疾病のなりたちと回復の促進[4]
微生物学 第11版
本書の特長
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●第11版は、第10版で行った構成(目次)の大幅な改変を引き継ぎ、その一層の完成を目ざしました。
●大きく3部構成となっています。第1部では、病原微生物とはどういう生物的特徴や病原性・感染機構を持っているか、第2部では、ヒトは病原微生物の感染をいかに防いでいるか、という点を概括的に学びます。そして第3部では、各種の細菌・真菌・原虫・ウイルスについて、ヒトに引きおこす感染症とともに詳しく学んでいきます。
●本書は、微生物の持つ病原性(感染力)というものを、生物としての微生物の営みとしてとらえ、それと同次元でヒトの感染防御機構を説明します。両者の巧みなかけ引きや相互の進化の様子がよく理解されます。
●新型のインフルエンザウイルスや再興型の結核菌など重要な病原微生物については最新の基本的な情報を追加しました。
●各論では医療の専門職として知っていなければならない病原微生物を網羅し、辞典としても使えるような詳細な情報を盛り込んでいます。
*2011年版より表紙が新しくなりました。
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序文
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はしがき
微生物学領域における最近の進歩は著しいものがあり,多くの教科書が次々と改訂を余儀なくされているのが現状である。著者らは先に「高看双書」の1つとして『病原微生物学』を執筆したが,新しいカリキュラムの実施に伴って,今回,現時点における進歩をできるだけ取り入れ,しかもより平易にと心がけながら全面的に書き改めたのが,本書である。
今回は書名を『病原微生物学』としないで,『微生物学』とした。これは,看護を業とする以上,病原微生物が問題となるのは当然であるが,その前提となる微生物学そのものをしっかりと理解してもらいたいからであり,また最近は必ずしも病気をおこさない微生物も,医学的に問題となる場合が比較的多くなっているからでもある。本書を通じて微生物学の基礎を把握し,実際の看護を行ううえに少しでも役だてていただければ幸いである。
内容その他に不備な点が少なくないと思うが,これらについては今後読者の方々のご意見に基づいて改訂していきたいと考えている。
1968年2月
武谷健二
小池聖淳
第11版の序
みなさんは,「バイ菌,カビ,ウイルス」などと聞いて,どのようなイメージを抱くでしょうか。多くの方々が,不潔,怖い,臭い,不気味など,嫌なイメージをもつことでしょう。そして,こんなものがいなかったなら,病気もなくて,安全で,住みよい世界になるのに,と想像するに違いありません。確かに,微生物のなかには食物の腐敗や,健康と生命をおびやかす感染症を引きおこすものがいます。このような感染症をなくすことは人類の悲願ではあります。
しかし,微生物が地球上のこの世界からいなくなったらどうなるかを,想像できますか。この世界はたちまち動物の死骸や排泄物,枯れた植物などで埋めつくされ,青々とした台地も,幽玄な山々や渓谷も,清らかな川も海もなくなってしまうことでしょう。なぜなら,微生物は有機物を分解して地球の環境を美しく保ってくれているからです。これは,地球規模の元素循環を微生物が担ってくれているからであり,この働きは「生物浄化」ともよばれています。みなさんが生物学で学んだ「食物連鎖」も,バクテリアとアメーバの関係から出発するということに気づいていましたか。そして,生物浄化は食物連鎖に先立つ,もっと大切な営みだということを。
私たちがいただいているパンやチーズ,酒やビールなどの発酵食品を造ってくれているのも細菌やカビの仲間です。産業に利用されているこれらの微生物は「有用微生物」とよばれ,私たちの食生活を支えてくれる,なくてはならないパートナーなのです。
