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もっと知りたい白血病治療 第2版
患者・家族・ケアにかかわる人のために

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白血病と闘っている患者さんと患者を支援する家族が、白血病を正しく理解するために解説した書籍。医師や看護師をはじめとする医療チームと相談しながら、患者自身が治療法を選択するときに必要な知識や情報をできるだけやさしい言葉と、多くのイラストを用いて、わかりやすく解説した。白血病という病気の原因、治療法の詳細、治療成績、再発したときの対応まで理解できる。医療チームにとっても必読の書。
宮崎 仁
発行 2019年11月判型:A5頁:218
ISBN 978-4-260-04073-0
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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第2版によせて

 本書は「白血病と診断された患者さんとそのご家族,さらに病院や社会のなかで白血病患者さんのケアにかかわっている方々を対象に,主として成人の白血病治療の現況について,できるだけやさしい言葉を用いて解説したテキスト」という初版のコンセプトを受け継ぎつつ,その後の白血病診療の大幅な進歩を取り入れ,初版の内容を全面的に改訂したものです。
 初版は幸い増刷を重ね,類書には珍しいロングセラー本となりました。その結果,本書の読者である白血病患者さんとご家族から,著者であるわたしに対して,病気に関する質問や相談が数多く寄せられました。
 闘病中の患者さんと,その患者さんを支えるご家族が語られるご苦労や心配事を何度も拝聴していると,「主治医による病気や治療の説明がよく理解できない」という悩みが,相変わらずとても多いということが実感できます。
 もちろん,わざわざわかりにくく説明をしようと思っている主治医はいません。むしろ,できるだけわかりやすく説明しようと,主治医なりに苦心しているはずです。しかし,残念ながら,現状では相手にうまく伝わっていないことが多いと言わざるを得ません。患者さんは「治るのかどうか」について聞きたいのに,主治医は白血病細胞の分子生物学的異常について懸命に説明しているというすれちがいがあるのです。ここに「白血病についてわかりやすく説明することの難しさ」という壁が,治療を提供する側と治療を受ける側との間に立ちはだかることになります。
このような壁ができてしまうには,いろいろな理由があります。白血病の診断や治療は,日々刻々と進歩し変貌しています。最近では,白血病の原因となる遺伝子(ゲノム)の異常も多数見つかり,それらが診断や治療に反映される時代になりました。複雑で細かい病気の成り立ちや,新たに登場した先端的な治療法について,医学の知識を持たない患者さんやご家族に平易に説明することは,これまで以上にハードルが高くなっています。また,病棟や外来で働く血液内科医たちは,多くの業務に忙殺されており,時間をたっぷりかけて説明する余裕がなくなっているという問題も無視できません。
 上記のような事情を踏まえて,「もっと知りたい」と願う患者さん側と,「もっと理解してほしい」と願う治療者側とが,お互いに深くわかり合えるための道具となるように,初版の原稿を見直し改訂作業を行いました。「白血病についてわかりやすく説明することの難しさ」の壁を打ち砕くツールとして,ぜひ本書を臨床の現場で活用してください。また,患者さんやご家族が,インターネットから得られる膨大な情報の森の中で,道に迷わないためのナビゲーションとしてもお使いいただけます。
 初版を上梓した直後に,わたしは諸般の事情により白血病治療の最前線から離れ,現在は「街場の血液内科医」として診療所で仕事をしています。そのため,日々急速に進化していく白血病診療のすべてを捕捉することが難しくなりました。そこで第2版では,藤田医科大学血液内科の同門である稲熊容子先生に査読,助言をいただきました。この場を借りて深謝いたします。
 初版と同様にこの第2版も,わたしが主治医として治療にかかわった患者さん,そして全国から病気の相談のため当院へ来訪された患者さんやご家族との対話のなかから出来上がったものです。みなさま本当にありがとうございました。
 また,遅々として進まない改訂作業に,辛抱強く伴走し激励してくださいました医学書院編集部の大塚敦司さん,いつもわたしの本に素晴らしいイラストを描いてくださるたむらかずみさんに心よりお礼申し上げます。

