース
 VI 終末期においてアクティビティが影響を与えたケース
 VII 人間作業モデルの実践事例
高齢期作業療法学の発展に向けて

さらに深く学ぶために
巻末資料
索引

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。