彦坂興秀の課外授業
眼と精神
高次大脳機能に関する最もホットなテーマを第一人者が解説
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日本人研究者として最も活躍している彦坂先生に聞く最新ニューロサイエンスの「課外授業」。大脳基底核を中心に,高次大脳機能に関する最もホットなテーマについて,基礎研究者と臨床医が,ヒトの運動,記憶,注意など「身近な生理学」の謎と正体に迫る。
*「神経心理学コレクション」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ | 神経心理学コレクション |
---|---|
著 | 彦坂 興秀 / 山鳥 重 / 河村 満 |
シリーズ編集 | 山鳥 重 / 彦坂 興秀 / 河村 満 / 田邉 敬貴 |
発行 | 2003年03月判型:A5頁:288 |
ISBN | 978-4-260-11878-1 |
定価 | 3,300円 (本体3,000円+税) |
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- 目次
- 書評
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開く
序章 神経生理学と神経心理学の交差する場所
第1章 大脳基底核研究の軌跡
第2章「彦坂ニューロン」の全貌
第3章 手続き記憶と大脳基底核
第4章 パラレル・ニューラル・ネットワーク
第5章 運動の生理学とその異常
第6章 歩行の生理学
第7章 高次大脳機能の生理学的基盤
第8章 注意と判断の生理学
第9章 新しいテーマと未来の研究者のために
文献
あとがき
索引
第1章 大脳基底核研究の軌跡
第2章「彦坂ニューロン」の全貌
第3章 手続き記憶と大脳基底核
第4章 パラレル・ニューラル・ネットワーク
第5章 運動の生理学とその異常
第6章 歩行の生理学
第7章 高次大脳機能の生理学的基盤
第8章 注意と判断の生理学
第9章 新しいテーマと未来の研究者のために
文献
あとがき
索引
書評
開く
暖かい雰囲気で展開される,現代神経科学の「課外授業」
書評者: 岩村 吉晃 (東邦大名誉教授)
◆経験豊かな「先生」と「生徒たち」
本書は,彦坂興秀氏(NIH主任研究員・神経生理学)が,山鳥重(東北大学教授・神経心理学),河村満(昭和大学教授・神経心理学)の両氏を相手に2日間にわたって行なった対談の記録である。3人とも,本書を含む「神経心理学コレクション」シリーズの編集者である。「課外授業」ということになっているが,大学で行なわれる授業と違い,生徒たちが神経心理学の立場から豊富な臨床経験に基づいて難しい質問をする。先生は生理学の分析的実験観察に基づき,得たりとばかりこれに答える。3人のヒト脳機能に対する造詣の深さにはつくづく敬服した。
彦坂氏は1978年に東大大学院を修了,その後,東邦大学,岡崎生理学研究所,順天堂大学を経て,昨年から米国NIHに移り,脳研究に没頭している超国際派の生理学者である。
本書は序章を含めて10章からなる。序章はこの「課外授業」に1年余り先だって行なわれた山鳥氏との対談の収録であるが,これが本書の要約になっていると思う。第1章は大脳基底核の研究史とその機能的役割の解説である。特にその眼球運動へのかかわりと系統発生的な見方がこの構造の機能を理解するのを助けてくれる。
第2章では彦坂氏の初期の研究,すなわち,東大,東邦大時代からNIHに留学したころ行なった,眼球運動を制御する脳幹のしくみとそれに対する大脳基底核の役割について述べていて,その内容は大変充実している。
第3章以降はその後の研究すなわち,順序手続き学習の手法により,大脳基底核,高次運動野,前頭前野,頭頂連合野,小脳と脳全体に展開された運動学習と記憶,報酬,動機付けなど大変重要なテーマに挑んだ研究の軌跡が語られる。
第5章,第6章は大脳基底核がかかわる運動異常,いわゆる不随意運動の記述である。そのあとの章では言語,睡眠,注意,判断,意思,感情といった現代神経科学のカレントトピックスが次々に登場し,先生だけでなく生徒たちの薀蓄が傾けられ,読者を楽しませる。最後の章では後に続く未来の研究者への研究のヒントとアドバイスである。アドバイスはまた9つのエスプリの効いたコラムのなかにもある。
