米国精神医学会タスクフォースレポート
ECT実践ガイド

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米国精神医学会(APA)による電気けいれん療法(ECT)実践のためのガイドブック。最新の情報に基づき,ECTを安全かつ有効に行うための推奨事項を満載。適応,手技などの基本事項はもとより,インフォームド・コンセント,トレーニングについても詳述。同意書と説明書のサンプル付。これからのECTを考えるための必読書。
監訳 日本精神神経学会 電気けいれん療法の手技と適応基準の検討小委員会
発行 2002年05月判型:B5頁:200
ISBN 978-4-260-11873-6
定価 6,380円 (本体5,800円+税)
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  • 目次
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第1章 序言
第2章 ECTの適応
第3章 重大な危険を伴う身体的状態
第4章 特殊な患者群に対するECTの施行
第5章 副作用
第6章 ECT前評価
第7章 ECTコース中の薬物の使用
第8章 ECTのインフォームド・コンセント
第9章 治療スタッフ
第10章 場所,設備,備品
第11章 治療手技
第12章 転帰の評価
第13章 初回ECTコース終了後の治療
第14章 文書化
第15章 ECTにおける教育とトレーニング
第16章 ECTの資格認定
付録A 文書改訂プロセスに協力した個人および団体
付録B ECTに関する同意および患者情報文書のサンプル
 1. 電気けいれん療法(ECT)同意説明書:急性期
 2. 電気けいれん療法(ECT)同意説明書:継続・維持療法
 3. 患者への説明文書のサンプル

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タイムリーな電気けいれん療法の実践的ガイドブック
書評者: 高橋 清久 (国立精神・神経センター総長)
◆ECTを安全かつ有効に行なうための貴重な情報

 本書は,米国精神医学会タスクフォースがまとめた電気けいれん療法(ECT)に関するレポートの翻訳であり,ECTを巡る「治療,トレーニングと資格のための推奨事項」という副題がついている。
 翻訳には,日本精神神経学会の電気けいれん療法の手技と適応基準の検討小委員会(委員長:本橋伸高)があたっている。日本精神神経学会は,米国精神医学会から出されている各種のガイドラインをはじめ多くの翻訳を精力的に行ない,わが国の精神科医師らに貴重な情報を提供してくれているが,その努力にまず敬意を表したい。
 電気けいれん療法については,現在,わが国では賛否両論がある。かつて,この療法が純粋に治療としてではなく,患者さんに対して懲罰的に使われたといった忌わしい歴史もあって,本治療法に対してある種の偏見が残っている。しかし,その治療効果と安全性については多くの報告がなされ,適応もパーキンソン病など身体疾患にも拡がっている。特に麻酔下で行なわれる修正型ECT(modified ECT)になってからは,その安全性は増している。さらにごく最近であるが,外国で使用されている短パルス波刺激装置が医療機器として厚生労働省から認可されたため,これからはわが国でも電気けいれん療法が促進されるであろう。短パルス波刺激装置を用いることにより定電流のパルス列を定量的に供給し,それをモニターすることが可能であるため,個々の患者さんに適した電気量を投与するといったきめ細かい治療法も可能となる。本書もこの治療器を使用することを推奨する立場で書かれており,このような時期に本書が刊行されたことは,まさにタイムリーと言えよう。
 本書は,ECTに関する必要にして十分な情報が盛り込まれている。16章からなるが,その主な内容は,「ECTの適応」,「循環器系・中枢神経系・呼吸器系など重大な危険を伴う身体状態」,「高齢者や妊婦など特殊な患者群に対するECTの施行」,「心血管系や遷延性けいれんなどECTの副作用」,「施行前に行なうべき評価」,「ECTコース中の薬物の使用」,「インフォームド・コンセント」,「必要な治療スタッフ」,「ECT施行に必要な場所・設備・備品」,「実際の細かな治療手技」,「転帰の評価」,「初回ECTコース終了後の治療」,「文書化(記録として残すべき事項)」,「教育とトレーニング」,「治療チームの各職種の資格認定」などである。これらに加えて,「同意および患者情報文書サンプル」が付録として加えられている。これは,急性期と継続・維持期の療法のそれぞれについて同意説明文書がサンプルとしてのせられており,ECTを新たに開始する際には大いに参考になるであろう。
 本書の最大の特徴は,非常に使いやすく書かれているという点である。扱われている内容は,まさに本手技を使うものが知りたい事柄であり,また知っておくべきことである。各章の最後には推奨事項として,簡潔な要約がついており,この要約だけを読んでも本書全体が理解できるようになっている。

◆望まれる修正型ECTの普及

 本書は修正型ECTについての報告書であり,非修正型は対象としていない。翻訳者代表がその序文で,20年前に英国では非修正型のECTが行なわれたことに対して,精神科医が一斉に非難したというエピソードを記載している。わが国でも早くECTがすべて修正型となり,さらに最近になってようやくわが国でも認可された短パルス波刺激装置を用いた治療が普及することが望まれる。その時に座右に備えるべきが本書である。本書によってECTが正しく使われ,いろいろの症状に悩む患者さんの有効かつ迅速な治療につながれば,患者さんとその家族にとってはもちろんのこと,治療者にも大きな福音となろう。

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