はじめての心電図 第2版

もっと見る

初学者がつまずくポイントを熟知した著者が,長年の心電図教育のノウハウを盛り込んだ心電図入門書の決定版。はじめの一歩から医師として到達すべき水準まで,簡潔,明快な解説により無理なく導く。巻末の<セルフアセスメント53題>には,精選された必修レベルの問題を収載。心電図を読む力が着実に身に付く1冊。
兼本 成斌
発行 2002年05月判型:B5頁:340
ISBN 978-4-260-10255-1
定価 4,950円 (本体4,500円+税)
  • 販売終了

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 目次
  • 書評

開く

I 心電図の基本を学ぶ
 1. 正しい心電図のとりかた
 2. 心電波形のよびかた
 3. 心電図の誘導法
 4. 心筋の興奮と心電曲線
 5. 正常心電図
 6. P波
 7. 左室肥大
 8. 右室肥大
 9. 両室肥大
 10. 低電位(差)
 11. ST-T波とQT間隔の異常
 12. U波
II 心筋梗塞と心電図
 13. 心筋梗塞
III 電解質・薬剤の影響を理解する
 14. 電解質の異常
 15. ジギタリス中毒
IV 不整脈心電図を読む
 16. 不整脈総論
 17. 洞調律の異常
 18. 上室性調律
 19. 洞房ブロックと洞停止
 20. 洞不全症候群
 21. 早期収縮
 22. 心房細動・心房粗動
 23. 発作性上室性頻拍
 24. 発作性心室性頻拍
 25. 遅い頻拍
 26. 補充収縮・補充調律
 27. 房室ブロック
 28. 心室内伝導障害
 29. WPW症候群
 30. 危険な不整脈
 31. 不整脈の治療
V その他の心電図検査・人工ペースメーカー
 32. 運動負荷試験
 33. Holter心電図
 34. 人工ペースメーカー
用語解説
セルフアセスメント53題
セルフアセスメント53題(解答・解説)

開く

心電図をこれから勉強していく人には絶好の手引き書
書評者: 大江 透 (岡山大大学院教授・循環器内科学)
 この本は,(1)心電図の基本(第1章 心電図の基本を学ぶ),(2)虚血性心疾患の心電図(第1章の「ST―T波の異常」,第2章の「心筋梗塞と心電図」),(3)不整脈心電図(第4章 不整脈心電図を読む),(4)QT間隔,T波,U波の異常(第3章 電解質・薬剤の影響を理解する),(5)不整脈治療(第4章 不整脈心電図を読む),(6)運動負荷試験とホルター心電図(第5章 その他の心電図検査・人工ペースメーカー)などを中心に5章にまとめて構成されている。

◆具体的でわかりやすい記述内容

 「第1章 心電図の基本を学ぶ」では,正しい心電図のとりかた,心電波形の呼びかた,心電図の誘導法,心筋の興奮と心電曲線,正常心電図,の順序に解説し,心電図を初めて学ぶ人が直面するいろいろの疑問に対して順番に答えてくれる内容になっている。異常波形の診断として,P波異常(右房負荷,左房負荷,両房負荷,陰性負荷,両房負荷,陰性P波),QRS波形の異常(左室肥大,右室肥大,両室肥大,低電位),STの異常(ST上昇・下降)の診断と代表的な病気や病態を解説している。
 「第2章 心筋梗塞と心電図」では,最も重要な循環器疾患の1つである心筋梗塞の心電図所見を詳細に解説している。ここでは,心筋梗塞の典型的な心電図の説明のほか,診断根拠となるQ波やST上昇の機序を図を用いてわかりやすく説明している。
 「第3章 電解質・薬剤の影響を理解する」では,低カリウム血症,高カリウム血症,低カルシウム血症,高カルシウム血症の特徴的な心電図所見を説明し,ジギタリスによる心電図変化と中毒に伴って起こるいろいろの不整脈を解説している。ジギタリス中毒の臨床症状を心電図とあわせ表示して,ジギタリス中毒の診断基準を解説している。他の薬剤による心電図変化は,第1章の「QT間隔の異常」の項で説明している。
 「第4章 不整脈心電図を読む」では,洞調律の異常(洞房ブロック,洞停止,洞不全症候群),伝導障害(房室ブロック,心室内伝導障害,脚ブロック),早期収縮(上室性,心室性),心房粗細動,発作性上室性頻拍,発作性心室性頻拍,と重要な不整脈を網羅している。特に,初心者にとって難解な補充収縮・補充調律をわかりやすく説明している。また,副伝導路(WPW症候群)が関与する不整脈と緊急を有する危険な不整脈(Wide QRS頻拍心室頻拍,心室細動,両脚ブロック)を特別に取り扱ってその診断の重要性を強調している。さらに,最近,若年の男性の突然死として注目されているBrugada症候群の病態と心電図の特徴を解説している。不整脈の治療は,緊急時の治療,薬剤治療,非薬剤治療に分けて説明している。ここの記述は具体的に図で解説してあり,実際の治療に役立つように記述されている。

