神経伝導検査と筋電図を学ぶ人のために 第2版
[DVD-ROM付]
初学者のための実践的テキスト、待望の改訂版!
もっと見る
神経伝導検査、筋電図検査について初学者向けにわかりやすく、かつ理論的にまとめた教科書の改訂版。初版と同様、実際の臨床に役立つように、初学者が正しい道筋で診断を考えることのできる内容となっている。さらに今版では、専門医試験にも役立つ○×式の確認問題や、正常値データベースを掲載するなど新たな要素も多数取り入れた。付録のDVD-ROMには初版で好評であったEMG波形のほか、新たに著者の講演ビデオを2本収録。
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
第2版の序
2003年に上梓した本書の初版は幸いにも予想以上の読者に迎えられた.背景には2004年に日本臨床神経生理学会主催の「医師のための筋電図・神経筋電気診断セミナー」が始まり,同学会の認定制度も創設され,それに関連した講習会,ハンズオンも増えるなど,多くの関係者の努力によって神経伝導検査や筋電図に携わる人たちの裾野が着実に広がってきたことがある.正しい理解と技術をもって用いれば驚くほど役立つ検査でありながら,これまで十分な教育がなされなかったがために医師や技師の間でもその価値が正当に評価されず残念な思いをしていただけに,最近の動きは大きな喜びである.著者らも微力ながらこれらの講習会や勉強会を通じて若い医師や技師の人たちに少しでも神経伝導検査・筋電図の理解を深めてもらえるように努力してきた.そういった教育の機会において多くの人たちと交わるなかで初版で書き足りなかったことや理解を深めるための新たなアイデアが次々と浮かび,いつか本書に反映したいと考えていたがようやくここに叶うこととなった.
第2版は「最新の知識」を盛り込む意図の改訂ではない.初版の序にも述べたように,また「神経伝導検査と筋電図を学ぶ人のために」という表題が示すように本書は筋電図を学ぼうとする人に,その原理や原則,今後深く考えてゆくための基本的知識,手がかりを提供することを目的とした教科書である.今回の改訂もその方向を深めることを意図して執筆した.もとより1冊の本でできることには限界がある.現在はオンラインで新しい情報を入手することが容易になっており,またより専門的な書籍も数多く出版されている.本書がそれらへの入り口になれれば本望である.
全体の改訂方針,章立てを木村・幸原が相談して計画した.序章を木村が執筆し,他の部の改訂は幸原が行った.初版からの具体的な内容の改訂点は以下の通りである.
1)著者の施設(神戸)における代表的な神経の正常参考値の年齢との相関図を加えた.この図はじっと眺めているだけでも面白いし役立つと思い巻頭に加えた.
2)臨床神経電気診断学・筋電図の簡単な歴史を序章として加えた.先人の努力を知っておくことは,現在を理解し新たな世界を切り開いてゆく上でとても大切である.
3)「症例から学ぶ筋電図」を第4部として新たに加えた.筋電図の基本を理解してもらうためにQ&Aの臨床講義形式をとっており,症例を通じ第1部~第3部の知識を確認し考えながら読めるよう工夫した.
4)各章末に基本的知識を確認するための○×問題を設けた.いずれも本文を読んでいれば容易であるが,誤解されやすい項目,あるいは最も基本的で重要な内容を選んで取り上げたので頭の整理に役立てて欲しい.
5)「末梢神経解剖の覚え方と局所診断」を第5部「知っておきたい基礎知識」に加えた.これは前徳島大学神経内科講師(在米国)の野寺裕之先生の講義をもとにしたもので,筋電図局所診断に必要不可欠な基本的事項がわかりやすく書かれている.
6)本文および図をよりわかりやすくなるように加筆修正した.また本文中のColumnや各部の最後にあるQ&Aを一部入れ替え,新たに書き加えた.
7)初版に見られた誤字,脱字の修正,用語の統一・変更を行った.また索引を充実したものとするように努めた.
8)DVD-ROMには前回と同様筋電図のサンプルを収録すると同時に,手元にあった講義プリント原稿,神経伝導検査や針筋電図講義の記録ビデオの一部を加えアウトラインを理解しやすいようにした.後者は収録を意識して制作されたものではなく特に編集もしていないモニタービデオであるため見苦しいところもあるが,神経伝導検査や筋電図に必要な原理の学習に役立てて欲しい.