◆心暖まる言葉のやりとり
順序が逆であるが,彦坂氏の書いた本書の「まえがき」には,彼の研究,教育に対する考え方がよく示されている。また,なぜいま日本を去って外国に行くのかが語られている。面白いことに「まえがき」の最後の2節は本書の書評ともいうべき内容になっている。これは生徒たち,すなわち本書の2人の共著者に対する賛辞なのである。これに答えて「あとがき」では山鳥,河村両氏の授業への感想と,NIHにむけて雄飛する彦坂氏への励ましの言葉が述べられ,本書の暖かくも楽しい雰囲気にふさわしい締めくくりとなっている。
本書は大脳基底核を中心に書かれた高次脳機能についての専門書であり,神経科学分野での必読書と考えられる。また難解な内容がわかりやすく解説され,興味深い話題が豊富に盛り込まれているので,医学部その他の教育の場で中枢神経系の講義をする際に,学生に何が面白いのかを知らせるために大いに役立つと思われる。
書評者: 岩村 吉晃 (東邦大名誉教授)
◆経験豊かな「先生」と「生徒たち」
本書は,彦坂興秀氏(NIH主任研究員・神経生理学)が,山鳥重(東北大学教授・神経心理学),河村満(昭和大学教授・神経心理学)の両氏を相手に2日間にわたって行なった対談の記録である。3人とも,本書を含む「神経心理学コレクション」シリーズの編集者である。「課外授業」ということになっているが,大学で行なわれる授業と違い,生徒たちが神経心理学の立場から豊富な臨床経験に基づいて難しい質問をする。先生は生理学の分析的実験観察に基づき,得たりとばかりこれに答える。3人のヒト脳機能に対する造詣の深さにはつくづく敬服した。
彦坂氏は1978年に東大大学院を修了,その後,東邦大学,岡崎生理学研究所,順天堂大学を経て,昨年から米国NIHに移り,脳研究に没頭している超国際派の生理学者である。
本書は序章を含めて10章からなる。序章はこの「課外授業」に1年余り先だって行なわれた山鳥氏との対談の収録であるが,これが本書の要約になっていると思う。第1章は大脳基底核の研究史とその機能的役割の解説である。特にその眼球運動へのかかわりと系統発生的な見方がこの構造の機能を理解するのを助けてくれる。
第2章では彦坂氏の初期の研究,すなわち,東大,東邦大時代からNIHに留学したころ行なった,眼球運動を制御する脳幹のしくみとそれに対する大脳基底核の役割について述べていて,その内容は大変充実している。
第3章以降はその後の研究すなわち,順序手続き学習の手法により,大脳基底核,高次運動野,前頭前野,頭頂連合野,小脳と脳全体に展開された運動学習と記憶,報酬,動機付けなど大変重要なテーマに挑んだ研究の軌跡が語られる。
第5章,第6章は大脳基底核がかかわる運動異常,いわゆる不随意運動の記述である。そのあとの章では言語,睡眠,注意,判断,意思,感情といった現代神経科学のカレントトピックスが次々に登場し,先生だけでなく生徒たちの薀蓄が傾けられ,読者を楽しませる。最後の章では後に続く未来の研究者への研究のヒントとアドバイスである。アドバイスはまた9つのエスプリの効いたコラムのなかにもある。
◆心暖まる言葉のやりとり
順序が逆であるが,彦坂氏の書いた本書の「まえがき」には,彼の研究,教育に対する考え方がよく示されている。また,なぜいま日本を去って外国に行くのかが語られている。面白いことに「まえがき」の最後の2節は本書の書評ともいうべき内容になっている。これは生徒たち,すなわち本書の2人の共著者に対する賛辞なのである。これに答えて「あとがき」では山鳥,河村両氏の授業への感想と,NIHにむけて雄飛する彦坂氏への励ましの言葉が述べられ,本書の暖かくも楽しい雰囲気にふさわしい締めくくりとなっている。
本書は大脳基底核を中心に書かれた高次脳機能についての専門書であり,神経科学分野での必読書と考えられる。また難解な内容がわかりやすく解説され,興味深い話題が豊富に盛り込まれているので,医学部その他の教育の場で中枢神経系の講義をする際に,学生に何が面白いのかを知らせるために大いに役立つと思われる。
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