◆心電図をこれから勉強していく人には絶好の手引き書

 「第5章 その他の心電図検査・人工ペースメーカー」では,実際の器具が呈示されており,具体的でわかりやすい。
 この本で呈示されている心電図は,波形が大きく見やすい。また,P波,QRS波形,PR間隔,ST上昇,ST下降,QT間隔などの計測方法が具体的に示してあり,実際に初心者が心電図を読むのに役立つ。「考え方のポイント」と「診断のクライテリア」が大きい見出しで各項ごとに記載されているのは,心電図を初めて読む人にはわかりやすい。また,セルフチェックとセルフアセスメントが各項ごとにあるのは,読者が自分の理解度を知るのに大いに有益と考える。その意味でこの本は,著者が意図している心電図をこれから勉強していく人には,よい手引き書になると考える。
「わかる!」ためのポイントを伝授する心電図入門書
書評者: 小沢 友紀雄 (日大総研教授)
◆心電図を教えるノウハウを知りつくした著者の好書

 このたび兼本成斌博士が『はじめての心電図』を改訂され,第2版を出版された。兼本博士は循環器専門の優れた臨床家で,特に心電図に愛着を持って長年にわたりその臨床と教育に携わってこられ,筆者をはじめ多くの専門家が尊敬の念を抱いている方である。本書はさすがに心電図を教えるノウハウを知りつくした博士が書かれた内容となっている。
 「心電図の基本を学ぶ」,「心筋梗塞と心電図」,「電解質・薬剤の影響を理解する」,「不整脈心電図を読む」,「その他の心電図検査・人工ペースメーカー」の各大項目に分けて,それぞれの中で初心者が学ぶべき心電図の知識を実にわかりやすく解説している。その内容は,心電図の正しい記録の仕方から人工ペースメーカーなどの最近の治療法まで幅広く,ナース,検査技師から医学生や臨床医に至るまで広い範囲の方々に対する心電図の入門書として恰好の内容となっている。しかも,Brugada症候群や抗不整脈薬のSicilian Gambit分類など,最近の知見もきちんと盛り込んである。

◆群をぬく鮮明な心電図

 世に多くの心電図の書が出ているが,心電図の図が鮮明でないものが多い。筆者も心がけている持論は,「心電図の解説書の心電図波形は読者にわかるような綺麗なものでなければならない」ということである。その点,本書の心電図は鮮明で,著者の言いたいことが読者に理解しやすい。また,解説のために描かれた多くの図がわかりやすく,読者への親切な気配りが感じられる。
 各項目の中の主題は,「考え方のポイント」,「診断のクライテリア」,「まとめ」に整理され,理解を容易にするための工夫がなされているのが良い。さらに,各主題の最後に「セルフチェック」が設けられ,読者がその主題を理解できたか自分で確認できるようにしてあるとともに,本書の最後に医師国家試験を念頭に置いた「セルフアセスメント53題」(これは兼本博士の労作と言ってよい)が掲載されている。これらの問題を試すことで,読者が本書でどのくらいの実力をつけたかを自己診断できるようになっている。もともと心電図診断はクイズのような面白さがあり,落とし穴も仕掛けもある。本書を熟読した後で,本書の表紙に仕掛けられたクイズを解くことができれば,その読者は立派な心電図の読み手になったことを意味する(編集部註:この“クイズ”は制作上のミスにより生じたもので,著者が企図されたものではございません。この場をお借りし著者ならびに読者の皆様にお詫び申し上げます)。
 医学生のみならず,医療に携わるあらゆる分野の方々に,心電図の入門書として本書が広く読まれることを期待したい。

