イラストレイテッド肺癌手術 [DVD付] 第2版
手技の基本とアドバンスト・テクニック
オリジナル・イラストとDVDで坪田の肺癌手術のすべてをお見せします。
もっと見る
深い術野の肺癌手術に威力を発揮するハサミ・鉗子の持ち方(クーパーの逆さ持ち)、糸結びのコツ、術野の良好な保持のし方など、著者ならではのユニークな基本手技から、気管、気管支形成術、区域切除、VATSまで、肺癌手術のテクニックを、イラストと動画で余すところなく展開。独自の視点で書き下ろされた、画期的手術書の改訂版。さらに詳しく、繊細な手技のすべてが見られる210分のDVD(ビデオ)付。
著 | 坪田 紀明 |
---|---|
発行 | 2007年10月判型:A4頁:216 |
ISBN | 978-4-260-00461-9 |
定価 | 19,800円 (本体18,000円+税) |
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
第2版に寄せて
坪田紀明
数年前に本書の出版を思い立った時,このような本が果たして受け入れられるのであろうかと大いに心配であったが,医学書院の心強い支援を得て上梓することができた。そしてこの度,再版のお話をいただき,感激ひとしおの中,直ちにその原稿準備に入った。
初版以来,4年が経って肺癌治療を取り巻く状況変化は一層激しくなった。診断と治療における進歩と多様化は外科療法における早期例の増加と進行例の相対的な減少となって現れ,治療における手術の比重低下となった。これはひとり肺癌に限らず,他臓器においても見られる現象であるが,このような変化の中で専門医たるもの,如何に身を処すべきであろうか。その対応は如何にあるべきだろうか。増え続ける早期癌と減らない進行癌を相手に手術の質が問われる今,さまざまな病態に応じた適正な術式の選択とこれを可能にする手術手技の習得はこれからますます重要となる。
今回の改訂における最大の特徴は動画の追加である。筆者が今までに学会で発表したビデオをDVD化して本書に付けた。一部に画質の悪いフィルムが混じっているが,多くの映像は鮮明であり,その取捨を読者に委ねたい。その他,若干の症例追加と図の差し替えを行った。本書が呼吸器外科専門医を目指す若い医師に役に立てばこんなにうれしいことはない。
2007年 8月
坪田紀明
数年前に本書の出版を思い立った時,このような本が果たして受け入れられるのであろうかと大いに心配であったが,医学書院の心強い支援を得て上梓することができた。そしてこの度,再版のお話をいただき,感激ひとしおの中,直ちにその原稿準備に入った。
初版以来,4年が経って肺癌治療を取り巻く状況変化は一層激しくなった。診断と治療における進歩と多様化は外科療法における早期例の増加と進行例の相対的な減少となって現れ,治療における手術の比重低下となった。これはひとり肺癌に限らず,他臓器においても見られる現象であるが,このような変化の中で専門医たるもの,如何に身を処すべきであろうか。その対応は如何にあるべきだろうか。増え続ける早期癌と減らない進行癌を相手に手術の質が問われる今,さまざまな病態に応じた適正な術式の選択とこれを可能にする手術手技の習得はこれからますます重要となる。
今回の改訂における最大の特徴は動画の追加である。筆者が今までに学会で発表したビデオをDVD化して本書に付けた。一部に画質の悪いフィルムが混じっているが,多くの映像は鮮明であり,その取捨を読者に委ねたい。その他,若干の症例追加と図の差し替えを行った。本書が呼吸器外科専門医を目指す若い医師に役に立てばこんなにうれしいことはない。
2007年 8月
目次
開く
Foreword
第2版に寄せて
まえがき
総論
1. 器具
2. 結紮
3. 切離
4. 安全な肺実質貫通法
5. 剥離の極意
6. 電気メスの使い方
7. 開閉胸法
8. ドレーン管理
9. 気管内吸引
10. 肺切除総論
各論
11. 右側の肺葉切除
12. 左側の肺葉切除
13. 肺摘除
14. 非定型肺切除
15. 気管,気管支形成術
16. 区域切除
17. VATS : video assisted thoracic surgery
