• HOME
  • 書籍
  • ミニマム創 内視鏡下泌尿器手術


ミニマム創 内視鏡下泌尿器手術
Portless Endoscopic Urological Surgery

もっと見る

内視鏡下手術の低侵襲性と開腹手術の操作性という両者のメリットを備えた画期的な泌尿器手術アトラス。2~5cmの切開創から,直視と内視鏡視で術野を確認し,指という最も優れたセンサー,かつ手術器具を用いる新世紀の手術。特殊なスキルも器具も要らず,コストも患者の負担も軽い。その全貌とテクニックのすべてを本書で紹介する。
編著 木原 和徳
発行 2002年07月判型:B5頁:216
ISBN 978-4-260-13356-2
定価 9,020円 (本体8,200円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 目次
  • 書評

開く

【口絵】手術例
I. 手術の概要
 1. 基本概念
 2. 皮切の標準サイズ
 3. 手術の10要点
 4. 手術の10要点の説明
 5. Pure laparoscopic surgeryおよび従来の開放手術の問題点
 6. 本手術の基本操作
 7. 本手術の特徴
 8. 本手術の問題点
II. 手術の実際
 手術のはじめに
 1. ミニマム創 内視鏡下根治的腎摘除
 2. ミニマム創 内視鏡下副腎摘除
 3. ミニマム創 内視鏡下腎尿管全摘除
 4. ミニマム創 内視鏡下腎部分切除
 5. ミニマム創 内視鏡下骨盤リンパ節郭清
 6. ミニマム創 内視鏡下ストーマ創利用膀胱全摘除+回腸導管造設
 7. ミニマム創 内視鏡下膀胱全摘除+新膀胱形成
 8. ミニマム創 内視鏡下前立腺全摘除
 9. その他のミニマム創 内視鏡下手術

開く

低侵襲で操作性に優れた画期的泌尿器手術のアトラス
書評者: 荒井 陽一 (東北大大学院教授・泌尿器科学分野)
◆完成の域に達した1つの手術体系

 開放手術の欠点は,文字どおり創が大きく術後の回復が遅れることにある。腹腔鏡下手術は,創の大きさは侵襲そのものである,といういわば当たり前のことを見事に証明して見せた。東京医科歯科大学の木原和徳教授編著による『ミニマム創内視鏡下泌尿器手術』は,創の最小化へのもう1つの新しい方向性を示した画期的なものである。
 本書は,泌尿器科メジャーサージェリーのほとんどを網羅しており,すでに200例以上の症例でその有効性と安全性が実証されている点は特筆に値する。1つの手術体系として完成の域にまで達せしめた木原教授の精力的な仕事に,心より賛辞をおくりたい。

◆開放手術と腹腔鏡下手術の両者のメリットを備える

 泌尿器科は腹腔鏡下手術の入門的な適応症例に乏しく,教育上の大きな障害になっている。この点,ミニマム創手術の手術操作は開放手術のそれと同じであり,開放手術からの移行に抵抗が少ないであろう。しかも高価で特殊な器具や炭酸ガスを必要としない。木原教授は,いきなりミニマム創手術を導入するのではなく,まず創内に内視鏡を入れて術野を観察することを勧めている。習熟度に合わせて少しずつ創を小さくしていけばよいわけである。
 実は本術式の最大の特徴は,開放手術にこの内視鏡を取り入れたことにある。予想される窮屈な操作野の欠点が,内視鏡と独自に考案した器具によって見事に補われている。従来の開放手術の最大の問題点は,創の大きさよりも「開放」の名称とは逆に,その「密室性・盲目性・非共有性」にあったことである。手術の第1助手は,決して執刀医と同じ術野ではない。先輩の手術を見た後にいざ自分が執刀という時に何故か上手くできなかったということは誰もが経験する。ましてや第2助手以下の者にとっては,密室の手術であった。モニターによる術野の共有は,手術の客観性と再現性を実現し,結果としていちじるしい教育的効果をもたらす。ミニマム創に限らず通常の開放手術でも大いに内視鏡を利用すべきであろう。
 また本術式の成功の理由に,尿路再建などを除き徹底して後腹膜操作にこだわった点が上げられる。腹膜外アプローチでは,腹膜そのものが自然な鉤の一部として作用する。したがって,ミニマム創でも助手の持つ鉤の有効性が活かされやすい。解剖学的剥離面に沿って展開すれば,腸管に邪魔されずに大きな視野が展開できる。これは泌尿器科医が経験的に知っていることであり,また最もなじみやすい展開法でもある。手術では,時に症例ごとに最適なアプローチを選択する柔軟さが必要である。さまざまな術式が追試され,絶えず改良するところに手術のおもしろさがあり,また外科医としての醍醐味もある。
 本書は,従来の開放手術と腹腔鏡下手術の両者の優れた点を取り入れたユニークな手術書である。ラパロスコピストもオープンサージャンも,一度手にとってそのコンセプトを勉強してみることをお勧めしたい。
新しい発想が手術を変える
書評者: 松田 公志 (関西医大教授・泌尿器科学)
◆驚異の「ミニマム創内視鏡下手術」の提案

