言語聴覚士のための
子どもの聴覚障害訓練ガイダンス
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- 目次
- 書評
目次
開く
第1章 聴力検査と補聴器
A. 乳幼児の聴力検査に関するアドバイス
B. 乳幼児の補聴器装用に関するアドバイス
C. 症例
第2章 小児の聴能言語指導
A. 本章における指導段階
B. 症例
第3章 幼・小児の人工内耳
A. 初期のマッピングに関するアドバイス
B. 症例
キーワード索引
A. 乳幼児の聴力検査に関するアドバイス
B. 乳幼児の補聴器装用に関するアドバイス
C. 症例
第2章 小児の聴能言語指導
A. 本章における指導段階
B. 症例
第3章 幼・小児の人工内耳
A. 初期のマッピングに関するアドバイス
B. 症例
キーワード索引
書評
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聴覚障害幼児に対する訓練経過を具体的に記載
書評者: 能登谷 晶子 (金沢大教授・保健学科)
◆経験の浅い言語聴覚士にも心強い
本書は,聴覚障害幼児を対象とした聴力検査,補聴器装用,人工内耳のマッピング,聴能言語指導の実際について,具体的な症例を提示しながら訓練経過をまとめたものである。第1章の「聴力検査と補聴器」では,乳幼児の聴力検査を担当する現場の言語聴覚士にとって必要な検査の具体的な方法や注意点が書かれている。また,両側外耳道閉鎖症例や重複症例に対する補聴器の装用指導経過や両親指導などについてもふれられている。第2章の「小児の聴能言語指導」では,前言語期レベルから構文レベルにいたる指導の経過がまとめられている。第3章の「幼・小児の人工内耳」では,各症例のマップが実際に提示されているので,臨床で人工内耳のマッピングをしている言語聴覚士にとって大変役立つところである。
実際の臨床場面では,ABR,CORなどによってわが子の聴覚障害が明らかとなった場合にも,家族にわが子の聴覚障害を受容してもらうことは容易ではない。本書には随所に長年聴覚障害幼児の臨床を実践してきた言語聴覚士が臨床場面で行っているさまざまな工夫も記載されており,まだ臨床経験が浅い言語聴覚士にとって大変心強いものになっている。
◆聴覚障害幼児の訓練施設は増えつつある
聴覚障害を担当する言語聴覚士は総合病院の耳鼻咽喉科,難聴幼児通園施設,聾学校,耳鼻咽喉科開業医などで働いている場合が多いと思われる。現在,聴覚障害の言語訓練を行っている言語聴覚士にとっても大変役に立つ1冊であるだけでなく,これから言語聴覚士をめざしている養成校の学生さんや保健師,看護師,学校の聞こえや言葉の教室担当者にとっても役立つ本である。聴覚障害児童を扱う大変さとともに,聴覚障害の領域が言語聴覚士にとってとてもやりがいのある領域であることも本書を御一読されれば伝わってくる。
最後に,地方ではまだまだ聴覚障害は聾学校で訓練するものとしか思いつかない医療関係者も多い。しかし最近は総合病院のみならず,一般の耳鼻咽喉科にも言語聴覚士が配置されるようになり,聴覚障害幼児の訓練が居住地の近くで可能になりつつあることを付け加えておく。
悩める言語聴覚士へのヒント
書評者: 石津 希代子 (福井医療技術専門学校)
◆聴覚障害の臨床への不安
先日,私が勤務している専門学校の卒業生から電話があった。彼女は,臨床3年目の言語聴覚士である。話を聞くと,今度,初めて聴覚障害をもつ子どもの担当となったとのこと。彼女は「どうしたらいいですか? 何からはじめて何をしていけばいいか,まったくわからないんです。」「補聴器をつけてるんですが,何をしなければいけないんですか?」「参考になる本はないですか?」など,これから挑むことになる聴覚障害の臨床への不安を訴えていた。
実際に,このような相談は卒業生からよく受ける。「子どもの聴覚障害」は,聴覚を含めた発達全体に関する知識と,長期的視点に立ったアプローチ,関連職種との密な連携が必要となる。そのためか,初めて難聴児と関わることとなった場合,何から手をつけて具体的にどうするのか,臨床経験の少ない言語聴覚士は,どうしても身構えて,混乱してしまう。またある程度,臨床経験があっても,家族や学校など周囲への介入の方法,補聴器装用や装用中止のタイミングの見極めなど,どのように実施すればよいのかわからず,悩みは尽きない。