しかし,人間と微生物との不幸な関係もあります。微生物には人間や動物,植物に病気をおこすものがたくさんいるからです。おそらく人類誕生と同時に,結核,コレラ,ジフテリア,マラリア,ポリオなどの感染症が,人類をおおいに苦しめてきました。目に見えない小さな生き物がなぜ人間を病気にし,さらに死に追いやるのでしょうか。この教科書ではおもに,ヒトに病気をおこす微生物(病原微生物)について学びます。
微生物による近年の感染症の特徴は,新興・再興感染症,国境なき感染症,動物由来(人獣共通)感染症という3つのキーワードで要約することができます。事実,いま世界的な大流行が危惧されている新型インフルエンザは,まさしくこの3つの特徴を備えています。現在,ヒトに感染する病原微生物は,細菌が538種,真菌が317種,ウイルスが208種,そして原虫が208種を数えます。これらの微生物が引きおこす感染症には,ヒトからヒトへうつる(伝染する),原因を増幅する(病原微生物を拡大再生産する)という,他の病気にない特徴があります。もし医療従事者が微生物学的な知識をもたず,その意味を軽視するなら,患者ばかりか,自分自身を含め多くの人たちに災いをもたらします。
「すべて目に見えないものは,理性の目で見なければならない」(ヒポクラテス)という言葉があります。この教科書は,目に見えない病原微生物を理性の目,学問の力で「見るべき対象」として扱っています。今回の改訂では新たな「徴候と症状」という項で,病原体・感染・生体防御・症状を関連づけて解説し,微生物と人間との関係がより立体的に理解できるように努めました。また,鳥インフルエンザなどをコラムで新たに書きおこし,微生物の実像をズームアップして描きました。
この教科書が,みなさん方と微生物との新たな出会いの場となり,みなさん方が微生物学という学問の理解を深めて,その知識を医療の現場で生かしていってくれることを願っています。
2008年12月
著者ら
微生物学領域における最近の進歩は著しいものがあり,多くの教科書が次々と改訂を余儀なくされているのが現状である。著者らは先に「高看双書」の1つとして『病原微生物学』を執筆したが,新しいカリキュラムの実施に伴って,今回,現時点における進歩をできるだけ取り入れ,しかもより平易にと心がけながら全面的に書き改めたのが,本書である。
今回は書名を『病原微生物学』としないで,『微生物学』とした。これは,看護を業とする以上,病原微生物が問題となるのは当然であるが,その前提となる微生物学そのものをしっかりと理解してもらいたいからであり,また最近は必ずしも病気をおこさない微生物も,医学的に問題となる場合が比較的多くなっているからでもある。本書を通じて微生物学の基礎を把握し,実際の看護を行ううえに少しでも役だてていただければ幸いである。
内容その他に不備な点が少なくないと思うが,これらについては今後読者の方々のご意見に基づいて改訂していきたいと考えている。
1968年2月
武谷健二
小池聖淳
第11版の序
みなさんは,「バイ菌,カビ,ウイルス」などと聞いて,どのようなイメージを抱くでしょうか。多くの方々が,不潔,怖い,臭い,不気味など,嫌なイメージをもつことでしょう。そして,こんなものがいなかったなら,病気もなくて,安全で,住みよい世界になるのに,と想像するに違いありません。確かに,微生物のなかには食物の腐敗や,健康と生命をおびやかす感染症を引きおこすものがいます。このような感染症をなくすことは人類の悲願ではあります。
しかし,微生物が地球上のこの世界からいなくなったらどうなるかを,想像できますか。この世界はたちまち動物の死骸や排泄物,枯れた植物などで埋めつくされ,青々とした台地も,幽玄な山々や渓谷も,清らかな川も海もなくなってしまうことでしょう。なぜなら,微生物は有機物を分解して地球の環境を美しく保ってくれているからです。これは,地球規模の元素循環を微生物が担ってくれているからであり,この働きは「生物浄化」ともよばれています。みなさんが生物学で学んだ「食物連鎖」も,バクテリアとアメーバの関係から出発するということに気づいていましたか。そして,生物浄化は食物連鎖に先立つ,もっと大切な営みだということを。
