神経救急・集中治療ハンドブック
Critical Care Neurology
神経救急症候・疾患診療のエッセンスを、それぞれ第一線の専門家が教える
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多くの研修医・臨床医が苦手とする神経救急症候・疾患診療のエッセンスを、それぞれ第一線の専門家が教える。頭痛や意識障害など頻度・重要度の高い症候の定義/診察ポイント/診断の進め方/対応とコンサルト、また脳卒中を初めとした主要な神経救急疾患の定義/症候と所見/鑑別/治療/合併症と管理まで、プラクティカルに解説。
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- 目次
- 書評
目次
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第1章 なぜ,今Critical Care Neurologyか
1 Critical Care Neurology・Emergency Neurologyの必要性
2 Critical Care Neurology・Emergency Neurologyの現状と課題
第2章 重症神経症候とその管理
1 急性期意識障害
2 遷延性意識障害
3 頭痛
4 めまい・平衡障害
5 神経眼科症候
6 筋力低下・運動麻痺・運動失調
7 全身痙攣・てんかん重積状態
8 不随意運動
9 精神症候
10 頭蓋内圧亢進・脳浮腫徴候
第3章 重症神経疾患とその管理
1 脳梗塞
2 脳出血
3 くも膜下出血・未破裂脳動脈瘤
4 特殊な脳血管障害─MELASを中心として
5 代謝・栄養障害に伴う脳症
6 低(無)酸素・虚血後脳症
7 急性中枢神経系感染症(脳炎・髄膜炎)
8 慢性中枢神経系感染症
9 Guillain-Barre症候群・Fisher症候群
10 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー
11 重症筋無力症およびクリーゼ
12 多発性筋炎・皮膚筋炎・周期性四肢麻痺
13 悪性症候群
14 横紋筋融解症・ミオグロビン尿症
15 重症疾患多発ニューロパチー・ミオパチー
16 変性疾患─パーキンソン病を中心として
17 脱髄疾患
18 傍腫瘍性神経症候群
19 急性中毒性神経疾患
20 Spinal Emergency
21 医原性神経系合併症
第4章 全身的合併症とその管理
1 重症神経疾患における全身管理
2 循環器系合併症の管理
3 呼吸器系合併症の管理
4 消化器系合併症の管理
5 体液酸塩基平衡の管理
6 凝固線溶系異常の管理(DICを含む)
7 重症・特殊感染症の管理
第5章 重症神経症候・疾患管理の方法
1 神経系救急・集中治療のためのモニタリング
2 髄液検査からのアプローチ
3 画像検査からのアプローチ
4 電気生理学的検査からのアプローチ
5 重症神経疾患の血液浄化療法
6 重症神経疾患のリハビリテーション
7 Stroke Care Unit(SCU)の組織・体制・運営
8 神経内科におけるリスクマネジメント
9 神経系救急・集中治療に必要な設備・物品
10 神経系救急・集中治療のための情報源とソフトウエア
11 脳指向型集中治療と脳蘇生:軽度低体温療法を中心に
12 神経疾患におけるDo-Not-Resuscitate(DNR)と脳死
編者あとがき
索引
1 Critical Care Neurology・Emergency Neurologyの必要性
2 Critical Care Neurology・Emergency Neurologyの現状と課題
第2章 重症神経症候とその管理
1 急性期意識障害
2 遷延性意識障害
3 頭痛
4 めまい・平衡障害
5 神経眼科症候
6 筋力低下・運動麻痺・運動失調
7 全身痙攣・てんかん重積状態
8 不随意運動
9 精神症候
10 頭蓋内圧亢進・脳浮腫徴候
第3章 重症神経疾患とその管理
1 脳梗塞
2 脳出血
3 くも膜下出血・未破裂脳動脈瘤
4 特殊な脳血管障害─MELASを中心として
5 代謝・栄養障害に伴う脳症
6 低(無)酸素・虚血後脳症
7 急性中枢神経系感染症(脳炎・髄膜炎)
8 慢性中枢神経系感染症
9 Guillain-Barre症候群・Fisher症候群
