別冊「看護教育」
「安全管理」の授業
看護事故防止を中心に

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現在,医療界の緊急課題は医療事故を予防するための「安全管理」である。これは看護基礎教育にあっても取り組むべき課題であろう。本書は「安全管理」を概念としてではなく,学生自身の実体験として学べるように工夫した講義・演習・実習の具体例を紹介している。年々厳しさを増す現場に卒業生を送り出す立場の教員必読の書である。
編集 「看護教育」編集室
発行 2003年03月判型:B5頁:248
ISBN 978-4-260-33262-0
定価 2,860円 (本体2,600円+税)
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  • 目次
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第1章 「安全管理」教育の必要性
第2章 「安全管理」を問う前に-専門職としての看護
第3章 「看護安全学」の組み立てとその実際-山梨県立看護大学の例
第4章 各校の取り組み
第5章 学生とともに学ぶ医療事故
第6章 臨地実習のあり方
索引
初出一覧

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事例を教材に新人教育を考える一冊
書評者: 村上 節子 (鳥取赤十字病院看護部長)
◆現場の事故防止教育にも役立つ

 臨床現場における看護事故防止についての著書はよく目にする。本書は看護基礎教育の中で「安全な看護についてどんな授業展開をするか」について述べたものである。1章から6章にわたり授業・演習・実習の具体例が並ぶ。また,看護業務の法的位置づけ,学生の臨地実習中の事故における責任の所在についての明確な見解が識者によって述べられている。臨床の立場で読むと非常に参考になる。

 春になると新人を迎え,研修プログラムに看護事故防止についてどう組み入れるか毎年工夫しているところである。この2,3年,新人にこれまでと違った傾向がみられるようになって,戸惑っている。院内,院外を問わず,看護管理者が集まると「最近の新人たちは,学生の時に安全についてどんな学習をしてきたのだろうか」と議論することが多い。端的に言えば,看護技術の未熟さが目立ち,新人の自信のなさが頼りないのだ。

 厳しい臨床の現実の中で,新人も葛藤,先輩も葛藤しながら現場教育が進んでいく。喜びもあるがお互いのエネルギーは大変なものである。教育する側と臨床現場でうまくキャッチボールができれば理想的であるが,多種多様の新人を受け入れる現状では実際のところ無理である。

 しかし,本書から学生の具体的学習を情報としてキャッチし,新人教育に参考にすることは可能である。そして,新人理解の面でも役にたつ。

 卒後教育では,基礎教育を受けとめそれにつなげるべきことを明確にし,専門職業人として育てなければならない。筆者が勤務している病院は併設していた看護学校が今年3月,88年間続いた看護教育の幕を閉じた。来年度からは多種多様の教育を受けた新人を採用し教育していかなければならない。本書を読むと「安全管理」教育の必要性がひしひしと伝わって来た。当院にとっても今後いかに活用していくかが鍵である。

◆事例からの学びは学生も看護師も同様

 当院看護部において,平成14年度は安全管理担当の看護副部長が欠員であった。そこで,看護師長を推進委員長とし各セクションに事故防止委員をおき輪番制で毎月のインシデントレポートの集計をした。定例会では,集計を担当した委員が事例を選び,その要因分析,対策などについてディスカションを積み重ねてきた。

 その時,委員の苦労は並大抵ではなかったようだ。レポートを読んでも事実がつかめない,そうなった理由も不明確である。そのレポートを理解して集計し,委員会に事例を提案するまでが大変なプロセスであった。

 しかし,各セクションの事例から改めて日々の看護業務の中に危険な要素が多いことが再認識された。いつもトップダウンで事故防止を叫んでいたが,自分自身も事故発生の当事者となりうること,人とエラー発生との関連性について,実践的な教育につながった。これらの事例検討会を通して,トップダウンとボトムアップのバランスの大切さを感じた。

 やはり事例からの学びは大きい。本書は事例をどう発展させ生きた教材にしていくか,その具体的なすすめ方も教えてくれる。教育する側,新人を受け入れる側が事故防止のための継続的な取り組みをし続けていく必要性を思いながら本書を読んだ。

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