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ブレインサイエンス・レビュー2001

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脳の世紀と期待されている21世紀に入り,「脳を知る」「脳を守る」「脳を創る」の研究領域の進歩発展は加速度的に高まると期待されている。本書は脳科学の最先端を推進する活動を行っているブレインサイエンス振興財団が編集する啓蒙書。脳科学に興味を持つすべての人々に,この領域の最先端の研究成果と現況をレビューする。
編集 (財)ブレインサイエンス振興財団 / 伊藤 正男 / 川合 述史
発行 2001年09月判型:A5頁:304
ISBN 978-4-260-11861-3
定価 3,850円 (本体3,500円+税)
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序章 脳研究の波頭―機能分子から神経疾患まで(川合述史) 
I. 神経発生と分化
 1. オリゴデンドロサイト発生系譜と神経接着分子L1(伊藤康一)
 2. オリゴデンドロサイトの発生と細胞表面分子(小野勝彦)
 3. 細胞の分化・増殖のレドックス制御(鎌田英明)
 4. 神経細胞の発生過程における細胞極性(林 謙介) 
II. 神経細胞の化学信号伝達
 5. グルタミン酸受容体チャネルの構造と機能(佐原資謹)
 6. グルタミン酸トランスポーターの機能解析(田中光一)
 7. 神経特異的RGSの加速作用の制御機構(齊藤 修)
 8. 副腎髄質細胞における低酸素受容機構(井上真澄) 
III. 神経回路の構造と機能
 9. 神経伝達物質の放出・受容に伴うニューロンの局所的機能と微細形態変化の測定(伊藤悦朗・戸島拓郎)
 10. 孤束核ニューロン活動パターンの光学的解析(佐藤勝重)
 11. 嗅球糸球体の定性的,定量的形態解析(小坂克子)
 12. 大脳皮質の局所神経回路(金子武嗣) 
IV. 脳機能の発現
 13. 分子から時へ:生体リズムの発振機構(岡村 均)
 14. 歩行リズム生成・制御の基本神経機構の構築と作動様式(松山清治)
 15. 小脳における上肢随意運動の学習機構の解明(北澤 茂) 
V. 神経疾患と遺伝子
 16. 神経系でのアポE産生細胞の同定とその制御(内原俊記)
 17. GAPDHの神経変性疾患における機能(澤 明)
 18. アンジェルマン症候群の発症機序の解明(木住野達也)

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広汎な神経科学の選ばれた研究の解説
書評者: 井手 千束 (京大大学院教授・機能微細形態学)
 このレビュー誌は,ブレインサイエンス振興財団の研究助成受賞者と塚原仲晃賞受賞者の研究紹介である。片寄らない分野から受賞者が選ばれるように配慮されており,本書の内容も神経科学の広い分野を網羅している。項目ごとの内容は,次のとおりである。
 (1)神経発生と分化:オリゴデンドロサイトは最近注目されてきたが,本書では培養系におけるオリゴデンドロサイトの接着因子,および発生におけるオリゴデンドロサイトの移動という興味深いテーマが扱われている。また,シグナル伝達系のレドックス制御,ニューロンにおける極性の変化のメカニズムが紹介されている。
 (2)神経細胞の化学信号伝達:グルタミン酸受容体は中枢神経機能の解明のポイントの1つであるが,本書では受容体のサブユニット機能,およびノックアウトマウスの作成によるトランスポーターの機能が論じられている。また,G蛋白質調節因子RGS(regulator of G protein signaling),副腎における低酸素受容機構などおもしろい研究がある。
 (3)神経回路の構造と機能:伝達物質の放出に伴うシナプス前膜の微細形態の変化は形態学的に重要で,原子間力顕微鏡での観察は新しい挑戦であろう。孤束核ニューロンの活動パターン,嗅球の免疫組織化学を基礎にした定量的解析,および大脳皮質の局所的ニューロン結合の解析など,多彩なテーマである。
 (4)脳機能の発現:サーカディアンリズム,歩行リズムの生成,小脳における上肢の動きの学習機構の3つのテーマである。特に,運動に関する脳機能の発現は,重要な分野と思われる。
 (5)神経疾患と遺伝子:アルツハイマー病のApoE蛋白,神経変性疾患でのGAPDH(glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase)の関与,およびアンジェルマン症候群など,興味深い内容がある。

◆参考になる日本での新しい研究の芽の探索

 本書は,トピックスというよりは選ばれた研究の解説である。専門でない分野の研究には普段接しないものであるが,本書は広い分野から選ばれた研究で,現在の神経科学の動向を知ると同時に,日本での新しい研究の芽とも言えるものがどのあたりにあるかという観点からも大いに参考になり,教えられるところが大きい。
 なお,写真は白黒であるが,レーザー顕微鏡の時代となり,今後はカラー印刷が望まれる。

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