18. 転移性肺腫瘍
参考文献
あとがき
索引
第2版に寄せて
まえがき
総論
1. 器具
2. 結紮
3. 切離
4. 安全な肺実質貫通法
5. 剥離の極意
6. 電気メスの使い方
7. 開閉胸法
8. ドレーン管理
9. 気管内吸引
10. 肺切除総論
各論
11. 右側の肺葉切除
12. 左側の肺葉切除
13. 肺摘除
14. 非定型肺切除
15. 気管,気管支形成術
16. 区域切除
17. VATS : video assisted thoracic surgery
18. 転移性肺腫瘍
参考文献
あとがき
索引
書評
開く
坪田氏独自の視点と臨場感あふれる解説が生きた書
書評者: 伊達 洋至 (京都大学大学院医学研究科器官外科学講座呼吸器外科教授)
DVDを伴って,待望の第2版が出版された。2003年に出版された初版は,坪田先生オリジナルのイラストを使ったわかりやすい解説から,多くの呼吸器外科医に親しまれてきた。そのわずか4年後の2007年に,進化版が世に出た。本書を手にとって読んでみると,坪田先生がこれまでの呼吸器外科医としてのキャリアの集大成として本書を完成させた意気込みが伝わってくる。
本書の特徴は,まずアートともいえる独自のイラストである。坪田先生が手術記録をていねいにつけられていたことが窺われるが,これほどポイントを押さえたわかりやすいイラストは見たことがない。これに術中写真,気管支鏡,各種画像,そして坪田先生独特の臨場感あふれる解説が加えられている。緊急大出血に対する心嚢内での肺動脈確保法などは,読むだけで手に汗を握る。
次に,各論にみられる多彩な手術手技の解説である。肺葉切除といった基本的手術から,坪田先生が生み出した拡大区域切除術や,特殊な気管支形成術まで網羅されている。特に拡大区域切除術に関しては,初心者にはわかりにくい亜区域支レベルの術野での解剖が見事に描かれている。読者がまれな手術に臨む場合には,本書を前日に読んでおくと術野のイメージを作ることができることだろう。
さらに,200分を超える46本もの手術手技をまとめたDVDが第2版では付録された。坪田先生が数々の学会で発表してこられたオリジナルビデオであり,一本一本がていねいに作られており,画質も見事である。手術室の音がそのまま聞こえてくる臨場感に加え,随所に坪田先生ご自身のナレーションで解説が加えられている。本書と見比べながら勉強するのに非常によい。
坪田先生の30cmクーパーの逆さ持ちの解説もおもしろい。トロント大学のPearson先生から坪田先生が学ばれたテクニックである。小さな開胸創から深い胸腔内の手術を行うときにきわめて有効である。私もこのテクニックを使っているが,呼吸器外科医にはぜひマスターしてもらいたいテクニックである。
本書は,初めて呼吸器外科を学ぶ初心者,肺葉切除をはじめた中級者,そしてすでに呼吸器外科専門医として活躍している上級者,そのすべてに読んでいただきたい。坪田先生が,それぞれのレベルに応じた教育を大切にされてきたことが,本書に生かされているからである。
手術前に熟読することを推奨する
書評者: 淺村 尚生 (国立がんセンター中央病院呼吸器外科部長)
坪田紀明先生は,肺癌外科の世界では皆に広く知られている外科医であり,私にとっても尊敬する大先輩である。肺癌外科手術の技術面に深くこだわり,精度の高い,安全な手術を真摯に希求されてきたことは夙に有名である。道を同じくする私が先生を尊敬する所以でもある。管理職になって手術から遠ざかり,外科技術には関心がなくなってしまう人も多い中,これは大変なことであると思う。
その坪田先生の,『イラストレイテッド肺癌手術』が改訂された。学会の書籍展示販売コーナーでこの本を手にしたとき,私は正直“やられた!”と思った。私も,今まで蓄積してきた技術や工夫をまとめてみたいという希望をもっているが,この本のような詳細かつ組織だった技術の解説は到底無理であり,その気力や根気もなさそうに思ったからである。この本の中で,坪田先生は特に気管支形成術と区域切除術に力点を置いて執筆をされたのではないかと思う。兵庫県立成人病センター(現,兵庫県立がんセンター)でのキャリア後半では,特に区域切除の改良と工夫に取り組まれ,その間に蓄積されたノウハウが十分本書には記載されている。