10 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー
11 重症筋無力症およびクリーゼ
12 多発性筋炎・皮膚筋炎・周期性四肢麻痺
13 悪性症候群
14 横紋筋融解症・ミオグロビン尿症
15 重症疾患多発ニューロパチー・ミオパチー
16 変性疾患─パーキンソン病を中心として
17 脱髄疾患
18 傍腫瘍性神経症候群
19 急性中毒性神経疾患
20 Spinal Emergency
21 医原性神経系合併症
第4章 全身的合併症とその管理
1 重症神経疾患における全身管理
2 循環器系合併症の管理
3 呼吸器系合併症の管理
4 消化器系合併症の管理
5 体液酸塩基平衡の管理
6 凝固線溶系異常の管理(DICを含む)
7 重症・特殊感染症の管理
第5章 重症神経症候・疾患管理の方法
1 神経系救急・集中治療のためのモニタリング
2 髄液検査からのアプローチ
3 画像検査からのアプローチ
4 電気生理学的検査からのアプローチ
5 重症神経疾患の血液浄化療法
6 重症神経疾患のリハビリテーション
7 Stroke Care Unit(SCU)の組織・体制・運営
8 神経内科におけるリスクマネジメント
9 神経系救急・集中治療に必要な設備・物品
10 神経系救急・集中治療のための情報源とソフトウエア
11 脳指向型集中治療と脳蘇生:軽度低体温療法を中心に
12 神経疾患におけるDo-Not-Resuscitate(DNR)と脳死
編者あとがき
索引
書評
開く
critical care neurologyの導入・体系化のために
書評者: 丸川 征四郎 (兵庫医大教授・救急・災害医学/救命救急センター)
本書の著者に神経内科医,脳神経外科医が多いことは想像に余りあるが,救急・蘇生科医が全65名中に12名が含まれている。救急・集中治療という表題にしては意外に少ない。しかし,日本救急医学会(第34回学術集会)を見ると脳蘇生,脳卒中についてのシンポジウムが各1セッションあり,脳低温療法の講演が2セッション,一般演題は5セッションと活発である。この事実からみれば,本書には神経内科・脳神経外科と救急・集中治療科の2つの世界の癒合を促そうとする編者の意図が窺える。さらに穿ったことをいえば,救急・集中治療医に神経系を専門とする医師を育成すべきとのメッセージが含まれているのかもしれない。「監修の序」には,「critical care neurologyの導入と体系化」が本書編纂の目的と述べてあり,「編者あとがき」には,「わが国には,神経系疾患全般に対して対応できる高度の施設はまだ非常に乏しい」現状への挑戦が窺える。
本書の体裁はA5判,496頁と病棟や診察室など狭いテーブルに置かれることを意識したサイズである。その意味では,いわゆる教科書と実用書の中間に属するものと理解できる。
本書の特徴は,5章,56項目と内容が豊富なことである。第1章には編者の基本的な考え方が述べられており,本書への熱い思いが伝わってくる。これに続いて,第2章は症候,第3章は疾患,第4章は合併症,第5章は管理と構成されている。本書の魅力は,豊富な内容に加えて各項目が実用的に構成されていることである。特に,第2,3章では管理とコンサルテーションすべき科目が示されており,第4,5章では具体的な全身的管理が示されている。
記述は,何れも簡潔,明瞭であり,神経救急・集中治療に携わる臨床医は,たとえ研修医であっても基本的知識として本書のレベルは把握しておくことが望まれる。さらに,救急医療の現場に専従する医師は,本書の内容をしっかりと習得し,加えて,外傷性中枢神経障害,脊椎・脊髄損傷,小児神経救急疾患,妊娠に伴う神経系疾患,そして中枢神経疾患に関わる救急蘇生ガイドラインなどについて学習することが望まれる。
本書は,神経救急・集中治療に携わる初期研修医,後期研修医に必読の書であり,救急・集中治療医にも座右の書として,強く推奨したい一冊である。
神経疾患を正しく理解し適切な治療を行うために
書評者: 日野原 重明 (聖路加国際病院名誉院長)
『神経救急・集中治療ハンドブック』が医学書院から出版された。本書の監修は,多年にわたり神経学の基礎的研究に従事され,幅広い臨床能力を有し,数多くの神経学の教科書を書かれてきた元東海大学医学部の神経学教授で,現在,国家公務員共済総合連合会立川病院長の篠原幸人先生である。