心電図教育のプロ中のプロが執筆した入門書の決定版
書評者: 村松 準 (湘南東部総合病院・臨床教育部長/前北里大教授)
高精度のハイテク診断技術が用いられるようなった現在においても,日常臨床における心電図の診断学的価値は不変である。
 このたび,畏友兼本成斌博士が『はじめての心電図』第2版を医学書院から出版された。
 兼本博士は,東海大学内科助教授を経て茅ヶ崎市に内科・循環器科クリニックを開設されご盛業中であるが,循環器病学に対する真摯な姿勢は変わることなく,現在でも内科学会総会や臨床心臓病談話会などに積極的に演題を発表されておられる。
 本書の第1版が,11年前(1991年)に出版されて以来,多くの医学生,研修医およびコメディカルの方々に受け入れられ,現在にいたっているとうかがっている。

◆臨床に即し診断的流れにそった構成,臨場感あふれる文体

 今回の改訂にあたり,大項目を5本の柱,すなわち,「I.心電図の基本を学ぶ」,「II.心筋梗塞と心電図」,「III.電解質・薬剤の影響を理解する」,「IV.不整脈の心電図を読む」,「V.その他の心電図検査・人工ペースメーカー」に分類し,頭の中ですっきり整理できるように配慮されたという。一見,ユニークな分類にもみえるが,臨床に即した診断学的流れの結果生まれた構成と言えるのだろう。
 本書は,全編を通じ臨場感あふれる文体で説明がなされており,あたかも著者が側にいて,著者の声が直接聞こえてくるようである。特徴は,「わかるためのポイント」が箇条書きに平易に記載されていることである。さらに特筆すべき点は,自験例から厳選された明瞭な心電図波形および要点をつかんだ自作の2色刷シェーマが,実に整然と呈示されていることである。これらは本書にすばらしい息吹きを与えている。
 臨床心電図の基礎的な事項に関しては,本文で必要かつ十分に要点が記載されている。少し込み入った基礎的または臨床的事項および特異な病態については,「Note」でまとめて述べられている。各章の終りにある「まとめ」および「セルフチェック」は,各章で得られた知識や記憶の確認に有用であろう。
 なお,最近注目されているトピックスとして,Brugada症候群,植込み型除細動器(ICD),automated external defibrillator(AED),心筋イオンチャンネル病,Sicillian Gambit分類なども取り上げられ,解説されている。
 巻末の「用語解説」は,初めて心電図を学ぶ人たちに大いに役立つであろう。また「セルフアセスメント53題」では,過去6年にわたって出題され公表された医師国家試験問題が新しい設問形式に改変され,心電図も自験例に入れ替えられて,すっきりした形で呈示されている。解説もていねいでわかりやすく,著者のきめ細かい配慮がうかがわれる。

◆初心者に魔力を持った心電図の入門書

 著者は,長年にわたり東海大学内科で心電図を講義し,研修指導に携わってきたプロである。本書はまさに初心者の心電図教育のノウハウを熟知したプロが書いた入門書である。
 「心電図は難しい」とか「わかりにくい」とか言われるが,本書ではそのような心配なしに,初心者を容易に心電図の世界に入り込ませてしまう魔力を持っている。そう思わせる著書である。心電図を初めて学ぼうとする医学生,研修医,コメディカルの方々に心からお勧めできる好著である。

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。