この本の最大の特徴は,坪田先生ご自身の手による非常にわかりやすいイラストである。この本が“イラストレイテッド”と冠される所以であるが,私にはこれが大変ありがたい。外科手術の立体的な理解は,解説に1頁を割くより,1枚の優れたイラストによる方がずっと楽である。正確でわかりやすいイラストはこの本の財産である。このようなイラストが描ける背景には,局所解剖の深い理解と手術手技に対する深い洞察があることを若い読者は認識すべきであろう。国立がんセンター中央病院では,レジデントに手術記録としてイラストを描くよう指導しているが,その理由もこの辺にある。正確な手術記録のイラストは,正確な局所解剖の知識がないと描けないからである。だから勉強になるのである。しかし,レジデントたちが皆,坪田本と同じようなイラストを描くようにならないか心配である。
特に,解剖学が手術の成立上特に重要となる区域切除術では,正確で詳細なイラストは大変役に立つ。私が,第60回日本胸部外科学会学術集会(2007年10月;仙台)のランチョンセミナーで区域切除の講義を行ったとき,坪田先生のこの本を推奨させていただいたのも,それが理由である。今後は,小さな早期肺癌を手術する機会が増えてゆくであろうが,その際行われる区域切除は,これから呼吸器外科手術を学ばれる若い修練医にとっては重要性が高くなろう。手術の前には,本書を熟読されて,解剖学的構造と手技を頭に叩き込むべきである。
私は,指導医,修練医を問わず診療にあたっている呼吸器外科医は,本書により再度技術の整理,確認をすることをお勧めする。そして,難手術に臨む前には,当該箇所を熟読することで,その手術はずっと楽になると思う。本書はそのような“役に立つ”本である。
詳細な図譜とDVDで肺癌手術の手技を理解する
書評者: 白日 高歩 (第61回日本胸部外科学会会長/福岡大学外科教授)
坪田紀明先生は今日,わが国の肺外科手術を代表する第一人者である。わが国における肺外科の技術は,かつての肺結核外科を継承する形で今日に伝えられてきた。評者らの若い頃(昭和40年代)にはまだ呼吸器外科手術では肺結核が主体であり,連日各種の区域切除や胸郭形成術が国内各施設で行われていた。もちろん肺葉切除がすべての手技の基本であり,当然肺全摘も今日以上に高頻度に実施されていたという記憶がある。やがてそれらが肺癌手術にとって代られると,一時期ほとんどの手術が肺葉切除に限られるという印象であった。呼吸器外科医としての私は,これは自分たちの技術的発展を阻害し,外科医としての役割の放棄につながる現象で,決して歓迎されるものではないという危惧を持つようになった。いかに肺葉切除が肺癌手術の基本であっても,この手術ばかりで日々を過しては何の成長ももたらされないのである。
当時の拡大手術一辺倒の風潮が徐々に修正され,患者の機能損失を出来る限り小さくするための縮小手術も必要との認識が,外科領域全体にようやく浸透しつつあった。そのような雰囲気のもとに実際的な説得力を持って登場してきたのが,坪田先生の提唱する拡大区域切除術の概念であった。外科医は技術的な向上を常にめざすことが義務であり,若い人にとって難しい高度な手技への挑戦は向上への夢を与えるものである。各種区域切除は呼吸器外科医にとって,肺葉切除と並んで習得されるべき必須の技術のはずである。
今回出版された『イラストレイテッド肺癌手術』の第2版は,この区域切除を含めて肺葉切除,気管支形成手術,肺全摘など,手技的向上をめざすすべての呼吸器外科医の要望に応える内容で世に出された。第1版とはさらに装いを新たにして,DVDによる坪田先生の実際の手術の動画と手技解説(ナレーション)まで付け足されて提供されている。これを手にする人は先生の独特のハサミの持ち方,カード型小開胸器での術野展開,摘出肺領域に空気を送って切除する区域間切離の方法などを映像として詳しく学ぶことができるであろう。詳細な図譜で手技を理解しようとしても一定の限界を感じるはずの若い人たちにとって,現実の映像でその実際を学べることは,何という恩恵であろうか。新しい映像時代に生まれた彼等をうらやましがらずにはおれない。それと同時に,このような優れた手術書が世に送られることで,わが国のすべての若手呼吸器外科医が確固とした技術的基盤を与えられて,より大きく成長してゆくことを信ずるものである。