米国やドイツには救急・集中治療室の患者の中で,頻度が高く,予後不良な神経疾患患者に絞って診断と治療上の指針を書いたテキストはあるが,日本には,神経学の臨床能力に必ずしも通じない救命救急センターの医師やコメディカルのために,また救急医療を扱う脳外科医や一般内科医または開業医のために,特に神経学の専門知識の下にケアが行えるテキストは残念ながら今日まで出版されなかった。
そこで神経学の臨床を米国で学ばれ,また日本でその方面の指導をされている神経学専門医の永山正雄博士と濱田潤一博士が篠原幸人院長を助けて,ここに神経救急・集中治療ハンドブックを出版されることになったのである。
米国のメイヨー・クリニックでは既に1958年から神経救急の立派なテキストが出版されているが,日本は臨床神経学の導入が欧米に比べて遅れ,日本語でこの方面のハンドブックが出版されないままであったのである。
今般出版された本書は,真の神経専門医の65名が協力して書上げたものだけに,今までの救命・救急療法のテキストに比べるとまさに日本のメイヨー・クリニック版ともいえるものといえよう。
第1章では「なぜ,今Critical Care Neurologyか」が篠原,永山両専門医によって書かれ,本書の特長が何かがはっきり示されている。
次いで第2章では「重症神経症候とその管理」について急性意識障害や頭痛,めまい,筋力低下,全身けいれん,精神症候,脳圧亢進等が取り上げられ,第3章では,「重症神経疾患とその管理」と称して,脳梗塞,脳出血,くも膜下出血,代謝・栄養障害に伴う脳症,脳炎,髄膜炎ほかギランバレー症候群,重症筋無力症,その他のニューロパチーやミオパチー,パーキンソン病,脱髄疾患,急性中毒性神経疾患,医原性神経系合併症などが取り扱われている。また薬剤や放射線神経系障害などが取り上げられている。
第4章には「全身合併症とその管理」の下に1章が組まれている。
これらは医療の知識の欠如やものを見ぬく力が不足している者に,色々な神経疾患とその管理の方向が述べられている。
第5章は重症神経症候として症候のモニターの役割や髄液,画像検査のアプローチの仕方,リハビリテーション,SCUの運営,その他集中治療に必要な設備やソフトウェア,脳死の判定などが述べられている。
重要な神経疾患の救急・集中治療の実際がそれぞれの専門家によりこのように具体的に取り扱われているテキストは他にないと思う。
その意味で本書は日本の各種の疾患や症候群の症例を正しく理解し,適切な治療を行う上で,他に例のない実践医学の書と言うことができよう。各方面の医師や看護師また医療に従事する職員,学生に活用されることを望んで止まない。
神経内科医のみならずあらゆる領域の臨床医必読書
書評者: 金澤 一郎 (国立精神・神経センター総長)
われわれが医師になったのはちょうどインターン闘争から大学紛争に拡大して行く時期であった。そこで「患者のためになる良い医療を」という旗印の下で,青年医師連合を結成した。医師とは関係のないところで政治的に活動していた仲間もいたが,われわれノンポリは医師国家試験をボイコットした非合法的なインターンとして医療の世界に飛び込んでいった。すでに医師として社会で働いていた先輩たちの技術や知恵を授けてもらいながら医療に邁進した。実に充実していた。中でも,いわゆる救急には心をときめかした。自分こそがこの患者を救うのだ! という心意気に燃えていた。ただ心意気だけでは救えないので,いざという時はすぐに先輩に聞けるように「連絡網」を作成していた。救急医療は,医師になりたての身には格別の魅力があった。さしもの大学紛争も少し落ち着いた頃,大学に戻り,患者の受け持ちになってみると,病室で急変した患者に対応する先輩たちの動作の鈍いのにあきれた。しかし,今思えばその頃がわれわれの一般医療の腕前としてはピークだったように思う。頭で反応するよりも体が反応していたような気がする。
ところで神経疾患の医療については,診断が難しいだけでなく治療も明確なものがなくて医師としてやりがいがない,などと心無いことをいう人が未だにいるので困る。神経学領域にも,脳卒中,頭部外傷,てんかん性痙攣,重症筋無力症のクリーゼ,などの本格的な救急症例はあるし,急性脳脊髄膜炎やギラン・バレー症候群なども急いで対応する必要がある。脳卒中以外の疾患は幸いにもあまり多いものではないが,決して侮れるものではない。命にかかわる。自分の経験でも,幸いにも助けることができた場合もあるし,残念ながら力が及ばなかったこともある。
