AO法骨折治療
[英語版CD-ROM 2枚付]

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AO法による骨折手術について,1200点を超えるカラー図版を使いながら,その原理・原則から治療手技までを網羅したAO法のバイブルの日本語版。添付のCD-ROM(英語版;2枚組)には本文とすべての図表に加え,手技のそれぞれのステップを繰り返し確認できる動画を100点以上収録。骨折治療に携わる整形外科医の必読書。
日本語版総編集 糸満 盛憲
日本語版編集代表 田中 正
発行 2003年05月判型:A4頁:688
ISBN 978-4-260-12589-5
定価 38,500円 (本体35,000円+税)
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  • 目次
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1 AOの哲学と基礎
 1.1 AOの哲学および原則
 1.2 骨折治療における生物学および生体力学
 1.3 骨折固定におけるインプラントと材料
 1.4 骨折分類:生物学的意義
 1.5 軟部組織損傷:病態生理学と骨折治療への影響
2 方針決定と計画
 2.1 患者と損傷
 2.2 骨幹部骨折:原則
 2.3 関節内骨折:原則
 2.4 術前計画
3 整復・固定手技
 3.1 外科的整復
 3.2 絶対的安定性の手技
 3.3 相対的安定性の手技
 3.4 内固定の新しいテクノロジー
4 部位別治療法
 4.1 肩甲骨と鎖骨
 4.2 上腕骨
 4.3 前腕骨と手
 4.4 骨盤輪損傷:評価と外科的治療の概念
 4.5 寛骨臼骨折:評価/分類/治療の概念と進入法
 4.6 大腿骨
 4.7 膝蓋骨
 4.8 けい骨
 4.9 果部骨折
 4.10 足(踵骨/距骨/中足骨):方針決定
 4.11 脊椎
5 骨折治療における諸問題
 5.1 開放骨折
 5.2 軟部組織欠損の治療原則
 5.3 多発外傷:病態生理学,優先順位と治療
 5.4 小児の骨折
 5.5 抗生剤の予防的投与
 5.6 血栓塞栓症の予防
 5.7 術後管理:全身的な考察
6 合併症
 6.1 急性感染
 6.2 非感染性偽関節
 6.3 慢性感染および感染性偽関節
 6.4 変形癒合
 6.5 有痛性骨萎縮症
用語集
索引
AO Principles of Fracture Management CD-ROM(英語版)操作ガイド

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最新のAO哲学が示された,整形外科医の座右の書
書評者: 松下 隆 (帝京大教授・整形外科学)
 本書は初版の出版以来33年ぶりに大改訂を受けたAO骨折治療法マニュアルの日本語版である。「Manual der Osteosynthese」の初版本は1969年に出版され,翌1970年には本書と同じ医学書院から『図説 骨折の手術AO法』の名で訳本が出版されている。この本は印刷された図版をそのまま輸入し,説明文のみを日本語に置き換えたもので,当時としては非常に美しい画期的なものであった。その後,英語版は1977年と1992年とに2度の改訂を受けそれぞれ日本語版が発行されている。

◆骨折治療の新しい考え方や治療法を示す

 本書の英語版はAO骨折治療マニュアルの第4版の位置づけではあるが,内容はこれまでの版とは大きく異なっており,書名も「AO Principles of Fracture Management」と変更されている。これまでの版がどちらかといえば骨接合術の手術手技書の性格が強かったのに対して,本書は骨折治療の新しい考え方や治療法を示し,固定の力学的観点より骨折治癒の病態生理と生物学とについて詳しく解説し,最新のAO哲学を伝えることを主眼としている。

 本書によれば,AOの哲学は,「筋骨格系の外傷とそれに関連した障害を持つすべての患者を中心に据え,関節可動性や機能の早期回復をはかるための治療パターンを計画し提供すること」である。そして,この哲学を実現するための原則は,AOの創設期では「骨片間圧迫によって絶対的安定性を獲得し骨折部の強固な固定性を得る」という簡潔で教義的とも思えるものであったが,今日では,1)解剖学的な関係を回復するための骨折整復と固定,2)骨折とその損傷の特徴が必要とするだけの固定あるいは安定化,3)注意深い操作と愛護的な整復技術による,骨・軟部組織への血行の温存,4)患部と患者の早期および安全な運動,の4点となっている。

