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高齢者の外来診療で失敗しないための21の戒め

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本書は高齢者の外来診療に携わるすべての医師・看護師を対象に,失敗をおかさないための基本的な事柄を21の戒めとしてまとめている。特色は(1)身近で良質な医療を提供するためのアドバイス,(2)失敗例を交えたポイント,(3)主治医に必要な患者の変化を見逃さないコツ,(4)健康増進やコミュニケーション改善などを解説した点である。
シリーズ 総合診療ブックス
編集 宮崎 康 / 佐藤 元美
発行 2001年09月判型:A5頁:210
ISBN 978-4-260-11987-0
定価 4,400円 (本体4,000円+税)
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高齢者の外来診療ベストプラクティス 
Introduction 
戒め1 高齢患者の診察の基本要領を身につける 
2 薬物療法のポイントをマスターしよう 
3 高齢者の手術の指標を間違えない 
4 いつもの患者が食欲低下を起こしたら 
5 高齢者のADL低下は感染症のリスクを高める 
6 貧血は確実に原因を明らかにする 
7 「息苦しい」という訴えの原因は多彩 
8 胸痛を訴えない急性心筋梗塞,急性大動脈解離もある 
9 高齢者の黄疸は閉塞性が多い 
10 急性腹症や腸閉塞の原因は多岐にわたる 
11 転倒の陰に意識障害あり 
12 高齢者の腰痛は多種多様である 
13 「歩きにくい」「手足のしびれ」はラクナ状態や糖尿病性ニューロパチーとは限らない 
14 高齢者の排尿障害をみたら男性は前立腺癌,女性は神経因性膀胱を除外せよ 
15 こんなときは老年期痴呆,うつ病を疑う 
16 嚥下障害のある患者を見逃さないで速やかに対応する 
17 高血圧,糖尿病はマイルドにかつメリハリを付けて,低血圧,低血糖,QOL低下に注意 
18 高齢者で慢性疾患を持っていても健康増進の可能性を見逃さない 
19 多臓器に症状が出現する疾患を見逃さない 
20 コミュニケーションを改善する 
21 高齢女性にみられるエストロゲン欠乏症状を見逃さない

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高齢社会に不可欠な,会心の診療ノウハウ
書評者: 川村 亮機 (五ヶ瀬町国民健康保健病院・院長)
 私たちの身の回りにはたくさんの医学書が溢れているが,それらは臓器別に記載されている。疾病を理解するには大変便利であるが,それを目の前の患者さんに当てはめるには隔靴掻痒の感があり,なかなか明快な解決を得ることは困難であった。最近,症候から疾病に到達する解説書が散見されるようになったが,高齢者を対象とした解説書は見あたらない。このたび,医学書院から,現在の高齢化社会に鑑み,時機を得たガイドブックが出版された。
 高齢者はともすると成人の延長として診療を受けがちである。しかしながら,高齢者は加齢に伴う生体変化と人生経験に基づいた自己の疾病概念(解釈モデル)を持っている。したがって,本書ではまず冒頭で「身近で良質な医療を提供するためのヒント21」をテーマに対談が組まれており,高齢者を中心に据えた総合診療の役目を詳述している。次いで,高齢者特有の症候・精神・身体所見を項目別に挙げ,それぞれに相当する具体的な実例を失敗例を含めて提示し,それを出発点としてわかりやすく印象づけるよう工夫され,項目の理解ができるようになっている。