このたび,私の尊敬する篠原幸人先生監修による神経救急と集中治療に関する本格的な教科書が上梓された。この本が,わが国における神経救急の初めての専門書である,と聞いてその事実にビックリした。以前から神経救急の必要性を説かれていた篠原先生が,米国で神経救急を本格的に学んでこられた永山・濱田両先生を編者に据えてまとめ上げられたものである。神経内科医は無論のこと,脳外科医,救急医などあらゆる領域の臨床医の必携の書である。かゆいところに手が届く,とはまさにこの本の読後感であった。悪性症候群,spinal emergency,などを一つの章として扱っているのはユニークでありプラクティカルでもある。内容も極めて充実している。本書のもう一つの特筆すべき点は,終章に「精神疾患におけるDo-Not-Resuscitate(DNR)と脳死」と題して,社会的にも注目するべき課題について,そのエッセンスを学べるように編纂されていることである。DNRはいわゆる尊厳死と共通部分を持った考え方であり,わが国でも十分議論する必要がある。色々学べる書であり,考えさせる書でもあり,臨床医にとって必読の書である。
神経救急・集中治療を取り上げた本邦初の名著誕生
書評者: 田代 邦雄 (北海道医療大教授・心理科学)
神経学(Neurology)の臨床としては,本邦では神経内科が診療科・講座の代名詞として定着している。しかし神経疾患診療においては急性期から慢性期まで幅広く神経疾患に対応していくことは必須のことであり,神経内科,脳神経外科,一般内科,救急・集中治療,総合診療科,さらにはリハビリテーション科もチームの一員である。ところが,神経疾患救急を真正面から取り上げた神経内科からの教科書は今日まで存在しなかったのである。
このたび,医学書院より出版された『神経救急・集中治療ハンドブック』は,その英文サブタイトルである「Critical Care Neurology」を前面に打ち出した本邦初の神経救急教科書である。その監修をされている篠原幸人先生は東海大学神経内科教授として長年にわたり教育,診療,研究に従事され,現在は立川病院院長そして日本脳卒中学会理事長として益々のご活躍をされていることは周知の事実である。先生の主宰された学会は数多いが,ここでは神経学(神経内科学)を全面に出した日本神経学会総会と日本神経治療学会総会での会長講演を含め,また日頃から御指導を受けてきた立場よりこの名著に迫りたいと考えた。
1999年第17回日本神経治療学会会長講演「脳血管障害の治療戦略と治療の将来展望」ではEvidence-based Neurology,また,2003年の第44回日本神経学会会長講演の「21世紀の神経内科学」ではPreventive Neurologyという用語が登場する。また,これらの学会や,さらに本書の監修の序及び第1章において,先生が特に強調されたいCritical Care Neurology,Emergency Neurology,そして「動の神経学」,「静の神経学」についてのお考えが述べられている。
本書は第1章「なぜ,今Critical Care Neurologyか」,第2章「重症神経症候とその管理」,第3章「重症神経疾患とその管理」,第4章「全身的合併症とその管理」そして最後の第5章「重症神経症候・疾患管理の方法」に分けられた470頁にわたる大著である。
しかし,篠原先生のコンセプトをすべて理解された永山正雄,濱田潤一両先生の編集のもと65名の全国のエキスパートを網羅した適材,適所の執筆陣により統一された書式で内容が纏められており,各項目毎に「Neurocritical care pearls」とする簡潔なキラリと光る真珠の輝きの要旨,また必要な図表,フローチャートを多用,さらに鮮明な画像も採用,そして参照すべき重要文献を加えるという見事な統一が図られている。
本書をはじめから通読することも何の抵抗もないばかりでなく,その状況に応じた項目をピックアップできるなど,辞書的な役割も果たせるような配慮がなされていると感ずる。さらに国内のみならず外国の情報もふんだんに取り入れていく見事なコンセプトも具現されており,神経学を学び,また実践しているすべての方々にとって必携の書として,その出版に心からの賛辞を表するものである。