今回の改訂も多くの人のお世話になった.素晴らしい講義に感動した著者の申し出に快諾し原稿を提供していただいた野寺裕之先生,講演ビデオを撮っていただいた瀬川義朗先生(天理よろづ相談所医学研究所),筋電計や技術的な問題でいつも助けていただいている日本光電の佐野仁氏,1年以上執筆の遅れた著者に愛想を尽かさずに原稿を粘り強く待ってくださった医学書院編集部の北條立人氏,かゆいところに手が届くような校正のプロである同制作部の大西慎也氏には直接のお世話になった.また大阪で著者が主催している若手医師を集めた私塾「筋電図塾」の運営を支えてくれている廣田伸之先生(滋賀県立成人病センター),関口兼司先生(神戸大学),特別講師の橋本修治先生(天理よろづ相談所病院白川分院)にもこの場を借りてお礼をしたい.最後に常に高い検査レベルを維持している佐々木一朗技師ら神戸市立医療センター中央市民病院神経機能検査室のスタッフ,そして救急病院での日常に沈没しそうな著者を支えてくれている川本未知先生をはじめとする神経内科の仲間たち,彼らの力と励ましがなければ執筆を続けることはできなかった.心より感謝したい.
2010年 立春の日に
著者
2003年に上梓した本書の初版は幸いにも予想以上の読者に迎えられた.背景には2004年に日本臨床神経生理学会主催の「医師のための筋電図・神経筋電気診断セミナー」が始まり,同学会の認定制度も創設され,それに関連した講習会,ハンズオンも増えるなど,多くの関係者の努力によって神経伝導検査や筋電図に携わる人たちの裾野が着実に広がってきたことがある.正しい理解と技術をもって用いれば驚くほど役立つ検査でありながら,これまで十分な教育がなされなかったがために医師や技師の間でもその価値が正当に評価されず残念な思いをしていただけに,最近の動きは大きな喜びである.著者らも微力ながらこれらの講習会や勉強会を通じて若い医師や技師の人たちに少しでも神経伝導検査・筋電図の理解を深めてもらえるように努力してきた.そういった教育の機会において多くの人たちと交わるなかで初版で書き足りなかったことや理解を深めるための新たなアイデアが次々と浮かび,いつか本書に反映したいと考えていたがようやくここに叶うこととなった.
第2版は「最新の知識」を盛り込む意図の改訂ではない.初版の序にも述べたように,また「神経伝導検査と筋電図を学ぶ人のために」という表題が示すように本書は筋電図を学ぼうとする人に,その原理や原則,今後深く考えてゆくための基本的知識,手がかりを提供することを目的とした教科書である.今回の改訂もその方向を深めることを意図して執筆した.もとより1冊の本でできることには限界がある.現在はオンラインで新しい情報を入手することが容易になっており,またより専門的な書籍も数多く出版されている.本書がそれらへの入り口になれれば本望である.
全体の改訂方針,章立てを木村・幸原が相談して計画した.序章を木村が執筆し,他の部の改訂は幸原が行った.初版からの具体的な内容の改訂点は以下の通りである.
1)著者の施設(神戸)における代表的な神経の正常参考値の年齢との相関図を加えた.この図はじっと眺めているだけでも面白いし役立つと思い巻頭に加えた.
2)臨床神経電気診断学・筋電図の簡単な歴史を序章として加えた.先人の努力を知っておくことは,現在を理解し新たな世界を切り開いてゆく上でとても大切である.
3)「症例から学ぶ筋電図」を第4部として新たに加えた.筋電図の基本を理解してもらうためにQ&Aの臨床講義形式をとっており,症例を通じ第1部~第3部の知識を確認し考えながら読めるよう工夫した.
4)各章末に基本的知識を確認するための○×問題を設けた.いずれも本文を読んでいれば容易であるが,誤解されやすい項目,あるいは最も基本的で重要な内容を選んで取り上げたので頭の整理に役立てて欲しい.
5)「末梢神経解剖の覚え方と局所診断」を第5部「知っておきたい基礎知識」に加えた.これは前徳島大学神経内科講師(在米国)の野寺裕之先生の講義をもとにしたもので,筋電図局所診断に必要不可欠な基本的事項がわかりやすく書かれている.
