SCID-Ⅱ
DSM-Ⅳ Ⅱ軸人格障害のための構造化面接

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DSM-IV II軸人格障害を評価するための標準的な構造化面接の翻訳。II軸の10の人格障害に加えて、DSM-IV付録「今後の研究のための基準案と軸」で言及されている障害までを評価対象とする。使用の手引では症例を挙げて面接法を解説してあり、初学者にも使いやすい。精神科臨床医、研究者はもとより、昨今話題の人格障害について学びたい医療関係者に好適の書。巻末に白紙テスト用紙付き。
Michael B. First / Miriam Gibbon / Robert L. Spitzer / Janet B. W. Williams / Lorna Smith Benjamin
監訳 髙橋 三郎
大曽根 彰
発行 2002年04月判型:B5頁:160
ISBN 978-4-260-11867-5
定価 4,180円 (本体3,800円+税)
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  • 目次
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SCID‐II使用の手引
 1. はじめに
 2. 歴史
 3. SCID‐IIの特徴
 4. SCID‐IIを施行する
 5. 項目ごとのSCID‐IIの注釈
 6. 練習
 7. データ処理
 8. 信頼性と妥当性
 9. 文献
 10. 付録:SCID‐IIのための症例
SCID‐II人格質問票
SCID‐II

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人格障害について学ぶのに好適の書
書評者: 前田 久雄 (久留米大教授・精神神経科学)
◆人格障害を診断するための閾値とは

 本著は,M. B. Firstらが執筆した『Structured Clinical Interview for DSM-IV Axis II Personality Disorders(SCID-II)』(American Psychiatric Publishing, Inc., 1997)の邦訳である。原著は,『SCID-II使用の手引き』,『SCID-II人格質問票』,『SCID-II』の3冊に分けて出版されているが,本著はこの順序で1冊にまとめられたものである。先行の『SCID-II for DSM-III-R』が大幅に改訂され,被験者の内的体験がよりよく反映される臨床面接に近い形にされた半構造化面接である。すなわち,前者に採用されていた自己記入方式の人格質問票に加えて,自由回答式の質問が数多く取り入れられ,さらには追加質問も準備され,自由な付加的質問も随時行なえるように構成されている。一方では,情報源として本人の自己評価だけでなく,面接時の言動や態度,家族,前医からの情報などを重視することも求められている。これらは,本来,正常からの連続的な偏倚である人格障害を診断するための閾値を,できるだけ確実な根拠にもとづいて定めようとするための工夫である。
 対象となる人格障害は,DSM-IV II軸の10のカテゴリーに,DSM-IVの付録Bに記載されている抑うつ性人格障害と受動攻撃性人格障害を加えた12である。質問の順序は,被検者への心理的影響を考慮してクラスターCの回避性人格障害から始まり,AからBへと配列されている。質問票およびSCID-IIとも119の質問が用意されており,94の項目について4段階評価を下すようになっている。それぞれの人格障害に関連した項目のうち,閾値を満たした項目数が一定の数(カテゴリー閾値)に達するか否かでカテゴリー診断がなされるが,それらの項目数により次元的診断も可能である。
 本面接の他の特徴としては,約20分で終了する質問票で「はい」と回答された質問についてのみSCID-II面接をすればよく,要する時間を節約できるようになっている。しかし,質問票では「はい」と回答される閾値がSCID-IIよりもかなり低く設定されており,意図的に偽陽性率を高くすることでスクリーニング機能の担保が図られている。したがって,質問票だけで診断を下すことはできない。ちなみに,翻訳者の調査では偽陽性率は40―82%であったという。さらには,予めSCID-Iあるいは臨床面接でI軸の前評価をすませておくことが前提となっている。この構造化面接は,症例の人格障害プロフィールを明らかにしたり,特定の人格障害に関する疫学調査を行なうなどの研究面だけでなく,臨床場面でも,問診の後の鑑別診断に用いることなどが推奨されている。