国際的にも類例のない神経救急・集中治療の良書
書評者: 太田 富雄 (医誠会病院・脳機能研究所)
監修の序で篠原教授が指摘されているように,最近,疾患の画像診断の進歩は著しく,その結果,第一線医療施設で疾患の診断が可能になった。このため,従来,疾患診断に苦慮し,大学病院へ転送されていた疾患の多くが,第一線医療施設で治療を開始できるようになった。
しかし,篠原教授が,変性疾患の診療研究を「静の神経学」,そして脳血管障害などの診療研究を「動の神経学」と表現されているが,この静と動の神経学を,満遍なく取り扱える医師は,神経内科医または脳神経外科医,救命救急医といえども,そうはいないだろう。さらに最近では,脳卒中のみならず,神経感染症,重症筋無力症,Guillain-Barré症候群などの急性期ないし急性増悪期の救急治療法が確立されており,治療法のみならず急性期の病態の適切なモニタリングも可能になるなど,急激に変化してきている。
このような事情によるものと思われるが,本邦では神経救急を取り上げたマニュアル書としては,本書の共同執筆者の一人,有賀教授の『脳神経救急マニュアル・救急から一週間のマネージメント』(三輪書店,2001)があるが,本格的な教科書はない。先ず,この点からも本書の出版は,この方面の医療に貢献するところ大であり,神経系専門医の立場からも本書出版に対し感謝の意を表したい。
内容に関しては,第一章において,「なぜ,今Critical Care Neurologyか」,「Critical Care Neurology・Emergency Neurologyの現状と課題」について触れているが,この方面のオリエンテーションとしては,きわめて適切な導入部である。第2章では「重症神経症候とその管理」,そして第3章では「重症神経疾患とその管理」に関し,ほとんど同じ様式で記載されており,きわめて読みやすく理解しやすい。
第4章では「全身的合併症とその管理」,そして最後の第5章では,「重症神経症候・疾患管理の方法」,そして最後に,神経疾患におけるDo-Not-Resuscitate(DNR)と脳死について言及している。
神経系の広範かつ十分な神経学の知識の必要性,重症神経疾患の的確な診断能力の養成,そして何よりも重症化する以前に早期に鑑別し,重症化や生命の危機から離脱させるため,リアルタイムの鑑別診断と的確なdecision-makingが必須である。本書を手に取り一瞥して明瞭なように,鑑別表,図,シェーマ,フローチャートを豊富に取り入れ,しかも救急・集中治療に関係するコメディカルスタッフまで念頭に,簡潔を旨として記載されている。
しかも従来の知識が網羅されており,国際的にも類例のない,神経救急・集中治療の優れた学際的教科書であることは間違いない。ぜひ座右のバイブルとして日常診療に役立てていただきたい。
書評者: 丸川 征四郎 (兵庫医大教授・救急・災害医学/救命救急センター)
本書の著者に神経内科医,脳神経外科医が多いことは想像に余りあるが,救急・蘇生科医が全65名中に12名が含まれている。救急・集中治療という表題にしては意外に少ない。しかし,日本救急医学会(第34回学術集会)を見ると脳蘇生,脳卒中についてのシンポジウムが各1セッションあり,脳低温療法の講演が2セッション,一般演題は5セッションと活発である。この事実からみれば,本書には神経内科・脳神経外科と救急・集中治療科の2つの世界の癒合を促そうとする編者の意図が窺える。さらに穿ったことをいえば,救急・集中治療医に神経系を専門とする医師を育成すべきとのメッセージが含まれているのかもしれない。「監修の序」には,「critical care neurologyの導入と体系化」が本書編纂の目的と述べてあり,「編者あとがき」には,「わが国には,神経系疾患全般に対して対応できる高度の施設はまだ非常に乏しい」現状への挑戦が窺える。
本書の体裁はA5判,496頁と病棟や診察室など狭いテーブルに置かれることを意識したサイズである。その意味では,いわゆる教科書と実用書の中間に属するものと理解できる。