6)本文および図をよりわかりやすくなるように加筆修正した.また本文中のColumnや各部の最後にあるQ&Aを一部入れ替え,新たに書き加えた.
7)初版に見られた誤字,脱字の修正,用語の統一・変更を行った.また索引を充実したものとするように努めた.
8)DVD-ROMには前回と同様筋電図のサンプルを収録すると同時に,手元にあった講義プリント原稿,神経伝導検査や針筋電図講義の記録ビデオの一部を加えアウトラインを理解しやすいようにした.後者は収録を意識して制作されたものではなく特に編集もしていないモニタービデオであるため見苦しいところもあるが,神経伝導検査や筋電図に必要な原理の学習に役立てて欲しい.
今回の改訂も多くの人のお世話になった.素晴らしい講義に感動した著者の申し出に快諾し原稿を提供していただいた野寺裕之先生,講演ビデオを撮っていただいた瀬川義朗先生(天理よろづ相談所医学研究所),筋電計や技術的な問題でいつも助けていただいている日本光電の佐野仁氏,1年以上執筆の遅れた著者に愛想を尽かさずに原稿を粘り強く待ってくださった医学書院編集部の北條立人氏,かゆいところに手が届くような校正のプロである同制作部の大西慎也氏には直接のお世話になった.また大阪で著者が主催している若手医師を集めた私塾「筋電図塾」の運営を支えてくれている廣田伸之先生(滋賀県立成人病センター),関口兼司先生(神戸大学),特別講師の橋本修治先生(天理よろづ相談所病院白川分院)にもこの場を借りてお礼をしたい.最後に常に高い検査レベルを維持している佐々木一朗技師ら神戸市立医療センター中央市民病院神経機能検査室のスタッフ,そして救急病院での日常に沈没しそうな著者を支えてくれている川本未知先生をはじめとする神経内科の仲間たち,彼らの力と励ましがなければ執筆を続けることはできなかった.心より感謝したい.
2010年 立春の日に
著者
目次
開く
年齢からみた神経伝導検査の正常参考値
序章 筋電図・電気診断学小史―20世紀の発展を中心に
第1部 神経筋の構造と機能
第1章 神経生理の基礎
第2章 末梢神経の構造と機能
第3章 神経筋接合部の構造と機能
第4章 筋線維と運動単位
第1部 Q&A
第2部 神経伝導検査の原理と実際
第5章 検査装置と器具
第6章 神経伝導検査の基本原理
第7章 遅発電位とその臨床的意義―F波,H波,A波について
第8章 神経伝導検査の実際
第9章 神経筋接合部検査法
第10章 脳幹反射―瞬目反射(眼輪筋反射)を中心に
第11章 磁気刺激による運動誘発電位
第2部 Q&A
第3部 針筋電図の原理と実際
第12章 針筋電図の概要
第13章 刺入時電位と安静時電位
第14章 運動単位電位
第15章 単一筋線維筋電図
第3部 Q&A
第4部 症例から学ぶ筋電図
第16章 亜急性に顔面および四肢脱力をきたした症例
第17章 進行性の深部感覚失調をきたした症例
第18章 一側上肢から始まる筋萎縮を示す症例
第19章 下肢脱力から始まり進行性の全身筋力低下と筋萎縮をきたした症例
第5部 知っておきたい基礎知識
第20章 末梢神経と筋の解剖
第21章 末梢神経解剖の覚え方と局所診断
第22章 筋電計による生体信号の測定原理
第6部 AAEM用語集
第23章 筋電図用語とその解説
第24章 記録波形の実際
付録
索引
序章 筋電図・電気診断学小史―20世紀の発展を中心に
第1部 神経筋の構造と機能
第1章 神経生理の基礎
第2章 末梢神経の構造と機能
第3章 神経筋接合部の構造と機能
第4章 筋線維と運動単位
第1部 Q&A
第2部 神経伝導検査の原理と実際
第5章 検査装置と器具
第6章 神経伝導検査の基本原理
第7章 遅発電位とその臨床的意義―F波,H波,A波について
第8章 神経伝導検査の実際
第9章 神経筋接合部検査法
第10章 脳幹反射―瞬目反射(眼輪筋反射)を中心に
第11章 磁気刺激による運動誘発電位
第2部 Q&A
第3部 針筋電図の原理と実際
第12章 針筋電図の概要
第13章 刺入時電位と安静時電位