書評者: 伊達 洋至 (京都大学大学院医学研究科器官外科学講座呼吸器外科教授)
DVDを伴って,待望の第2版が出版された。2003年に出版された初版は,坪田先生オリジナルのイラストを使ったわかりやすい解説から,多くの呼吸器外科医に親しまれてきた。そのわずか4年後の2007年に,進化版が世に出た。本書を手にとって読んでみると,坪田先生がこれまでの呼吸器外科医としてのキャリアの集大成として本書を完成させた意気込みが伝わってくる。
本書の特徴は,まずアートともいえる独自のイラストである。坪田先生が手術記録をていねいにつけられていたことが窺われるが,これほどポイントを押さえたわかりやすいイラストは見たことがない。これに術中写真,気管支鏡,各種画像,そして坪田先生独特の臨場感あふれる解説が加えられている。緊急大出血に対する心嚢内での肺動脈確保法などは,読むだけで手に汗を握る。
次に,各論にみられる多彩な手術手技の解説である。肺葉切除といった基本的手術から,坪田先生が生み出した拡大区域切除術や,特殊な気管支形成術まで網羅されている。特に拡大区域切除術に関しては,初心者にはわかりにくい亜区域支レベルの術野での解剖が見事に描かれている。読者がまれな手術に臨む場合には,本書を前日に読んでおくと術野のイメージを作ることができることだろう。
さらに,200分を超える46本もの手術手技をまとめたDVDが第2版では付録された。坪田先生が数々の学会で発表してこられたオリジナルビデオであり,一本一本がていねいに作られており,画質も見事である。手術室の音がそのまま聞こえてくる臨場感に加え,随所に坪田先生ご自身のナレーションで解説が加えられている。本書と見比べながら勉強するのに非常によい。
坪田先生の30cmクーパーの逆さ持ちの解説もおもしろい。トロント大学のPearson先生から坪田先生が学ばれたテクニックである。小さな開胸創から深い胸腔内の手術を行うときにきわめて有効である。私もこのテクニックを使っているが,呼吸器外科医にはぜひマスターしてもらいたいテクニックである。
本書は,初めて呼吸器外科を学ぶ初心者,肺葉切除をはじめた中級者,そしてすでに呼吸器外科専門医として活躍している上級者,そのすべてに読んでいただきたい。坪田先生が,それぞれのレベルに応じた教育を大切にされてきたことが,本書に生かされているからである。
手術前に熟読することを推奨する
書評者: 淺村 尚生 (国立がんセンター中央病院呼吸器外科部長)
坪田紀明先生は,肺癌外科の世界では皆に広く知られている外科医であり,私にとっても尊敬する大先輩である。肺癌外科手術の技術面に深くこだわり,精度の高い,安全な手術を真摯に希求されてきたことは夙に有名である。道を同じくする私が先生を尊敬する所以でもある。管理職になって手術から遠ざかり,外科技術には関心がなくなってしまう人も多い中,これは大変なことであると思う。
その坪田先生の,『イラストレイテッド肺癌手術』が改訂された。学会の書籍展示販売コーナーでこの本を手にしたとき,私は正直“やられた!”と思った。私も,今まで蓄積してきた技術や工夫をまとめてみたいという希望をもっているが,この本のような詳細かつ組織だった技術の解説は到底無理であり,その気力や根気もなさそうに思ったからである。この本の中で,坪田先生は特に気管支形成術と区域切除術に力点を置いて執筆をされたのではないかと思う。兵庫県立成人病センター(現,兵庫県立がんセンター)でのキャリア後半では,特に区域切除の改良と工夫に取り組まれ,その間に蓄積されたノウハウが十分本書には記載されている。