◆CD―ROMを活用して手技を繰り返し確認

 本書も初版の訳本と同様,1600点を超えるすべての図がオリジナルと全く同一であり美しく理解しやすい。さらにCD―ROMも添付されており,すべての図をパソコンの画面上で見ることができる。しかもその中の100点以上が動画であり,手技のステップを繰り返し確認することができる。CD―ROMの画面は英語版のページレイアウトと全く同一であり,本書は実質上,訳本に原著もついてくるという今までに例を見ないものである。私は,原著を一昨年手に入れ,内容の充実ぶりと画像の美しさに驚かされたが,本の形をCD―ROMの画面と同一の形にするために横長の装丁になっていることには違和感を覚えていた。ところが,本書はレイアウトが変更され,原著よりずっと読みやすくなっている。

 本書は,整形外科を標榜するすべての医師にとって骨折治療の知識をブラッシュアップする最良の書であり,日々外傷の治療に携わっている整形外科医にとっては頼りになる座右の書となると確信している。

骨折治療法確立への道しるべ
書評者: 山内 裕雄 (順天堂大学名誉教授)
◆時とともに変わってきたAO法の考え方

 この美しい本を前にして,時の移ろいに感じ入っている。縁あって1975年1月,私は京都府立医大の平澤泰介先生とご一緒にDavosでのAOセミナーに出席した。2人とも助教授だった。このセミナーに日本からの参加者はまだ少なかった。セミナーの充実ぶりにほとほと感心し,実習で本物の人骨をふんだんに使うのに驚いた(その後はプラスチック骨になったようだ)。午後はスキーをかついでいろいろなゲレンデに行ったが,そのスケールの大きさ,雪の滑りのよさにまた驚いた。

 当時AO法は日本でも流行になりつつあった。強固な固定により外固定を必要としない方法は魅力的だった。しかし強すぎる固定による再骨折や海綿骨化が問題にされはじめていた。セミナーではAO法の理論・臨床が熱心に語られ,手を取って手技の実際を教えられたが,総じてあまりにも工学的なという印象はぬぐえなかった。圧迫固定によるprimary bone healingが強調されすぎ,骨膜性仮骨は好ましくないとさえ言う講師もいた。私は,全面的にはついていけない,彼らにはもっと古典整形外科的な,より生物学的な骨折治癒機転を尊重して欲しいなと思いながら帰国した。

 その後,また縁あってAOマニュアル改訂第3版を『骨折手術法マニュアル―AO法の実際』(シュプリンガー・フェアラーク東京,1994)として教室の遠藤昭彦君と訳出した。訳しながらAOグループの考え方が1975年の時点よりだいぶん変わったなと感じた。prinary bone healingがdirect bone healingとなり,骨折治癒機転における骨膜性血行の重要性が尊重され,部分的コンタクトのプレートも提示されている。よいことだと思った。

◆極めて医学的になったAO法

 そしてこの本である。全頁カラーでまったく別の本になってしまった。内容をみて,あまりにも工学的と思っていたAO法が極めて医学的になったなと感じた。強固な固定法という言葉は少なく,安定性ある固定法がより強調され,フレキシブルな固定についての言及もあり,さらに点接触のみで,骨膜・骨皮質を圧迫せず,かつプレートを当てた骨皮質面のみを固定する「内固定器」という概念さえ出てきた。AOも変わったものだと思う。そして実際の症例や手技のビデオが2枚のCD-ROMに入っている。凄いものである。

 CD-ROM(マック・ウインドウズ共用)には英語版の全頁が収録され,多くの手技がビデオで供覧され,さらに主要な文献をクリックするとオンラインで即座にabstractが出てくる。じつに便利な世の中になったものである。

