これからの創傷治療

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創は乾かすと治らない/消毒しても化膿は防げない/消毒は創治療の妨害行為である/皮膚欠損創をガーゼで覆ってはいけない/創はよく洗ったほうがよい。/今までの常識を根底から覆す,新しい創傷治療の手引書。読者はきっと,その豊富な症例に驚くことだろう。
夏井 睦
発行 2003年07月判型:B5頁:112
ISBN 978-4-260-12253-5
定価 3,080円 (本体2,800円+税)

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  • 目次
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I. 創傷治療の基礎知識
 1 外傷治療―常識の嘘
 2 創傷はどのようにして治るのか
 3 創傷治癒と湿潤環境
 4 開放療法から閉鎖療法へ
II. 創傷被覆材について
 1 被覆材は外傷治療でこそ本領を発揮する
 2 創傷被覆材の種類
 3 外傷での被覆材の選択
III. 外傷治療の実際
 1 治療の一般原則
 2 実際の治療例
 3 治療上のコツ
 4 こういう外傷は閉鎖してはいけない
IV. 消毒とそれに関する問題
 1 創傷はなぜ化膿するのか
 2 消毒薬は創傷治癒を障害する
 3 消毒をめぐる常識の嘘
 4 InfectionとColonization
 5 皮膚や創面を消毒することに意味はあるのか
付. 被覆材一覧
索引

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創傷治療の間違った常識を打ち破る!
書評者: 光嶋 勲 (岡山大教授・形成再建外科)
◆患者を思う優しさから生まれた綿密な理論

 読み終わったとたん痛快な思いのする本が久々に出版された。ページを開いたとたんに最後まで読破してしまうぐらい面白い本である。本書は創傷の消毒法,上皮化などに関して,皆がおかしいと思っていたことを堂々と批判し,新しい形成外科的な傷の処置法を提案し,納得のいく理論的な説明がなされている。

 傷に貼りついたガーゼをはがされ,疼痛に泣く処置を毎日受け続けるという,古くからの外科処置法は改善されなければいけない。本書は古典的な外科処置法の欠点を指摘し,最新の創傷治癒機序の解明にもとづいた創傷の管理法を実践し,その優位性を証明している。

 確かに多くの形成外科医は,その経験から多くの間違った常識が創傷の治癒を遅らせていることは少なからず知っていたと思う。しかしそれはあくまでも個人レベルで,限られた患者さんにこの新しい処置法が試みられる程度であり,大々的な動きとはならず,皆何とかしなければと思うにとどまっていた。このような好機に本書は世に出たわけである。

 夏井先生とは,かつて日本形成外科学会認定医試験問題作成委員会で仕事をご一緒したことがある。先生は当時まだ若かったが,膨大な問題点を綿密に調べあげ,他の委員を驚かせた。短期間に驚異的な仕事のできる天才的な人物という強い印象があった。

 本書の魅力のひとつは,背景にある著者の綿密な理論の展開であろう。さらに,医療における従来の常識を打破しようとする反骨精神もすばらしい。著者の患者さんを思う優しい心から出た見解には,誰も反論できないであろう。

◆コメディカルや患者も読める,工夫された構成

 この本の特長は,症例ごとに見開きとなっており,必要最小限の解説で実に読みやすく,きれいなカラー図による症例提示,気の利いたワンポイントアドバイス,各種創傷被覆材のリストなど,新しい試みが随所にみられ,実にうまくまとめられていることにある。これまで日本はおろか海外でもこのような本はなかった。

 すでに著者の講演を聞いた若い医師,看護師などが,勉強会でさらに知識を深め,外来で実践しはじめている病院も多いと聞く。最近は褥瘡の管理をはじめとして,創傷の管理にかける看護師などのコメディカルスタッフのパワーは素晴らしい。患者さんの立場に立ったこの本は,彼らの間でベストセラーとなり,新しい創傷管理がはじまるであろう。多くの医療関係者はこの本を座右の銘とし,著者の提唱する創傷管理を実践すべきであろう。そして,多くの患者さんが包交の苦痛から開放されるであろう。患者さんやコメディカルスタッフが直接読んで,医者に処置法を逆に教えるということもありそうだ。

話題の創傷治療新概念,ついに出版!
書評者: 坪井 良治 (東京医大教授・皮膚科)
◆これからの「皮膚外傷治療マニュアル」

 夏井睦氏のインターネットサイト「新しい創傷治療」は各方面から注目されてホットなサイトとなってきたが,いよいよそれを具体化した本が「これからの創傷治療」と題して医学書院から出版された。本書はB5版100ページほどのハンディな医学書であるが,斬新な医学理論の展開と数多い鮮明な臨床写真で内容も濃く読みやすい仕上がりになっている。「皮膚外傷治療マニュアル」として日常診療の中で座右の書として推薦できる。

 夏井睦氏は創傷治療に関して,被覆材を使用した閉鎖湿潤療法の重要性と消毒の有害性を一貫して強調してこられた。本邦の外科系診療においては,これまで外傷や皮膚潰瘍に対して毎日の消毒とガーゼ交換が当然のごとく実施されてきた。本書はこの間違った医療行為に対するアンチテーゼであり,氏の主張は理論的に正しい閉鎖療法が実際の医療現場では実践されていないという現実に対する批判でもある。

◆日常診療にすぐ役立つ具体的な内容

 本書の構成は,「創傷治療の基礎知識」,「創傷被覆材について」,「外傷治療の実際」,「消毒とそれに関する問題」,の4章から成り立っている。「創傷治療の基礎知識」では,閉鎖療法による湿潤環境の維持の重要性が図と臨床写真でわかりやすく述べられている。「創傷被覆材について」では,被覆材の特長と選択基準が記載され,巻末に一覧表も掲載されていているので,被覆材を選択する際に参考になる。「外傷治療の実際」では,氏の豊富な経験の中から症例を選び,臨床写真で治療経過を示すことで新しい治療法の優位性が述べられている。「消毒とそれに関する問題」では,従来行なわれてきた「消毒」という行為が,生体組織を障害して治癒を遅らせること,感染と定着の違いなどが述べられている。各章にある「ワンポイント」も日常診療に役立つヒントが数多く記載されていて楽しい。

 著者のウイットに富んだ表現と歯切れのよい文章はエッセイとして読んでも楽しい。小外傷や皮膚潰瘍,熱傷,褥瘡などに対する処置は,外科系診療科をはじめほとんどの診療科で必要な知識と技術であり,本書は研修医だけでなく,各科専門医をめざす人や各診療科の責任者にも薦められる。多忙な中,全国各地で講演している氏の講演内容とセットにして読まれるとさらに楽しいかもしれない。

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