婦人科検査マニュアル
データの読み方から評価まで

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Ladies Medicine Todayシリーズ『臨床医のための周産期検査マニュアル』の姉妹編。EBMを重視し,的確な診断のための無駄のない検査オーダーと,検査値の的確な読みと評価法を各エキスパートが披瀝。また高齢化社会に対応して,「女性内科の検査」の章を設けて婦人科医が女性をトータルで診る視点を強調した。
編集 倉智 博久
発行 2002年04月判型:B5頁:232
ISBN 978-4-260-13062-2
定価 8,580円 (本体7,800円+税)
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  • 目次
  • 書評

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第I章 婦人科腫瘍の検査
 1. 細胞診-細胞の採取法を中心に
 2. 組織診-組織の採取法を中心に
 3. 腫瘍マーカー
 4. 内視鏡検査
 5. 画像診断
 6. 遺伝子診断
第II章 生殖生理の検査
 1. 基礎体温
 2. 頸管粘液検査
 3. 性交後検査
 4. 内分泌機能検査
 5. 卵胞モニタリング
 6. 排卵時期の予知方法
 7. 黄体期の評価法
 8. 卵管の検査
 9. 腹腔鏡検査
 10. 子宮鏡検査
 11. 男性不妊検査
 12. 免疫性不妊症検査
 13. 不育症検査
第III章 女性内科の検査
 1. 更年期指数
 2. 骨塩量
 3. 肥満
 4. 血清脂質
 5. 動脈硬化の評価
第IV章 感染症の検査
 1. 細菌検査
 2. ウイルス検査
 3. 血清学的検査
 4. 遺伝子検査

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女性診療科の実地臨床に役立つ優れた1冊
書評者: 小西 郁生 (信大教授・産科婦人科学)
 本書は,女性診療科(婦人科)の実地診療において用いられている主要な臨床検査について,その方法のみならず,データの読み方や評価,さらに検査にあたっての重要なポイントをわかりやすく解説した,厚さ約1cm,全232頁のソフトカバーの書物である。

◆専門外来に対応した検査項目

 目次をみると一目瞭然であるが,本書では,いろいろの検査が並列的に記載されているのではなく,第I章には婦人科腫瘍の検査,第II章に生殖生理の検査,第III章に女性内科の検査,そして第IV章に感染症の検査というように,女性診療科の個々の専門外来に対応した形で検査項目がまとめられているところに大きな特長がある。特に,近年,女性診療科における更年期外来の重要性が増していることから,女性内科の検査を独立させた意義は大きいものと思われる。また,不妊症にかかわる多種類の検査が非常に上手に整理され,適度に詳しく解説されており,私など生殖医療の専門外の者にとってきわめてわかりやすい内容になっていると思う。
 また,個々の検査について詳しく読み進めてみると,女性診療科の医師またはその科の検査技師が自ら行なう検査,特に「細胞診」,「組織診」,「頸管粘液検査」,「精液検査」などでは,その方法や手技,および検査を実際に行なう上での注意点が実にていねいに記載されているのに気づく。すなわち,現実に検査を行なう者の立場に立って書かれているところが,本書のもう1つの特長と言える。

◆Problem-orientedの検査

 さらに,個々の検査の解説だけではなく,problem-orientedの形で,例えば,「排卵時期の予知方法」,「黄体期の評価法」,「不育症検査」といった項目が設けられている。すなわち,そのような検索を必要とする患者が来院した場合に本書を参照すれば,ただちに検査計画を立てることができるようになっている。これは,非常に便利である。できればこのようなproblem-orientedの項目を,婦人科腫瘍の章においても入れていただきたかったようにも思われる。しかしながら,あくまでもコンパクトであることが本書がめざすところであり,その意味では必要十分な内容と言える。
 以上のように,本書は女性診療科の実地臨床においてただちに役立つ優れものであり,外来にも1冊,病棟にも1冊備えておきたい書であると言えよう。
女性を診るすべての医師に必要な情報とスキルを満載
書評者: 堤 治 (東大大学院教授・産科婦人科学)
◆重視されるようになったEBM

 医学の進歩は日進月歩で,遺伝子診断を含めて新たな検査法が次々に開発され,より迅速に正確な診断が可能になってきている。その反面,多くの検査法の中から無駄を省き,要領よく必要な検査を選択し,得られたデータを正しく評価する必要が高まっている。また,臨床の場でEvidence-based Medicine(EBM)の重要性が認識され,検査値の解釈やそれに基づく診断や治療においてもEBMが重視されるようになった。
 婦人科領域もさまざまな分野がより専門化あるいは高度化し,一般臨床において実施する検査の数は,特殊なものを含め急増している。このたび倉智博久教授が編集された『婦人科検査マニュアル―データの読み方から評価まで』は,従来からの必須な検査から最近開発され臨床に不可欠となった検査までを,EBMを重視し,わかりやすく,活用しやすいマニュアルにまとめたものである。婦人科領域の分野ごとに,「第1章婦人科腫瘍の検査」,「第2章生殖生理の検査」,「第3章女性内科の検査」,「第4章感染症の検査」からなっている。
 婦人科腫瘍の検査は,細胞診からはじまる。本書は,できるだけ実際の診療に役立つようにという工夫が随所にみられるが,研修医が読んでも自分で行なうことができるように,細胞診の検体採取法が詳しく記されている。内視鏡,画像診断も,専門家が初心の者を手をとって教えるようにわかりやすい。「ここがポイント」の項も大変役に立つ。遺伝子診断はアップツーデートな項目で,パピローマウイルスや癌遺伝子なども取り入れられている。具体的な方法や,原理から検査結果の評価を平易に解説されているのがうれしい。 生殖生理の検査は,倉智教授の専門分野だけに,不妊症や内分泌疾患の診断や評価に必要な検査が網羅されている。特に内分泌機能検査は,各種ホルモン測定とホルモン負荷テストが具体的に述べられ,測定値の評価もそれぞれの専門家の説明がわかりやすい。婦人科でも必要性が増している男性不妊の検査も詳しく取り上げられている。
 女性内科の検査は,「閉経後女性の健康」に関連する部門を特にまとめ,充実させたもので,その視点は本書の特徴の1つということができる。コレステロール,トリグリセライドという血中脂質値や動脈硬化の評価など,今後,婦人科医が女性を長いスパンでトータルに診ていく上で欠くことのできない知識である。
 感染症の検査では,スタンダードな細菌検査はもちろん,最近需要が増えているウイルス検査の意義や具体的な方法が述べられている。血清学的検査,遺伝子検査は比較的最近の応用面までが評価されている。

◆臨床の場で座右に置いて活用するにふさわしいマニュアル

 書評を依頼され,本書を一気に通読した。本書は,女性を診るすべての医師に必要な情報とスキルが満載され,的確な診断のためのムダのない検査オーダーをするために,臨床の場で座右に置いて活用するのにふさわしいマニュアルである。同時に,各分野における最新の考え方をアップデートできる世代を超えた臨床医の読み物としても推薦できるものである。

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