本書の特徴は,5章,56項目と内容が豊富なことである。第1章には編者の基本的な考え方が述べられており,本書への熱い思いが伝わってくる。これに続いて,第2章は症候,第3章は疾患,第4章は合併症,第5章は管理と構成されている。本書の魅力は,豊富な内容に加えて各項目が実用的に構成されていることである。特に,第2,3章では管理とコンサルテーションすべき科目が示されており,第4,5章では具体的な全身的管理が示されている。
記述は,何れも簡潔,明瞭であり,神経救急・集中治療に携わる臨床医は,たとえ研修医であっても基本的知識として本書のレベルは把握しておくことが望まれる。さらに,救急医療の現場に専従する医師は,本書の内容をしっかりと習得し,加えて,外傷性中枢神経障害,脊椎・脊髄損傷,小児神経救急疾患,妊娠に伴う神経系疾患,そして中枢神経疾患に関わる救急蘇生ガイドラインなどについて学習することが望まれる。
本書は,神経救急・集中治療に携わる初期研修医,後期研修医に必読の書であり,救急・集中治療医にも座右の書として,強く推奨したい一冊である。
神経疾患を正しく理解し適切な治療を行うために
書評者: 日野原 重明 (聖路加国際病院名誉院長)
『神経救急・集中治療ハンドブック』が医学書院から出版された。本書の監修は,多年にわたり神経学の基礎的研究に従事され,幅広い臨床能力を有し,数多くの神経学の教科書を書かれてきた元東海大学医学部の神経学教授で,現在,国家公務員共済総合連合会立川病院長の篠原幸人先生である。
米国やドイツには救急・集中治療室の患者の中で,頻度が高く,予後不良な神経疾患患者に絞って診断と治療上の指針を書いたテキストはあるが,日本には,神経学の臨床能力に必ずしも通じない救命救急センターの医師やコメディカルのために,また救急医療を扱う脳外科医や一般内科医または開業医のために,特に神経学の専門知識の下にケアが行えるテキストは残念ながら今日まで出版されなかった。
そこで神経学の臨床を米国で学ばれ,また日本でその方面の指導をされている神経学専門医の永山正雄博士と濱田潤一博士が篠原幸人院長を助けて,ここに神経救急・集中治療ハンドブックを出版されることになったのである。
米国のメイヨー・クリニックでは既に1958年から神経救急の立派なテキストが出版されているが,日本は臨床神経学の導入が欧米に比べて遅れ,日本語でこの方面のハンドブックが出版されないままであったのである。
今般出版された本書は,真の神経専門医の65名が協力して書上げたものだけに,今までの救命・救急療法のテキストに比べるとまさに日本のメイヨー・クリニック版ともいえるものといえよう。
第1章では「なぜ,今Critical Care Neurologyか」が篠原,永山両専門医によって書かれ,本書の特長が何かがはっきり示されている。
次いで第2章では「重症神経症候とその管理」について急性意識障害や頭痛,めまい,筋力低下,全身けいれん,精神症候,脳圧亢進等が取り上げられ,第3章では,「重症神経疾患とその管理」と称して,脳梗塞,脳出血,くも膜下出血,代謝・栄養障害に伴う脳症,脳炎,髄膜炎ほかギランバレー症候群,重症筋無力症,その他のニューロパチーやミオパチー,パーキンソン病,脱髄疾患,急性中毒性神経疾患,医原性神経系合併症などが取り扱われている。また薬剤や放射線神経系障害などが取り上げられている。
第4章には「全身合併症とその管理」の下に1章が組まれている。
これらは医療の知識の欠如やものを見ぬく力が不足している者に,色々な神経疾患とその管理の方向が述べられている。
第5章は重症神経症候として症候のモニターの役割や髄液,画像検査のアプローチの仕方,リハビリテーション,SCUの運営,その他集中治療に必要な設備やソフトウェア,脳死の判定などが述べられている。
重要な神経疾患の救急・集中治療の実際がそれぞれの専門家によりこのように具体的に取り扱われているテキストは他にないと思う。
その意味で本書は日本の各種の疾患や症候群の症例を正しく理解し,適切な治療を行う上で,他に例のない実践医学の書と言うことができよう。各方面の医師や看護師また医療に従事する職員,学生に活用されることを望んで止まない。
神経内科医のみならずあらゆる領域の臨床医必読書
書評者: 金澤 一郎 (国立精神・神経センター総長)
