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イラストレイテッド 腹腔鏡下胃切除術

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腹腔鏡下胃切除術の器具・基本手技から、術式の選択とその実践的テクニック、リンパ節郭清手技、再建法、偶発症・合併症の予防・対策まで、手順・コツ・pitfallをイラストで明快に解説する画期的アトラス。さながらコマ割り的な手術野の展開は、ビジュアルに、的確にそのポイントを理解させてくれる。消化器外科医必携の書。
編集 「がんにおける体腔鏡手術の適応拡大に関する研究」班/腹腔鏡下胃切除術研究会
発行 2005年08月判型:A4頁:120
ISBN 978-4-260-00098-7
定価 6,600円 (本体6,000円+税)

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  • 目次
  • 書評

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第1章 総説
 1-1 腹腔鏡下胃切除術の現状
 1-2 腹腔鏡下胃切除術のトレーニング・システムと教育
 1-3 腹腔鏡下胃切除術の術式選択
 1-4 手術体位とトロッカー挿入
 1-5 必要な腹腔鏡下手術器具とその使用法
  1-5-a 軟部組織切離法
  1-5-b 血管処理法
  1-5-c 吻合法
第2章 腹腔鏡下胃局所切除の手技
 2-1 腹腔鏡下楔状切除
 2-2 腹腔鏡下胃内粘膜切除術
 2-3 センチネルリンパ節検索
第3章 腹腔鏡下胃切除術における腹腔鏡下リンパ節郭清手技
 3-1 D1+αリンパ節郭清(No. 6, 5)
 3-2 D1+αリンパ節郭清(No. 7, 1, 3)
 3-3 D1+βリンパ節郭清(No. 8a, 9)
 3-4 D2リンパ節郭清(No. 14v, 12a)
 3-5 D2リンパ節郭清(No. 11p)
第4章 腹腔鏡下胃切除における再建方法
 4-1 腹腔鏡補助下手術における再建
 4-2 腹腔内吻合
第5章 腹腔鏡下胃切除術の術中偶発症と合併症:予防と対策
 5-1 術中偶発症と合併症の現状
 5-2 出血
 5-3 吻合部のトラブル(狭窄,縫合不全)
 5-4 膵損傷
 5-5 脾動脈損傷・Roux-en-Y吻合後の内ヘルニア
索引

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“安全な手術”を重視した腹腔鏡下胃切除の手術書
書評者: 笹子 三津留 (国立がんセンター中央病院部長・外科)
 多数の専門家による腹腔鏡を用いた胃手術の網羅的な技術書が刊行された。厚生労働省がん研究助成金「がんにおける体腔鏡手術の適応拡大に関する研究班」と腹腔鏡下胃切除術研究会の共同編著で,多数の専門家が互いの経験,英知を結集し,すり合わせて,学ぶ人たちに何を伝えるべきかを十分検討して作られた力作である。

 胃の楔状切除からリンパ節郭清を伴う胃全摘,さらには再建法までを広くカバーし,共通の基本手技から個々の術式特有のコツに至るまで,詳細に書かれている。各章は3名の施設の異なる外科医が共著として作成している。実際,このような技術書を記す場合,1つの手技でも複数の方法論や用いる道具の選択の可能性があり,1つに統一することは難しい。本書では,推奨できる方法や道具が複数存在する場合には両者が記載され,各々のコツや特徴,特有の注意事項が記載されている。複数の共著者が納得して,まとめられたものである。したがって,内容に間違いがなく,独りよがりや言い過ぎがないかなどは十分チェックされ,みんなが共通に認識しているコツや注意事項が記されていることになる。読者はいずれの方法,いずれの道具を使用するにしても,本書に沿って行えばよいことになる。

 著者の方々には,腹腔鏡手術の専門家として他の鏡視下手術を多数手がけた後に胃切除の領域に入ってきた方と,元々胃癌手術の専門家として豊富な経験を有し,その後に腹腔鏡下胃切除に取り組んだ方が混在している。ことに胃癌に対する腹腔鏡下胃切除の世界は,当初きわめてマニアックな世界という認識で,少人数のエキスパートがお互いを刺激しながら,切磋琢磨した世界である。互いに幾度となく手術を見せ合い,手技を盗み合った仲である。今,その手技はほぼ確立された域に達しており,本書はこういう人たちのグループだからこそ,なしえた著作と言える。

 全編を通して1人のイラストレーターが図を描いているようで,これほど多くの図が含まれるにもかかわらず大変見やすい。各章には的確にまとめられた「要点」と大切な注意事項を簡潔に指摘した「one point」が付いていて,読者に優しい。本書はともかく安全な手術の実施に最大のポイントを置いて記されており,術中偶発症や術後合併症の予防と対策も再度まとめて記された章を用意している。本書を見れば,誰でも腹腔鏡下の胃切除を安全に行える……,と言うわけには行かないが,経験を積んでいくうえで,きわめて有用な助けとなるであろう。

客観的な視点から基本手技をイラストで解説
書評者: 比企 能樹 (北里大名誉教授・外科学)
 歴史的には1879年のJ. Pean,1880年L. Rydigier,そして1881年のTh. Billrothが開腹による胃切除術の創めといわれる。それから1世紀を隔てた1991年,本書編者である北野正剛教授によって胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術が行われたことは,瞠目に値する。

 腹部手術において腹腔鏡下手術が,虫垂切除術に,そして胆嚢摘出術に行われたことは,外科手術の教科書を塗り変え,外科医にとっての大きな革命であった。このことは,すでに歴史的な事実である。

 しかるに今般腹腔鏡下胃切除術に関するビジュアル・テキストの発刊が外国からでなく,日本から出版されたことに私は国際的にも大きな意味を持つものであると考え,感無量である。

 北野教授は研究会の代表世話人として卓越した計画のもとに,胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術を行うための基本について研究会を発足させ,さらに厚生労働省がん研究班を設立し,ここで十分に活発な討議を重ね,その実績を積み上げた。この経緯において軸となった,北野正剛,谷川允彦,杉原健一,宇山一朗という錚々たる4名のエキスパートが,各章を担当し編集している。

 本書の執筆には,他の手術書に見られない工夫が凝らされている。つまり,異なる施設の熟練した術者の共同執筆とした点であるが,「ともすれば術者の思い込みや隔たりを排除し,より客観的なものとなるべく,そしてコンセンサスの得られた基本手技を記述したかった」と,編集責任者が序において述べている構想が伝わってくる。つまるところ,日進月歩の医術をより正当なものとして世に伝えていこうとする努力が,どの章からも受け取れる近来稀な書物になったといえる。

 本書においてさらに大きな特徴は,全部の図版をイラストのみにしたことである。カラーの実物写真は確かにきれいではあるが,これから新しく本術式を研修し学ぼうとする人々にとっては,本書の説明がイラスト形式であることによって,術式の細部にわたる術者のphilosophyがむしろ直接伝わり,感じ取られることが画期的であり,貴重なことである。

 腹腔鏡下手術で,特に,何をしたいのか? なぜやらなければならないのか? どのようにするのか? どうしてはいけないのか?等々,手術に必要な理念とその術式が生まれるまでの基礎的な根拠,つまりは局所解剖をはじめ,がんの進展形式などを十分に理解し,研鑽した経緯の上にでき上がったものが本書である。

 この本の作成目的は,腹腔鏡下胃切除術が,より正確な適応のもとに,安全・確実に多くの医師が施行できる手術となることであるが,第一線の外科医が1人でも多く本書をもとにして積極的に勉強し,究極として今後のさらなる医術の発展のために寄与していただきたいと切に望むものである。

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