リハビリテーション医療入門 増補版
リハビリテーション医療を正しく理解するための入門書
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わが国におけるリハビリテーション医療の草分けのひとりである著者が、保健・医療・福祉の分野で活動する人達にリハビリテーション医療を正しく理解してもらうことを目的に、長年の経験をふまえてわかりやすく解説した入門書。リハビリテーション医療に必要な心理学、職業復帰、福祉就労など、従来の書よりさらにふみこんでいる。近年の医療制度改革をふまえ最新の情報を取り入れた増補版。
著 | 武智 秀夫 |
---|---|
発行 | 2007年12月判型:A5頁:128 |
ISBN | 978-4-260-00542-5 |
定価 | 1,980円 (本体1,800円+税) |
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
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増補版 序
武智 秀夫
本書の初版を上梓してから7年が経過した.その間,人口の高齢化はさらに進んだものの,リハビリテーション医療の技術的な本質はそんなに大きく変わってはいない.
大きく変わった点として,国際的には,世界保健機関(WHO)のICIDH(国際障害分類)がICF(国際生活機能分類:国際障害分類)に改定されたことが挙げられる.
ICFは健康状態に関連する生活機能と障害の分類である.リハビリテーション医療には「疾病の結果(帰結)」である,以前のICIDHの方が即物的で理解しやすく,利用しやすいと思われる.したがって,ICFもICIDHも詳しく述べた.
わが国においては,リハビリテーション医療をとりまく身体障害者福祉,医療保険,介護保険などの社会福祉の制度が変化した.
障害者自立支援法の制定施行,介護保険や医療保険の改正などである.その結果,障害者や患者の経済的負担が大きく変わった.
これらの制度は今後,改正されるかもしれない.とりあえず本増補版では初版より大きく変わったものを書き改めた.
リハビリテーション医療の実践にあたり,従事する医師,セラピスト,看護師,義肢装具士,医療ソーシャルワーカーなどにとって,技術的なことが重要であるのはいうまでもない.しかしいろいろな社会資源を熟知しておくのも必要で,患者や障害者によりよいサービスができる.
増補版の上梓に当たり,読者の方々にもう一度,患者や障害者にとっての社会資源についての知識が大切なことを再確認していただきたいと考えている.
2007年 10月
岡山にて
武智 秀夫
本書の初版を上梓してから7年が経過した.その間,人口の高齢化はさらに進んだものの,リハビリテーション医療の技術的な本質はそんなに大きく変わってはいない.
大きく変わった点として,国際的には,世界保健機関(WHO)のICIDH(国際障害分類)がICF(国際生活機能分類:国際障害分類)に改定されたことが挙げられる.
ICFは健康状態に関連する生活機能と障害の分類である.リハビリテーション医療には「疾病の結果(帰結)」である,以前のICIDHの方が即物的で理解しやすく,利用しやすいと思われる.したがって,ICFもICIDHも詳しく述べた.
わが国においては,リハビリテーション医療をとりまく身体障害者福祉,医療保険,介護保険などの社会福祉の制度が変化した.
障害者自立支援法の制定施行,介護保険や医療保険の改正などである.その結果,障害者や患者の経済的負担が大きく変わった.
これらの制度は今後,改正されるかもしれない.とりあえず本増補版では初版より大きく変わったものを書き改めた.
リハビリテーション医療の実践にあたり,従事する医師,セラピスト,看護師,義肢装具士,医療ソーシャルワーカーなどにとって,技術的なことが重要であるのはいうまでもない.しかしいろいろな社会資源を熟知しておくのも必要で,患者や障害者によりよいサービスができる.
増補版の上梓に当たり,読者の方々にもう一度,患者や障害者にとっての社会資源についての知識が大切なことを再確認していただきたいと考えている.