◆QOLを重点目標とし,高齢者医療で最も大切な要素を示す

 各項目ごとの見出しにある「知っていますか? 高齢者外来の基礎知識」と「高齢者外来の質を高める」は,それぞれの症候・疾病のポイントを簡潔にまとめてあり利用しやすい。その項目は,高齢者診察の基本,コミュニケーション技法をはじめとして,薬物療法の基本,手術の適応の考え方が解説されている。また,症候にあたる項目では,食欲低下,嚥下障害,貧血,息苦しさ,胸痛,黄疸,急性腹症,転倒,腰痛,手足のシビレや歩行障害,尿閉,痴呆とうつ病,など高齢者特有の症候を詳細に分析し,対処方法を詳述している。さらに疾患では,生活習慣病,多臓器に障害が出る疾患や女性のエストロゲン欠乏症,感染症などが述べられている。また,生活習慣とその改善方法の具体的なノウハウが記載され,わかりやすい。これらはすべて患者さんのQOLを重点目標とするよう配慮されており,高齢者の医療では最も大切な要素である。
 本書は特に高齢者医療の第一線で働く医療者,総合診療医,研修医,僻地診療所で働く医師,看護婦,当直医などには欠かせない座右の書である。
より深く良質の地域医療を求める心がけを凝縮
書評者: 今井 正信 (全国国民健康保険診療施設協議会長)
 この書は,まさに総合診療書にふさわしい内容である。われわれの地域,特に高齢者の多い僻地や離島での診療に携わった者にとって,こういう「総合された専門書」とも言えるものは,割合少ないものである。特に,高齢患者の病態を身近に体験している者にとって,しばしば本書に記載された症例とまったく同じ不思議な経験をして戸惑う事態がある。いかに良質な医療を提供しようと心がけながらでも,失敗とは言えないような失敗を繰り返して,さらに深いところにある真実まで到達した時の安心感と喜びは,地域医療でのみ感じられるものではないかと思ったりもする。

◆高齢者の病態を正しく把握・消化して後輩にアドバイス

 本書には,まさにより深く良質の医療を求める諸氏が,地域で一生懸命診ている患者の新しく出現する病状の変化を見逃さないで,正しくとらえ直し,自分の中で消化して後輩に届けるという,見事な内容であり,日常身近に置いて読み直しながら診療に役立て得る書と言える。その上,地域医療に最も必要な臨床現場でのコミュニケーション改善までをも含む在宅での取り組みなどは,実際に地域内で住民と一緒に保健・医療・福祉を考えている総合診療の専門医およびそのスタッフでないと発想し得ないものである。これこそ,21世紀の医師にとって最も臨床研修しなければならないことであると確信している。この書の中にある理念こそ,最も大切な地域医療の真髄だと思える。
 高齢者患者には,本書の症例にみるような,多彩ではあるが十分な観察と最近の発達した機器,手法により治療できる数多くの大切な症例がまだまだあると考えられる。さらに,良質の総合診療書を書いていただきたいと祈念し,心ある編者などに今後を期待して書評とする。

第一線の臨床家が共感できる経験を盛り込んだ1冊
書評者: 水戸部 秀利 (全日本民医連副会長・医療活動部長/長町病院長)
 本書は,東京都内の民間病院で住民参加の地域医療を実践してきた宮崎康氏と,岩手県内の町立病院で町ぐるみの保健・医療・福祉サービスを構築してきた佐藤元美氏の両編集者の対話に始まって,高齢者の日常診療で遭遇しやすい問題を,それぞれの分野の第一線の臨床家が平易に解説した実用書である。

◆濃厚に盛り込まれた診療のエッセンス

 「失敗しないための21の戒め」の表題のように,具体的,教訓的事例をあげ,それらに関連する診断や治療上のチェックポイントや診療基準,メール形式のQ&Aで構成されている。そしてところどころに筆者らの強調したいエッセンスも織り込まれている。
 全身を総合的に診る診察の基本,薬物療法,手術適応の考え方に始まり,食欲低下,感染症,貧血,息苦しさ,胸痛,黄疸,腹痛,意識障害,腰痛,運動障害,排尿障害,痴呆症状,嚥下障害などの日常よく遭遇する症候について教訓をまとめ,さらに高血圧や糖尿病の治療の注意点,生活習慣改善への取り組み,全身性疾患の留意,コミュニケーションのとり方,老年期女性のホルモン補充療法まで200頁強の小冊子に欲張りすぎと思われるほど濃厚に盛り込まれている。
 本書は,ベテランの医師や看護師にとっては,「そう,私も失敗した,経験した」という内容が随所に含まれ,再確認するきっかけになり,若手にとっては日頃悩んでいる高齢者の診療について,先輩からの貴重なメッセージになると思う。
 「失敗から学ぶ」,高齢者を生物学的側面からだけでなく「地域や社会の生活の中で」,「人生の先輩として」,「闘病の主体者として」とらえる見方が本書の基調であり,単なるノウハウ書にとどまっていない。
 最近,EBMが強調され,経験に基づく指針はランクが低く見られがちであるが,第一線の臨床医が共感できる経験は,貴重なエビデンスである。むしろ,このような経験が積み上げられることによって,患者の個性を捨象しがちなEBMが個別性,多様性にさらに接近できるようになると思う。
 医書一般に共通することであるが,せっかく手軽に読めて普及したい本であるのに値が張るのが残念である。

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