今日の疫学 第2版

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世界規模で疾病が展開し,その診断・治療に関するエビデンスが多方面から求められる現代。疫学研究の重要性の増大とともに,新時代にマッチした最新疫学テキストとして大改訂。新たな研究手段,調査テクニックを盛り込み,最先端の執筆陣で内容充実。将来保健・医療・福祉に携わる人のためのベストな入門書に生まれ変わった。
監修 青山 英康
編集 川上 憲人 / 甲田 茂樹
発行 2005年04月判型:A5頁:468
ISBN 978-4-260-10637-5
定価 4,180円 (本体3,800円+税)

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  • 目次
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■総論

1章 疫学とは

 A. 定義と歴史

 B. 疫学の今日的役割と課題

  疫学の定義と特徴

  今日の疫学の進歩

  分化・発展する今日の疫学

  おわりに

2章 疫学における因果論

  原因に関する概念

  多要因原因説

  原因追求の過程

  交互作用

3章 疫学における測定

 A. 疫学指標

  疾病頻度を表す指標

  因子と疾病の関連を表す指標

 B. 測定の信頼性と妥当性

4章 疫学研究のデザイン

 A. 記述疫学

  はじめに

  記述疫学研究の例

  まとめ

 B. 分析疫学

  コホート研究

  症例対照研究(患者対照研究)

  コホート研究と症例対照研究の比較

  後ろ向きコホート研究

 C. 介入研究

 D. 横断研究・生態学的研究

 E. メタアナリシス

5章 バイアスとそのコントロール

 A. 選択バイアスとそのコントロール法

  外部妥当性に影響する選択バイアス

  内部妥当性に影響する選択バイアス

 B. 情報のバイアスとそのコントロール法

 C. 交絡バイアスとそのコントロール法

6章 疫学研究の実施

 A. 仮説の設定

 B. 研究デザイン

 C. 研究デザインの選択

 D. 標本の抽出-サンプリング

 E. データの収集

7章 データの統計的解析

  データ解析にあたって

  データ解析の準備

  有意差検定とその手順

  多変量解析

  統計パッケージについて

8章 疫学研究と倫理ガイドライン

■各論

1章 公衆衛生学分野での応用

 A. スクリーニング

  スクリーニングの原理

  スクリーニング検査の精度

  スクリーニングの効果の評価

  スクリーニングのその他の評価

  スクリーニングを行うための条件

 □対象別の応用

 B-1. 感染症の疫学

 B-2. がんの疫学

 B-3. 循環器疾患の疫学

 B-4. 環境疫学

 B-5. 産業疫学

 B-6. 社会疫学

 B-7. 精神保健疫学

  はじめに

  精神保健疫学の歴史

  精神保健疫学の方法論

  代表的な精神保健疫学調査

  精神保健疫学のトピックス

  精神保健疫学と精神保健サービスの構築

 B-8. 健康政策への応用

2章 臨床医学への応用

 A. 臨床疫学

 B. 臨床判断学

索引

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進化する疫学のいまの姿が,よく分かる本
書評者: 坪野 吉孝 (東北大学大学院法学研究科)
 本書は1996年に出版された同書の初版を,23名の執筆者を迎えて大幅に改訂したものである。427ページからなる本文の約半分を占める「総論」では,疫学の概要から,因果論,研究デザイン,測定とバイアス,研究の実施,データ解析,倫理にいたる事項が取り上げられている。残りの半分を占める「各論」では,スクリーニング,感染症,がん,循環器,環境,産業疫学,社会疫学,精神保健,健康政策,さらに臨床疫学や臨床判断学にいたる多彩な分野が解説されている。

 私自身は,とくに各論が面白かった。とりわけ,「循環器疾患の疫学」と「精神保健疫学」の部分は,世界と日本の研究状況が手際良く整理され,これまでの到達点と課題がみごとにまとめられている。「感染症の疫学」は,具体的なアウトブレイクの事例を用いた臨場感あふれる解説が興味深かった。「社会疫学」と「健康政策への応用」は,新しい分野として世界的に発展する姿がよく理解できた。

 本書の編者は,今回の第2版の編集にあたり,各論を再構成し拡充することを通して疫学の新しい動向をとらえ,「疫学の楽しさ」を前面に出すように心がけたと,序文で述べている。1人の読者として本書を通読して,編者のこのねらいは十分実現されていると感じた。

 その一方,「読者」ではなく「教師」としては,気になる点もあった。例えば,基本的な概念の位置づけや説明が,執筆者のあいだで不揃いな場合がある。本書を教科書にして1章から順に講義していくと,「交絡(攪乱)は,バイアスの一種ですか,それともバイアスとは別の概念ですか?」「外的妥当性と外部妥当性と外部有効性の意味は同じですか?」といった質問が,学生から出てくるかもしれない。

 また,有意差検定や信頼区間による推定に関して,計算の手順についての説明はくわしいが,信頼区間自体の意味と解釈や,有意差検定の限界と問題点については,まとまった解説がない。総論の一部には,やや古びた記述や言葉足らずの説明も散見される。本書を教科書として利用する際には,こうした点に留意して,理解を補うことも必要だろう。

 私はいま,法学部と医学部の学生や,現場の栄養士に疫学を教えている。その経験から,疫学の教育に対するニーズが,いろいろな分野で高まっているのを肌で感じている。「今日の疫学」というタイトルが示すとおり,本書からは,分化・発展する現代の疫学のダイナミズムがよく伝わってくる。本書を通して,たくさんの人が「疫学の楽しさ」に目を開かれることを期待したい。

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