2007年 10月
岡山にて
目次
開く
I 障害とリハビリテーション医療
1. 障害と疾病
2. 障害の種類
3. 障害のレベル
4. いろいろな社会復帰
5. リハビリテーション医療
II リハビリテーション医療の対象になる障害
1. 麻痺
2. 高次脳機能障害
3. 関節の障害
4. 四肢の切断
5. 難病による障害
6. 小児の障害
7. 呼吸障害・心臓障害など
III リハビリテーション医療で治療する日常生活の障害
1. 日常生活動作
2. 起座,移動の障害
3. セルフケアの障害
4. 排泄の障害
5. コミュニケーションの障害
6. 社会的認知の障害
7. ハウスキーピングの障害
IV リハビリテーション医療に必要な心理学
1. 人の心
2. 本能,知性,動機づけ
3. 感情(情動,情緒)
4. パーソナリティー
5. 意志,認知,学習,認知症
6. 自己像
7. コーピング,防衛機制
8. 対人関係,性の問題
V 障害者側の問題
1. 障害の告知
2. 障害の受容
3. 経済的問題
VI リハビリテーション医療の職種とその役割
1. 医師
2. 理学療法士(PT)
3. 作業療法士(OT)
4. 言語聴覚士(ST)
5. 義肢装具士(PO)
6. リハビリテーション・エンジニア
7. 医療ソーシャルワーカー(MSW)
8. 看護師
9. 臨床心理士
VII リハビリテーション医療の進め方
1. 障害の予後を予見する
2. 障害を評価しゴールと期間を設定する
3. チームカンファレンス
VIII いろいろな社会資源
1. わが国の社会保障
2. 医療費
3. 障害者自立支援法
4. 医療費の公費助成
5. 老人医療
6. 働けない間の収入
7. 障害年金
8. 補装具,日常生活用具,住宅改造
IX 職業復帰
1. 職業復帰に至るいろいろな過程
2. 職業リハビリテーションの施設
3. 法定雇用率
4. 職業復帰の場
5. 福祉就労と職業リハビリテーションとの違い
X 福祉就労の施設
1. 障害者自立支援法での施設・事業体系
2. 障害者自立支援法にもとづく福祉就労の施設
3. 訓練施設と生活施設
XI 介護保険
1. 判定と措置,契約
2. 介護度の評価
3. 介護保険による居宅サービス
4. 介護保険の施設
5. 介護保険とリハビリテーション医療
XII 地域リハビリテーション
1. ノーマライゼーション
2. 地域リハビリテーション
3. わが国における地域リハビリテーション
XIII 「リハビリテーション」という言葉
1. 広い意味で使われる「リハビリテーション」
2. 身体障害者(肢体障害者)に使われる「リハビリテーション」
付. 参考図書
索引
1. 障害と疾病
2. 障害の種類
3. 障害のレベル
4. いろいろな社会復帰
5. リハビリテーション医療
II リハビリテーション医療の対象になる障害
1. 麻痺
2. 高次脳機能障害
3. 関節の障害
4. 四肢の切断
5. 難病による障害
6. 小児の障害
7. 呼吸障害・心臓障害など
III リハビリテーション医療で治療する日常生活の障害
1. 日常生活動作
2. 起座,移動の障害
3. セルフケアの障害
4. 排泄の障害
5. コミュニケーションの障害
6. 社会的認知の障害
7. ハウスキーピングの障害
IV リハビリテーション医療に必要な心理学
1. 人の心
2. 本能,知性,動機づけ
3. 感情(情動,情緒)
4. パーソナリティー
5. 意志,認知,学習,認知症
6. 自己像
7. コーピング,防衛機制
8. 対人関係,性の問題
V 障害者側の問題
1. 障害の告知
2. 障害の受容
3. 経済的問題
VI リハビリテーション医療の職種とその役割
1. 医師
2. 理学療法士(PT)
3. 作業療法士(OT)
4. 言語聴覚士(ST)
5. 義肢装具士(PO)
6. リハビリテーション・エンジニア
7. 医療ソーシャルワーカー(MSW)
8. 看護師
9. 臨床心理士
VII リハビリテーション医療の進め方
1. 障害の予後を予見する
2. 障害を評価しゴールと期間を設定する
3. チームカンファレンス
VIII いろいろな社会資源
1. わが国の社会保障
2. 医療費
3. 障害者自立支援法
4. 医療費の公費助成
5. 老人医療
6. 働けない間の収入
7. 障害年金
8. 補装具,日常生活用具,住宅改造
IX 職業復帰
1. 職業復帰に至るいろいろな過程
2. 職業リハビリテーションの施設
3. 法定雇用率
4. 職業復帰の場
5. 福祉就労と職業リハビリテーションとの違い
X 福祉就労の施設
1. 障害者自立支援法での施設・事業体系
2. 障害者自立支援法にもとづく福祉就労の施設
3. 訓練施設と生活施設
XI 介護保険
1. 判定と措置,契約
2. 介護度の評価
3. 介護保険による居宅サービス
4. 介護保険の施設
5. 介護保険とリハビリテーション医療
XII 地域リハビリテーション
1. ノーマライゼーション
2. 地域リハビリテーション
3. わが国における地域リハビリテーション
XIII 「リハビリテーション」という言葉
1. 広い意味で使われる「リハビリテーション」
2. 身体障害者(肢体障害者)に使われる「リハビリテーション」
付. 参考図書
索引
書評