過去に聴覚障害を取り上げた書籍は,数多く出版されている。評価や訓練,補聴機器,家族支援など様々な内容が細かく説明してあるが,目の前の症例の,どの時期に何をどのように導入し実施すればよいのか,それらの繋がりが見え難く困惑する。
◆臨床に密着したガイダンスに納得
本書は立石恒雄先生,木場由紀子先生をはじめ,長年,聴覚障害をもつ子どもたちと関わっているベテラン言語聴覚士による症例集となっている。子どもの発達に沿って,どのようなことを考え配慮し実践するか,実施内容の経過という縦の流れと,各内容の横の繋がりが非常にわかりやすい。本書は,子どもの聴覚障害への指導の実践が見える書といえる。
第1章では乳幼児に聴力検査や補聴器を装用させる場合のアドバイスや問題点が,9例の経過を通して丁寧に説明されている。第2章では,小児の聴能言語指導について,10例の指導経過がまとめられ,難聴幼児を指導していく上での工夫や注意点が書かれている。第3章では,4例が紹介されており,人工内耳のマッピングの流れがわかりやすく書かれている。これらの内容は具体的で理解しやすく,「聴覚障害の臨床に戸惑う実務経験の少ない言語聴覚士」にとって,待ちに待った本である。
この書の特徴は,紹介されている各々の症例に,症例検討と,臨床における考え方やポイント,留意点や応用などが書かれていることである。読み手は,臨床家としての着眼点や考え方に,「そうか!」と思い,また著者たちの経験からのアドバイスや留意点に,「なるほど」と感じるだろう。これらの臨床に密着したガイダンスは,他の本には決して載っていない,この本だけの魅力である。
現在,本書に記述されている症例と似たようなケースを経験し,悩んでいる言語聴覚士は少なくない。この本はその場合の考え方や進め方について,何らかのヒントを与えてくれる。時に,著者たちが困難な症例に遭遇し,悩まれた様子も伺え,「先輩言語聴覚士も迷っておられたんだ」と共感し,あらたに臨床に取り組む意欲となろう。また,読み手が言語聴覚士をめざす学生の場合,この本を通して,子どもの聴覚障害の臨床の流れや,それに対する先輩言語聴覚士の熱意を感じ,一層,臨床への興味がわくことと思う。
自己の臨床をまとめ公表することは,なかなかできることではない。著者たちが,われわれ後輩のために臨床のすべてをさらけだし,それを伝えてくださる思いやりと愛情に深く感謝する。
早速,冒頭の彼女に,この本を紹介しようと思う。
書評者: 能登谷 晶子 (金沢大教授・保健学科)
◆経験の浅い言語聴覚士にも心強い
本書は,聴覚障害幼児を対象とした聴力検査,補聴器装用,人工内耳のマッピング,聴能言語指導の実際について,具体的な症例を提示しながら訓練経過をまとめたものである。第1章の「聴力検査と補聴器」では,乳幼児の聴力検査を担当する現場の言語聴覚士にとって必要な検査の具体的な方法や注意点が書かれている。また,両側外耳道閉鎖症例や重複症例に対する補聴器の装用指導経過や両親指導などについてもふれられている。第2章の「小児の聴能言語指導」では,前言語期レベルから構文レベルにいたる指導の経過がまとめられている。第3章の「幼・小児の人工内耳」では,各症例のマップが実際に提示されているので,臨床で人工内耳のマッピングをしている言語聴覚士にとって大変役立つところである。
実際の臨床場面では,ABR,CORなどによってわが子の聴覚障害が明らかとなった場合にも,家族にわが子の聴覚障害を受容してもらうことは容易ではない。本書には随所に長年聴覚障害幼児の臨床を実践してきた言語聴覚士が臨床場面で行っているさまざまな工夫も記載されており,まだ臨床経験が浅い言語聴覚士にとって大変心強いものになっている。
◆聴覚障害幼児の訓練施設は増えつつある