われわれが医師になったのはちょうどインターン闘争から大学紛争に拡大して行く時期であった。そこで「患者のためになる良い医療を」という旗印の下で,青年医師連合を結成した。医師とは関係のないところで政治的に活動していた仲間もいたが,われわれノンポリは医師国家試験をボイコットした非合法的なインターンとして医療の世界に飛び込んでいった。すでに医師として社会で働いていた先輩たちの技術や知恵を授けてもらいながら医療に邁進した。実に充実していた。中でも,いわゆる救急には心をときめかした。自分こそがこの患者を救うのだ! という心意気に燃えていた。ただ心意気だけでは救えないので,いざという時はすぐに先輩に聞けるように「連絡網」を作成していた。救急医療は,医師になりたての身には格別の魅力があった。さしもの大学紛争も少し落ち着いた頃,大学に戻り,患者の受け持ちになってみると,病室で急変した患者に対応する先輩たちの動作の鈍いのにあきれた。しかし,今思えばその頃がわれわれの一般医療の腕前としてはピークだったように思う。頭で反応するよりも体が反応していたような気がする。
ところで神経疾患の医療については,診断が難しいだけでなく治療も明確なものがなくて医師としてやりがいがない,などと心無いことをいう人が未だにいるので困る。神経学領域にも,脳卒中,頭部外傷,てんかん性痙攣,重症筋無力症のクリーゼ,などの本格的な救急症例はあるし,急性脳脊髄膜炎やギラン・バレー症候群なども急いで対応する必要がある。脳卒中以外の疾患は幸いにもあまり多いものではないが,決して侮れるものではない。命にかかわる。自分の経験でも,幸いにも助けることができた場合もあるし,残念ながら力が及ばなかったこともある。
このたび,私の尊敬する篠原幸人先生監修による神経救急と集中治療に関する本格的な教科書が上梓された。この本が,わが国における神経救急の初めての専門書である,と聞いてその事実にビックリした。以前から神経救急の必要性を説かれていた篠原先生が,米国で神経救急を本格的に学んでこられた永山・濱田両先生を編者に据えてまとめ上げられたものである。神経内科医は無論のこと,脳外科医,救急医などあらゆる領域の臨床医の必携の書である。かゆいところに手が届く,とはまさにこの本の読後感であった。悪性症候群,spinal emergency,などを一つの章として扱っているのはユニークでありプラクティカルでもある。内容も極めて充実している。本書のもう一つの特筆すべき点は,終章に「精神疾患におけるDo-Not-Resuscitate(DNR)と脳死」と題して,社会的にも注目するべき課題について,そのエッセンスを学べるように編纂されていることである。DNRはいわゆる尊厳死と共通部分を持った考え方であり,わが国でも十分議論する必要がある。色々学べる書であり,考えさせる書でもあり,臨床医にとって必読の書である。
神経救急・集中治療を取り上げた本邦初の名著誕生
書評者: 田代 邦雄 (北海道医療大教授・心理科学)
神経学(Neurology)の臨床としては,本邦では神経内科が診療科・講座の代名詞として定着している。しかし神経疾患診療においては急性期から慢性期まで幅広く神経疾患に対応していくことは必須のことであり,神経内科,脳神経外科,一般内科,救急・集中治療,総合診療科,さらにはリハビリテーション科もチームの一員である。ところが,神経疾患救急を真正面から取り上げた神経内科からの教科書は今日まで存在しなかったのである。
このたび,医学書院より出版された『神経救急・集中治療ハンドブック』は,その英文サブタイトルである「Critical Care Neurology」を前面に打ち出した本邦初の神経救急教科書である。その監修をされている篠原幸人先生は東海大学神経内科教授として長年にわたり教育,診療,研究に従事され,現在は立川病院院長そして日本脳卒中学会理事長として益々のご活躍をされていることは周知の事実である。先生の主宰された学会は数多いが,ここでは神経学(神経内科学)を全面に出した日本神経学会総会と日本神経治療学会総会での会長講演を含め,また日頃から御指導を受けてきた立場よりこの名著に迫りたいと考えた。
1999年第17回日本神経治療学会会長講演「脳血管障害の治療戦略と治療の将来展望」ではEvidence-based Neurology,また,2003年の第44回日本神経学会会長講演の「21世紀の神経内科学」ではPreventive Neurologyという用語が登場する。また,これらの学会や,さらに本書の監修の序及び第1章において,先生が特に強調されたいCritical Care Neurology,Emergency Neurology,そして「動の神経学」,「静の神経学」についてのお考えが述べられている。