開く
著者の理念や知識の結晶が散りばめられた一冊
書評者: 土肥 信之 (兵庫医療大学リハビリテーション学部長・教授)
最近リハビリテーションという言葉はあらゆる分野でよく聞くようになった。スポーツの世界でも盛んに用いられている。もともとリハビリテーションは障害者が社会に参加することを助ける多様な手段であるが,その中でも医療的アプローチはとても大切で,有効である。リハビリテーション医療は医学のみならず,広く医療関係職種がチームを組んで共同し,関わっていくことが大切で,その分野は大変広いものとなっている。
この『リハビリテーション医療入門』は,障害者が社会に参加するために必要な,これら医療に関連する広い分野を,要領よく解説している点で入門書といえる。しかし実際は著者の深いリハビリテーションとの関わりの中から生まれた理念や知識の結晶が散りばめられており,その内容は洗練され,また高度なものを多く含んでいる。
初版は2001年であるが,ICF(国際生活機能分類)が用いられるようになり,障害者自立支援法の制定施行や介護保険の普及など,リハビリテーション医療を取り巻く環境の変化に合わせて改訂され,増補版として出版された。
全体は13の章からなる。障害と医療,ADLの話,心理と障害受容,リハビリテーション専門職,社会資源と職業,就労,介護保険や地域リハビリテーションなども含み,幅広く網羅されている。特に職業リハビリテーションについては入門書といえども,職業に関わる教育訓練施設やセンター,福祉工場などの詳細な情報が載せられており心強い。これらは著者が長年育ててこられた吉備高原医療リハビリテーションセンターの得意分野であり,医療系の本としては異色であり,役に立つ本である。
本全体としての内容の広がりと多様性は特筆に値するが,これらの多様な領域は分担執筆されるのが通例である。しかし著者が,長い経験と実践を生かして,全体をわかりやすく解説し,問題点も鋭く指摘している。その意味では一貫した考えに貫かれており,読んでいて引き込まれるものがある。最初から少しずつと思い読み始めたが,一気に読んでしまった。
リハビリテーション医療について,初心者が全体をつかむにはいい本であるが,やや難解な部分もあるかもしれない。それらを少しずつ調べながら読むと知識が整理されるであろう。
一方リハビリテーションを知っており,現場で働く専門職の人たちには,不得意分野を補いリハビリテーションの知識をバランスよく知り,その中での自分の専門職としての役割を確認し,リハビリテーションチームの一員として効果的な治療を組み立てるのに役立つであろう。なによりもそれほど肩もこらず読み続けることができる点でも勧めたい本である。
書評者: 土肥 信之 (兵庫医療大学リハビリテーション学部長・教授)
最近リハビリテーションという言葉はあらゆる分野でよく聞くようになった。スポーツの世界でも盛んに用いられている。もともとリハビリテーションは障害者が社会に参加することを助ける多様な手段であるが,その中でも医療的アプローチはとても大切で,有効である。リハビリテーション医療は医学のみならず,広く医療関係職種がチームを組んで共同し,関わっていくことが大切で,その分野は大変広いものとなっている。
この『リハビリテーション医療入門』は,障害者が社会に参加するために必要な,これら医療に関連する広い分野を,要領よく解説している点で入門書といえる。しかし実際は著者の深いリハビリテーションとの関わりの中から生まれた理念や知識の結晶が散りばめられており,その内容は洗練され,また高度なものを多く含んでいる。
初版は2001年であるが,ICF(国際生活機能分類)が用いられるようになり,障害者自立支援法の制定施行や介護保険の普及など,リハビリテーション医療を取り巻く環境の変化に合わせて改訂され,増補版として出版された。
全体は13の章からなる。障害と医療,ADLの話,心理と障害受容,リハビリテーション専門職,社会資源と職業,就労,介護保険や地域リハビリテーションなども含み,幅広く網羅されている。特に職業リハビリテーションについては入門書といえども,職業に関わる教育訓練施設やセンター,福祉工場などの詳細な情報が載せられており心強い。これらは著者が長年育ててこられた吉備高原医療リハビリテーションセンターの得意分野であり,医療系の本としては異色であり,役に立つ本である。
本全体としての内容の広がりと多様性は特筆に値するが,これらの多様な領域は分担執筆されるのが通例である。しかし著者が,長い経験と実践を生かして,全体をわかりやすく解説し,問題点も鋭く指摘している。その意味では一貫した考えに貫かれており,読んでいて引き込まれるものがある。最初から少しずつと思い読み始めたが,一気に読んでしまった。
リハビリテーション医療について,初心者が全体をつかむにはいい本であるが,やや難解な部分もあるかもしれない。それらを少しずつ調べながら読むと知識が整理されるであろう。
一方リハビリテーションを知っており,現場で働く専門職の人たちには,不得意分野を補いリハビリテーションの知識をバランスよく知り,その中での自分の専門職としての役割を確認し,リハビリテーションチームの一員として効果的な治療を組み立てるのに役立つであろう。なによりもそれほど肩もこらず読み続けることができる点でも勧めたい本である。