聴覚障害を担当する言語聴覚士は総合病院の耳鼻咽喉科,難聴幼児通園施設,聾学校,耳鼻咽喉科開業医などで働いている場合が多いと思われる。現在,聴覚障害の言語訓練を行っている言語聴覚士にとっても大変役に立つ1冊であるだけでなく,これから言語聴覚士をめざしている養成校の学生さんや保健師,看護師,学校の聞こえや言葉の教室担当者にとっても役立つ本である。聴覚障害児童を扱う大変さとともに,聴覚障害の領域が言語聴覚士にとってとてもやりがいのある領域であることも本書を御一読されれば伝わってくる。
最後に,地方ではまだまだ聴覚障害は聾学校で訓練するものとしか思いつかない医療関係者も多い。しかし最近は総合病院のみならず,一般の耳鼻咽喉科にも言語聴覚士が配置されるようになり,聴覚障害幼児の訓練が居住地の近くで可能になりつつあることを付け加えておく。
悩める言語聴覚士へのヒント
書評者: 石津 希代子 (福井医療技術専門学校)
◆聴覚障害の臨床への不安
先日,私が勤務している専門学校の卒業生から電話があった。彼女は,臨床3年目の言語聴覚士である。話を聞くと,今度,初めて聴覚障害をもつ子どもの担当となったとのこと。彼女は「どうしたらいいですか? 何からはじめて何をしていけばいいか,まったくわからないんです。」「補聴器をつけてるんですが,何をしなければいけないんですか?」「参考になる本はないですか?」など,これから挑むことになる聴覚障害の臨床への不安を訴えていた。
実際に,このような相談は卒業生からよく受ける。「子どもの聴覚障害」は,聴覚を含めた発達全体に関する知識と,長期的視点に立ったアプローチ,関連職種との密な連携が必要となる。そのためか,初めて難聴児と関わることとなった場合,何から手をつけて具体的にどうするのか,臨床経験の少ない言語聴覚士は,どうしても身構えて,混乱してしまう。またある程度,臨床経験があっても,家族や学校など周囲への介入の方法,補聴器装用や装用中止のタイミングの見極めなど,どのように実施すればよいのかわからず,悩みは尽きない。
過去に聴覚障害を取り上げた書籍は,数多く出版されている。評価や訓練,補聴機器,家族支援など様々な内容が細かく説明してあるが,目の前の症例の,どの時期に何をどのように導入し実施すればよいのか,それらの繋がりが見え難く困惑する。
◆臨床に密着したガイダンスに納得
本書は立石恒雄先生,木場由紀子先生をはじめ,長年,聴覚障害をもつ子どもたちと関わっているベテラン言語聴覚士による症例集となっている。子どもの発達に沿って,どのようなことを考え配慮し実践するか,実施内容の経過という縦の流れと,各内容の横の繋がりが非常にわかりやすい。本書は,子どもの聴覚障害への指導の実践が見える書といえる。
第1章では乳幼児に聴力検査や補聴器を装用させる場合のアドバイスや問題点が,9例の経過を通して丁寧に説明されている。第2章では,小児の聴能言語指導について,10例の指導経過がまとめられ,難聴幼児を指導していく上での工夫や注意点が書かれている。第3章では,4例が紹介されており,人工内耳のマッピングの流れがわかりやすく書かれている。これらの内容は具体的で理解しやすく,「聴覚障害の臨床に戸惑う実務経験の少ない言語聴覚士」にとって,待ちに待った本である。
この書の特徴は,紹介されている各々の症例に,症例検討と,臨床における考え方やポイント,留意点や応用などが書かれていることである。読み手は,臨床家としての着眼点や考え方に,「そうか!」と思い,また著者たちの経験からのアドバイスや留意点に,「なるほど」と感じるだろう。これらの臨床に密着したガイダンスは,他の本には決して載っていない,この本だけの魅力である。
現在,本書に記述されている症例と似たようなケースを経験し,悩んでいる言語聴覚士は少なくない。この本はその場合の考え方や進め方について,何らかのヒントを与えてくれる。時に,著者たちが困難な症例に遭遇し,悩まれた様子も伺え,「先輩言語聴覚士も迷っておられたんだ」と共感し,あらたに臨床に取り組む意欲となろう。また,読み手が言語聴覚士をめざす学生の場合,この本を通して,子どもの聴覚障害の臨床の流れや,それに対する先輩言語聴覚士の熱意を感じ,一層,臨床への興味がわくことと思う。
自己の臨床をまとめ公表することは,なかなかできることではない。著者たちが,われわれ後輩のために臨床のすべてをさらけだし,それを伝えてくださる思いやりと愛情に深く感謝する。
早速,冒頭の彼女に,この本を紹介しようと思う。