本書は第1章「なぜ,今Critical Care Neurologyか」,第2章「重症神経症候とその管理」,第3章「重症神経疾患とその管理」,第4章「全身的合併症とその管理」そして最後の第5章「重症神経症候・疾患管理の方法」に分けられた470頁にわたる大著である。
しかし,篠原先生のコンセプトをすべて理解された永山正雄,濱田潤一両先生の編集のもと65名の全国のエキスパートを網羅した適材,適所の執筆陣により統一された書式で内容が纏められており,各項目毎に「Neurocritical care pearls」とする簡潔なキラリと光る真珠の輝きの要旨,また必要な図表,フローチャートを多用,さらに鮮明な画像も採用,そして参照すべき重要文献を加えるという見事な統一が図られている。
本書をはじめから通読することも何の抵抗もないばかりでなく,その状況に応じた項目をピックアップできるなど,辞書的な役割も果たせるような配慮がなされていると感ずる。さらに国内のみならず外国の情報もふんだんに取り入れていく見事なコンセプトも具現されており,神経学を学び,また実践しているすべての方々にとって必携の書として,その出版に心からの賛辞を表するものである。
国際的にも類例のない神経救急・集中治療の良書
書評者: 太田 富雄 (医誠会病院・脳機能研究所)
監修の序で篠原教授が指摘されているように,最近,疾患の画像診断の進歩は著しく,その結果,第一線医療施設で疾患の診断が可能になった。このため,従来,疾患診断に苦慮し,大学病院へ転送されていた疾患の多くが,第一線医療施設で治療を開始できるようになった。
しかし,篠原教授が,変性疾患の診療研究を「静の神経学」,そして脳血管障害などの診療研究を「動の神経学」と表現されているが,この静と動の神経学を,満遍なく取り扱える医師は,神経内科医または脳神経外科医,救命救急医といえども,そうはいないだろう。さらに最近では,脳卒中のみならず,神経感染症,重症筋無力症,Guillain-Barré症候群などの急性期ないし急性増悪期の救急治療法が確立されており,治療法のみならず急性期の病態の適切なモニタリングも可能になるなど,急激に変化してきている。
このような事情によるものと思われるが,本邦では神経救急を取り上げたマニュアル書としては,本書の共同執筆者の一人,有賀教授の『脳神経救急マニュアル・救急から一週間のマネージメント』(三輪書店,2001)があるが,本格的な教科書はない。先ず,この点からも本書の出版は,この方面の医療に貢献するところ大であり,神経系専門医の立場からも本書出版に対し感謝の意を表したい。
内容に関しては,第一章において,「なぜ,今Critical Care Neurologyか」,「Critical Care Neurology・Emergency Neurologyの現状と課題」について触れているが,この方面のオリエンテーションとしては,きわめて適切な導入部である。第2章では「重症神経症候とその管理」,そして第3章では「重症神経疾患とその管理」に関し,ほとんど同じ様式で記載されており,きわめて読みやすく理解しやすい。
第4章では「全身的合併症とその管理」,そして最後の第5章では,「重症神経症候・疾患管理の方法」,そして最後に,神経疾患におけるDo-Not-Resuscitate(DNR)と脳死について言及している。
神経系の広範かつ十分な神経学の知識の必要性,重症神経疾患の的確な診断能力の養成,そして何よりも重症化する以前に早期に鑑別し,重症化や生命の危機から離脱させるため,リアルタイムの鑑別診断と的確なdecision-makingが必須である。本書を手に取り一瞥して明瞭なように,鑑別表,図,シェーマ,フローチャートを豊富に取り入れ,しかも救急・集中治療に関係するコメディカルスタッフまで念頭に,簡潔を旨として記載されている。
しかも従来の知識が網羅されており,国際的にも類例のない,神経救急・集中治療の優れた学際的教科書であることは間違いない。ぜひ座右のバイブルとして日常診療に役立てていただきたい。
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