私たちがいただいているパンやチーズ,酒やビールなどの発酵食品を造ってくれているのも細菌やカビの仲間です。産業に利用されているこれらの微生物は「有用微生物」とよばれ,私たちの食生活を支えてくれる,なくてはならないパートナーなのです。
しかし,人間と微生物との不幸な関係もあります。微生物には人間や動物,植物に病気をおこすものがたくさんいるからです。おそらく人類誕生と同時に,結核,コレラ,ジフテリア,マラリア,ポリオなどの感染症が,人類をおおいに苦しめてきました。目に見えない小さな生き物がなぜ人間を病気にし,さらに死に追いやるのでしょうか。この教科書ではおもに,ヒトに病気をおこす微生物(病原微生物)について学びます。
微生物による近年の感染症の特徴は,新興・再興感染症,国境なき感染症,動物由来(人獣共通)感染症という3つのキーワードで要約することができます。事実,いま世界的な大流行が危惧されている新型インフルエンザは,まさしくこの3つの特徴を備えています。現在,ヒトに感染する病原微生物は,細菌が538種,真菌が317種,ウイルスが208種,そして原虫が208種を数えます。これらの微生物が引きおこす感染症には,ヒトからヒトへうつる(伝染する),原因を増幅する(病原微生物を拡大再生産する)という,他の病気にない特徴があります。もし医療従事者が微生物学的な知識をもたず,その意味を軽視するなら,患者ばかりか,自分自身を含め多くの人たちに災いをもたらします。
「すべて目に見えないものは,理性の目で見なければならない」(ヒポクラテス)という言葉があります。この教科書は,目に見えない病原微生物を理性の目,学問の力で「見るべき対象」として扱っています。今回の改訂では新たな「徴候と症状」という項で,病原体・感染・生体防御・症状を関連づけて解説し,微生物と人間との関係がより立体的に理解できるように努めました。また,鳥インフルエンザなどをコラムで新たに書きおこし,微生物の実像をズームアップして描きました。
この教科書が,みなさん方と微生物との新たな出会いの場となり,みなさん方が微生物学という学問の理解を深めて,その知識を医療の現場で生かしていってくれることを願っています。
2008年12月
著者ら
目次
開く
第1部 微生物学の基礎
第1章 微生物と微生物学 (吉田真一)
A 微生物の性質
B 微生物と人間
C 微生物学の対象と目的
D 微生物学の歩み
第2章 細菌の性質 (吉田真一)
A 細菌の形態と特徴
B 培養環境と栄養
C 細菌の遺伝
D 細菌の分類
E 常在細菌叢
第3章 真菌の性質 (吉田真一)
A 真菌の形態と特徴
B 真菌の増殖
C 真菌の分類と命名法
D 栄養と培養
第4章 原虫の性質 (南嶋洋一)
A 原虫の特徴と基本構造
B 病原原虫の種類
C 原虫の感染
第5章 ウイルスの性質 (南嶋洋一)
A ウイルスの特徴
B ウイルスの構造と各部分の機能
C ウイルスの増殖
D ウイルスの分類
付 バクテリオファージ
第2部 感染とその防御
第6章 感染と感染症 (吉田真一・南嶋洋一)
A 微生物感染の機構
B 感染の成立から発症・治癒まで
C 細菌感染の機構
D 真菌感染の機構
E ウイルス感染の機構
第7章 感染に対する生体防御機構 (吉田真一)
A 自然免疫のしくみ
B 獲得免疫のしくみ
C 粘膜免疫のしくみ
D 徴候と症状
第8章 感染源・感染経路からみた感染症 (吉田真一)
A 経口感染―食物と水
B 経気道感染―空気と飛沫
C 接触感染
D 経皮感染―昆虫や注射器から
E 母児感染―母から児へ
第9章 感染症の予防 (吉田真一)
A バイオハザードとバイオセーフティ