第14章 運動単位電位
第15章 単一筋線維筋電図
第3部 Q&A
第4部 症例から学ぶ筋電図
第16章 亜急性に顔面および四肢脱力をきたした症例
第17章 進行性の深部感覚失調をきたした症例
第18章 一側上肢から始まる筋萎縮を示す症例
第19章 下肢脱力から始まり進行性の全身筋力低下と筋萎縮をきたした症例
第5部 知っておきたい基礎知識
第20章 末梢神経と筋の解剖
第21章 末梢神経解剖の覚え方と局所診断
第22章 筋電計による生体信号の測定原理
第6部 AAEM用語集
第23章 筋電図用語とその解説
第24章 記録波形の実際
付録
索引
書評
開く
臨床神経生理の理解を促す要素がさらに充実
書評者: 有村 公良 (大勝病院副院長・神経内科/前・鹿児島大准教授・神経内科学)
『神経伝導検査と筋電図を学ぶ人のために』は,臨床神経生理の基礎から診断までの道筋を系統的に初心者にもわかりやすく説明した名著で,神経筋疾患の神経生理検査・診断を行う医師,検査技師にとっては文字通りバイブル的な存在である。今回待望の第2版が木村淳先生,幸原伸夫先生の多大な努力でここに出版された。この第2版は基本的な内容,骨格はもちろん初版と共通しているが,随所に新しい試みが追加されて約100頁の増頁となり,さらに臨床に役立つ魅力的な本となっている。
本書は初版から至る所に初学者の理解を助ける工夫がなされている。第2版にも引き継がれているが,付録のDVD-ROMに針筋電図の実際の記録を収録し,本編で説明を加えるという大胆な試みは,私の知る限り臨床神経生理の分野では本邦初である。筋電図検査の研修は何といっても波形や発火様式の視覚的な識別と,筋電図の音による聴覚的な識別の両者の訓練ということに尽きる。DVD-ROMには,幸原先生が実際に臨床の場で経験された数多くの異常筋電図が収録されており,初学者のみならず,ある程度筋電図検査を経験した医師にも貴重な記録である。
また臨床神経生理検査をより深く理解するための基本的な解剖・生理学的知識のみならず,工学的な項目もしっかり書かれていることも本書の特徴でもある。さらに末梢神経系だけではなく,筋電図の起源である脊髄前角細胞の発火を制御している運動一次ニューロンの機能を評価する磁気刺激検査にも触れられている。このような内容に幸原先生の臨床神経生理検査を行う医師,臨床検査技師に対する強いメッセージを感じる。
今回の第2版では,さらに理解を深めるための工夫が数多く加えられている。第1に多くの図が追加され,一見難しい病態の理解がより進むように書かれている点である。
第2の大きな特徴として,最終目標である電気生理診断に近づくための項目の大幅な追加が目に止まる。まず巻頭に神戸市立医療センター中央市民病院で集積した日本人の神経伝導検査の正常参考値が載せられている。多忙な臨床の場で,正常参考値を収集することがいかに大変かは筆者も身に染みており,この正常参考値はこれから広く日本中で用いられよう。高齢化社会の日本において,読者はこのデータを見る時,とくに年齢との関係を見てほしい。
その他に,検査を行う際に最も重要な末梢神経解剖の追加項目として,現在米国で活躍している野寺裕之先生によるレクチャー形式での腕神経叢の解剖の覚え方が加えられている。電気生理診断を行う際に必須となる神経筋の解剖を読むごとに自然にマスターできるように書かれていることが何より素晴らしい。読者もぜひ記憶にとどめてほしい。
本書はこれから臨床神経生理を学ぼうとする人だけではなく,臨床神経生理の認定医,認定技術師をめざす人にとっても,神経生理検査室など臨床の傍らに置いてほしい大事な一冊である。
臨床神経生理学的検査の基礎からすべてを解説してくれる“楽しい”本
書評者: 正門 由久 (東海大教授・リハビリテーション科学)
この度,医学書院から『神経伝導検査と筋電図を学ぶ人のために 第2版』が出版された。初版も読ませていただき,すばらしい本であると感じていたが,さらにバージョンアップし,“かゆいところに手が届く”必携の書になったと感じる。本書は臨床神経生理学的検査,特に神経伝導検査と筋電図検査を行う者にとっては,まさに座右の書といえる。