この本の最大の特徴は,坪田先生ご自身の手による非常にわかりやすいイラストである。この本が“イラストレイテッド”と冠される所以であるが,私にはこれが大変ありがたい。外科手術の立体的な理解は,解説に1頁を割くより,1枚の優れたイラストによる方がずっと楽である。正確でわかりやすいイラストはこの本の財産である。このようなイラストが描ける背景には,局所解剖の深い理解と手術手技に対する深い洞察があることを若い読者は認識すべきであろう。国立がんセンター中央病院では,レジデントに手術記録としてイラストを描くよう指導しているが,その理由もこの辺にある。正確な手術記録のイラストは,正確な局所解剖の知識がないと描けないからである。だから勉強になるのである。しかし,レジデントたちが皆,坪田本と同じようなイラストを描くようにならないか心配である。
特に,解剖学が手術の成立上特に重要となる区域切除術では,正確で詳細なイラストは大変役に立つ。私が,第60回日本胸部外科学会学術集会(2007年10月;仙台)のランチョンセミナーで区域切除の講義を行ったとき,坪田先生のこの本を推奨させていただいたのも,それが理由である。今後は,小さな早期肺癌を手術する機会が増えてゆくであろうが,その際行われる区域切除は,これから呼吸器外科手術を学ばれる若い修練医にとっては重要性が高くなろう。手術の前には,本書を熟読されて,解剖学的構造と手技を頭に叩き込むべきである。
私は,指導医,修練医を問わず診療にあたっている呼吸器外科医は,本書により再度技術の整理,確認をすることをお勧めする。そして,難手術に臨む前には,当該箇所を熟読することで,その手術はずっと楽になると思う。本書はそのような“役に立つ”本である。
詳細な図譜とDVDで肺癌手術の手技を理解する
書評者: 白日 高歩 (第61回日本胸部外科学会会長/福岡大学外科教授)
坪田紀明先生は今日,わが国の肺外科手術を代表する第一人者である。わが国における肺外科の技術は,かつての肺結核外科を継承する形で今日に伝えられてきた。評者らの若い頃(昭和40年代)にはまだ呼吸器外科手術では肺結核が主体であり,連日各種の区域切除や胸郭形成術が国内各施設で行われていた。もちろん肺葉切除がすべての手技の基本であり,当然肺全摘も今日以上に高頻度に実施されていたという記憶がある。やがてそれらが肺癌手術にとって代られると,一時期ほとんどの手術が肺葉切除に限られるという印象であった。呼吸器外科医としての私は,これは自分たちの技術的発展を阻害し,外科医としての役割の放棄につながる現象で,決して歓迎されるものではないという危惧を持つようになった。いかに肺葉切除が肺癌手術の基本であっても,この手術ばかりで日々を過しては何の成長ももたらされないのである。
当時の拡大手術一辺倒の風潮が徐々に修正され,患者の機能損失を出来る限り小さくするための縮小手術も必要との認識が,外科領域全体にようやく浸透しつつあった。そのような雰囲気のもとに実際的な説得力を持って登場してきたのが,坪田先生の提唱する拡大区域切除術の概念であった。外科医は技術的な向上を常にめざすことが義務であり,若い人にとって難しい高度な手技への挑戦は向上への夢を与えるものである。各種区域切除は呼吸器外科医にとって,肺葉切除と並んで習得されるべき必須の技術のはずである。
今回出版された『イラストレイテッド肺癌手術』の第2版は,この区域切除を含めて肺葉切除,気管支形成手術,肺全摘など,手技的向上をめざすすべての呼吸器外科医の要望に応える内容で世に出された。第1版とはさらに装いを新たにして,DVDによる坪田先生の実際の手術の動画と手技解説(ナレーション)まで付け足されて提供されている。これを手にする人は先生の独特のハサミの持ち方,カード型小開胸器での術野展開,摘出肺領域に空気を送って切除する区域間切離の方法などを映像として詳しく学ぶことができるであろう。詳細な図譜で手技を理解しようとしても一定の限界を感じるはずの若い人たちにとって,現実の映像でその実際を学べることは,何という恩恵であろうか。新しい映像時代に生まれた彼等をうらやましがらずにはおれない。それと同時に,このような優れた手術書が世に送られることで,わが国のすべての若手呼吸器外科医が確固とした技術的基盤を与えられて,より大きく成長してゆくことを信ずるものである。
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。