 比較的短時日のうちに本書を訳出された糸満盛憲教授ほか翻訳陣のかたがたのご熱意とご努力には頭が下がる。骨折治療に携わる整形外科医必携の書であることは間違いない。しかし本書は決して骨折治療のバイブルではない。本書に述べられた方法が必ずしも唯一のものではない,という目で読み,自分自身の骨折治療法確立へのよい参考書として使っていただきたいと希っている。
骨折に携わる医師必携! AO法の集大成がここに
書評者: 水野 耕作 (神戸労災病院院長)
◆原理や原則を振り返りながら学べる

 AO法骨折治療は,骨折の強固な固定と四肢運動機能の温存を2大目標として,1958年にMullerらにより考案され,瞬く間に世界中に普及しました。整形外科医ならばAO法手術をしたことがないとはいえないまでに発展しております。しかし,拙劣な手術的治療は保存的治療よりもその後遺症が深刻なものとなります。手術的治療の優位差を導くには,その手術法を正しく理解し実行しなければなりません。一部の人は,その術式のマニュアルや図解ガイドのみを手本として手術しているかもしれません。やはり,AO法骨折治療がいかに工夫され合理的に安全に発展したかを十分に理解することが必要です。

 本書はそのAO法の集大成として発刊されたものです。A4判,688頁に及ぶ膨大な教科書でありますが,1600点以上のカラー図版を巧みに取り入れ,手術手技はもちろんのこと,AO法の原理や原則もわかりやすく解説されています。第1,2,3章の基本的知識と原理を中心とした前半と,第4章の治療法を詳述した後半に大別されています。前半では,第1章にみるごとく,骨組織や血管組織における骨折治癒過程,骨折固定におけるインプラントの特徴とその原理ならびにAO骨折分類法などについて基本的な知識を解説しています。第2,3章では,骨折の部位と損傷状況からみた治療方針の決定法と術前計画を述べ,術中における骨折片の整復法,さらにスクリューや髄内釘などによる一般的な固定手技を詳述しています。後半は第4章の部位別治療法であり,いわば,本書の中枢であります。しかし,各部位別骨折の治療法とはいうものの,治療手技のみを詳細に述べているだけではなく,その骨折部位における組織特性,力学,材料や固定法などの原理と特徴を振り返らせながら(文中→chapter 1.2と表示して,前半の第1章・基礎知識を再読させる),治療法を理解させ,その上で正しく実行させようという優しい配慮と熱心な指導方針がうかがえます。したがって,本書では,読者は治療現場で遭遇した骨折の部位,すなわち,第4章のうちで,しかも該当部分を読むだけで,基本的な知識も治療法も同時に取得できるように工夫されています。

◆基礎の章にぜひ目を通してほしい

 本当は,本書を精読してからAO法骨折治療を実施することが最良と思われますが,この膨大な成書を一気に読破することのできる人は少ないでしょう。また,基礎的な難しいことはあまり好きでないという人もいるかもしれません。しかし,イラストも多くて解りやすく解説されていますので,前半の基礎・原理などの第1,2,3章をせめて斜め読みでもよいからぜひ目を通していただきたいものです。AO法骨折治療の長年にわたって培った歴史のみならず,現在のAO骨折治療の真髄を知ることができ,読者自身が骨折治療の熟練者のみならず基礎知識と理論を兼ね備えたエキスパートになった感じがするに違いありません。

 Drs. Ruedi & Murphyの編集主幹と約70人の執筆者を動員して刊行されたAOグループの底力を感じるとともに,糸満,田中AOコース日本両代表をはじめとした19名の翻訳者の意気込みと誇りが,美しくレイアウトされた大著から滲み出て,思わず感動せずにはおれません。翻訳書に付きまとう不自然な日本文も非常に少なく,無理な単語訳は少々混在するものの,巻末の用語集で補完されています。それに,CD-ROMの併用でリアルな手技と正確な治療法が取得でき,骨折に携わる医師として必携の書と考えられます。

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