さて,本書の構成は,神経伝導検査の正常値(見ていて飽きない),序章(偉人たちに感謝),「第1部 神経筋の構造と機能」「第2部 神経伝導検査の原理と実際」「第3部 針筋電図の原理と実際」「第4部 症例から学ぶ筋電図」「第5部 知っておきたい基礎知識」「第6部 AAEM(米国電気診断医学会)用語集」の計6部から構成されている。さらに各部の終わりには知識を整理するためのQ&Aや,要所要所に「Column」というトピックス枠があり,日常診療の場で起きそうな疑問や話題に答えてくれており,本文にはない“楽しみ”がある。また各章末に○×式の確認問題があり,そこで復習できるようになっている。
本書は,神経生理学に必須の“波形”を豊富に掲載しているのみならず,模式図を使用し,なぜそうなるのかをわかりやすく解説している。それによって理解がさらに深まる。また第2版で新たに設けられた「第4部 症例から学ぶ筋電図」は大変興味深い。症例を通してわれわれが学ぶことは大きいことがわかる。
本書の最大の特長は,その教材としてDVD-ROMが付録として付いていることではないだろうか。これまで,針筋電図検査ではオシロスコープ上に現れる波形や音がどれだけ神経生理学で重要であるかを理解していても,それを実際に学ぶとなると非常に困難であった。しかしながら,付録のDVD-ROM収載の筋電図波形を繰り返し見て聞き,本書を読むことによって,実際に針筋電図検査を行っているような臨場感が得られる。またDVD-ROMには著者(幸原先生)の講演も収載されている。これが珍しく,興味深い。このような著者の講演そのものが収められた本は今までなかったのではないだろうか。これによって,よりわかりやすい本になっており,もはや“付録”の範疇を超えているといえる。
本書は臨床神経生理学の極めて完成度の高い教科書であり,わが国においてこのような書が出され,さらに進化を遂げたことはたいへん喜ばしい。本書を“楽しい”と感じるのは評者だけではないだろう。ページをめくるたびに楽しみが増すという不思議な本。ぜひ神経生理を日常行っている医師や検査技師に読んでいただきたい。また神経生理をこれから学ぶ方々にとっても素晴らしい本となるのは間違いない。木村先生,幸原先生に感謝申し上げたい。
書評者: 有村 公良 (大勝病院副院長・神経内科/前・鹿児島大准教授・神経内科学)
『神経伝導検査と筋電図を学ぶ人のために』は,臨床神経生理の基礎から診断までの道筋を系統的に初心者にもわかりやすく説明した名著で,神経筋疾患の神経生理検査・診断を行う医師,検査技師にとっては文字通りバイブル的な存在である。今回待望の第2版が木村淳先生,幸原伸夫先生の多大な努力でここに出版された。この第2版は基本的な内容,骨格はもちろん初版と共通しているが,随所に新しい試みが追加されて約100頁の増頁となり,さらに臨床に役立つ魅力的な本となっている。
本書は初版から至る所に初学者の理解を助ける工夫がなされている。第2版にも引き継がれているが,付録のDVD-ROMに針筋電図の実際の記録を収録し,本編で説明を加えるという大胆な試みは,私の知る限り臨床神経生理の分野では本邦初である。筋電図検査の研修は何といっても波形や発火様式の視覚的な識別と,筋電図の音による聴覚的な識別の両者の訓練ということに尽きる。DVD-ROMには,幸原先生が実際に臨床の場で経験された数多くの異常筋電図が収録されており,初学者のみならず,ある程度筋電図検査を経験した医師にも貴重な記録である。
また臨床神経生理検査をより深く理解するための基本的な解剖・生理学的知識のみならず,工学的な項目もしっかり書かれていることも本書の特徴でもある。さらに末梢神経系だけではなく,筋電図の起源である脊髄前角細胞の発火を制御している運動一次ニューロンの機能を評価する磁気刺激検査にも触れられている。このような内容に幸原先生の臨床神経生理検査を行う医師,臨床検査技師に対する強いメッセージを感じる。