 2019年9月
 宮崎 仁

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第1章 正常な血液の働き
 血液のなかみ(成分)について
 赤血球の働き
 白血球の働き
 血小板の働き

第2章 血液をつくる骨髄の仕組み
 骨髄という臓器はどこにあるか
 骨髄での造血の仕組み
 骨髄が枯れつきない理由
 骨髄を検査する方法

第3章 白血病とはどんな病気か
 白血病は血液細胞のがんである
 白血病にはどんなタイプがあるか
 なぜ白血病にかかるのか(白血病の原因)
 白血病を治療しないとどうなるか

第4章 白血病はどのように治すか
 白血病治療の選択肢
 抗がん剤による治療について
 白血病化学療法の進め方
 造血幹細胞移植で白血病を治す

第5章 抗がん剤による白血病治療の実際
 白血病に対する最初の攻撃~寛解導入療法~
 寛解導入療法の実際
 再発を防ぐための治療~地固め療法~
 維持療法
 抗がん剤の髄腔内投与(髄注)

第6章 抗がん剤の副作用とその対策
 抗がん剤の副作用とは
 消化器症状とその対策
 脱毛と皮膚・爪の障害
 血球減少とその対策
 口内炎とその対策
 その他の副作用

第7章 慢性骨髄性白血病(1):病気の性質を知る
 慢性骨髄性白血病とはどんな病気か
 慢性骨髄性白血病の原因
 慢性期の症状
 移行期・急性転化の症状

第8章 慢性骨髄性白血病(2):最良の治療法の選択
 チロシンキナーゼ阻害薬が有効な理由
 チロシンキナーゼ阻害薬による治療の問題点
 チロシンキナーゼ阻害薬による治療の副作用
 チロシンキナーゼ阻害薬による治療の効果判定
 チロシンキナーゼ阻害薬による治療の実際
 チロシンキナーゼ阻害薬による治療成績
 進行期(移行期/急性転化)に移行した慢性骨髄性白血病の治療
 チロシンキナーゼ阻害薬以外の治療法

第9章 造血幹細胞移植の基礎知識
 造血幹細胞移植という治療法
 生着,生着不全,GVHD,GVL効果
 提供者との相性はHLAで決まる
 造血幹細胞移植の種類
 移植する造血幹細胞のソースによる分類
 造血幹細胞の提供者による分類
 HLAの適合度による分類
 移植前処置法の強さによる分類

第10章 造血幹細胞移植の実際(1):ドナー検索から移植まで
 ドナーの検索
 移植の前に患者さんが準備すること
 移植前の不妊対策について
 骨髄採取手術の実際とリスク
 末梢血幹細胞採取の実際とリスク
 移植前処置
 移植病室(防護環境)と感染予防について
 造血幹細胞の輸注

第11章 造血幹細胞移植の実際(2):移植後の生活と問題点
 移植後の約1か月間
 移植後約1か月後から100日目前後まで
 移植後100日目以降の問題(長期的な合併症/後遺症)
 QOL(クオリティー・オブ・ライフ)とサバイバーシップ支援

第12章 特殊な白血病とその治療(1)
 急性前骨髄球性白血病
 フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病
 成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)

第13章 特殊な白血病とその治療(2)
 慢性リンパ性白血病(CLL)
 骨髄異形成症候群から移行した急性骨髄性白血病
 治療関連白血病

第14章 白血病が再発したら
 再発はなぜ起こるのか
 再発を監視する方法
 再発時の病状
 再発時の化学療法の選択
 再発時に行う救援療法の実際
 再発白血病に対する新規薬剤による治療
 第2寛解となったら
 造血幹細胞移植後の再発
 QOLを重視した再発後の治療

第15章 白血病は完治するのか:治療成績とその評価について
 白血病が治るということ
 治療成績を評価する指標
 治療成績を評価することのむずかしさ
 治りやすい白血病と治りにくい白血病:予後を決める因子
 白血病は化学療法でどこまで治るか
 白血病は造血幹細胞移植でどこまで治るか
 白血病の完治をめざして:闇ではなく,光に目を向けよう!