B 滅菌と消毒
C ワクチンと予防接種
第10章 感染症の検査と診断 (吉田真一・南嶋洋一)
A 病原体を検出する方法
B 生体の反応から診断する方法
第11章 感染症の治療 (吉田真一・南嶋洋一)
A 化学療法の基礎
B 各種の化学療法薬
C その他の治療法
第12章 感染症の現状と対策 (吉田真一)
A 感染症の変遷
B 感染症の現状と問題点
C 感染症への対策
第3部 おもな病原微生物
第13章 病原細菌と細菌感染症 (吉田真一)
A グラム陽性球菌
B グラム陰性球菌
C グラム陰性好気性杆菌
D グラム陰性通生菌
E カンピロバクター属とヘリコバクター属
F グラム陽性杆菌
G 抗酸菌と放線菌類
H 嫌気性菌
I スピロヘータ
J マイコプラズマ
K リケッチア目
L クラミジア科
第14章 病原真菌と真菌感染症 (吉田真一)
A 深在性真菌症をおこす真菌
B 深部皮膚真菌症をおこす真菌
C 表在性真菌症をおこす真菌
第15章 病原原虫と原虫感染症 (南嶋洋一)
A 根足虫類
B 鞭毛虫類
C 胞子虫類
第16章 おもなウイルスとウイルス感染症 (南嶋洋一)
A DNAウイルス
B RNAウイルス
参考文献
索引
第1章 微生物と微生物学 (吉田真一)
A 微生物の性質
B 微生物と人間
C 微生物学の対象と目的
D 微生物学の歩み
第2章 細菌の性質 (吉田真一)
A 細菌の形態と特徴
B 培養環境と栄養
C 細菌の遺伝
D 細菌の分類
E 常在細菌叢
第3章 真菌の性質 (吉田真一)
A 真菌の形態と特徴
B 真菌の増殖
C 真菌の分類と命名法
D 栄養と培養
第4章 原虫の性質 (南嶋洋一)
A 原虫の特徴と基本構造
B 病原原虫の種類
C 原虫の感染
第5章 ウイルスの性質 (南嶋洋一)
A ウイルスの特徴
B ウイルスの構造と各部分の機能
C ウイルスの増殖
D ウイルスの分類
付 バクテリオファージ
第2部 感染とその防御
第6章 感染と感染症 (吉田真一・南嶋洋一)
A 微生物感染の機構
B 感染の成立から発症・治癒まで
C 細菌感染の機構
D 真菌感染の機構
E ウイルス感染の機構
第7章 感染に対する生体防御機構 (吉田真一)
A 自然免疫のしくみ
B 獲得免疫のしくみ
C 粘膜免疫のしくみ
D 徴候と症状
第8章 感染源・感染経路からみた感染症 (吉田真一)
A 経口感染―食物と水
B 経気道感染―空気と飛沫
C 接触感染
D 経皮感染―昆虫や注射器から
E 母児感染―母から児へ
第9章 感染症の予防 (吉田真一)
A バイオハザードとバイオセーフティ
B 滅菌と消毒
C ワクチンと予防接種
第10章 感染症の検査と診断 (吉田真一・南嶋洋一)
A 病原体を検出する方法
B 生体の反応から診断する方法
第11章 感染症の治療 (吉田真一・南嶋洋一)
A 化学療法の基礎
B 各種の化学療法薬
C その他の治療法
第12章 感染症の現状と対策 (吉田真一)
A 感染症の変遷
B 感染症の現状と問題点
C 感染症への対策
第3部 おもな病原微生物
第13章 病原細菌と細菌感染症 (吉田真一)
A グラム陽性球菌
B グラム陰性球菌
C グラム陰性好気性杆菌
D グラム陰性通生菌
E カンピロバクター属とヘリコバクター属
F グラム陽性杆菌
G 抗酸菌と放線菌類
H 嫌気性菌
I スピロヘータ
J マイコプラズマ
K リケッチア目
L クラミジア科
第14章 病原真菌と真菌感染症 (吉田真一)
A 深在性真菌症をおこす真菌
B 深部皮膚真菌症をおこす真菌
C 表在性真菌症をおこす真菌
第15章 病原原虫と原虫感染症 (南嶋洋一)
A 根足虫類
B 鞭毛虫類
C 胞子虫類
第16章 おもなウイルスとウイルス感染症 (南嶋洋一)
A DNAウイルス
B RNAウイルス
参考文献
索引
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