◆高まる人格障害への社会的関心

 先にも触れたように,訳者自身がすでに多数の症例に本面接を試みているが,必ずしも冷たい感じのする面接でなく,むしろ精神療法にもなったと述べている。これは,原著に込められている被検者への配慮によるだけでなく,よくこなれた日本語訳に負うところも大きいのであろう。近年わが国でも人格障害に関する社会的関心の高まりもあり,疫学や生物学的研究などの臨床研究が盛んになってきている。本訳著の出版は,まことに時宜を得たものであり,多くの臨床家や研究者に歓迎され重宝されるであろうことは確実である。卒後教育にも有用である。
DSM-IVの提唱する人格障害の正確な概念把握に役立つ
書評者: 越野 好文 (金沢大大学院教授・脳情報病態学)
 DSM-IIIは,1980年に米国精神医学会に登場した。わが国では,高橋三郎先生が中心になり,「DSM-III診断基準の適用とその問題点」と題したDSM-IIIを紹介する論文が,1980年10月から「臨床精神医学」に掲載され始めた。先生が中心になって始められたフィールドワークに参加させていただき,先生自ら金沢の地にご説明にこられたのも今となっては懐かしい思い出である。

◆診断革命もたらしたDSM-IIIと多軸評価システム

 精神科の診断に革命といってよいほどの変化をもたらしたDSM-IIIの意義は,いろいろあげられている。その1つに多軸評定システムがあり,I軸 臨床疾患,臨床的関与の対象となることのある他の状態,II軸 人格障害,精神遅滞,III軸 一般身体疾患,IV軸 心理社会的および環境的問題,V軸 機能の全体的評定(GAF)の5つの軸に基づき,包括的に患者に対応することができる。この中でII軸は,人格障害と精神遅滞を記録するものであり,また,顕著な不適応性の人格特徴および防衛機構を記録しておくためにも用いてよいとされる。人格障害を独立した軸として取りあげることによって,症状のはなばなしいI軸疾患に注意を集中するために見逃されがちな人格障害や精神遅滞が,存在する可能性を考えることが保証される。
 本書は,DSM-IVの多軸評定システムII軸にあたる人格障害を診断するための構造化面接であるSCID-II(『Structured Clinical Interview for DSM-IV Axis II Personality Disorders』, (American Psychiatric Publishing, Inc., 1997)の全訳である。
 SCID-IIは,3つの部分からなる。最初にSCID-IIの歴史,構造などの解説と,DSM-IVで規定された人格障害に関する詳細な症状記載と,臨床場面で行なう質問の解説がある。次に,被検者が記入するSCID-II人格質問票がある。この質問票を用いることで,その後の臨床面接で尋ねるべき質問項目を絞り込むことができ,II軸診断のために必要な面接時間が節約できる。最後に,実際に臨床場面で使用する各人格障害診断のスコアシートがあり,質問に対する被検者の答えが各人格障害の診断基準に適合するか否かが,詳細に吟味される。
 人格障害は多くの精神科医になじみが薄いせいか,II軸は臨床において十分活用されているとは言えないようである。SCID-IIには,人格障害の臨床像が具体的に生き生きと記載されており,人格障害への理解が深まる。本書を手にして,知識の乏しさ,なじみの薄さのゆえに,多くの人格障害を見逃していたのでないかと反省させられた。

◆求められるSCID-IIの活用

 臨床研究では,診断基準を満たす例を対象とすることが前提となる。そのためにSCID-IIが有用なことは言を待たない。診断基準を完全には満さないが,何らかの性格傾向の強い人に対してSCID-IIをどう活用するかが今後の課題であろう。例えば,薬物療法をはじめとする精神科治療法の発展はめざましいが,人格障害が共存すると治療転帰が劣るという報告が多い。診断基準を満たす場合に劣らず人格障害の傾向のある場合にも,治療転帰に影響する可能性があり,治療の際に考慮が求められる。SCID-IIにより人格傾向の特徴を把握することは臨床上の有用性が高い。
 訳者は本書が初学者に役立つと述べているが,多くの精神科医は人格障害に関しては初学者といってよいのではなかろうか。ということで本書は,DSM-IVの提唱する人格障害についての正確な概念を得るのに役立つことから,まず精神科医に熟読してもらいたい。さらにはコメディカル,医学生,研修医のみならず,司法関係者にもぜひ活用していただき,人格障害への理解を深めてほしいと願う。

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