今回の第2版では,さらに理解を深めるための工夫が数多く加えられている。第1に多くの図が追加され,一見難しい病態の理解がより進むように書かれている点である。
第2の大きな特徴として,最終目標である電気生理診断に近づくための項目の大幅な追加が目に止まる。まず巻頭に神戸市立医療センター中央市民病院で集積した日本人の神経伝導検査の正常参考値が載せられている。多忙な臨床の場で,正常参考値を収集することがいかに大変かは筆者も身に染みており,この正常参考値はこれから広く日本中で用いられよう。高齢化社会の日本において,読者はこのデータを見る時,とくに年齢との関係を見てほしい。
その他に,検査を行う際に最も重要な末梢神経解剖の追加項目として,現在米国で活躍している野寺裕之先生によるレクチャー形式での腕神経叢の解剖の覚え方が加えられている。電気生理診断を行う際に必須となる神経筋の解剖を読むごとに自然にマスターできるように書かれていることが何より素晴らしい。読者もぜひ記憶にとどめてほしい。
本書はこれから臨床神経生理を学ぼうとする人だけではなく,臨床神経生理の認定医,認定技術師をめざす人にとっても,神経生理検査室など臨床の傍らに置いてほしい大事な一冊である。
臨床神経生理学的検査の基礎からすべてを解説してくれる“楽しい”本
書評者: 正門 由久 (東海大教授・リハビリテーション科学)
この度,医学書院から『神経伝導検査と筋電図を学ぶ人のために 第2版』が出版された。初版も読ませていただき,すばらしい本であると感じていたが,さらにバージョンアップし,“かゆいところに手が届く”必携の書になったと感じる。本書は臨床神経生理学的検査,特に神経伝導検査と筋電図検査を行う者にとっては,まさに座右の書といえる。
さて,本書の構成は,神経伝導検査の正常値(見ていて飽きない),序章(偉人たちに感謝),「第1部 神経筋の構造と機能」「第2部 神経伝導検査の原理と実際」「第3部 針筋電図の原理と実際」「第4部 症例から学ぶ筋電図」「第5部 知っておきたい基礎知識」「第6部 AAEM(米国電気診断医学会)用語集」の計6部から構成されている。さらに各部の終わりには知識を整理するためのQ&Aや,要所要所に「Column」というトピックス枠があり,日常診療の場で起きそうな疑問や話題に答えてくれており,本文にはない“楽しみ”がある。また各章末に○×式の確認問題があり,そこで復習できるようになっている。
本書は,神経生理学に必須の“波形”を豊富に掲載しているのみならず,模式図を使用し,なぜそうなるのかをわかりやすく解説している。それによって理解がさらに深まる。また第2版で新たに設けられた「第4部 症例から学ぶ筋電図」は大変興味深い。症例を通してわれわれが学ぶことは大きいことがわかる。
本書の最大の特長は,その教材としてDVD-ROMが付録として付いていることではないだろうか。これまで,針筋電図検査ではオシロスコープ上に現れる波形や音がどれだけ神経生理学で重要であるかを理解していても,それを実際に学ぶとなると非常に困難であった。しかしながら,付録のDVD-ROM収載の筋電図波形を繰り返し見て聞き,本書を読むことによって,実際に針筋電図検査を行っているような臨場感が得られる。またDVD-ROMには著者(幸原先生)の講演も収載されている。これが珍しく,興味深い。このような著者の講演そのものが収められた本は今までなかったのではないだろうか。これによって,よりわかりやすい本になっており,もはや“付録”の範疇を超えているといえる。
本書は臨床神経生理学の極めて完成度の高い教科書であり,わが国においてこのような書が出され,さらに進化を遂げたことはたいへん喜ばしい。本書を“楽しい”と感じるのは評者だけではないだろう。ページをめくるたびに楽しみが増すという不思議な本。ぜひ神経生理を日常行っている医師や検査技師に読んでいただきたい。また神経生理をこれから学ぶ方々にとっても素晴らしい本となるのは間違いない。木村先生,幸原先生に感謝申し上げたい。