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未熟児をはぐくむディベロプメンタルケア

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未熟児は無力で受動的なだけの存在ではない。自らを発達させる主体である。赤ちゃんの合図を読み取り,正しく評価し,やさしさに満ちた適切なケアをしよう。そのためには医療・ケアスタッフの高い知性と感性が求められている。NICUの機械的環境をやさしくリラックスできる発達環境へ!
編集 Edward Goldson
山川 孔
発行 2005年01月判型:B5頁:256
ISBN 978-4-260-33383-2
定価 3,520円 (本体3,200円+税)
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  • 書評

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推薦の序

推薦の序



第1章 NICUの環境

 光

 騒音

 社会性

 処置

 勧告

第2章 未熟児を読む

 脳と環境の相互作用

 NICUの環境と脳の発達

 発達の理論と概念的な枠組み

 早産児は行動で語る

 行動が語る言葉に耳を傾けよ

 NICUにおけるディベロプメンタルケアの効果のほどは?

 the NIDCAP model:ケアのためのガイドライン

  赤ちゃんの1日24時間を見直してみる

 赤ちゃんと家族のために環境を整える

 ディベロプメンタルケアをどんどん実行する

 まとめ

 付録A:症例報告

 行動観察

 付録B:行動学的定義(Alsの1981年の文献から)

 自律神経行動

 運動系の行動

 状態に関連した行動

第3章 低出生体重児と家族への発達介入をどのように考えるか

 どの未熟児がハイリスクで脆弱なのか

 モデルについて

 生物社会学的システムモデルを医学・発達・家族介入に適応する

  医学介入

  発達介入

  家族介入

 結論

第4章 赤ちゃんのマッサージ療法

 ハイリスクの赤ちゃんにおけるマッサージ療法の研究

  早産児のマッサージ療法

  コカインにさらされた早産児へのマッサージ

  HIVにさらされた新生児へのマッサージ

 基礎となるメカニズムの探索

 母親と祖父母ボランティアによるマッサージ

  抑うつ的な母親による赤ちゃんマッサージ

  マッサージ療法士としての祖父母ボランティア

第5章 前庭刺激を用いて早産児に神経発達介入を行う:現状と新評価法

 介入

  私たちの介入研究の歴史,理論的根拠と詳細

  赤ちゃんのウォーターベッド刺激の特徴

  振動しないウォーターベッドを臨床で使う

  私たちの介入研究の実践的,臨床的,理論的関連事項

 介入の効果を判定する新しい方法

  早産児の神経行動学的評価(NAPI)

  新生児医療指数(NMI)

 まとめ

第6章 未熟児のカンガルーケア

 カンガルーケアの誕生

 研究の所見

  最も初期の研究

  最近の研究

 なぜカンガルーケアは効果があるのか

 カンガルーケアの現状

  最近の展開

  現行のガイドライン

 カンガルーケアをNICUに導入する

  実施

  促進

  カンガルーケアの制約

 予測と勧告

 結論

第7章 ブリージングベアでみる未熟児のすばらしさ

 赤ちゃんは睡眠/覚醒の「状態」によって自己制御する

 赤ちゃんの行動の「状態」の分類

  覚醒した状態

  睡眠と覚醒の間の移行状態

  睡眠の状態

  睡眠の中での移行状態

  状態群についてのまとめ

  赤ちゃんの睡眠/覚醒の「状態」はこのように観察し記録する

  早期の「状態」の特徴はのちの発達に関係する

 ブリージングベア介入と未熟児の自己制御的刺激の能力:「状態」や学習・情動の組織化にもたらす効果     ブリージングベアはこう考えてつくられた

  未熟児でも好きなものにはすり寄っていく

  「同調」というものがある

  未熟児も学習する

  ブリージングベアは神経行動発達を促進する

  情動にもよい影響がある

 未熟児の自己制御能力と早期のケアの関係

 おわりに

第8章 NICUにおける発達介入の臨床と研究

 未熟性とNICU

 介入のモデル

 介入の各論

 臨床的関連事項

 研究の課題

 まとめ

訳者あとがき

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この本いかがですか?(雑誌『助産雑誌』より)
書評者: 野村 雅子 (長野県立こども病院)
 NICUにおいて,Developmental care(以下,DC)の必要性が認識され,その考え方は定着してきたといえます。最近では,赤ちゃんに与えるストレスをできるだけ少なくするためのハンドリングや,ケアの方法の検討も行なわれるようになりました。しかし,自分たちが行なっているケアの評価をどのようにしたら良いのか,ケアの方法は的確であるかなど,DCを導入したけれども……ということが少なからず起きているのではないでしょうか。

 ケアの評価は,当然看護の対象である赤ちゃんの反応や,ケアのもたらした結果によってされるものです。しかし未熟児は科学的に未知の部分が多く,ケアの評価が難しいといえます。

 本書は,DCの具体的手順ではなく,DCの必要性が,これまでの多くの臨床研究結果とともに書かれています。そこでDC導入の手順書として用いることは難しいと思われます。しかし,本来DC導入前に理解しておかなくてはならないDCが必要とされる早産児の特徴,早産児の見方,NICUの環境などについて書かれており,DC導入に当たってはもちろんですが,NICUという環境で生活せざるをえない早産児をケアする,すべての者が理解すべき内容が書かれています。

 DCからはそれますが,早産児の状態評価の指標の1つである睡眠覚醒パターンの変調とSIDSや発達障害発生に関する研究結果は興味深く,NICUにおける看護職の観察から将来の予測ができれば,早期介入によって予後が改善できるのではないかとも考えられます。

 繰り返しになりますが,DCは赤ちゃんの状態や反応を評価して,個別に介入することが必要です。これからDCを導入しようとする方は他施設の手順を参考にする前に,再度DC導入の必要性を確認してください。

 これからNICUで早産児のケアを目指す方は,早産児の特徴と赤ちゃんの見方について学んでください。DCを導入している方は,貴施設の様子を思い浮かべながら本書を読んでください。そして自分たちが,赤ちゃんをケアしているNICUの環境を見直し,自分たちがケアしている赤ちゃんの状態を良く観察してみてください。以上のことを実行するのに,本書は非常に助けになると思います。

 私の勤務するNICUでもDCを導入しています。そこで自施設を思い浮かべながら本書を読みました。環境,早産児の見方やハンドリングなどの振り返りの必要性を,強く感じました。DCは看護師中心ですすめられ,とかく医師は無関心になりがちですが,赤ちゃんにかかわるすべての人が,同じように赤ちゃんに接することが大切であると考えます。そこで本書は,前述したような看護職の方々ばかりではなく,ぜひ医師にも読んでいただきたいと思います。また,赤ちゃんの両親とも本書を共有できたらよいと思います。

(『助産雑誌』2005年8月号掲載)

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