参考文献
索引

コラム
 自分の採血データを把握する習慣をつけよう
 ちょっと痛い「マルク」のはなし
 白血病の分類について知っておきたいこと
 「悪党は皆殺し」という考え方
 プロトコールってなに?
 なぜこんなにたくさんのくすりをのむの?
 慢性骨髄性白血病は急性白血病が慢性化した病気ではありません!
 フィラデルフィア染色体の検査法
 移植の成功のカギを握るHLAのはなし
 インターネットによるドナー検索サービス
 移植後長期フォロー外来と人生の旅
 ヒ素による急性前骨髄球性白血病の治療
 高齢者白血病の問題点
 がんゲノム医療と今後の白血病治療
 白血病治療におけるEBMとJALSGの役割

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患者への説明や初学者の学習に大いに役立つ書
書評者: 大橋 晃太 (トータス往診クリニック院長/血液在宅ねっと世話人)
 『もっと知りたい白血病治療―患者・家族・ケアにかかわる人のために』の初版が出版された2002年,インターネット時代の到来とともにさまざまな情報に患者がアクセスできるようになったことは好ましいことでしたが,一方で氾濫する情報の中から正しい情報を選択することが患者側に求められるようになり,多くの患者や家族がそれに振り回される結果になりました。かくいう私も当時,白血病患者として同じような境遇に置かれ,情報があるが故の“心細さ”を感じていたのを思い出します。そんな中,初版を書店で偶然目にしたとき,他の書籍との明らかな違いを感じました。それは,1人の医師が,首尾一貫して,自分に対して語りかけるように書かれた本だったからです。医師として血液診療にかかわるようになった後も,患者さんへの説明に際して大いに参考とさせていただいてきましたが,第2版が出版されるとのことで,大変楽しみにしていました。治療薬や移植関連の記載も最新のものにリニューアルされて,より幅広い方々に役立つ内容になっています。

 著者の宮崎仁先生は,聖路加国際病院レジデントとして研鑽を積まれた後,藤田保健衛生大血液・化学療法科(現・藤田医大)で長年,血液疾患の治療に当たられてきました。現在はご自身の医院で地域医療に貢献されているのと同時に,プライマリケアの領域でもリーダーの1人として,“街場の血液学”を広めるべく,幅広くご活躍されています。先生が移植を手がけた患者さんが,数十年を経ても遠方から外来に通い続けられているそうです。

 多くの白血病の患者さんにとって大切な情報である,病態についての説明や治療内容,考えられる合併症,治療に要する期間や予後などはほとんど提供されています。ただ,その中で,どう道を定めていくか,意思決定の部分をどうサポートしていくかが近年でも課題となっています。この本の中では,情報提供だけにとどまらず,どうしたらいいかの部分に積極的に触れられているのが印象的です。意思決定のための手がかりが数多く読み取れるのではないでしょうか。実際,血液学の基本的な説明はもちろんですが,むしろ具体的な治療法についてや,特に移植に関連した説明に多くのページが割かれており,その点も特徴的です。

 最後の2章では,再発についてと,治療成績の見方について患者さん向けに書かれていますが,どちらも触れられることの少ない内容であり,成書でしっかり記載されることに大きな意義があると感じます。厳しい内容までしっかり触れているにもかかわらず,わかりやすい図やかわいらしいイラストなど,先生のお人柄のにじみ出ている文章も相まって,堅苦しくならないで読み進められるような工夫が随所にみられます。

 また,本書の内容としては,まだ血液学を学び始めたばかりの看護学生・医学生や,リハビリテーションなどコメディカルの方々にもぜひ目を通していただきたい内容です。治療のことばかりではなく,妊孕性や移植後の長期フォローアップの大切さにもしっかり触れられており,また何か所か挿入された「コラム」も読みものとしてもとても面白くて興味をそそる内容です。この本を通じて,血液領域の診療に興味を持つ若手が増えることにも大いに期待します。

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