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地域づくり型保健活動の考え方と進め方

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地域づくり型保健活動の考え方から話し合いを中心とした実践まで具体的に解説。特に参加的目的描写法による話し合いの進め方については,計画づくりの初期から実施・評価まで段階的に解説し,行き詰ったときの対応も詳述。ヘルスプロモーションを基盤にした本書の考え方は,地方自治時代に住民参加型健康福祉政策づくりを進めるうえでよい参考となるだろう。
岩永 俊博
発行 2003年10月判型:A5頁:240
ISBN 978-4-260-33304-7
定価 3,080円 (本体2,800円+税)

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  • 目次
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序章 いくつかの場面
第1章 活動や事業の組み立てのプロセス
第2章 地域の保健福祉活動の目的としての健康概念
第3章 目的の具体性
第4章 住民と行政との協働
第5章 地域づくり型保健活動(SOJO model)
第6章 参加的目的描写法(PGVM)
第7章 参加的目的描写法(PGVM)の実際
第8章 計画書の作成
第9章 実施と評価
第10章 地域づくり型保健活動(SOJO model)の特徴
索引

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健康日本21を住民主体の事業にするために
書評者: 新井 宏朋 (山形大名誉教授/日本健康福祉政策学会理事長)
 これまでの公衆衛生学の研究と実践活動は,疫学という学問が理論的基盤になっていた。疫学は「明確に規定された人間集団の中で出現する健康関連のいろいろな事象の頻度と分布およびそれらに影響を与える要因を明らかにして,健康関連の諸問題に対する有効な対策樹立に役立てるための科学」(『疫学』日本疫学会編)と定義されている。

 健康問題が,急性感染症や結核など自然科学的な課題中心であった時代には,このような分析的な方法で原因を究明し,原因を取り除くことによって問題を解決することが可能であった。しかし最近の地域の保健活動では,解決しなければならない健康課題が,社会通念などの人間の価値観や生き方あるいは生活をとりまく環境のあり方にまで広がってきており,従来の学問の枠組みだけでは十分に対応できなくなっている。

 このような状況に対し,本書の筆者である岩永俊博氏らの「地域づくり型保健活動」では,WHOの世界的な健康福祉政策「ヘルスプロモーション」を基盤とした,新しい保健活動に対応した考え方を提唱している。本書は,地域づくり型保健活動の考え方から具体的な進め方までを解説したものである。

◆ヘルスプロモーションを基盤にした保健活動の考え方

 WHOのヘルスプロモーションの枠組みでは,これまでの専門家主導の公衆衛生から脱皮した住民,専門家,行政のパートナーシップ,住民能力や地域能力の助長,健康を支援する環境整備などが強調されている。岩永氏らはこのヘルスプロモーションを実践する基礎的な思考方法として,ジェラルド・ナドラーと日比野省三の両氏が提唱した「ブレイクスルー思考」を導入した。ブレイクスルー思考は疫学とまったく逆の発想のもので,現在の問題点を深く追求するのではなく,将来のあるべき姿の追求から出発する。

 つまり地域づくり型保健活動では,住民と専門家,行政の担当者が一緒になって,その地域で実現を目指す健康の将来像を考え,それをみんなで共有するところから開始する。理想とする健康の将来像について,参加者みんなで実際の生活をイメージして話し合い,その理想とする将来像のイメージを具体的に箇条書きにするのである。

 そして,その理想の姿を実現するために必要な条件,さらにその条件を実現するための下位の条件,そしてその条件を実現するための具体的な行動や事業などについて話し合い,目的関連図として書き出す。また具体的に表わした将来像の上位に置かれる目的,さらにその上位の目的もみんなで話し合って確認する。このようにして,みんなが協力して活動する事業が,複合した三角形の図で表わされる。

 次にこの具体的な事業を出発点とした目的の流れに基づいて実施計画書を作成していく。こうすることによって健康の理想像実現のために,誰が(住民が,専門家が,行政が)いつ,どこで,具体的に何をやればよいかが,すべての人に共有されることになる。 

 現在,岩永氏と保健所・市町村の保健師さんたちで結成されている「地域づくり型保健活動研究会」はこの考え方に基づいた活動を全国的な規模で展開している。本書は,同研究会によるわが国の実践事例に基づいて作成されているのが大きな特徴である。「健康日本21」の活動を,厚生労働省のトップダウンの事業ではなく,住民主体の事業とするための重要な提言として,本書を推奨したいと思う。

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