 泌尿器科に腹腔鏡手術が導入されて,12年が経過した。精索を剥離してクリップをかけるという単純な操作に難渋した当初からみれば,前立腺全摘除術や膀胱全摘除術が行なえるまでになった進歩には,目を見張るものがある。こうした進歩を支えてきたのは,医療技術の進歩とともに,低侵襲手術開発に向けての社会の要請と泌尿器科医の意欲であった。

 2001年春,神戸での日本泌尿器科学会で,泌尿器科の主要な手術すべてについて新しいタイプの低侵襲手術が大々的に発表された。東京医科歯科大学木原和徳教授による,「ミニマム創内視鏡下手術」の提案である。開放手術から腹腔鏡手術への流れに身をおいていた多くの泌尿器科医にとって,「あっ」という驚きとともにじっと手許を見つめるようなインパクトのある発表であった。従来の開放手術と同じ手法で,傷を小さくする,そのために内視鏡を利用する。手術侵襲を小さくしようという目的を突き詰める中で編み出された,新たな提案である。その提案には,何のために何をするのか,腹腔鏡手術を推し進めてきたものに対する厳しい問いかけも内蔵されている。「早く回復するためなら,腹腔鏡手術の形式にとらわれる必要がない」,合理的な考えの集約とも言える。

 腹腔鏡手術かミニマム創内視鏡下手術か,優劣をつけるのは難しいし,その必要もなかろう。どちらがより多くの患者に受け入れられ,より多くの外科医に支持されるか,いずれおのずと明らかになろう。しかし,技術を創出した基礎になる考え方は共通であり,いつまでも消えることがない。「治療を受ける間も患者のQOLを重視しよう,手術の侵襲を低減しよう」。腹腔鏡手術もミニマム創内視鏡下手術も,この共通の目的地に向かう少し別の道筋に過ぎない。

◆期待される外科系他領域への発展

 腹腔鏡手術では,現在,いかに技術を伝えるか,いかに安全に普及させるか,教育システムの構築が最も重要な課題として議論されている。ドライボックスでの鉗子操作の練習,大型動物を用いた手術研修,医局やグループを超えた手術指導など,ステップを踏んだ研修体制が,泌尿器科を含めて多くの外科領域で広まりつつある。このミニマム創内視鏡下手術においても,いかに伝えるか,広めるか,その戦略が重要であろう。さらに,ひとり泌尿器科のみならず,外科系他領域への発展が,手術体系として確立されるためには必須と考える。すでに,頸部外科領域では,甲状腺や上皮小体に対する手術手技として,同じようなコンセプトを持ったミニマム創内視鏡下手術であるVANS(video assisted neck surgery)がわが国で開発され,世界的にも広く受け入れられている。これら他領域の手術と連携してその本質を深めることが,それぞれの領域での発展に大きく寄与するであろう。

 わが泌尿器科におけるミニマム創内視鏡下手術の将来やいかに。木原教授の行動力と指導力によって大きく発展するものと信じているが,その第一歩となる本書『ミニマム創内視鏡下泌尿器手術』の発刊を,同じ目的を持つ泌尿器科医として心から祝福するとともに,多くの泌尿器科医と患者によって,この術式の客観的な評価がなされることを期待するものである。

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。